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「新感染半島 ファイナル・ステージ」(2020)韓国映画パワー全開のアクションドラマ、面白い! 

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大ヒットした韓国のゾンビパニックアクション「新感染ファイナル・エクスプレス」の4年後を描く続編。

 人間を凶暴化させる謎のウイルスが半島を襲ってから4年後。香港に逃げ延び無為に過ごしていた元陸軍大尉の男が、大金が積まれたトラックを回収するという任務で半島に帰還。半島は廃墟の街となり、市民はゾンビ化、町は民兵集団に牛耳られ、そのなかに密かに普通の家族が暮らしていた。男は家族の協力を得て、ゾンビと民兵集団と戦い、半島から脱出を図るというアクション主体の物語です。

前作が面白かっただけに、前作では描かれないゾンビ化が進んだ4年後の世界はどんな世界か?ゾンビとの戦闘はいかなる戦いか?怖いのはゾンビか民兵集団化?とこの作品を楽しみにしていました。

アクションシーン主体の作品ですが、観たい問はしっかり描かれており、さらにこの絶望的な世界をどう生きるか。家族や人との絆がしっかり描かれており、テーマ性を持ったゾンビ作品でした。この絆には勇気が貰えます!

原題は“Peninsula”。韓国だから描ける世界。この作品を公開しようとする韓国映画の意気込みの凄さを感じる、リアルなゾンビアクション作品でした。コロナ禍のなかで公開されたことに意義があるように思います。

監督は前作から引き続きヨン・サンホ、脚本:パク・ジュソク ヨン・サンホ、撮影:イ・ヒョンドク、美術:イ・モグォン、編集:ヤン・ジンモ、音楽:モグ。

出演者:カン・ドンウォンイ・ジョンヒョン、クォン・ヘヒョ、キム・ミンジェ、ク・ギョファン、キム・ドゥユン、イ・レ、イ・イェオン、他。


映画『新感染半島 ファイナル・ステージ』予告編

あらすじ(ねたばれ):

物語は4年前の半島脱出の状況から始まる。半島の最後の拠点釜山ももはや危ないという状況下。政府・軍隊は崩壊し、陸軍大尉のジョンソク(カン・ドンウォン)は“戦闘服装”で姉と姉の夫チョルミン(キム・ドゥユン)、娘のドンファンと車で仁川港に避難し海外に脱出しようとしていた。途中で「子供だけでいいので乗せて欲しい」という母親の願いを無視して急いだ!正規軍の将校であったが故、この記憶が彼の心に大きな影響を与えることになる。

乗船後、ジョンソクは行先が日本と聞かされていたが香港に変更となったことを確認に元の上官(ボス)を訪ねていたとき、姉と娘がいた船室で乗客のゾンビ化が進み、何事をも成し得ずふたりを亡くしてしまった。この記憶も彼の心には大きな負担となって行った。船内ゾンビの恐怖は前作のおさらいのようなものだったが、これでも恐ろしかった!

香港での生活はボスの元で裏家業、無為に過ごしていた。そこにボスから「2000万ドルが搭載されたトラックを半島に取に行け!報酬はその半分!お前の生活が楽になる」と持ち掛けられ、義兄のチョルミンが行きたいというので兄弟で。さらに男女2名(A,B)の組員が加えられ、4人のチームでインチョン港付近にゴムボートで、夜間上陸した。上陸前に「ゾンビは夜間行動しない、光と音に反応する。3日間で任務を達成せよ!」と示され、連絡用にと2セットの衛星携帯電話を渡された。

上陸して見る町の光景は死の世界だった。みごとな映像だった! 路面に「神は我々を見捨てた!」と落書きがあった。暗視ゴーグルで前進し、動けるミニバン車を見つける。

Bがミニバンを運転。トラックらしきものを見つけるが間違い。道路をぶっ飛ばして捜索。ジョンソクはビルの窓に張り付いているゾンビの群れを見た。Bがトラックを発見、ジョンソクとチョルミンが確認に走る。トラックのコンテナー中にドル札があることを確認した。Aがゾンビ化している運転手に「こいつが最後の連絡したやつか?」と突くと、こいつが死んでなかった。襲い掛かる。ジョンソクが拳銃で撃つとこの発射音で、周りのゾンビが覚醒!襲ってきた。このシーンにびっくりさせられます!

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ライトバンとトラックの2組に分かれて、全速力でいたるところに捨てられた車を避けながら逃走。進路前面に民兵集団831部隊が発射した発射照明弾が落下し、そこにゾンビが群がってくる。ライトバンが横転しトラックも停車した。そこにゾンビが攻撃してきた。ジョンソクが乱射して阻止するが弾が尽きた!素手で格闘となったところに、少女が操縦するミニバンが現れ、これによって救出され、少女の隠れ屋に連れていかれた。少女の名はシュニ(イ・レ)とその妹ユジン(イ・イェオン)だった。シュニのドライビングテクニックが凄い。車を回転、スリップさせるなどと自由に操りゾンビを掃き捨てるように操縦する。しかし、トンネル内で困った!するとユジンがリモコンカーを発光させて走らせ、これにゾンビを集め、その間隙を縫って隠れ屋に急いだ。このシーンは楽しめます!(笑)

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隠れ屋にはこの姉妹のほかに、お爺ちゃんと呼ばれるキム老人(クォン・ヘヒョ)母親のミンジョン(イ・ジョンヒョン)の4人暮らし。キムとミンジョンは民兵集団631部隊の元兵士。キムは師団長と呼ばれているからかなりの高官だったのでしょう。民兵集団が常軌を逸した行動に走るようになりこれを退団してここに隠れ住んでいた。通信機や銃器といった兵器を隠し持っている。

ジョンソクが来たことにキムとミンジョンは戸惑った。キムが国連軍と連絡が取れており「国連の救援を待つが、子供と一緒にいたい」と言い、ミンジョンは「子供たちのために!」とジョンソクと共に半島を脱出することを考え始める。

ジョンソクは4年前半島を去る時の記憶「子供だけでも乗せて欲しい」と懇願したのがミンジョンであったのかと、一緒に半島を脱出することを説いた。

トラックの中にいた義兄のチョルミンは、派手な電飾宣伝カー“シティーナイトクラブ”でゾンビを誘導しながら近づいてきた(笑) 631部隊第3小隊長ファン軍曹(ク・ギョファン)に捕えられ、トラックと共に631部隊アジトに連れて来られ、背中に61という番号を付けられ格納庫に囚人として収容された。そこには同じような正常な市民が捕らわれていた。チーム員のA、Bはゾンビに襲われて絶命。

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チョルミンたち囚人はアジトの競技場に引き出され、ゾンビと格闘させられ(ゾンビゲーム)、民兵たちがこれを見て歓声を上げる。かってローマ時代のコロシアムだ!指導者たちは反抗する者を処刑し、権力を弄び腐れきっていた!閉ざされた社会はこうなる!

631部隊長はソ大尉(ク・ギョファン)。ハワイに住むのが夢で、今では酒飲んで死にたいと思っている男。アジトに戻ったファン軍曹がトラックの中のウイスキーを飲みながら戦利品を自慢し、美味いもの食わせろ!と2等兵の伝令に要求。伝令がソ大尉に報告に行くと、戦利品トラックを検査するという。トラックの中にドル札と衛星携帯電話を発見。ソ大尉がこの携帯電話で待機する船と連絡を取った。彼はハワイに脱出しようとするが、問題がファン軍曹。軍曹を罠に掛け、その隙に出発することにした。(笑)

ミンジョンが「子供たちを助けたい!」と亡命を決意。夜間、4人はミニバンで出発。子供とお爺ちゃんに、万一失敗した場合は隠し部屋に戻れと子供たちを諭し、ジョンソクとミンジョンが秘密路を伝ってトラック捜索に出掛けた。トラックを発見、ジョンソクが何としても連れて帰りたいと義兄チョルミンの救出に向かった。

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チョルミンはゾンビゲームに出場していた。ここに殴り込みをかけたジョンソクの軽機による闘いは凄まじかった!弾が切れたとき、チョルミンが自分の身体を犠牲にして軽機をジョンソクに渡し、撃たれて絶命した。ジョンソクは泣いた!ジョンソクの奮戦で、多くの囚人たちを開放することになった。

トラックで待つミンジョンのところにソ大尉と伝令が現れた。ミンジョンが拳銃でソ大尉を射撃。ソ大尉はトラックを諦めて自家用車でイチョン港に先行した。ミンジョンの射撃音でゾンビが襲ってくる。ミンジョンはトラックを発進させそこに駆けつけたジョンソクを収容するが、群がるゾンビで動きが取れない。これを見たシュニがヘッドライトを付けてゾンビを吸い寄せる。この機会を利用してトラックが発進。ミニバンとトラックが相互に協力しながら、高速道路を突っ走る。ゾンビの大群がこれを待ち構える、さらにフアン軍曹が指揮する631部隊が追ってくる。ここからこの作品最大のカーアクションが開始「マッドマックス」を参考にしたというだけの迫力、面白さがあります。

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631部隊が一斉ライト照射でゾンビをトラックのウインドに貼り付けてくる戦法、これに対するジョンソクによる車上からのライトつぶし射撃照明弾の投げ合い(ゾンビを走らせる!)、カークラッシュ作戦、陸橋から飛びつく大群のゾンビ攻撃。ビルに閉じ込められたゾンビをジョンソクが射撃でガラスを破り、解放されたゾンビがファン軍曹を襲う、高速道をジャンプして一般道に降りてフアン軍曹の追撃を逃れる、等々。

ゾンビ、631部隊を振り切ってインターチェンジを出たところで、ソ大尉の待伏せに合い、ミニバン(シュニー、ユジン、キム爺ちゃん)が捕らえられた。ゾンビを寄せ付けようとユジンがリモコンカーに触ったところで、ソ大尉が拳銃を発砲。キム爺ちゃんに当った。これにミンジョンが反撃射撃。ソ大尉はトラックを奪って待機する船の中に消えた。

キムは「世界は変わる!」という言葉を残して亡くなった。皆が泣いた!特にユジン。

ソ大尉は乗船したが、香港組織から「初めて見る顔だ!」と拳銃を突き付けられ、車を桟橋までバックしてゾンビを船に誘い込み、組織を襲わせた!

そのとき上空に国連のヘリが飛来ミンジョンは自分を犠牲にしてゾンビを引きつけることにし、ジョンソクに「子供たちをヘリに載せて欲しい」と懇願。ジョンソクは二人を連れてヘリポートに突っ走った。

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沢山のゾンビがミンジョンに群がり始める。国連兵士(元631部隊員)の「彼女(ミンジョン)は常識ある判断をした!」という言葉を耳にしたジョンソクは兄チョルミンの妻と娘を助けられなかったことが頭をかすめ、軽機をぶっ放してミンジョンを救出に走った。煙の中から、ヘリポートに母ミンジョンが現れた!

国連兵士が「新しい世界が待っていますよ!」とシュニに語り掛けると、シュニは「私が居た世界も悪くなかった!」と笑顔で返事した。

感想:

ゾンビアクションドラマ。この中で一番怖いのは民兵組織だったという、落ちがついた結末が面白い。ゾンビは対策があるが、知恵のある民兵集団には対策が打ちづらい、これが一番怖い。(笑) 

ジョンソクの気持ちが、ミンジョン家族との出会い、義兄やキムの自らを犠牲にしての死様、子供のために自分を犠牲にする母の姿を眼にして変化していくところが見どころ、作品のテーマです。この混乱する状況の中で何を成すべきか?人を救い、民族を救うという自分の役割を見出すことができた!

そしてシュニの「「私が居た世界も悪くなかった!」という言葉。人を救いたいというお互いが信じられる社会であれば、どんな事態でも怖くない!

目に見えるゾンビは恐怖でした。それだけに見えないコロナには注意が必要です。

とにかくゾンビ大暴れのCGアクションとは言え、日本では観ることができない、よくできた面白いドラマでした!

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映画「えんとつ町のプペル」(2020)信じれば世界は変わる

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新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

映画「えんとつ町のプペル」の感想からスタートです。予告編での絵の美しさに魅せられ、芦田愛菜ちゃんが声の出演ということで観ることにしました!

煙突だらけの「えんとつ町」。亡くなった父親の煙の向こうに星空があるという言葉を信じる少年のもとに、ハロウィンの夜、星からやってきたゴミ人間と心を交し青い星探しを始め、この町の秘密が明かされるという、絵本から生まれたファンタジー物語。

原作はお笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんの57万部越えの大ヒット絵本とのこと。未読で、西野さんといわれてもよく知らない。映画を見てこんな人かなと想像しています。😊

製作総指揮・原作・脚本:西野亮廣、監督:広田雄介、演出:大森祐紀、アニメーション監督:佐野雄太、音楽:小島祐規 坂東裕太、アニメーション制作:STUDIO4℃、主題歌:ロザリーナ「えんとつ町のブペル」。

声優:窪田正孝芦田愛菜立川志の輔小池栄子、藤森慎吾、伊藤沙莉野間口徹國村隼、他。

NHK「耳をすませば」の野村監督の言葉に耳をすませながら、作品感想を書いています。鶴岡監督のたった一言の言葉を信じた人生だったという言葉に、こんな体験から自分の世界は開けていくんだろうと思うんです。この作品はこのことがしっかり描かれている。この作品にはおそらく西野さんの人生が投影されているんでしょうが、自分の人生に重なるところも多い。笑えて、泣けてくる、父母が、友が、育ててくれた人たちを思い出す映画でした。

すばらしい作画で絵そのものに物語が詰まっていて、泣けたり笑ったりとすばらしかった。しかし、物語全般を通してみると、テーマ信じれば世界は変わるという言葉が、何故町がこうなったかという秘密がうっかりミスで明かされるという展開で、薄っぺらになったように感じます。しかし、絵本を、資金やスッタフ・キャストも含めて、このような映画作品に仕上げたことは見事です!これこそが「信じぬけ!」ということだったと思います。


『映画 えんとつ町のプぺル』予告1【12月25日公開】

あらすじ(ねたばれ):

朝から晩まで煙に覆われているから、空の向こう側にどんな世界が開かれているかなど誰も想像しない町。仕立て屋のブルーノ(立川志の輔)は黒い煙のその先にある光輝く世界の話を紙芝居で知らせていた。しかしみんなは嘘だと相手にせず、息子のルビッチ(芦田愛菜)はのけ者にされていた。

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父ブルーノが亡くなって1年後のハロウィンの日、星が落ちて、風が吹き荒れ、竜巻が起き、ひとりのゴミゴミ人間が徘徊していた。

その夜、町の人達はみんなそれぞれの衣装で踊り狂っていた。これがすばらしい音楽と派手な踊りで、「ゴミの世界とは違うなんという物語だ!」と驚かされます。(笑) その中におなじみの三人組アンヨニオ(伊藤沙莉)、レベッカ諸星すみれ)、デニス(太平祥生)がいた。

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しっかい仮装ができていて、「こいつか今夜の仮装MVPだ!」と声を掛けたら、こいつは本当のゴミ野郎だった。こいつは町にとっての異端者だと追われることに。

ひとりぼっちのルビッチ。えんとつ掃除屋で働いていての帰り道、助けて!プペルだ!と叫ぶ男に出会って、一緒に逃げることになった。通り合わせたゴミトロッコに飛び乗り、ゴミ焼却場に。あわや炉に入り焼かれるところで、ロープにすがり脱出、鉱山行のスカイトロッコに乗り、危ない長い鉄橋を渡って、鉱山坑に逃げた。この逃避アクションがすばらしい。ウェス・アンダーソン監督の「犬が島」(2018)を彷彿とさせるユーモアたっぷりの描き方でした。(笑)

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ここで出会ったのが採掘泥棒のスコップ(藤森慎吾)、べらべらよく喋る。(笑)友達になることを条件に逃がして欲しいと頼むと爆薬で逃げ道を開けてくれた。

ルビッチの家に辿り着いたふたり。ルビッチはプペルを母親ローラ(小池栄子)に紹介し、車椅子で生活している母は「友達ができた」と大喜び。ルビッチはプペルを風呂に入れてしっかり洗ったが臭い!(笑)

異端者が侵入したと町では大騒ぎ。ゴミ処理場が運転停止となり捜索が始まった。えんとつ掃除屋たちのところに異端審問官がやってきて親分のダン(國村隼)に尋問する。「バカが、ゴミ人間に掃除を頼むやつがいるか!」と大憤慨。(笑)

ルビッチはダン親分にプペルの仕事を探して欲しいと頼むと、昔父親ブルーノがやっていた地下にある仕立て屋で働くよう手配してくれた。プペルは父親のように仕立てがうまく、えんとつ掃除仲間たちの服を修理してくれる。

ルビッチは自分の仕事を紹介すると煙突に、プペルを誘った。高いところに登のが苦手なルビッチを下からプベルが励ます。プベルは「ブレストを落としたのか?」と聞く。まるで昔父ブルーノがそうしてくれたように。

そして頂上から煙の町を見ながら父の夢「雲の向こうには光輝く星があること、を話した。誰にも信ぜず、虐められることも。そして「他の人が見なくてもお前が信じ、上を見ていると同士が現れる」と教えてくれたことも話した。プペルはすてきな話だと聞いた。ルビッチは「この話は内緒にして!」とお願いをした。

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街で三人組に捕まったプペル。「ルビッチの父親は怪物の影を見て、飲み歩き、海に落ちて食べられた」と聞かされた。「ルビッチは何故仕事に就かないのか?」と聞くから、「星を見ようとしてえんとつ掃除の仕事をしている。俺も星を見たいんだ」と話すと、三人組に殴られ、下水道に逃げた。

ルビッチはプペルが居なくなって父のことを思い出していた。家に端審問官がやってきて「あの男、星を見ようとしている。ブルーノのように死ぬぞ!」と脅す。

町の統べている中央銀行頭取のレター14世(野間口徹)の秘書トシアキ(宮根誠司)が異端審問官に「知られてはまる、内密にやれ!」と注意をしていた。

こんな物騒な時期にダン親分がアーチェリーの矢で撃たれた。「ルビッチがゴミを連れて来たからこんなことが起きる」とえんとつ掃除仲間からもルビッチへの批難が聞こえた。

ルビッチは町を歩いていてアントニオに出会い「星をまだ探しているのか、いい加減に別れろ!」と虐められた。ルビッチは「アントニオが喋ったな!あいつ」と悲しくなった。

家にプペルが「許してはもらえないが、渡したいものがある」と戻ってきてブレストを渡す。「ゴミの中で探していてそれで臭いのか?」と聞くと、自分の身体にあったという。ルビッチは「それは受け取れない」と断り、ここで一気に仲直りした。ちょと良い話で涙がでました!

そのとき「海に船が流れついた!」という大変なニュースが入ってきた。ルビッチは父の物語から出て来た船だと叫んだ!

ルビッチは坑道に居るスコップを尋ね「火薬が欲しい」と頼み込んだ。スコップが「こいつでドキドキするんだ」と断ったが、ルビッチが「これで煙を吹っ飛ばす」と話すと、「こんな話があった」とこの町が出来るまでの歴史を語り始めた。

250年前、腐るお金「L」を発案した初代レターは中央銀行に異端扱いされて処刑。レター2世は中央銀行の手が届かない場所を探しここに辿りつき、民にこのことを知らせないようにと、外の世界を消した。この話をブルーノは知っていたという。スコップはどんな秘密も喋ってしまう。(笑)「煙の向こうに何があるかドキドキするよ!爆発は町の中央でやれ!これが爆薬だ!」と大量の爆薬を分けてくれた。

プペルがミシンで気球を作り、ガラヅ工房職人のドロシー(本泉莉奈)が手を貸してくれ、出発準備ができた。

これを聞きつけたレター15世は「やつらは海にでるのか?」とスコップを問い詰めると、「星を見に上に行くんだ!」と喋って消えて行った。(笑)

海岸には町の人々が集まり「バカが星を見に行くというが、そんなもんあるわけない」と騒いでいる。ルビッチは「誰が見たのかよ、誰も見てない!わかんないよ!分からんものに蓋をしたら何も見えないよ」と自分に言い聞かせた。母は「行っといで!必ず帰って来るんだよ」と送り出した。

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ルビッチの母を捕えに来た異端審問官たちとえんとつ掃除屋たちが喧嘩をし始めた。三人組が船の舫を説いてくれた。船が出航した!

船の上で爆弾を積んだ気球を上げた! ルビッチが父ちゃんはこのあとどんな話をしたかなと思っているとプペルが「町の人は青い星を知らない。夢を語れば笑われ、行動すれば傷つけられるが、それでも男は海に出た!」と励ます。ルビッチが気球を係留している鎖に上り、気球を放した。ふわふわと上る気球!

気球が爆発!町のみんなが空を見た!雲の上に輝く星があった。

プペルが「頑張ったなチビ!」とバラバラに分解してゴミになった。そこにネックレスが落ちていた。レター15世が「煙を止めよう!未来を見よう」と呟いた。町に光が差し始めた!

感想:

前段、町中でバカにされ、痛めつけられながら父ブルーノの夢を追うルビッチがプペルと親子のように結ばれていく様がユーモラスで泣けます。後段に入り、スコップによってこの町に仕組みが唐突とも思える形で明かされてしまい、父の夢の先に何が隠されていたかという物語の面白さが吹っ飛んでしまい残念。ラストの空に浮かぶ船の構想がすばらしいだけに残念でした。

物語はルビッチとブルーノの冒険物語のようであって、そこにしっかりと家族の絆、父や母のことと、友人たちの想い出など、きっと観る人の経験に重なるエピソードが満載でした。また現在の世界や政治への問題に繋がっているのも面白かったですね。

コロナ禍のその先になにがあるのかと思いを馳せることになるでしょう。ここで負けてはいけない、自分をしっかりもって過ごすことが大切だと改めて感じる作品でした。

STUDIO4℃による映像、とにかく美しいし面白い。

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星から光が地上に降りて、ゴミ人間になりルビッチを陰で支え、自分の夢を達成して星に戻っていったプペルのロマンに満ちた物語。主題曲「えんとつ町のプペル」とともに個々のシーンが思い起こされます。

エトロッコで逃げるアクションシーン。風呂で背中を流すシーン、なんでもないようで愛情が一杯でした。高いえんとつに登るとき恐怖でネックレスを落とした。気をつけろ!気をつけろ!と後ろで注意するプペルの姿、秘密を喋ったと喧嘩して気まずいふたり、船出時の母の激励・見送りなど、だれしもが経験した話。

音楽がとても良かった!

芦田愛菜さんの声の演技、先の「星の子」(2020)でその演技力を見せつけてくれましたが、ここでは男の子の声として出演、とてもリアルに聞こえ、物語にリアリティが生まれました。

窪田正孝さん、最初気付かなかった、ゴミのような、それでいて暖かい声がよかった。謎の人物が次第に明らかになってくる演技とてもよかった。

スコップのお喋りにはうんざりでしたが、藤森慎吾さんの喋りがよかったですね(笑)

いよいよ新年がコロナ禍のなかでスタート、万全を尽くして、ことしも映画館にかよいたいとおもっています。よろしくおねがいいたします。

                            ***

「ジョゼと虎と魚たち 」(2020)痛みを感じ“生きる力”と“大きな愛”を知る!

 

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原作は田辺聖子さんの同名短編小説、2003年に実写映画化されています。これをアニメ化し、ジョゼに清原果那さんを当てているということで、観ることにしました。

足の不自由な女性・ジョゼと管理人と呼ぶ大学生・恒夫との関係性のなかで紡がれる純愛物語。

健常者という言葉は1度ジョゼが叫ぶだけで、障がい者という言葉は出て来ません。実写版はこの関係に田辺さんの毒が利いた描写があったと記憶していますが、時を経て、今の時代、お互いの気持ちを理解し、自分自身の心と向き合い、前に進んで行こうとする、クリスマスに観るにふさわしい幸せを感じる、暖かい恋物語になっていていました。

監督:タムラコータロー、脚本:桑村さや香、キャラクター原案:絵本奈央、キャラクターデザイン:飯塚晴子、総作画監:督飯塚晴子、撮影監督:神林剛、音響監督:若林和弘、音楽:Evan Call、主題歌:Eve

声優:中川大志、清原果耶、宮本侑芽興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎、他。


アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ロングPV

あらすじ:

ダイビングショップでアルバイトする鈴木恒夫、二宮舞、松浦隼人の三人。アルバイトとダイビングに明け暮れる毎日。恒夫は海洋生物学科を専攻する大学生で幻の魚クラリオン・エンゼルを求めてメキシコ留学を目指して学費稼ぎに必死だった。そんな恒夫に舞は思いを寄せている。隼人がそんな舞の気持ちに気付いていたが・・・。

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そんなある夜、ショップを終えての帰り、暴走する車椅子から飛び出してきた女の子(ジョゼ)を受け止めたことが支所の出会い。ジョゼは祖母チヅから「外は恐ろしい怪獣ばかり」と他人を避けて暮らしていて、この夜外出して車椅子が暴走したのだった。

ジョゼの最初に発した言葉が「あんちゃん、おおきに!」だった。(笑) 年頃なのに男の子などと付き合ったことがない。容姿は歳に似合わないちょっと幼げで可愛いが、外界から全く閉ざされた生活のため、態度が大着で言葉が汚い。(笑) これを清原さんが上手い大坂便で演じてくれます。

お礼にと連れていかれたジュゼの家。恒夫はご飯にタコ焼きをいただくが、ジョゼは話もせず本を読み、襖の中に消えてしまう。彼女の世界は襖の中。祖母はら「家にいるだけ!その間私はパチンコ」という奇妙なアルバイトを持ち掛けられ、恒夫はこれなら金が稼げると引き受け、ジョゼの管理人になった。

ところが大変だった。ジュゼは襖の中で「正座しておれ!」とこの正座が1週間も続いた。そして「四葉クローバー10本探して来い!」。10本の四葉のクローバーを探してもらったが、ジョゼには何にも良いことも起こらない。恒夫はバーで仲間と飲んで、とにかく稼ぐ!と頑張ることにした

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恒夫は卒論の指導を受けている教授から奨学金でメキシコに行けると聞かされ喜んだ。襖の中でジョゼは海の中で魚たちと戯れている夢を見ていた。

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恒夫がやってきて、ジョゼがいるかと襖を開けると、そこは美しい海中のようで、美しい絵があった。ジョゼが居ない!ジョゼはこっそり家を抜け出していた。慌てて追いかけた恒夫に「海に連れて行け!」と命令。初めての電車旅なのに偉そうに乗ったことがあるふりをする。(笑) 海に着くと初めての海に大興奮。「海の味はどんな味?」と車椅子から這い出して海に。恒夫は背負って海に入り海水を舐めさせた! このことで祖母から大いに叱られたが・・・。

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祖母が居ない間に、ふたりは外出してグレープを食べたり、観覧車に乗ったり、ステークを頬張ったりと楽しんだ。水族館に連れ出し、恒夫がジンベイ鮫の説明をした。この水族館の美しいこと!見事です。

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祖母もこんなふたりを見てジョゼに仕事を勧める相談員に、その必要なしと断る始末。

恒夫は図書館に連れ出した。そこでジョゼはフランソワーズ・サガンの「失われた横顔」を借りた。「私のサガンが好き!この本を読む人は初めて!」と司書の岸本花菜さんと仲良しになった。ジョゼには初めての女性友達となった。花菜さんに「彼氏?」と言われて、ジョゼは真っ赤になった!(笑)

恒夫はジョゼをアルバイト先のダイビングショップに連れていった。これが拙かった!舞が馴れ馴れしく恒夫に話しかけるのを見たジョゼは怒ってひとりで帰り、「もう二度と来るな!首!」と告げられた。(笑)

ジョゼが図書館に花菜さんを訪ねると「子供たちの読み聞かせ会を係がいなくなって開けない、代行やって!」と頼まれた。ジョゼには読み聞かせは初めてのことで上手く出来なかったが、絵を描くと子供たちがとても喜んでくれることを知った。

恒夫は留学も決まり、自作のクラリオン・エンゼルの行灯を持ってジョゼに会いに来た。クラリオン・エンゼルに会うために勉強してきたことを話し、ジョゼに会いたい気持ちを明かした!

ジョゼが「あんたとなら一番怖い虎に会える怖くても縋れるから!」とふたりで動物園に出掛けた。虎を見ながらジョゼが「あんたのように、絵の仕事をしたい」と打ち明けた。

突然祖母シヅが亡くなった。恒夫は「自分が相談に乗るから絵の道は捨てるな」と諭したが、民生委員の人から「現実を考えなさい!」と促され、絵を描くことを諦め、恒夫に管理費は払えないことを告げた。舞から「恒夫は留学が決まっているから自由にしてあげて!あんたと付き合っているのは同情からよ」と聞かされた。

恒夫が絵の本を買ってジュゼを訪ねると、部屋に絵がない。全て捨てたという。「最後の仕事や!海に連れて行って!」と命令。海にきて、ジョゼは「塩っぱい!」と泣き「絵を描くのは止めた」という。「好きなことを諦めるな!」と諭すと「健常者には分からん!」と。

雨が降ってきた。ジョゼが車椅子で帰り始め、恒夫が追っかけた。広い道路に出たところで車椅子がひっくり返り、ジョゼが道路に投げ出され、恒夫が助けようとして乗用車に跳ねられた。

恒夫が目を覚ましたとき「ジョゼは?」と看護師に尋ね、怪我んはないと聞いて安堵した。しかし、恒夫は右腿骨折で緊急手術を受け、医者から「いままでのように走ったり歩くことはできないかもしれない」と告げられた。教授から「3月に留学は無理なので別の学生を推薦した」と告げられた。

ジョゼの見舞いに「君のせいではない。リハビリしてもダメかもしれない」と、ジョゼは何も言えなかった。

舞の見舞いに「留学とかどうでもいい。俺はいままで何も分かっていなかった。欲しいものに手をだすことが如何に怖いか!」と心境を明かすと、舞は「恒夫が好き」と告白した。そして、ジョゼを尋ね「恒夫が留学を諦めたから私が貰う。あなたより私の方がずっと幸せにできる」と告げた。ジョゼは「管理人は諦めんよ!それがあいつや!私は何も言えんが、気持ちの大きさでは負けん!」と言い返した。どん底の体験を持つジョゼだからこそ出てくる言葉だった。「じゃ何かしてごらん!」と泣いて舞が帰っていった。この様子を隼人が見ていた。

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ジョゼが図書館で本を読み、絵を描き、花菜さんの力を借りて絵本を作り始めた。その絵本を子供に読み聞かせる日、隼人に頼んで恒夫を病院から連れてきてもらった。

子供たちを前で、ジュゼは自作の「人魚と輝きの翼」を語った。物語はジョゼが恒夫に出会ったときから自分が如何に救われたか、恒夫の脚が折れても強い心で夢を目指せ、「心の大きな翼でどこにでも飛んでいけ!」というメッセージを伝えるものだった。恒夫は泣いた。この日からの恒夫のリアビリは留学に挑戦するためにと変わって行った。

恒夫は退院の日、ジョゼに迎えにくるよう伝えていたが、ジュゼが来なかった。家にもいなかった。動物園の虎の居場所にやってくると、積もった雪に車椅子の轍があった。その轍は街へと続いていて。ジュゼは自立する勇気を恒夫から貰っていた。

ジョゼを掴まえた恒夫は「ジュゼが好きだ!」と伝えた。するとジョゼも「管理人が好きや」。恒夫がキスすると「想像したんと違う!」と。(笑)

 

感想:

タイトルの意味、実写版ではよく分からなかったが、こんなに鮮やかに心に響いてくるとは思わなかった!

ジョゼという名はフランソワーズ・サガンの小説から採った名前。決して真に幸せにはなれないと諦念しながらも、何かに集中してやってみたいと思っている子。

闇夜に恒夫と偶然な出会いで、障がい者だからと外の世界を知らず閉じ込められていた心が開かれたところに、祖母シヅの死で生活の場を失い管理人恒夫との別れを決意するまでの前段。ここまでは実写版とほぼ同じ展開で、外のいろいろなものに触れふたりの距離がどんどん埋まっていくラブストーリーが心地よい。ここからの後段失ってみて気づく痛み、これを乗り越えて生きていこうとする相手への想いが、実写版では描かれない本作の肝となる部分で、“ジョゼという名にふさわしい”物語の完結編としたことに納得、すばらしい結末だと思いました。しかし、やや説明不足で急ぎ過ぎましたね!

ジュゼの「健常者には分からん!」という痛みと「気持ちの大きさでは負けん!」という痛みを知ったが故の言葉に“生きる力”を感じます。また恒夫の「欲しいものに手をだすことが如何に怖いか!」という言葉に、自分が怪我をしてジョゼの痛みが分かったという“大きな愛”を感じます。

アニメだから描けるふたりの美しい心の交流を見せてくれます。ふたりの心はで結ばれており、冒頭のダイビングの映像から始まり、ジョゼが夢見る海中、ジョゼが初めて見た海の風景、水族館など海の描写がふたりの心象を著わすようにとても美しく輝いている。そして物語にリアルさを与えるための美術、部屋や街の風景が実写のように繊細に描かれています。

大坂出身の清原さんの声の演技が、歯切れよく、生意気そうで切なくて、うまい演技でした。そしてEvan Callの曲が、ジョゼと恒夫の気持ちを掻き立てるように雰囲気に合っていてとても良かったですね!

年末にすばらしい作品に出会えてよかったです!本年のレビューはこれが最後。皆さん、よいお年をお迎えください!!

          ****

「ほえる犬は噛まない」(2000)ポン・ジュノ監督のネタ元が全部ある作品。

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ポン・ジュノの初長編監督作。監督作の6作目としてこの作品をWOWOWで観賞。この作品のなかにはこれ以降の作品ネタが含まれるという、とんでもない初監督作品で、常に韓国の現状を危惧する姿勢には心打たれます。

教授を目指すがその席につけず女房に頭のあがらない男性と、商業高校を卒業してマンション管理事務所に勤めるが毎日を無為に過ごす女性。男性が住むマンションで仔犬がいなくなるという事件が発生、この犬を巡ってこの男女が繰り広げる人生の悲哀。

たった3匹の犬を巡る物語、どこでこんなエピソードを見つけてきたかというほどの笑いが一杯で、韓国の現状風刺がよく効いて、韓国の問題を問うというスケールの大きな作品です。

監督のどの作品でもこの描き方を基本姿勢として貫き、冒頭で見せる主人の顔をラストで見せ、その顔にテーマを乗せるという描き方。

監督:ポン・ジュノ、脚本:ポン・ジュノ、ソン・テウン、ソン・ジホ、音楽:趙成禹、撮影:チョ・ヨンギュ、照明:パク・チョンファン。

出演者:ペ・ドゥナ、イ・ソンジェン、キム・ホジョン、ピョン・ヒボン、キム・レハ、コ・スヒ、キム・ジング、他。


『ほえる犬は噛まない』予告編 ビデックスJPで配信中!

あらすじ(ねたばれ):

携帯で先輩に教授になる方法を聞くコ・ユンジュ(イ・ソンジェ)。「学長の腹ひとつ」という先輩の声。そこに仔犬がうるさく鳴く、マンションでは飼えないと白いスピッツを掴まえ殺そうとするが殺せない。(笑)アパートの地下室のロッカーに閉じ込めておいた。

管理事務所に勤めるパク・ヒョンナム(ペ・ドゥナ)。通勤電車の中で居眠り、そこに「お恵みを!」と書かれた紙きれを置く子ずれの女性。目覚めたヒョンナムが席を譲ると「何よ!」と睨まれた。こんな商売があるの?(笑) マンション入り口で文房具店を営む親友:ユン・チャンミ(コ・スヒ)に尻叩かれて事務所に入るが、だれもまだ出勤していない。掃除して、あとはチャンミと電話でたわいない話をするだけ。そこに男の子が「迷い犬」ポスターを張る許可印を求めてやってきた。「学校に行きな!」と引き受けて、そこら中に貼ってやる。帰りの電車のホームにも。(笑)

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お腹が大きくなってきた妻:ペ・ウンシル(キム・ホジョン)が帰宅してユンジュに「ご飯の代わりにこれ食べる」とクルミの皮剥きを命じる!(笑)剥ぎ終えて「学科仲間の集まりに!」と飲み屋に出掛けた。

やっと飲み屋のトイレで美人局の先輩に会え、「教授になったばかりのナムグン、は学長に飲まされ帰宅中に電車に接触して亡くなった。ドイツで勉強して“犬死”だよ!教授席がひとつ空いた。学長へのお礼は1500万ウオン、急げ!」と発破を掛けられた。(笑) 酔ってマンションに帰ってくると「迷い犬」のポスターが目に入ってきた。あの犬はどうなったか?

朝、きゃんきゃん鳴く犬。婆ちゃん(キム・ジング)が抱っこして部屋に入るのを見た。あの迷い犬のポスターを見直すと「声帯手術がしてある」とあった。(笑) あの仔犬はどうなった?

地下室に入るとロッカーのカギを解かれていた。そこにピョン警備員(ピョン・ヒボン)が来て仔犬を料理し始め、ユンジュはロッカーに隠れて見ていた。遅れてやってきた管理主任が、“1988年建設の、このマンション”の不備を知ったボイラーマン・キムがその筋から殺され、その呻き声が壁から聞こえるという。この話が長い!(笑) 眠くなりますが、今となっては深刻な問題なんでしょう。

ピョン警備員が巡察に出て、その隙に主任が扉を閉め出来上がった鍋を持ち帰った。ユンジュは闇の中で隣の部屋に行くとそこにもうひとり・“浮浪者”(キム・レハ)が潜んでいた。(笑) 朝になって、1階と地下の隙間から脱出した。

この夜ヒョンナムのところに「あなたの初恋の人。彼が都合で今から撮影するからすぐ来てくれ」という夢のような電話が入ったが、これは間違い電話だった。(笑) しかし、相手の言葉使いが急に変わったことが気になってベランダでタバコを吸った。

朝、ユンジュがピョン警備員のゴミ出しを手伝う。(笑)「このマンションは犬を飼うのは禁止でしょう」と聞くと「韓国は規則を守らない国だ!」という。(笑)

「何で金持ちはあんな高い犬を飼っているの?」と話していると、あの婆ちゃんが仔犬を連れて散歩に出た。その後をつけ、婆ちゃんを騙して仔犬を取り上げ、マンションの屋上から放り投げた。

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ヒョンナムとチャンミはTVで女性銀行員が強盗を掴まえたことで警察から表彰される映像を観ていた。「この女性、これで一躍スターだ」とヒョンナムが言えばチャンミが「銀行に就職すればよかったのに!ここには強盗は来ない!」と嘆く。彼女は格闘技の名手。

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退屈しのぎにふたりが管理棟の屋上から、望遠鏡で街の風景を見ていた。ヒョンナムが犬を投げる赤いシャツを着た男を見て追っかけた。上空を米軍の“C-130輸送機”が通過し、この爆音にヒョンナムが気を取られている隙に、ユンジュは逃げ切った。

これが原因で計算ミスをして叱られるヒョンナム。そこに婆ちゃんが仔犬の捜索願お張り紙を持ってきた。ヒョンナムは婆ちゃんを仔犬の落下場所に案内しると、婆ちゃんがその死骸を見て倒れ、病院に付き添った。

ピョン警備員が掘り起こして仔犬の死骸を持ち帰った。(笑)彼はこれを料理して鍋にかけ巡察に出た隙に、隣の浮浪者に食べられてしまった。(笑)

ユンジュは預金を調べると500ウオンしかない。「借りよう!」と仲間に電話するがめどが立たない。がっかりして居眠りしているところに、妻ウンシルが「私が稼いだお金で買った!」と仔犬・スンジャを抱いて帰ってきた。「バカにするな!」とユンジュ。

妻に命じられてスンジャを散歩させていて、宝クジを拾ったので綱を離して,

“当たり籤かどうかを確認しているところに“噴霧衛生車”が来て、煙に巻かれ、スンジャを見失った。(笑)

ユンジュ一晩中探したが見つからずマンションに戻ると、「ものバカ!」と妻から「退職金で買った犬よ!妊娠した女はリストラされる。11年務めて退職金はたったの1684万ウオンよ。スンジャは40万ウオン。残りは教授になれるよう預金している」とクルミを投げられた。(笑)

ユンジュは真剣に探そうと「犬の捜索」ポスターを作って、管理事務所にやってきた。(笑) そのときヒョンナムに婆ちゃんが亡くなったという知らせが入った。「婆ちゃんの唯一の家族だったのに!場所を教えなければよかった」と言うと、ユンジュが「君は悪くないよ!殺したやつが悪い!」と。(笑)チャンミが「あいつは畜生だ!」と。「もう少しで掴まえられた。後姿だけ見た!背が高く体格はあんたの同じくらい」とユンジュ。(笑)ユンジュが鼻血を出した。

ユンジュとヒョンナム、ふたりは協力して「スンジャの捜索」ポスターを張って歩いた。そのときネギを持って歩くピョン警備員に出会った。ユンジュがつけると地下室で料理を始めようとしていた。(笑)

ポスターはりでほっつき歩いて、管理主任からひどく叱られた。婆ちゃんからの郵便が届いた。「屋上の日干し大根を食べて!」とあるので屋上に上がると浮浪者がまさにスンジャを殺そうとしていた。小便に立った隙に、こことばかりの勇気を出して、スンジャを盗んで逃げた。(笑)最後はチャンミがキックで倒し、浮浪者を警察に渡した。

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夜のTVニュースでこの事件が放送された。ヒョンナムは自分があの銀行員のように映っていると思って観ていたが、ない!「何でないのよ!」と。(笑)

ヒョンナムは管理事務所を首になり、チャンミとヤケ酒を飲んで「旅に出よう!」と約束して別れた。

ユンジュは、妻の預金から金を降ろし、ケーキの下に金を隠して、校長にケーキをプレゼントした。学長に「飲め!飲め!」と飲まされたが(笑)、帰りの電車ホームではしっかり入ってくる電車に注意しての帰り道、酔っぱらって寝ているところにヒョンナムが通りがかった。

ユンジュが「スンジャの捜索」ポスターを次々と剥がし「あんたにお礼をしたい。走るから後姿をみて思い出して!」と上着を取ってピンク色のワイシャツで走った。ヒョンナムが必死に追った。ユンジュが「覚えているか?」と聞くがヒョンナムは「何の話?」と。「そうさ、俺なんだ!」と白状するが、ヒョンナムはユンジュの脱げた靴を拾ってきて「これ!」と渡した。(笑)

ユンジュは晴れて教授として教壇に立ったが、表情が冴えない!

ヒョンナムはチャンミと旅に出て、さわやかな林の中を歩いていた!

感想:

話を面白く作り、とてもリズム感があり、その展開がすばらしい作品です!

ユンジュに、二匹の仔犬はもはや吠えることはないが、その霊がつきましたね! あのボイラーマン・キーさんの呻き声です。(笑) 学長の賄賂を批判しながら、学長の罠に落ちた。(笑)

ヒョンナムは、教授となったユンジュの背中を追ったが、あのときの赤いシャツ姿と同一人物とは判断できなかった。“この人は教授”というイメージがあったのでは? 銀行員と同じことをしてもTVに映らない、毎日をだらだら過ごしていてはダメと気付き、再出発の旅に出たようです。ヒョンナムは懸命に犬を助けようと走りました。きっと仔犬に感謝されるでしょう。

ヒョナムのペ・ドゥナはこの作品でブレイクしたとか、可愛かったですね!

さて、「パラサイト(2019)へと続くネタが幾つ見つかりましたか?黄色い雨合羽、浮浪者、赤いシャツ、噴霧衛生車、地下室、階層社会・・。韓国風刺の話も沢山ありました。とても面白い作品になっています。

           ****

「私をくいとめて」(2020)

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勝手にふるえてろ」の大九明子監督が再び綿矢りさ作品に挑んだラブコメディ。さらに「あまちゃん」コンビの能年のんさんと橋本愛さんの共演、もう観ないわけにはいきません!

主人公のみつ子は「おひとりさま」を満喫する32歳。それは脳内に相談役「A」がいて人間関係や身の振り方に迷ったときはもう一人の自分「A」がいつも指南してくれるからだった。しかしある日、みつ子は年下の営業マン 多田くんに出会って、「そんなことない!」と思うが「A」が「君は恋している!」という。すったもんだの末「A」のいう「くいとめてみたら」・・・というおはなし。

このコメディー笑えたかな?前作「勝手にふるえてろ」からさらに進化した作品で、ただのラブコメディーではなかった。その奥にあるコミュニケーション・人間関係の話で、年寄りが見ても大丈夫!元気がでる作品でした。(笑)

監督・脚本:大九明子、撮影:中村夏葉、編集:米田博之、

音楽:高野正樹、劇中歌:大滝詠一

出演者:のん、林遣都臼田あさ美若林拓也前野朋哉山田真歩片桐はいり橋本愛岡野陽一中村倫也、他。


映画『私をくいとめて』本予告 〈12月18日全国ロードショー〉

あらすじ(ねたばれ):

32歳のみつ子(のん)。身体一杯に風を受け、地下デバの料理教室で楽しんで、るんるん気分で街を闊歩して、マンションに戻って「A」(中村倫也)と喋りながら料理したり掃除して過ごす、自由気儘な生活を楽しんでいた。「A」は「answer」の頭文字。

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そんなみつ子は2年前、揚げ物屋で取引先の営業マン多田君(林遣都)と一緒になって、多田君からコロッケをひとつプレゼントされた。ある日多田君を家での食事に誘ったら玄関まで来て上がらず、出来上がった料理を待って帰るだけのとても律儀な男だった。みつ子は托鉢僧と檀家の関係だ!と思っていた。(笑)

「どう思っているのか聞きたいが、彼女がいるのかも知れないしもう来なくなるかも」と聞き出せない。(笑)

会社のみつ子、唯一の友はノゾミさん。いつも一緒にいて、お茶汲み係、居心地が良いから。上司の美人ではないが仕事バリバリの澤田さん(片桐はいり)は遠い人だった。(笑)

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そんなノゾミさんに麗しのセニョールことカーター(若林拓也)が目線を送り、これを受け入れるノゾミさんを見た!ひとりすき焼きに出掛けると周りにそんな人がいない。多田君と一緒にと思うが、年下というのが気になり、ディズニーには誘えない!それでも「A」が「あなたは多田くんが好き、誘ったら!」という。

というわけで多田君を家での食事に誘うと、喜んできてくれた。多田君が「暖かい人!」と言ってくれるのに「そんな女でない、はずかしい」と上目線他に話のネタがない!多田さんが使うクリーニング店の犬が死んだ話(笑) この夜のことを「誰かといると面倒くさい!」とノゾミに語った。(笑) そんなことを言いながら「あのときお酒を出しておけば?」と多田さんを捨てきれない。(笑)

美術大学で一緒だった皐月(橋本愛)から、「年末イタリアに来ない!」と誘いが来た。飛行機は怖いが、2年も会っていないと訪ねることにした。ひとり旅の予行にとノゾミがくれた宿泊クーポンで温泉旅行に出た。

そこで女性芸人のひとり芝居を観た。彼女の芝居はお客さんに受けていたが、終わると数人の男性客が舞台に上がり、彼女に悪戯をし始めた。みつ子は「やめなさい!」と怒りが込み上げてきて、上司のセクハラや高慢ちきの澤田さんを思い出し、何もできない自分に泣いた。ノゾミさんがいたからやってこれたと、あの芸人さんは“男を見下して”強くなっていくと思った。(笑)

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ローマ行航空機で羽田を発った。乱気流に揺れる機上で怖くなった。そのとき「A」が「大滝詠一の歌を聞け!」とアドバイス。ガンガン歌うと、もう「怖い怖いの文字」が吹っ飛んでいった。(笑)

皐月は大きなお腹だった。大家族と一緒に食事をして、旦那さんのキーボード演奏で唄った。とても幸せそうだった。街を旦那さんと一緒に、「これを見せたかった、怖いから出ないようにしている」とコロッセオを案内してくれた。この写真を多田君にメールした。「ごはんは?」と聞くと、「無理だ。良い旅を!」と返事が来た。「誰と食べてるの?」と気になる。(笑)

幸せそうな皐月が「変わっているようで、私自身変わってない。こんなに遠くに来て心細い、だから来てもらった」と涙を見せ、お腹をさすって「お母さんになる!」と笑みを漏らす。こんな皐月を見て泣いた。ローマの新年を祝う花火を見て帰国した。

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みつ子は帰国した連絡を多田君にしなかった。多田君は炊飯器を買ってもう私は不要、そして皐月が2年前ローマに発ったときの寂しさを思い出していると、「A」が「恋人がいたらと思ったら!」というから、おめかしして歯医者さんに会った。これが最低の人だった。もう「A」の言うことは聞かないことにした。すると街を歩いても寂しいことばかりだった。

何となく携帯メールを調べると、なんと多田君からの新年の挨拶があった。すぐに「ごめん!」と返信した。

出勤時、澤田さんにローマのお土産を渡すと「あとで彼の実家からきたリンゴあげる」と言われ、旦那さんがいたのかとびっくりした。(笑)

ノゾミにローマの土産を渡すと「カーターと東京タワーの外階段を上るイベントに参加するから、あなたも多田さん連れてきて一緒に参加しよう」と誘ってくれた。多田君は「まさか君がそれを言うか!」と喜んでくれた。

ノゾミのカーターに対するド派手な献身的態度にびっくりした。みつ子も多田君から交際を申し込まれた。「A」の言うとおりだと思った。

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多田君から沖縄旅行に誘われた。そのためのショッピングを兼ねたドライブで夜になって雪となり、急遽ビシネスホテルに泊まることになった。多田君がそっとみつ子を抱きすくめた。ベッドはひとつ。みつ子は「多田君との距離の取り方が分からない。口に出しては言えない!」と狼狽した。氷を買って来ると部屋を出て、「A」と話合った。

夏の海から上がってきた「A」の姿に驚いた。みつ子は「消えないでしっかりくい止めて欲しい」と願ったが、「A」は「あなたはあなたからは逃れられない」と言って海に消えた。みつ子は笑った!部屋に戻ると、多田君が「さっきはごめん!」と謝った。夜は手つなぎで眠って何事もなかった。

感想:

みつ子と多田君の恋愛物語、前段でゲラゲラ笑っていましたが、温泉旅行にでかけるあたりから雰囲気が一変。これ恋愛映画?

みつ子と多田君には直接かかわりのない、温泉旅行とイタリアの旅。遠い海外で現地旦那さんと暮らす皐月、芸人としてお客とのトラブルに対処する女性。自分の殻に閉じこもっていては何も解決されない。みつ子が悩みは小さな世界でのものだった

さらに、ノゾミとカーターの派手な恋模様や航空機の中でのとんでもない恐怖描写、これ笑える?(笑)

みつ子は、原因はよくわからないが、何かにびびっていて臆病で、全てを自分の脳内で完結している。これでは成長はない。相手の脳を通しての思考でないと、大きな世界を見ることもできず進歩もない。相手の行動予想なんて無理だ。勇気を出して飛び込むこと、やってみなければわからない!情熱相手への思いやりだ。うまく描かれていたと思います。

ノゾミとカーターの派手な恋模様や航空機の中でのとんでもない恐怖描写も恋愛というより情熱と恐怖の克服、自分の殻から跳び出せ!の必要性を強調したものだったと笑っていました。

文明の進歩で、もうコミュニケーションなんて面倒くさいことを考えないで、十分生きていける時代になった。が、人との関係でこの世にはもっと楽しい大きな世界があるよと教えてくれる作品でした。

年寄りには併せて年寄りの孤独を描いた「おらおらでひとりいぎむ」(2020)を観るとよいと思います。 

のんさんの演技。一人芝居にコミカルな演技、感情の爆発までを見せた、こじれ女性の演技が、まるでのんさんそのもののように見えました。うまい演技ですが他作品も見てみたいですね。

橋本さんの演技。異国で暮らすことの寂しさや、ここで生きる芯の強さがよく出た佇まい、この女性ならローマで暮らせるというオーラのある演技でした。そして美しい!どうしても“のんさん”と比較しますが、オーラの点では橋本さんだと思いました。

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林遣都さん、何を考えているのかよく分からないという、最後にその好青年ぶりが明かされますが、年下でありながらみつ子を見守っているという静かな大人の演技、よく雰囲気が出ていました。

コロナ禍でローマの撮影はリモート撮影だったと聞き、遠距離恋愛もリモートで出来る時代になりましたが、肌で触れるコニュニケーションは欠かせませんね!

           ***

「ワンダーウーマン1984」(2020)作品の面白さが時代設定“1984”に尽きるという作品!

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前作ワンダーウーマンの面白さ、時代設定と愛の行方に注目していて、今作では如何なる時代設定なりやと楽しみにしていました。 

コノナ禍による度重なる延期報道にうんざりしていましたが、年内公開に漕ぎつけてくれ、“大型スクリーンで観る映画”はこれだ!と駆けつけました。

冷戦下の1984年を舞台に、スティーブ・トレバーと再会した最強戦士ワンダーウーマンが、世界を崩壊の危機から救うべく巨大な陰謀に立ち向かっていく姿を壮大なスケールで描き出すというもの。

作品の面白さが時代設定“1984”に尽きるという作品。夢のWeaponを操る超美人ワンダーウーマンが華麗に戦う姿を追い、その背後の1984年という時代の闇を炙り出し、今の時代にどう生きるかを問う、メッセージ性のある作品でした。とても面白かった!コロナ禍の今だからこそ、観るべき作品かも知れません。😊

監督:パティ・ジェンキンス、脚本:パティ・ジェンキンス、ジェフ・ジョーンズ、デヴィッド・キャラハム。撮影:マシュー・ジェンセン、音楽:ハンス・ジマー、編集:リチャード・ピアソン。

出演者:ガル・ガドットクリス・パインクリステン・ウィグペドロ・パスカルロビン・ライトコニー・ニールセン、他。

パティ・ジェンキンス監督、主人公ダイアナ=ワンダーウーマンを演じるガル・ギャドット、前作でダイアナと惹かれあったスティーブを演じるクリス・パインは続投です。


映画『ワンダーウーマン 1984』日本版予告 2020年12月18日(金) 全国ロードショー

あらすじ(ネタバレ):

ダイアナは幼いころセミツシラ島で、大人の障害レースに参加して途中で落馬し、迂回路を利用したことでトップでテープを切ったにも係らず勝者になれず、師であるアンティオペ将軍(ロビン・ライト)から「真実を信じることが大切。それで勝!」と教えられたことを胸に、生き続けている。

1984年、車が町に氾濫し、ショッピングモールには物が溢れている。ダイアナ(ガル・ガドット)はスミソニアン美術館の学芸員として過ごしていたが、そんななかで起きる窃盗や暴力に身を隠して対処していた。

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ダイアナの部屋には第一次世界大戦で亡くしたスティーブ・トレバーの写真、彼の牧場で撮った写真、彼が贈ってくれた時計を飾り、彼を偲び、ひっそりと生活していた。

宝石商の泥棒退治をした翌日、盗難にあった美術品が美術館に持ち込まれ、同僚のバーバラ(クリステン・ウィグ)とこれを鑑定した。美術品には「この石に願いを述べよ!」とラテン語で書かれた説明書きがあった。ダイアナは「願いが叶うなら、私にはある!」と呟いた。

バーバラは考古学の学識はすばらしいが人付き合いが苦手、服装も地味で、引っ込み思案な娘。バーバラが浮浪者に言い寄られたのを恰好よく退けたダイアナは美人で明るくファッションセンスも良い、そんな「ダイアナになりたい!」と石に願かけた。そして体力トレーニングに挑む。男たちが見惚れるようになっていく。(笑)

石油投資会社を営むマックス・ロード(ペドロ・パスカル)。TVCMで「あなたのすることは望むだけ!」と投資を勧めるが、実情は火の車、従業員は電話番の女性ひとり。息子のアリスタには恰好良い父親姿を見せたくて、いずれ大富豪になるぞと大言壮語しまくっていた。アリスタはこんな父親に疑問を抱いていた。

マックスは美術館のスポンサーになりたいとバーバラに近づき、彼女の仕事場に不思議な石があることに気付いた。

美術館で行われたチャリティーショウの夜。マックスはバーバラに言い寄り、その隙に石を盗んだ。

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一方、ダイアナは時計を握らせ「僕は今の世界を救う。君は未来の世界を救え!」という男性に出会った。スティーブだと思って彼の部屋を訪れた。スティーブの魂が乗り移った男性、スティーブだった。

マックスは盗んだ石に「願いはひとつ、魔法の石だ!」と叫ぶと石は飛び散って消えた。

ダイアナはスティーブを1984年風のスタイルにして連れ出し、街を案内した。スティーブはその変化に驚いた。

ダイアナは「あの石でこうなった、これからどうなるの?」とスティーブと一緒にバーバラを尋ねると「マックスに貸した!」という。マックスの事務所を訪ねるが誰もいない。石の台座が残っていて「これは神の石である」と刻印されていた。ダイアナは「石にどんな力があるのか?」が心配になった。スティーブが「マックスに渡すわけにはいかないぞ!」と言い出す。

捨紙からカイロに向かっていることを知り、夜間、スミソニアン宇宙航空博物館の格納庫に入り、F111複座ジェット機を拝借して、スティーブの操縦でカイロに飛んだ。レーダーに捕捉されるのを防ぐため、ダイアナはジェットを透明化、ステレス化する技を使った!独立記念日の花火の中を離陸した。

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カイロのマックス。オイルキングの「国を取り戻したい!」という願いを聞き入れ石油を手に入れようとしたが「すでにサウジに売っている」というので、近衛兵を譲り受けた。国境に城壁を築き、リアル王朝を復活させて金儲け。難民の出入りを禁止し水源を切り、激しい貧富差が発生した。

カイロにやってきたダイアナとスティーブはマックスのコンボイを追った。カーバトル。マックスが撃って来る!ダイアナが車外に出て、車と並走しながらヘスティアの縄でコンボイを混乱させ、大型トラックが宙返り。マックの車にすがり「石を渡して!」と叫ぶと「目の前だ!」という。分けわからなかった。(笑)

コンボイに母親と子供が巻き込まれ、これを救出する間に、マックスは「次の石油はどこだ!」と去って行った!

壁が容認されると、マックスとソ連で世界の石油の1/2を保有することになるという、マックスは石油王になった。

ダイアナは石の持つ力を調べ「石を持った国は願いが叶うが代償を払うために滅ぶ」という事実を知った。スティーブはこのことで悩む。しかし、ダイアナは「あなたと一緒におれればいい」と意に介しなかった。

マックスはポルシェを駆って他人の願いを叶え続け、牧場のなかに高層マンションが建つというマンションブームがやってきた。そして、さらなる力を求めてアメリカ大統領の願いを叶えようとホワイトワウスに向かった。

マックスが大統領に願いを聞くと「核ロケットを配備したい」という。マックスは「法も税制も俺の国のように扱って欲しい」と要求した。大統領が「グローバル衛星放送で世界を乗っ取れるぞ!」と示唆した。

ダイアナは「マックスを止めなければ!」とゴールド・アーマーを付けて、マックスと共にホワイトハウスに乗り込んだ。そこにバーバラもやってきた。ダイアナはヘスティア縄でマックスを捕えたが、逆にバーバラに振り回させる。

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ふたりは大統領専用ヘリで衛星放送基地に飛び立った。ソ蓮が反撃態勢に入り、ワシントン市は暴動勃発で大混乱。

ティーブはダイアナに「良い人生をおくれた。君には使命がある。世界が待っている!」と告げ、去って行った。ダイアナは「あなたがどこにいても愛している!私が願を消す!」と走り始めた。ヘスティア縄を投げ、空を飛んだ!

軍が管理する衛星放送基地に入ったマックス。早速「世界の皆さん、あなたの人生を変える。願うだけだ、どんな要望も自由だ!」と放送開始。ところは放送が始まるや世界中が混乱し始めた。

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ダイアナはゴールド・アーマーの翼を拡げ、空から衛星放送基地に潜りこんだ。バーバラがチーターに変身し、飛び掛かってきた。ダイアナは「願いを取り消して!大事なものを失う!」と促すが「どうして私を見下す!」とチーターは戦いを止めない。ふたりは海中に投げ出され、ここで激しく戦った。ダイアナが「ごめん!」とチーターの息を止め、陸上に持ち帰った。

衛星放送室に入り「誰も代償を払ってまで願いをしようとも思わない。これが真実よ!」「あなたの代償は何に?あなたには真実が見えるはず、ソ連の反撃命令が出た、世界が怯えている!」と懸命にマックスを説いた。そこに息子のアリスタから「パパ助けて!」と電話が入った。マックスは「願いを取り消す!」と宣言し放送室を出ていった。

世界は元に戻りは始めた。

感想:

魔法の石を手に入れたマックスの暴走。石油利権を手に入れ大統領の願いを聞いて、世界を意のままにしようと企むマックス。世界の石油権益の確保、利権とホワイトハウスの癒着、軍事力の増強等々まさにレーガン大統領時代のアメリカだった。1980年代の生々しい歴史を見るような物語の展開、これが見どころでした。

マックスがまき散らした暴れ狂う人間の欲望世界を、ダイアナが「愛を持って真実に向き合え」と武力による争いでなくマックスを説得するということで、世界を救ったという物語。これは前作と大きく異なるところですね!

テーマは真実。いつの時代、環境にあっても変わらない価値感。ワンダーウーマンの最大の武器は説得力、“真実“だった! 5000年を生きる彼女に課せられた使命。ダイアナはトレーバーとの恋を楽しんでいては力がでない、これでは世界は救えないとトレーバーとの恋を諦めるという苦渋の選択に涙でした。前作に比してダイアナの弱さをも描くという人間性に満ちた作品になっていました。

この時代のファッション、音楽、世相に触れながら、ワンダーウーマン迫力あるバトル。カイロでのカーアクション、ホワイトハウスでのバトル、放送衛星基地での海中バトルなどのスケール感のあるバトル、戦闘機のステレス化、ゴールド・アーマー翼での飛行など新しいガゼットを楽しみました。

女性同士のバトルということで、ワンダーウーマンを凌駕するバーバラの登場、ホワイトハウスの警備員を吹っ飛ばして暴れまくるという、これは歴史に残りますね!(笑)バーバラ役はなかなかの難役で、クリステン・ウィグが頑張りましたね!

欲が過ぎると身を亡ぼす!気をつけねばいけませんね。

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「グエムル 漢江の怪物」(2006)韓国の闇が透けて見える怪獣物語!

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ポン・ジュノ監督が描く怪獣映画は?とWOWOWで観ました。驚きました!これまでに見たことのない怪獣物語でした。(笑)

アメリカ軍がソウルの中心を貫く漢江に垂れ流したホルムアルデヒトで変魚が誕生、成長して人を襲う。喰われた娘を取り戻そうと戦う一家を通して、その背後にある“韓国の大きな闇”を描くというパニック・エンタテインメント。

大きなテーマを持った怪獣映画です。怪獣物語としても楽しめますが、背後にある韓国社会に対する“監督のメッセージ”こそが見どころです。日本も同じような問題を抱えているだけに面白いです。

この作品を観るには韓国における反米軍感情やベトナム戦争に参加した韓国を知っているとよいと思います。

こんな作品を作っていて「パラサイト」(2019)で、よくぞポン・ジュノ監督はアメリカでアカデミィー賞を貰えたな!と(笑) アメリカも懐の大きな国だと思いました。

監督の描く作品ではお馴染みの、冒頭で描かれる主人公の顔がラストでどう変化したか、これがテーマです。

監督:ポン・ジュノ、脚本:ハ・ジョンウォン パク・チョルヒョン、、撮影:キム・ヒョング、音楽:イ・ビョンウ。

出演者:ソン・ガンホ、コ・アソン、ピョン・ヒボン、パク・ヘイル、ペ・ドゥナ、キム・レハ、パク・ノシク、ヨン・ジェムン、イム・ピルソン、他。


『グエムル -漢江の怪物-』日本版劇場予告編

あらすじ(ねたばれ):

2000年2月9日、駐韓米軍第8部隊ヨンサン基地内慰安室。医官によってホルムアルデヒトの処分を命じられ、キム補佐官が漢江に通じる下水にこれを流した。

2000年6月、漢江で釣り人が小さな変異魚を見つけたがそのまま河に戻した。

2006年10月、漢江大橋で河に身を投げて自殺者の遺体が上半身の一部と左脚だけで発見された。

河原に遊びにくる客目当ての小さな店があった。店番は金髪に頭を染めトレーナー姿で気の利かない居眠りばかりのパク一家長男カンドゥ(ソン・ガンホ)。父親のヒボン(ピョン・ヒボン)に尻を叩かれて仕事、頭が弱そうな男です。今日も客に出す焼きスルメの脚を一本喰った!」と注意される始末。(笑)

ポン・ジュノ監督の作品では、いずれの作品でも“頭が弱そう”な人が重要人物で登場しますが、韓国人をオマージュしているようです。(笑)

そこにカンドゥの娘小学校1年生のヒョソン(コ・アソン)が授業を終えて帰宅、父と一緒に酒を飲みながらTVでカンドゥの妹・ナムジュ(ペ・ドゥナ)が優勝を掛け出場しているアーチェリー選手権を見ていた。

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橋桁に変なものが現れたと客たちが大騒ぎ。河を渡ってこちらの岸に上がり客たちを襲ってくる。

怪物はナマズのような形態で、牛の3~4倍はある。尾で物にぶら下がることができ、またこの尾で人を捕え口に入れることもできる。

カンドゥは米軍人のドナルドと共に観光客を救おうと怪物に挑み、帰り血を帯びた。遂に退避とヒョソンの手を取って逃げたが、実はその手は別の子のものだった。逃げ遅れたヒョソンが怪物に掴まり河の中に。泣き叫ぶヒョソンを助けようと河に飛び込んだが怪物は向う岸に消えた。

退去命令が出され、軍隊が出動し、河川敷は立入禁止となった。

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合同慰霊祭。そこに試合を終えたナムジュが銅メダルを持って駆け、ヒョソンの遺影に手向けた。さらにカンドゥの弟・ナミル(パク・ヘイル)が酒を飲みながらやってきた。ナミルが大学を出たが、学生運動をやっていて、未だに職に就けない。ヒボンは「ヒョソンのお陰で家族全員が集まった」というが、ナルミがカンドゥに「知らない人の手を引いて逃げるバカもの!」と罵声を浴びせて取っ組み合いになり、これを止めようとヒボンとナムジュが加わり、大騒ぎになった。(笑) ヒョソンの遺影はこの騒ぎを笑っているようだった!(笑)

避難した人たちは体育館に収容され、そこに黄色い防護衣の男(キム・レハ)が「ヨンドに居た人、怪物に触れた人、手を挙げてください!」とやってきた。カンドゥが手を上げ「血を浴びた!」と叫んだ。

TVで「怪物は強力なヴィルスをも宿主動物の可能性が高い」というニュースが流れた。

パク一家は隔離病院に収容された。夜、「絶食!」と医者に言い渡されたにもかかわらず、(笑)缶詰を食っていたカンドゥの携帯に「助けて!大きな、深い、下水道溝にいる」とヒョソンの声が入ってきた。

河川道を消毒していた職員が怪物に捕捉され、ヒョソンがいる下水道溝に放り込んできた。亡くなっている人もいればまだ息のある人もいた。怪物は獲物を一時保管する習性があるらしい。ヒョソンはその人たちの携帯が使えないかと集めていた

ビニールで隔離された状態でカンドゥが家族立ち会いのもと警官に「ヒョソンが生存しているので救って欲しい!」と訴えたが、医者・警官が「精神病だ」と相手にしない。ヒボンが「大学卒のくせに警官ひとり説得できない!」とナミルを罵ると、探偵を頼もうというとになった。

探偵が準備した車で病院を脱出。廃品回収所でヒボンが彼らと交渉し、消毒車、猟銃、地下排水溝地図を得た。1140万ウオンを支払った。困ったときに頼れるのは裏組織らしい。(笑)

ニュースで隔離病院から脱走し追われているのはパク一家の4人だけだと知った。(笑) 立入禁止地域に入るために検問所で金を握らせ、下水道地域に入った。次から次へと、暗い陰鬱な下水道を見て回ったが、ヒョソンが居るという徴候は得られなかった。どの作品でもそうなんですが、闇を描くのが実にうまい。下水道の中を探索する映像が印象的でした。

道路を歩いていて、冷たい水滴が落ちてくる。「冷たい!」とカンドゥ。上の道路を歩く幼い兄弟が漏らした小便だった。(笑)

この兄弟は親を亡くして放浪生活をしていた。パクの店に入り食料品をかっぱらって逃げているところを、怪物に捕まり、ヒョソンがいる下水道溝に放り込まれた。ヒョソンが生死を確認すると兄はすでに息切れていたが、弟・セジュには脈があった。ふたりなら心強いと、ヒョソンがセジュを自分の隠れているドカンに匿った。

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カンドゥたちが自分の店に戻ってきた。カップ麺を食べたたら眠くなってきた。ヒボンがナムジュとナミルに「カンドゥは間抜けに見えるか?」とカンドゥの生い立ちを語った。「幼いころは頭がよかったが食べものがなくて人の畑を荒らし、よく寝た!頭がいかれたらしい。お前たちには子を失った親の気持ちが分かるか?だからカンドゥに優しくしてやれ!」と説くが、ふたりは舟を漕いでいた。(笑) このヒボンの話には涙が出ます!

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そのときカンドゥが目覚め、外に怪物が来ているという。覘くと怪物がいた!カンドゥとヒボンは猟銃をぶっ放した。怒り狂った怪獣が店に押し倒して河の方に走る。3人でこれを追って撃った。ナムジュがアーチェリーで矢を放った。が、怪獣の逆襲でヒボンが即死し、三人は逃げた。カンドゥは無念がった。カンドゥは警察に捕まり、感染者として病院に送られた。

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TVが「米軍兵士ドナルドの死。そして米軍とWHOは保菌者2人が逃亡中であり、謎の生物の捕獲に失敗したことで、“韓国に解決を任せられない”。このための解決策はエーズエント・イエローという細菌テロ対策用に開発した最新式化学剤、ウィルス汚染地域に散布すれば関係10km内の細菌が死滅、が有効である」と報じた。

これを機に韓国市民の間に、この薬品使用に反対運動が起こった。また、カンドゥへの同情が出始めた。

ナミルは携帯電話会社に勤める先輩(イム・ピルソン)に頼み、ヒョソンが発した電話位置情報を記録したパソコンを使わせてもらうが、先輩はパスワードを探してくると席を離れ、ナミルを掴まえて償金を得ようとしているやつらと取引をしていた。ナミルはパスワードの見つけその位置を把握した。が、やつらに追われ逃げ、「ウォニョ大橋」とカンドゥとナムジュにヒョソンの居場所を送って、気を失った。

身を隠していたナムジュが捜索を開始してウォニョ大橋付近の地下水道を捜索中に怪物に出会い、尾で跳ね飛ばされて溝に落ちた。

カンドゥは病院で「ウォニョ大橋に娘が生きている」と大騒ぎし、米人医師の診断で「前頭葉にウィルスが侵している。いては困る、国家機密だ。亡くなったドナルド兵士にもウィルスはいなかった」と呟き、前頭葉の手術を指示した。(笑)

下水道の溝にいるヒョソンとセジュ。ヒョソンは怪獣が運んできた人たちの衣類を繋いでロープを作り、セジュに「警察と軍隊を連れて来るから待っていて!」とローブをつたって外に出ようとしていたところに怪獣が戻ってきた。ヒョソンは警察と軍隊が役立たないことを知らなかった!

カンドゥは包帯交換に来た看護師を、自分の血を採取した注射器で脅して、人質として病院を脱出し、ウォニョ大橋に走った。

ナミルは目覚めるとホームレスの男(ヨン・ジェムン)に匿われていた。ナミルはこの男と酒瓶とガソリンを持ってタクシーで火炎びんを作りながら、ウォニョ大橋に向かった。

そのころ、エーズエント・イエローに反対する市民デモ隊が漢江市民広場に集まっていた。

ヒョソンとセジュを飲み込んだ怪物が漢江市民広場に現れた。米軍がエーズエント・イエロー化学剤を散布した。市民の中には血を吐くものがでる。怪獣が弱って倒れたところで、カンドゥはヒョソンとセジュを怪物の口から引き出したが、ヒョソンが絶命していた。

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息を吹き返した怪物をナミルが火炎瓶で、ナムジュが火のついた矢をアーチェリーで射た。のたうちまわる怪物をカンドゥが止めを刺した

雪の降る漢江の川原。夜、小さな店に黒髪のカンドゥが外に異変を感じて猟銃を手に窓を開けて河を見るが何も居なかった。側でセジュが暖かそうに寝ていた。TVが「アメリカの調査委員会はウィルス事件の結果を発表したが、ウイススは発見されなかった」と報じていたが、カンドゥはこのニュースを聞くこともなくTVを切って、カンドゥがセジュを起こし、茶わんに大盛りのごはんを食べさせる。静かな夜が更けていった。

感想:

監督特有のハラハラドキドキ、それでいてユーモアたっぷりで、うまくエピソードを紬ながら物語が展開し、その先に大きな罠があるという物語。

怪獣に捕らわれた娘を取り戻そうと、当初はいいかげんなカンドゥに反発しながら、家族として力を合わせて怪物を倒すという、家族の強い絆を見ることになりました。家族が結ばれていくなかでヒボンの言葉、「子供を失った親の悲しみを知れ!」を寝た振りをして無視していましたが、ふたりはしっかり聞いていました。子供を失う話は「母としての追憶」(2009)に繋がるんですね!これを演じるピョン・ヒボンがとても良かった。ほろりとさせられました。

ここでも階層社会の矛盾が描かれていました。ナミルが「社会の民主化に役だったのに」と今、職がないことに嘆くシーン。“こね”が利く社会。ラストで見せる親の居ないセジュを引き取って過ごすカンドゥが、山盛りの飯を食べさせるシーン、貧しい人に飯の食える国にしてくれと訴えているようです。

パク一家はウィルス感染者としての嫌疑を掛けられ当局から追われながら、ヒョソンを取り戻そうと奔走するが、実は米軍が大量のホルムアルデヒトを漢江に放出したことを隠すために、怪物によるウィルス感染を持ち出し、エーズエント・イエロー化学剤で怪物を処分しようとした罠に翻弄されていたという結末。まさに米韓地域協定の矛盾、さらにベトナム戦争の枯れ葉作戦で苦しむ“韓国の実情”が描かれたように思われます。

カンドゥが脳の前頭葉の記憶を排除する手術を受けながら、こんなことしても無駄だぞ!と立ち上がり、怪物に止めを刺したことにこの作品の意味がありましたね!

銃を常に身近に置き、漢江を睨みながら生活するカンドゥ。今までとは違った自らの力で生きていく強い気迫が見られます。

怪物については日本ならもっと上手く作れるぞと思いましたが、このシナリオが凄い!日本映画の限界がここにあるように思いました。すばらしい作品でした。

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