「グラディエーターⅡ」を観た後で、この作品を楽しむには前作が必要と観た作品です。
本作、巨匠リドリー・スコットが、古代ローマを舞台に復讐に燃える剣闘士の壮絶な闘いを描き、第73回アカデミー賞で作品賞・主演男優賞など5部門に輝いた歴史スペクタクルで、次作が公開されてもこちらの方が上という意見も多い。
「グラディエーター 」と「グラディエーターⅡ」はプロットがよく似ている。どちらが優れているかは分からないが、「グラディエーターⅡ」を観て本作を観ると、本作の面白さ、すばらしさが浮き上がります。
「グラディエーターⅡ」で主人公となるルシアスの生い立ち、ルシアスの母ルッシラの生き様、ルッシラとマキシマス将軍の関係など次作に繋がるキャラクターがとても面白く見えてきます。
監督:リドリー・スコット、原案:デビッド・フランゾーニ、脚本:デビッド・フランゾーニ ジョン・ローガン ウィリアム・ニコルソン、撮影:ジョン・マシソン、編集:ピエトロ・スカリア、音楽:ハンス・ジマー リサ・ジェラルド。
出演者:ラッセル・クロウ、ホアキン・フェニックス、コニー・ニールセン、オリバー・リード、リチャード・ハリス、等。
物語は、
古代ローマの皇帝マルク・アウレリウス(リチャード・ハリス)は、信頼を寄せる将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)に次期皇帝の座を譲ろうと考えていた。それを知った野心家の王子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は父を殺して玉座を奪い、マキシマスに死刑を宣告。マキシマスは故郷へ逃れるが、コモドゥスの手下に妻子を殺されてしまう。絶望の中、奴隷に身を落としたマキシマスはやがて剣闘士として名を上げ、闘技場で死闘を繰り返しながらコモドゥスへの復讐の機会を狙う。(映画COMより)
あらすじ&感想:
冒頭、AC180年代、ゲルマニアの戦いから物語が始まる。
ローマ軍を率いるのはマキシマス将軍。攻撃を前にして戦士を激励して回る。とても戦士を大切し戦士から信頼された指揮官。交渉が決裂しいよいよ攻撃開始。砂で手を洗い、「力と名誉」と唱え指揮を鼓舞し、弓のカタパルト攻撃で戦いの幕が切って落とされた。騎馬隊の突進に槍戦士が続く。見事な絵巻物風描写です。次作は上陸作戦からはじまる。
この戦闘をマルクス・アウレリウス・アントニヌス皇帝が観戦中。帝は余命を知り、次女ルッシラ(コニー・ニールセン)、長男のコモデュスが呼び寄せていた。
戦闘は3週間で、ローマ軍勝利で決着。
アントニヌス帝はマキシム将軍に「戦争に開け暮れる日々。間もなく死ぬ。ローマの栄光のために尽くしたがこのままでは名を残せない。元老院による民による政治をしたい。軌道に乗るまでローマを君に譲りたい。コモデュスは王には不向きだ。夜までに返事せよ」と言い渡した。マキシマスは「故郷に残している。故郷に戻りたい」と申し出た。
ルッシラには「これからは元老院の時代、お前が必要になる」と伝えた。コモドゥスには「実権はマキシマスに譲る」と示した。
コモドゥスはこれを聞き、その場で帝の首を閉め、マキシマスと家族の殺害を命じた。
マキシマスはその動きを探知し直ちに武装し脱出を図るが、親衛隊に捕まった。彼はこれを斬り、故郷スペインのティヒロに走った。故郷に辿りつくも家は焼かれ、妻子は殺されていた。絶望で倒れているところを奴隷商人に拾われた。
ここまでのまとめ。
古代ローマ帝国16世アウレリウス帝時代を背景に、史実と仮想を組み合わせた“王位継承物語”
この時代を境に古代ローマ帝国は衰退の道をたどる。アウレリウス帝はゲルマニア戦後、死亡。そして次女・ルッシラがいたことも史実。しかし、マキシマスはこの時代に奴隷から拳闘士になる史実に合わせた架空人物。次作にもこれが引き継がれる!
ルッシラは父親の政治を見て女性でありながら政治手腕に優れていた。政略結婚したが夫を亡くしていた。
マキシマスは剣闘興行師に買い取られ、地方周りの人気剣闘士になった。
奴隷商人から剣闘興行師のプロシキモ(オリバー・リード)の手に渡り、「剣で刺し、喝采を貰え!人間は必ず死を迎える、どう死ぬかだ!」と剣闘士として鍛錬された。レビュー戦は小さな円形競技場で動物の面を被った男との決闘だった。手を砂で洗い相手に挑んだ。圧倒的な強さを発揮し“スペイン”名称が与えられた。
コモドゥスによる剣闘競技場の建設。
凱旋したコモドゥスは元老院と意見が合わず、剣闘競技で市民の心を掴むため剣闘競技場(コロシアム)の建設に没頭した。ルッシラは政治についてコモドゥスの相談役だったが父親の遺言とは異なる方向に走るコモドゥスから心が離れ、コモドゥスからキスを求められても拒否し、彼が8歳のルシアス(スペンサー・トリート・クラーク)に近づくことに恐怖を感じるようになった。
コロシアムが出来上がると近衛兵の監視下、160日間も競技が続く有様に元老院は呆れていた。
マキシマス、コモドゥスに会うためコロシアム出場を決意。
プロシキモがコロシアムの出来たことを聞き、マキシマスに「何か望みがあるか?」と聞くと「殺せと言うから斬っている」と興味を示さなかった。「自分もかって剣闘士で皇帝の前で戦った。コモドゥスを見せてやる」と言えば「皇帝の前で戦いたい」とローマ行きを決意した。プロシキモは「観衆を味方にすれば必ず勝てる」と甲冑を譲った。
「グラディエーターⅡ」では興行師が大きな役割りを持ち、皇帝や元老院に近づき皇帝を目指すマクリヌスだった。
マキシマスたちはローマに入り強大なコロシアムを目にした。
マキシマス、コロシアムレビューは第2次ポエム争終結を再現する戦いだった。
市民が喜ぶとコモドゥスが考えた出し物だった。試合前、剣闘士たちが収容されている檻をルシアスが見物した。ルシアスは「スペインを応援する」と声をかけた。マキシマスはルシアスが自分の子だとは気づかず、歳を聞き自分の殺された息子を想い出していた。こういうさりげないシーンも「グラディエーターⅡ」の伏線として印象に残る。
ローマ軍が戦車で入場。大歓声だ。次いでマキシマスたち(カルタゴ兵)が入場。マキシマスは砂で手を洗った。戦が始った。迫力満点の戦車戦が展開される。マキシマス軍の勝利でコモドゥスの顔色を失い「やつは何者か?と聞くと側近が「スペイン」と答えた。コモドゥスは「会う!」と言い出す。
この戦いは「グラディエーターⅡ」編の「コロシアムでの海戦シーン」」に相当するが、「いずれ優れているか」と問われれば、こちらが“戦として”は面白いと思う。
コモドゥスは近衛兵に守られ競技場に現れ、マキシマスに「見事な腕前、顔を見せろ!」迫った。マキシマスが「グラディエーター」と背を向けて面を取り、「妻と子を殺されたアウレリウス帝配下のマキシマス将軍だ」と返事した。突然、スタンドから「殺すな!殺すな!」コールが起こった。コモドゥスは怒りに震えて引き上げた。
宮殿にもどったコモドゥスは「やつは生きていた」とルッシラに「どんな気持ちだ」と聞く。ルッシラは「今も気持は変わらない」と答えた。コモドゥスは「全軍に通報、やつを倒せ!」と命令した。
ルッシラがマキシマスに救助を求めてきた。
マキシマスたち剣闘士のいる檻に、ルッシラが訪ねてきて「コモドゥスは父の言葉を憶えていない。息子ルシアスに帝位を継がせたいが、息子がいつ殺されるかと怯えている。信頼する人がいる、会って欲しい」と懇願した。マキシマスは「分かった、二度と来るな!」と追い返した。
コモドゥスは伝説の最強剣闘士ティグリスとマキシムを闘わせることにした。
コモドゥスはスタンドにパンを投げ入れ民の歓心を引き寄せて、ティグリス(スヴェン=オーレ・トールセン)には虎の護衛を付けた。しかし、マキシムスが入場すると大声援が起こった。
マキシムはティグリスと虎を相手に戦った。アイデアが面白い!
虎を斬り、ダイグリスを倒した。スタンドから「殺せ!」のコール。マキシマスはティグリスを斬らなかった。スタンドから「マキシマスの慈悲を称えよ!」のコールが起きた。
そこにコモドゥスが近衛兵に囲まれて登場し「どうしたらよいか?」と聞く。マキシマスは「あとひとりだ」と答えた。コモドゥスはマキシマスの妻がレイプされる状況を語った。
マキシマスは「最期を待っていろ!」とコモドゥスの挑発に乗らなかった。一斉に「マキシマス!マキシマス!」コールが起こった。
コモドゥスは「マキシマスを殺せば人民に非難される。殉教者にさせてはならない」と漏らすと、元老院のファルコ議員(デヴィッド・スコフィールド)が「海蛇作戦、相手の出方を待って殺す」と提案した。
マキシマスはクーデターを計画するも失敗した。
これも「グラディエーターⅡ」編に登場するエピソードだ。将軍であったころの従者キケロが訪ねてきた。キケロに「軍は俺に従うか?」と聞くと「いつでも」と答えが返ってきた。元老院の長老グラックス議員(デレク・ジャコビ)が訪ねてきた。マキシマスは「俺を買い取って自由にしてくれ!2日後には戻る」と提案した。グラックスは「それでは軍政権となる」と反対。「クーデターが成功したら権力は人民に戻す、アウレリウス帝も同じ考えだった」と話し、グラックスの協力を取り付けた。そして、マキシマスは「必ず帰ってくる」とグラックスに自分を売るようプロシキモを説得した。
グラックスの行動不手際からクーデター計画がコモドゥスにバレた。
コモドゥスはルッシラにマキシマスを毒蛇で殺すことを相談し、愛を求めた。ルッシラは応じるふりをして、部屋を出てマキシマスの檻に急いだ。
ルッシラはマキシマスに「計画はバレた、逃げて!キケロが準備している」と知らせ、「愛している」と告白し、ふたりはキスし、ルッシラは帰っていった。
一方、コモドゥスは剣術を練習するルシアスを見て、ルッシラへの面当てとして、ルシアスにルッシラの不倫の子であることを明かした。この会話からルシアスはマキシマスとルッシラの間に出来た子であることが分かる。しかしルシアスとマキシマスはこの事実を知らない。次作を予想したようなうまいエピソードだと思う。
近衛兵はマキシマス逮捕に向かうが、プロシキモの機転で檻から脱出した。が、近衛兵に捕まり、牢に入れられ両手を縛られ吊るされた。
コモドゥスはコロシアムの民衆の前でマキシマスと決闘で決着をつけると決心。
コモドゥスが勝てるわけがない!そこで試合前に牢に出向き吊るされたマキシマスの腹を刺し、鎧を着けさせた。
決闘は近衛兵が囲む円陣の中で始った。マキシマスはふらつきながらコモドゥスに挑んだ。決着がつかない。マキシマスは剣を捨てナイフで戦うことにした。コモドゥスも剣を捨てざるを得ない。ナイフでふたりは闘い、マキシマスがコモドゥスの首を斬った。
ルシアスは震えながら試合を見ていた。スタンドの「マキシマス!」の大歓声。
マキシマスは近衛隊長クインドゥース(トーマス・アラナ)に「グラックスに復権を!」と伝え息絶えた。マキシマスはルッシラに見守られコロシアムから退場した。
20年後の「グラディエーターⅡ」で、ルシアスにこの記憶はなかった。これが解せない?
まとめ:
この作品と「グラディエーターⅡ」はアウレリウス家一族の物語となっている。2作でひとつの作品。この作品を観ていないならぜひ観て「グラディエーターⅡ」に臨むのがいいと思います。逆でも結構楽しめます!
ドリー・スコットはこの作品でアカデミー賞の多くの賞を取りながら、監督賞は取れなかった。だから「グラディエーターⅡ」を撮ったと思いましたが(笑)、そうではなかった。当初から次作を計画していたと思えるほどに、次作への伏線がよく出来ている。監督はこの作品が好きで、好きで仕方なかったのではないかと思っています。
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