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「Vision ビジョン」(2018)

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是枝監督がパルムドール賞を獲得した直後に公開される河瀬直美監督作品、観ないわけにはまいりません。() 公開初日初回に駆けつけました。結構な入りでした。根強いフアンの方たちが監督を支えているように感じます。
 
この作品のテーマは、制作動機に、色濃く表れています。監督は20175月。70カンヌ国際映画祭の場で、著名プロデューサーマリアン・スロット氏の紹介により国際舞台で活躍するジュリエット・ビノシュに出会い、ふたりが意気投合したことから本作プログラムが動き出したことです。
監督作品に心寄せるビノシュにささげるテーマとしては、監督作品の原点となっている自然とこれにリンクする人の生きる生命力でしょう。この作品には最近の「あん」(15)や「光」(17)と違って、「萌の朱雀」(1997)、「殯の森」(2007)、「2つ目の窓」(2014)への回帰作品です。
 
Vision ビジョン」とは、「人類のあらゆる精神的な苦痛を取りさることができる薬草」といいますが、杉の胞子をデホルメし、厳しい試練を乗り越えて命を繋ぐタネ。森林が生き続ける謎が説かれ、それに繋がる人の回帰・再生を描いています。実は監督自身の“Vision”を語っているのではと思えます。

物語はミステリアスで、ファンタジーで、登場人物が、森にはいり、何を求めているのか、それぞれがどう繋がってくるのか、そしてラストで明かされるVisionの種明しで、森が、人が生き返るという結末がみごとです。 ( ^)o(^ )

キャストは主演にジュリエット・ビノシュ、長瀬正敏。共演に夏木マリ、岩田剛典、美波、森山未来田中泯が参加です。
 
あらすじ、
すこし長くなりますが、作品HPから引用します。
 
木々が青々と茂る夏。紀行文を執筆しているフランスの女性エッセイスト・ジャンヌ(ジュリエット・ビノシュ)は、奈良・吉野にある山深い神秘的な森に通訳兼アシスタントの花(美波)とやってきた。

その森で、猟犬のコウと静かに暮らす智(永瀬正敏)は、木々を切り、森の自然を守っている山守だ。
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智はある日、鋭い感覚を持つ老婆、自称1000()、アキ(夏木マリ)から、明日は森の守り神である春日神社へお参りに行くように、と告げられる。
 
翌朝、ジャンヌと花は春日神社で智と出会い、花は「この村に昔から伝わる薬狩りの話を聞いて、やってきました。“ビジョン”と呼ばれる薬草を探しています」と話す。ジャンヌは「人類のあらゆる精神的な苦痛を取り去ることができる」と説明するが、智は「聞いたことがない」と言う。

ジャンヌは智の家の離れに泊めてもらえることになり、ほどなく出会ったアキからは「あんただったんだね」と言われる。
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アキは、この森に誰かがやってくることを前もって知っていたのだ。さらに「最近、森がおかしい。1000年に1度の時が迫っている」と言う。アキはビジョンについても、何か知っているという口ぶりだった。
 
数日過ごすうちに言葉や文化の壁を越えて、心を通わせるジャンヌと智。身も心も距離を近づける二人の前から、突如としてアキは姿を消した。ほどなくして、ジャンヌも仕事のために帰国することに。別れ際、智に言う。「まもなく、“ビジョン”は現れる」。

季節は流れ、山が茜色に染まる秋。ジャンヌは智の家に戻ってくると、智は、山で出会った謎の青年・鈴(岩田剛典)と仲睦まじく生活をしていた。
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ジャンヌは、智や鈴に昔、知っていた男の姿を重ねるようになる。猟師だった岳(森山未來)だ。その岳と、老猟師・源(田中泯)には悲しい過去があった……。そんな中、“ビジョン”は生まれようとしていた。
 
ジャンヌがこの地を訪れた本当の理由は何か? 山とともに生きる智が見た未来(ビジョン)とは?
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冒頭、20年前のこと。老猟師・源(田中泯)が、猟犬コウが追う獲物を射撃し、悲鳴を上げます。この冒頭シーンが最後に明かされるミステリーストーリーとなっています。予告編にないシーンで、驚きました!

次に通訳の花が吉野にやってくる車中でジャンヌに漏らす、紀行文を読んで“号泣した”という感想。こういう細かいエピソードが積み上げられて物語が進みます。
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山守りの智・長瀬さん、防塵鏡をつけてチェンソーで伐採する姿は、すっかり木こり姿になっています。
智がジャンヌに会って、当初花の通訳を介して会話をしますが、すぐに要部は英語で、あとは雰囲気で、次第に花なしで会話ができるようになります。監督作品は、今後、国際的な広がりを見せてくると思われ、ここが、監督の描きたいことではないのかと思います。

老婆あき・夏木さん、森の仙人という感じで、不思議な魔力が感じられるすごい演技力でした。
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ジャンヌが「あなたは目が見えない!」というと「目は心についている」と応え、これに笑みを漏らすジャンヌ。夏木さんの、ジャンヌ:ジュリエット・ビノシュと対峙しても存在感のある演技でした。( ^)o(^ )  この作品で期待されたのはもうひとつ、彼女のダンス力です!
 
ジャンヌ:ジュリエット・ビノシュ最初フランス人と感じますが、智と会って、ふたりが森に対し同じ感覚をもっていると知ってからは、しっかり日本のなかに溶け込んで、とても柔らかな演技で、全く外国人という感覚を持たなかったです。すごいことだと思います。
 
季節が濃い緑の夏から秋の紅葉に。奈良吉野の森の美しさが映し出されます。これもこの物語では大切なシーンで、生命感に溢れています。ジャンヌが口にする“森が匂う”という言葉がいい。“百名山”をやると必ずこのことに気づきます。
 
1000年に一度やってくる“ビジョン”、ここではいろいろな表現がなされとても哲学的で面白いです。

再訪したジャンヌが鈴に「やがて現れるビジョンが、ペイン(苦しみ)を経て、奇跡になる」という。
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「千年に一度現れるビジョンが1000度の熱に晒され強くなり、その苦しみが人の苦しみを消す」と説明します。ここに、生命が「永遠に繋がれていく謎」が隠されています。

やがて森は燃え、森の力で鎮火し、再生されていきます。そして、ジャンヌがここにやってきたことで、森が再生される謎が一気に解き明かされて、ジャンヌ、智、鈴の未来が見えてきます。
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監督にとっては、奈良にジュリエット・ビノシュがやってきたことで、広く世界を見据えた作品へと進化していくのでしょうか。監督の「Visionです。( ^)o(^ )
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