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「笑いのカイブツ」(2023)俺のネタのどこがおかしい!岡山天音の狂気の演技に嵌った!

 

原作者は「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキさん。といってもお笑いの世界に無知で何も知らない。

タイトルから笑える作品だろうと観ことにしました。(笑)とんでもない、真逆の作品でした。笑いの怪物に憑りつかれ、笑えるネタだと思うがプロの世界では認められず挫折。その先に自分のアイデンティティーを見出すという、お笑い界だけでない話になっている。岡山天音さんの狂気の演技が光っている作品でした。

監督:滝本憲吾、初長編作品。脚本:滝本憲吾 足立紳 山口智之 成宏基、撮影:鎌苅洋一、編集:村上雅樹、音楽:村山☆潤。

出演者岡山天音片岡礼子松本穂香、前原滉、板橋駿谷、淡梨、菅田将暉、他。

物語は、

不器用で人間関係も不得意なツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿することを生きがいにしていた。毎日気が狂うほどにネタを考え続けて6年が経った頃、ついに実力を認められてお笑い劇場の作家見習いになるが、笑いを追求するあまり非常識な行動をとるツチヤは周囲に理解されず淘汰されてしまう。失望する彼を救ったのは、ある芸人のラジオ番組だった。番組にネタを投稿する「ハガキ職人」として注目を集めるようになったツチヤは、憧れの芸人から声を掛けられ上京することになるが……。(映画COMより)


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あらすじ&感想

20歳のタカユキ(岡山天音)は高校のころからデジタル大喜利に嵌り、ネタ投稿を続けていた。寝ていても、仕事中もネタで頭の中は一杯。このため何度となく仕事を変えた。これを面白く岡山さんが演じる。

車で牛乳配達中、突然ネタが見つかり車を停めてメモする

仕事を放棄して帰宅し、投稿して番組を見る。彼の部屋の壁には思いついたネタメモが貼られ、床には失敗したネタメモが散らかり足の踏み場もない。

パンツ一丁でTVを観る、ネタを考えるとき壁に強く頭を叩きつける、落選で奇声を上げる姿は異様で狂っているとしか言いようがない。

自分をネタに

お題「宇宙飛行士が初めて地球を見て発する言葉は?」、答え「背中に同じシミが出来た」。選者の評価は「バカバカし」というものだった。(笑)深い意味がありそうなネタだ。タカユキは悔しくてオカン(片岡礼子)に当たる。オカンもこんな息子に文句を言わずよく耐えている。

オカンをネタに

お題「お母さんに言われてショックだったこと」 答え「その棒みたいなやつ、洗濯もの干す時に使わせて!」。このネタで大喜利の最高位“レゼンド”に昇格した。タカユキは仕事も上手く行かず、これを機に漫才作家になりたいと思うようになった。

タカユキは100篇のネタを“よしほろ漫才劇場”に送った

作家見習いとして採用された。しかし、人間関係不得意人間で、組む相手を作れず、ネタ合わせでの発言も上手くできない。「もの書き教育を受けていない」と作家見習いの山本から「根性みたいな笑い書くな!」と揶揄される。

タカユキはひとりオープンカフェで漫才ネタを書いた。カフェの店員ミカコ(松本穂香)はここでしょちゅうネタを書くタカユキに興味を持った。

「字が汚いやつには才能がある」とタカユキにネタを求めたのがピン芸人トカゲ(淡梨)だった。タカユキは劇場資料室で古いネタを調べトカゲのためのネタを書いた。しかし、他の作家見習いから「他人のネタを盗んだ」と非難され、「俺のネタが分からないのか、漫才ネタと違う」と毒づき、“よしほろ”を追われた。劇場支配人が「お前のネタは面白かった、いい店を捜せ!」と2万円を餞別にくれた。

泣きながら思い付いた大喜利のネタ。お題「絶対絶命とはこの事件、どんな状況」、答え「自分が殺人事件を起こした現場にコナン、古畑、金田・・」

再び大喜利のネタを書く生活に戻った。書きまくった。部屋中がネタで埋まっていく。

ミカコと公園でデートミカコはタカユキを尊敬するという。タカユキもミカコと会っているときは心が休まるようだ。ミカコは「プリマ?やりたい」と言い「酒を呑むと忘れられるのがいい、今度飲みにいこう」と誘った。

ミカコとタカユキの関係は

お題「男湯と女湯を隔てる壁を英語で訳せ」、答え「ファイナルアンサー」。この笑いも深そうだ!

タカユキはホストクラブで働くことにした。

全く女性を無視してネタを考え、酒を呑み暴れる。即、解雇!

チンピラヤクザのピンク(菅田将暉)の紹介でバーテンになった

ホストクラブから放り出されているところで、「赤い小便にホストは向かない、金がないのか?」とピンクの紹介で働くことになった。

ここでも相変わらず大喜利のネタを考える。ピンクが訪ねてきて「笑わせてみろ!」という。ピンクもミカコも、タカユキ同様“本当にやりたいこと”が見つからない人間だった。

ミカコに会ったら「バイトやめた」と言い、彼女のアパートに誘われた

この時、何があったか?

お題「イルカショーのお嬢さんが言ったとんでもないひとことは?」、答え「私はいまこのイルカの子を身ごもっています」。

“よしひろ”漫才劇場前で作家見習い時、ネタが面白といってくれたベーコンズが人気ものになって東京に進出した。

ベーコンズの西寺(仲野大賀)を頼り東京に出た

タカユキは作家になることを西寺に誓い、JBSラジオの西寺トーク番組のネタを書くことになった。放送室で西寺のトークを聴きながらネタを考える。

スタッフが集ってそれを検討する。これまで西寺担当の作家・氏家(前原滉)がうまく意見をまとめてネタ作業が進む。タカユキはほぼ沈黙するのみ。西寺から「俺のネタを書いてくれ」と求められ、沢山の雑誌を買い込んでネタ探しい熱中。

孤立していくタカユキを心配した寺西はTシャツを与えてイメテェンを図り、「挨拶をしっかりすること、3年は辛抱しろ」と教えた。タカユキは次の日から丁寧に挨拶をし、人に好かれる努力を始めた。

タコ焼きをプレゼントに出勤すると氏家が「彼に任せるなら降りる」と言い、内山プロデューサー(松本洋平)が「今度は任せてみよう」と答える会話を耳にした。タカユキはタコ焼きを渡さず、番組用のネタを「1日で書いた」と西山に渡した。

アパートに戻りビニール袋を被り電気釜のコードで自殺を図ったが、死ねなかった

タカユキは西寺に頼まれていたネタ原稿を渡した。西寺は「おもしろい」と答え「自分の笑を分かってくれないと思ったこともあったが、助けてくれたのは氏家だ、辛抱しろ」とタカユキの気持ちを宥めた。しかし、内山から「情報番組に出るのでネタ!」と要求され、「誰が喜ぶ!そんな笑い!こいつらクズ」と切れて叫んだ。西寺が諫めたがタカユキは聞く耳を持たなかった。

タカユキの心境は

お題「ヒーローのテーマ曲、なにそれ?どんな歌い出し?」、答え「敵の思想に心揺れた」。

タカユキは大阪に戻った

タカユキはミカコに会い居酒屋に入るとピンクがそこで働いていた。ミカコは「彼氏が出来てブリーダーになる」という。タカユキは笑って聞いた。

ピンクが「こいつは凄い、やることがあって!」とタカユキが東京で成功して戻ったと勘違いして話した。タカユキはテーブルに頭とぶつけて暴れる。ピンクは驚いて「鬱だ!病院に行け」と勧めると「何が東京や何がプロや!笑いはなかった!俺は正しい世界で生きたい。だれが作った、常識で吊るされる」と泣いた。

ピンクは「世間はそうする。この世界を楽しませるのがお前の仕事だ。悲しいがそこに居て欲しい。この地獄で生きろ」と励ました。ピンクがこれほどのセリフを吐くとは思わなかったが、菅田さんの演技がすばらしい。

タカユキは“よしほろ漫才劇場”でベーコンズの芝居を観た

観客の一体となったこの漫才は迫力があって面白い。タカユキは感激した。ラストで脚本は氏家とタカユキと紹介されていた。

帰りに西寺に出会った。西寺が一緒にやろうと誘ったが、「俺は人間関係不得意人間だ」と断った。西寺は「お前のネタが受けると分かったことがよかった」と言った。

このときのタカユキ

お題「・・・・」、答え「・・・絶望」だった。

タカユキは自殺しようと道頓堀川に飛び込んだ

しかし、死ななかった。オカンのところに「俺は死んだ!」と戻ってきた。「オカン、ありがとう」と感謝するとオカンが泣いた。

ネタが貼ってある壁を脚で蹴ると穴が開いた!これまでこんなことはなかった。俺はネタを書き始めた。

まとめ

タカユキは大喜利のネタを書く才能は優れていた。しかし、大衆に自分の漫才の面白さを分かってもらうには他の作家の意見も必要なのだが、タカユキは人間関係を築くことができないのが致命傷だった

2度もお笑いの世界に悲観して自殺を図るが助かり、タカユキはやっと自分が大喜利でネタを作り漫才作家の手を借りればいいという、作家としての生き方を見つけた。

タカユキが自分の作家流儀を見出すまでの話を、彼の作った大喜利で描くというドラマ

このドラマを通して、タカユキが作るネタは分かり難いが深いものがあると分かる。これを演じた岡山天音さん、バカか利口なのか、天才の秘めたる狂気がよく出ていた。申し訳ないないですが、これほどの俳優さんだとは知らなかった。

孤独なタカユキを暖かい目線で応援するオカン、ミカコ、ピンク、トカゲ、西寺。大阪の人情がよく出ていた。ここに漫才の真髄があると思った。特にピンク、これを演じる菅田さんの演技に魅せられた。

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