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「新感染ファイナル・エクスプレス」(2017)

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韓国映画で「感染した人間を凶暴化させるという謎のウイルスがソウル発プサン行きの高速鉄道KTX101の車両内で拡散。乗客たちは生き残りをかけて決死のサバイバルを繰り広げ、果たして彼らは安全な終着駅にたどり着くことができるのか」という物語です。韓国映画ゾンビ映画を観ない私ですが、最近の北朝鮮の動向から、韓国の危機管理体制のようなものが見えたらとこの作品を選びました。
2016カンヌ国際映画祭特別参加作品で、韓国では封切り後わずか19日間に1000万人が観たという作品です。

感想は、「すばらしい作品だ。が、ゾンビ映画ではない。危機にあなたはどう対応するか」というおはなしです。

ソウルからプサンに安全を求めて疾走するということになると、突然に北朝鮮軍の進攻を許しプサンに追い詰められた朝鮮戦争1950.06.25~)を思い出します。同じように再び北朝鮮が韓国に攻め込むかもしれません。難民が押し寄せるかもしれません。

KTX101が途中停車する駅は戦争時の激戦地、プサンは生き延びた韓国軍が反撃を開始した橋頭保で、ラストシーンがこれに該当、これらは韓国の人には忘れられない記憶でしょう。

本作は、この記憶をなぞるようにKTX101が走り、同胞人同士の戦の苦々しさ、誰かのために戦う隣人愛・家族愛、国家とは何かと戦争で得た教訓が蘇るという展開で、これらは危機管理における普遍的な教訓です。このことが多くの國で絶賛されている理由だと思います。

韓国の英名タイトルはTrain to Busanです。「新感染ファイナル・エクスプレス」はゾンビ映画のイメージ。チラシも「感染爆発」で作品のメッセージを伝えていない、残念です!!

 
監督はヨン・サンホ、アニメで活躍された監督のようで実写長編映画では本作がレビュー作になります。アニメ作家らしく、本作でもアニメ的な映像が多々見られます。キャストは主役にコン・ユ、チョン・ユミ、マ・ドンソク、キム・ウイソンらが共演です。子役のキム・スアンが頑張っています。
 

物語は、たったひとりのゾンビが瞬く間に急増殖し、一車両内での危機が列車全体に広がり、当初エゴ丸出しで自分を守ることに必死だった乗客が次第に協力し合うようになり、最期には命を投げ出して大切な人を守ろうとするストーリーが次々とうまくつながり最後まで疾走感があり、感動的で泣けるというエンタテインメント映画です?。

泣けるはずなんですが、作り過ぎていて、泣けない。しかしラストで大泣です。宣伝が「泣ける、泣ける」のオンパレードですから、このことを知っていて泣けなかったかもしれません。(#^.^#)

 
ゾンビの描き方は内臓が飛び出すとか、頭が割れるというロテスクな描写はほとんどなく、異様な体の動きや白目、噛まれた歯形と多少の血まみれ程度で描かれていて、「トーキョーグール」(2017)の蒼井優さんの演技を観ているので、全く驚きはありませんでした。(笑)ゾンビの弱点が描かれ、これを利用して乗客がうまく退避行動するというストーリーが面白い。ゾンビを演じるキャスト・エキストラのみなさんの演技がうまかったです。(#^.^#)

ねたばれ(感想):

「バイオタンク」が漏れ伝染病が発生したらしい、消毒車が駆けつけている。侵入を拒否されたトラックがどこからか飛び出してきた鹿をはねる。下車して「死」を確認し行き去るが、その後なぜか鹿が狂気の目で起き上がるというシーンから始まります。不気味です!

ソグ(コン・ユ)は証券会社で儲けるためには手段を選ばないという辣腕ファンドマネージャーで、妻とは別居中。幼い娘スアン(キム・スアン)と母親の3人暮らし。仕事にかまけてスアンの面倒は母親任せで、スアンの学芸会にも欠席。スアンは父親が来ないために歌を途中で止めてしまう。そのビデオをソグが観ていると、唄っている歌は「アロハオエ」です。これがラストで明かされ、大泣きに繋がります。スアンが母親に会いたがり、ソグにその気はないが、母親の意見で、プサンで暮らす妻に会うためにソウル発プサン行きの高速列車KTX101に乗ることになる。

KTX101はソウルとプサン間の400Kmを2時間40分で走る20両編成の高速列車です。

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ソウル駅

駅までの車で、スアンは鳥の羽が降ってくることに気付く。消防車が走り回っている。「朝っぱらから」とソグ。ソグ親子は3号車に座る。KTX101は定刻0530ソウル駅を発車。スアンは発車直前に挙動不審な女が12号車に飛び乗るのを、またホームで駅員が襲われるのを目にする。

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この列車には出産間近の若い妻ソンギョン(チョン・ユミ)とその夫サンファ(マ・ドンソク)が4号車に、野球部の高校生ヨングク(チェ・ウシク)と応援団長ジニ(アン・ソヒ)が11号車に乗車している。

電車が走り出すと乗客から3号車トイレに「変なやつがいる」と乗務員に訴えがあり、調べると浮浪者風の男で「みんな死んだ」と言う。イメージ 5 

トイレに立ったスアンがこの状況を見て次々とトイレを探して6号車に移動。なんとも言えない不気味な雰囲気。挙動不審な女(ゾンビ)が女性乗務員に「どうしたの」と問われ突然襲い掛かり喰いつく。このシーンにはギョとさせられる。そして野球部員が乗っている11号車に侵入し襲い始める。ゾンビに追われ客が後方車両へ移動、

パニックが発生!

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ソグはスアンを探し出し3号車に連れ戻す。そこに妊娠中のソンギョンを労わりながらザンファが逃げて込んでくる。ソグが、ゾンビは自力ではドアーを開けられず目視で捉えた人を反射的に攻撃する特性を見つけ、新聞紙でドアを塞ぎ3号車への侵入を食い止める。ザンファがソグに「俺たちが3号車に入る前にドアーを閉めようとした」と因縁を吹っ掛ける。(笑)

ここでは、車内のすざましいパニックの有様、乗客が自分勝手に行動するありさまが描かれている。乗客が次々にゾンビ化し襲い掛かるところが凄い

 

チョナン駅

列車は徐行でチョナン駅ホームに進入。しかし、ホームではゾンビに襲われた大勢の人々が列車めがけて詰めかける。町では車が衝突炎上という大混乱状況。車内のTVは「ソウルは暴動化している。国家非常事態宣言を発動。幸い事態は沈静化に向かっている。安全のため自宅で退避してください。政府を信じてください。安全は確保されている」と報じている。ネットには各地で大量発生した感染者が市民を襲う動画がアップされている。北朝鮮ミサイル射撃時のJアラートと同じです列車は停止せずそのままテジョンに向けて走る。

スアンが老婆に席を譲ろうとしますがソグが「譲らんでよい、自分のことだけ考えておけ!」と注意する。これはちょっとね?スアンが譲って「チャムチャム菓子」をいただくことになる。

テジョン駅

車内放送で「この列車はテジョン駅止まりとなる。軍が車内を鎮圧しますので、到着後全員下車してください」のアナウンス。「プサンに行くにはどうするんだ」と乗務員に喰ってかかるバス会社常務の男ヨンソク(キム・ウイソン)。松山千春さんのように機内で唄って皆を落ち着かせるぐらいの配慮が必要。この恰幅のいい男といったら・・。(笑)

ソグは知り合いのミン大尉にテジョン駅に降りたときの救助を携帯電話で依頼する。大尉は「東口におりろ」と指示する。コネの社会、このあたりは韓国らしい。浮浪者がこれを盗み聴きし「みんな死ぬ」と嘯く。この男は何者か。投資失敗の恨みか(笑)

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乗客たちは無人のホームに降り出口に急ぐがソグ親子は東口に向かう。ところが駅に配置されていた治安部隊の兵士はゾンビ化していて襲い掛かってくる。もう大混乱です。

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急いでKTX101に戻るが、スアンとソンギョンが13号車のトイレ、ジニは15号車に、ソグ・サンファ・ヨングクの3人が9号車の乗ることになり離ればなれになってしまう。ここから三人が協力して、ゾンビは暗くなると動きが鈍くなり音に集まるという習性を知り、トンネルで車内が暗くなった時間を利用して、携帯音源をうまく利用してゾンビをこちらに引き付け、ゾンビと戦いながら13号車トイレに駆けつけスアンとソンギョンを救出する。この際、11号車のゾンビ化した野球部員に襲われ「どう対処するか」と同じ部員のヨングスが悩むというシーンも。

次に、荷物棚を匍匐で進みジニのいる15号車に向かう。サンファが、ゾンビの攻撃を14号と15車の連結部で食い止めるが、腕をゾンビに喰いつかれる。サンファが犠牲となりゾンビの侵入を阻止するが、ソンギョンと悲しい別とになる。涙、涙!

ここではゾンビの弱点に乗じ3人が協力して戦うアクションを楽しみ、サンファの勇気ある行動に涙です。

 

しかし、15号へはバス会社常務のヨンソクに扇動された乗客たちから感染の疑いを掛けられ入れてもらえない。このヨンソクという男は自分が助かることだけ考えるエゴ男なんです。よくある味方のなかにいる敵、エゴが大きな敵になる。

他人に親切な老婆がドアを開けたことで15号車に入ることになるが、危険だということで16号車に移動させられる。ここでは、避難してきた者が同胞でありながら汚染の恐れありとしてドアを開けてもらえないエゴの恐怖が描かれる。

KTX101プサンを目指して走る・・

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東テグ駅

多くの列車が駅校内で停車している。KTX101も前進困難。機関手が「この列車はここで停止する。自分はここに残る」とアナウンス。観客は一斉に他の列車を求めて下車。KTX101にも電車がぶつかってくる。ジニが逃げ遅れ車両のなかでゾンビに襲われ、これを見たヨングクは逃げるのを止めジニを寄り添い噛まれてしまう。若いふたりの運命に涙です。

逃げる乗客、そこをゾンビが追ってくる。妊婦のソンギョンが逃げおくれると浮浪者の男がゾンビの餌食になり彼女を逃がす。

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ソグはスアン、ソンギョンと一緒になって走り、プサン方向に動く列車を探す。一両の機関車を見つけ飛び乗るが、多くのゾンビが群がり連なっている。これを振り落とし機関室に入るとバス会社常務のヨンソクが運転している。ヨンソクは運転手をゾンビの餌にしてこの機関車を手にしていたがすでにゾンビ化していて、その彼がイメージ 10

ソグに挑みかかる。ここでふたりの機関車上でのアクションが始まる。ソグはヨンソクを機関車から突き落とすが噛みつかれ傷を負う。自分のゾンビ化が現れる前に、ソンギョンにブレーキの掛け方を教えて身を投げる。泣き叫ぶスアン。ソグの自己犠牲、娘への愛に涙です。

プサン

機関車は、兵士の守る阻止陣地の前面で停車。川にはゾンビの死体が一杯浮いている。兵士たちがここでゾンビを阻止し自滅したのです。スアンとソンギョンは下車し、暗いトンネルに入り徒歩でプサンを目指す。ところがトンネルの向こうには韓国の兵士たちが第2線陣地を占領しており、狙撃兵がスコープで彼女らを捉え機関銃が向ける。上官に報告すると「感染を確認」と指示がくる。「確認できず」の報告に「射殺しろ」と指示がくる。そのとき歌が聞こえ、「接近中」と報告。兵士たちが彼女たちのもとに走る。スアンが母に聞かせようと練習した歌「アロハオエ」だったのです。

兵士たちは、すでに第1線陣地の兵士が感染して全滅しているにも関わらず身を犠牲にする覚悟で、確認ができるのを待っていたのだった。

スアンが母を思って唄うことには勿論、何としても国民の命を救うという兵士たちの想いに涙です。
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