17世紀・朝鮮王朝時代の記録物「仁祖実録」に記された“怪奇の死”にまつわる謎を題材に、盲目の目撃者が謎めいた死の真相を暴くため奔走する姿を予測不可能な展開で緊張感たっぷりに描いたサスペンススリラー作品。
韓国の大ヒット作品ということで観ることにしました。
闇では見えるが、光があると見えない盲目の鍼師。闇の中で目にした毒殺を無視され、見えないとして宮殿に召されその仇を取るという、宮中政治に鉄拳を喰らわす話。ただの時代劇に終わらない、今の時代に繋がる物語。サスペンシブルで、痛い!作品だった。韓国映画の凄さを感じた。
監督・脚本:アン・テジン 長編監督デビュー作、撮影:キム・テギョン、編集:キム・サンミン、音楽:ファン・サンジュン。
出演者:リュ・ジュンヨル、パク・ミヨンフン、キム・リンチョル、ユ・ヘジン、チョ・ソンハ、アン・ウンジン、チョ・ユンソ、イ・ジュウオン、チョン・ソグオン、他。
物語は、
盲目の天才鍼医ギョンスは病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。ある夜、ギョンスは王の子(世子)の死を“目撃”してしまったことで、おぞましい真実に直面する事態に。追われる身となった彼は、朝日が昇るまでという限られた時間のなか、謎を暴くため闇を駆けるが……。(映画COMより)
これではサスペンスは味わえないのですこし詳しく説明します。
あらすじ&感想:
ギョンス、宮廷鍼師に選抜される、
選抜試験時、患者が足を引きずる音から短気な性格で卒中が原因だと診断し的確な場所に鍼を打ったことで、御医イ・ヒョンイクに見出され宮廷鍼師に選ばれた。
ギョンスは宮廷鍼師としてめきめきと力を発揮する。
先輩のマンシク鍼師の教え「宮廷では聞こえないふり、見えないふりで、常に口に注意し、返事するときはハイとだけ云え!内命婦には一歩も近づくな!」をしっかり守って勤務。(笑)盲目だからとバカにして薬草の仕分け作業をうんと割り振られるが、夜のうちにやり遂げて皆を驚かせる。ギョンスは薬剤室に毒薬があることを知って疑念を持った。
王様(仁祖)の侍女ソヨン(アン・ウンジン)の鍼治療に招かれる。
ヒョンイクはギョンスを伴ってソヨンを訪ね、治療をギョンスに任せた。
ギョンスが中腸に鍼を打ち痛みを和らげ、ソヨンから「いい鍼師だ」と揉められた。ソヨンは「身体の不調は世子が清から戻ることで息子のソクチョル(イ・ジュウオン)が心配になるからだ」という。こういう秘密を聞けるのが鍼師の特典。ギョンスはソヨンがヒョンイクに「王様からの託物だ」と文を渡すのを耳にした。
ソクチョルはよく内医院に顔を見せる子でジョンスを知った。
世子(キム・リンチョル)が清より8年ぶりに帰国。
世子は人質として明に囚われていたが、清の時代となり朝鮮に戻されることになった。しかし、正門に王の姿はなく、これにチェ領相(チョ・ソンハ)が「清の時代となり世子の後ろ盾は清、これは喜ばしい」と説き、王が迎えるという、曰く付きの出迎えとなった。
世子に随伴した清の使者より「8年前の恨みがあるが、息子の懇願により許す」という勅諚が読まれた。
世子と世子嬪(チョ・ユンソ)は息子ソクチョルとの再会を喜んだ。
領相は世子に会い、「清と新しい時代を築け」と意見具申した。
世子は「王が決めることだ」と応えた。領相は「別の道を捜せねば」という気持ちを持った。
一方、世子は王に「清は西洋の文化を受け日増しに繁栄しており交流を図るべきだ。明は滅んだのだから清と交流すべきだ」と説くが、王は激しい口調でこれを拒否した。咳をする世子に「信頼する御医を置き治療せよ」と注意をした。
世子の帰国に伴い、宮中に清との交流を巡り大きな対立が起こった。
世子は内医院を訪ね治療を依頼した。
ヒョンイクはギョンスを推薦した。ソクチョルが「盲人の方がいい」というのでギョンスに決まった。(笑)ヒョンイク不在時に世子の咳が止まらないと迎えが来た。
世子はギョンスの治療に満足するとともに彼の気性が気に入った。
ギョンスは世子に沛に鍼を打った。世子が「沛を治せるか」と聞くと、ギョンスは「身体が硬直している。心の荷物を卸せば回復できる」と応えた。世子は人を排して、「王の手が冷たい。そちが一度診てくれないか」と聞く。ギョンスは「私ごとき卑しいものが」と応えたが「任せた!」と言われ「ハイ」と返事した。
ギョンスがこりをほぐすためにと大推に鍼を打とうと手を伸ばした時、世子が「見えるのか?」と聞くが返事しなかった。世子の侍女がギョンスの荷物の中に大きな文字の手紙を見つけた。ギョンスは「私の目は明るいところで見えず、暗いところで見えます」と釈明した。「盲人は何故見えるのに見えないというのか?」と問われ「目を閉じて生きるほうが身体に良い。世子様は物事を正しく見るために体調が優れない」と話すと、世子から「これを使え」と拡大鏡が渡された。
世子の体調は良くなり、ギョンスも内医院で実力のある鍼師となっていった。
「世子が倒れ、意識がない」という知らせが届いた。
ヒョンイクとギョンスはが病床に駆けつけた。ヒョンイクは感染症だと診断し身体を拭き、鍼を打った。治療は全てヒョンイクが行い、ギョンスはヒョンイクの言うままに絹の布に水を浸し渡していた。ヒョンイクが灯を消し、ギョンスの目に鍼を近づけ見えないことを確認して頭に鍼を打った。
ヒョンイクが席を離れたとき、ギョンスは世子の顔を見て「おかしい」と思った。顔には多数の鍼が撃たれていた。遅漏が終り灯りをつけ「煎じ薬は夜が明けてからにする」と付人に話し内医院に戻った。
ギョンスは気になり世子の病室に駆けつけると、ヒョンイクが治療していた。
ギョンスは身を隠し見ていた。ヒョンイクが鍼を捜していた。ギョンスは足元にある鍼を拾って窓から逃げ出した。このとき脚に傷を負った。気付いたヒョンイクが追ってくる。
ヒョンイクが警備役人に「世子の部屋の窓から誰かが逃げた」と通報し、発見された「血を吐いた世子の遺体」(1645年4月26日子の刻のこと)。
御前会議が始まった。
ヒョンイクは「感染症と見立て、絹布で身体を拭いて解熱処置をした」と証言。
ギョンスはこれに同意した。内禁衛将(チョン・ソグオン)が「目や鼻、口から血が流れるはずがない。何者かが毒を使った」と反論した。ヒョンイクは「逃げるものを見た。怪我をしている」と発言した。「犯人はそいつだ、追え!」と決まった。
領相は王に「世子の死を清に報せるべきだ。大変なことになる」と意見具申した。王が心臓麻痺で倒れた。ギョンスに鍼を打つ役目が回ってきた。
宮殿内の人々に対する傷の有無の点検が始まった。
ギョンスは「イ・ヒョンイクが毒を入れた」と書いた文章を世子嬪に渡した。
信用してもらうため世子に貰った拡大鏡と毒のついた鍼を見せた。世子嬪は「王に訴える。必要ならお前を呼ぶ」と帰っていった。
「王が心臓麻痺で倒れた」とギョンスに迎えがきた。
ギョンスはヒョンイクと共に宮殿に急いだ。宮殿では侍女のソヨンが王に「世子嬪の田舎からのアワビで汁です」と勧めていた。王は「そんなものは飲めない」と激怒していた。ギョンスが鍼を打つと「見えなくてよく打てるな!今後はそちが鍼を打て!」という。
そこに正装した世子嬪が現れ「ヒョンイクが世子を殺した」と訴えた。ヒョンイクは「濡れ衣だ、謀略だ!」と答えた。ギョンスは王から「誰だ?」と聞かれ「ヒョンイクではない」と答えた。王は怒って世子嬪にソヨンが持ってきたアワビ汁を飲ませ、牢に送った。
別室でソヨンが「どこで見られた?」とヒョンイクを責めているところに王がやっていて「わしがそなたらと一体だと思われる」と注意した。これをギョンスは見ていた(相手は気づかなかった)。
これを知った領相は「世子嬪の濡れ衣を晴らしてやらねば。ソヨンの仕業だ」と動きだした。
牢の世子嬪は会いに来たソクチョルに「領相に会い、盲人が見ていたと言いなさい」と告げた。
ソクチョルが内医院にやってきてギョンスに「何を見たかを教えて」と聞く。「ヒョンイクが殺した。謀ったのは王だ」と教えた。ソクチョルはこれを領相に伝えに走った。ギョンスはこの証拠としてソヨンからヒョンイクに渡された王からの手紙を捜し、見つけた。
領相がソクチョルを伴い「謀ったのは王か?」とギョンスに確認にやってきた。ギョンスは王がヒョンイクに送った手紙を見せたが、文字が違うという。ソクチョルが「左手の文字だ」という。領相が「証拠があれば私兵を集めて反乱が起こせる」という。
ギョンスは鍼で王を麻酔かけ、左で祭事命令を書かせることにした。
ギョンスは王を訪ね、「一刻も早い治療が必要だ」と偽って鍼を打ち、左手で祭事命令文を書かせ、自ら押印した。ここを逃げ出し祭事命令書を領相に渡した。
門衛から「ヒョンイクがソクチョルに鍼治療をしている」と聞き、引き返すとソクチョルがぐったりと寝ていた。ジョンスはヒョンイクと戦い、ソクチョルを救い出し、担いで宮殿に入った。が、誰もいなかった。宮殿に入ると・・・。
領相が儒生を従え王に王位譲渡を迫っていた。
王は「卒中だから命は短い、余が死んだあとはそちの天下だ」という。ふたりの間で「次の王は領相。世子は感染症で死んだ。王の子は処分する。ソクチョルは島流し」とまとまった。王がギョンスに「盲人は盲人らしく生きよ」という。ギョンスは「王が世子殺しをヒョンイクに命じた。そして自分の息子まで殺そうとしている。私が見ました。何故父が息子を殺せるのか!」と述べると王が「首を跳ねろ!」と声を上げたが、発作で倒れた。誰も王の命令に従わなかった。ギョンスは島流しとなった。
権力者によって庶民が知らぬところで真実が曲げられ、事件が解決する有様は、まさに今の社会です。うまい結末にもってきたなと感嘆!
4年後、ギョンスは「王が倒れ名医を捜している」と聞き、「死んだ牛でも生き返せる鍼師だ」と名乗り宮殿に入り、王の頭に鍼を刺して「何が見えるか?」と問い、「病名は感染症」と告げて去った。い
まとめ:
世子は毒殺で亡くなった?という数行の史実を、ミステリアスでリアリティがあり、今の時代に繋がる結末で纏めるという、うまいドラマだと感嘆しました。
暗がりでは、かすかではあるが、見えるが光があるときは見えないという盲の世界。
この世界に合うように闇と光りのコントラストで描く物語。闇の中でギョンスは何を見ているかと真剣に映像を覗き、光が当たるシーンでは頭がくらくらしました。ギョンス目線で映像を見るという、面白い作品だった。ヒョンイクが世子を殺害しようとするが、ギョンスは本当に見えないのかと鍼をギョンスの目に近づけて確認するシーンは怖かったし、痛かった!
リュ・ジュンヨルの見えているのか見えないのか分からない無表情な演技、王が世子殺しが明らかになるにつれ狂っていくユ・ヘジンの演技。いずれもとてもよかった。
演者の熱演に引き込まれるシーンが多かった。
ヒョンイクとギョンスが居る中で、世子嬪が王に殺人犯を告げるシーン。息子ソクチョルがギョンスに「父を殺した犯人は誰か」と聞き出すシーン、領相が王に退位を迫り、ふたりで決着点を見出すシーン、よく描けたシナリオだった。
時代劇でありながら、時代を感じさせない時代劇だった。韓国映画は凄いと思った
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