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「カンダハル 突破せよ」(2023)欺瞞に満ちたアフガン戦場、ここから脱出する工作員と通訳の絆!

 

アメリカ国防情報局の職員ミッチェル・ラフォーチュンがアフガニスタン赴任時に体験した実話をベースに描いた“アクション”。戦場が“アフガニスタン”ということで観ることにしました

原作:ミッチェル・ラフォーチュンの「Burn Run」(2016)アメリカ国防情報局で働いていた氏が、スノーデンのリーク事件(2013)のあった年にアフガニスタンに派遣されていた経験を基にしているらしい。2015年あたりのアフガニスタン情勢で描かれていると推察。

アフガニスタンの情勢、地形(ロケ地:サウジ)がしっかり生かされたリアル感があるアクション作品だが、混迷するアフガニスタンへのメッセージになっている面白い作品だった

監督:リック・ローマン・ウォー撮影:マクレガー、編集:コルビー・パーカー・Jr.音楽:デビッド・バックリー。

出演者ジェラルド・バトラー、ナビド・ネガーバン、アリ・ファザル、ハキーム・ジョマー、タラヴィス・フィメル、ニーナ・トゥーサン=ホワイト、レイ・ハラティアン、他。

物語は、

イラン国内で核開発施設の破壊工作に成功したCIA工作員トム・ハリスは、CIAの内部告発による機密情報漏洩で全世界にその正体が明らかとなってしまう。ミッションを即刻中止し、中東からの脱出を図るトムは、30時間後に離陸する英国SAS連隊の飛行機に搭乗するため、アフガニスタン南部のカンダハルにあるCIA基地を目指す。

しかし、イランの精鋭集団・コッズ部隊、パキスタン軍統合情報局(ISI)、さらにタリバンの息がかかったゲリラ、金次第で敵にも味方にもなる武装集団など、トムをめぐる追跡劇は敵と味方が入り乱れる混沌としたものとなっていく。


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あらすじ&感想

イランのコム。M16 所属のトム・ハリス(ジェラルド・バトラー)、米CIAに請われてCIAのオリバー(トム・リス・ハリーズ)と共に通信業者に化けてイラン核施設に潜入。CIAイラン・ミニッションセンターの遠隔操作で爆破のための準備を実施。警戒兵の尋問をうまく交わしてアジトに帰宅。

この計画がCIAのジェームスによってイギリス人記者ルナ・クシャイ(ニーナ・トゥーサン=ホワイト)経由でデア・ヘロルド社に送信された。これはまさにスノーデン事件だ!

アジトに戻ったトムにロンドンの妻から電話が入った。離婚を言い出され、娘の卒業式参加を強制される。(笑)そこに、アフガニスタンのヘラートからCIAハンドラーのローマン(タラヴィス・フィメル)から次に任務を要請された。

核施設場爆破に成功。トムはオリバーと別れ、航空機でヘラートへ飛んだ

核施設爆破で

イラン政府。政府高官とイラン革命防衛長ファルサド大佐(バハドール・フォラディ)が核爆発汚染地域を空中偵察し放射線汚染はほとんど地下と判定し、イギリスの記者確保を指示した。

タリバン指導者評議会北部同盟がシバルガンを襲撃。クンドゥーズに兵を終結し作戦を検討中。弾薬不足が問題だった。

パキスタン軍統合情報局(ISI)。会同でアメリカの再来に備えるために人をまとめる施策重視を決定。会同にエーゼントのカヒル(アリ・ファザル)とタリバン幹部ラソール(ハキーム・ジョマー)が参加していた。カヒルには「くだらない報復をするな」とラソールには「だれのお陰で今の地位に就けたか(裏切るな)」と長老から注意された。

トムはヘラートでローマンから次の任務を受けた

トムは乗り気でなかったが、高額な金と3日間の任務ということで受けた。任務はダイバードの秘密滑走路の奪取だった。与えられたのは通訳のモー(ナビド・ネガーバン)とSUVだった。

夜間、モーの隠家があるガンダブに向った

このころ、イギリス人記者ルナがイラン革命防衛隊に拘束され、ファルサド大佐の尋問を受けていた。

モーの隠れ家に着いたトムはここで通信器、武器、爆薬を受け取った

出発は明朝とした。モーが妻の知人ナーバルにあった。モーは妻の行方不明の妹を探しにアフガニスタンに戻っていて、トムの通訳に雇われたのだった。ナーバルは「タリバン支配下では教師に居場所はない!何かあったら連絡する」と言う。

デア・ヘロルド社がスクープしたCIAによるイラン核爆破計画を公開した

実行者トムが写真入りで紹介された。ローマンから「オリバーが電話に出ない」とトムに連絡してきた。トムはオリバーのことが心配だった。

恋人と寝ていたカルヒに「犯人がヘラードいる」と出動命令が下った

 CIA本部。トムを見捨てる案もでたが、M16からの借物でさらに第232連隊が

アフガニスタン残っており、英国機が30時間後に立つ予定があった。カンダハルのCIA基地にC-130 を1分だけ着陸させトムを救出するとして、M16 に伝えた。

連絡を受けたトムはモーが運転するSUVで600km先のカンダハルを目指して出発

ヒルは軍用トラックでトムを追う。ラソールにヘルマンド州で接触し、報酬は2倍、赤いユニット(タリバン)との協力を求めた。カヒルがトラックからオートバイに替えて荒野を突っ切る。

トムは市場に入りSUV車を捨てトラックを拝借して逃走。これを追うカヒルトムは市場の中でカヒルを振り切った。旧友を訪ねヘリを借用することにしてデクラームへ向かう。砂漠や荒廃した原野を走る。

夜間、トムは異音でトラックを停止。異音はヘリの飛行音だった。低空から暗視装置で射撃してくる。漆黒の闇の中での攻撃!これも見せ場だった。トムの射撃で撃墜した。(笑)モーが負傷した。

トムは負傷したモーに「6度も通訳を伴い任務を果たした。通訳はアメリカかイギリスに連れ出されISISに襲われ吊るされた。俺たちは通訳に頼っている。言語や文化が分からない俺に命を賭けてくれる。なのに俺たちはこの国をどうすべきかを指図する。半分も礼を言わない。しかし通訳がアメリカに行けてよかった、家族も一緒だ」と話し掛けると「全員じゃない!」とモーが反論した。この会話は奇しくもガイ・リッチー監督の「コヴェナント」(2023)で取り扱ったテーマだった。モーは長男がここで殺されたことを悔やむ。そしてトムに「娘のところに帰れ」という。また、「家族といるようだ」とも話す。

このようなヒューマンなエピソードを入れてくるところが面白い!原作者ミッチェル・ラフォーチュンの言いたいことが生かされていると思った

 夜が明けると前方に数量の車両が現れた。タジク人の軍閥だった。知合いのイスマイル(レイ・ハラティアン)だった。

タジク民兵キャンプ

イスマイルは「昨日だったらヘリがあった。タリバンが北部で使うと持って行った」と言い「あの頃は面白かった!イデオロギーを潰そうと皆強くなった」と話す。これを聞いたモーが「貴方を知っている。裏切り者でヘラートを破壊した」と言い出した。イスマイルは「ビジネスだ!」と言い、700年生きた王の話を持ち出し、寝返ったから生き延びた話をした。モーは「この話は知ってる。だからこの国はひとつになれない!」と答えた。イスマイルは「仇討ちか!」とモーに拳銃を渡したが、モーは「神が貴方を赦さなくても私が許す」と答え、殺気だったこの場は収まった。

トムは「済まなかった。彼を兄弟と呼ぶのは屈辱だ。息子を殺した彼に力を与えた」とモーに謝った。このエピソード今のアフガニスタンに求められることで、ラフォーチュンが言いたいことだと思った。

トムはトラックでカンダハルに向った

あと6時間という位置に居た。カヒルとラソールが近づいていた。モーの「何時戦争は終わる」にトムが「現代の戦争には終わりがない!」と答えていると全面に軍用車両が待ち伏せしていた。イスマイルの仕業だった。トムは「あのとき殺すべきだった!」と悔やんだ。

ふたりはイスマイルの軍に捕えられ彼らの砦に収監され、モーは吊るされた

 コッズ部隊が砦を囲み、攻撃が始まった。この特殊部隊に紛れ込んでいたローマンによってトムとモーは救出された。トム、モー、ローマンの3人が軍用トラックで砦から逃走した。コッズ隊がこれを追う。

これを見たカヒルが「自分が捕まえる」とオートバイで大きく迂回。コッズ隊お追撃を受け、ローマンが車上射撃中に負傷したが手当ができない。ローマンは車から飛び出し自分を犠牲にして赤ユニットの追撃を遅延しトムを逃がした。CIA本部部長が「自分が責任を取る」と独断でGBU爆弾を使用しコッズ隊を阻止した。

トムは追いついたカヒルと拳銃で撃ち合った。トムは脚に被弾、カヒルは腹部に受傷して立ち上がれない。しかしトムは止めを撃たなかった。トムとモーは飛び立つ寸前のC-130に飛び込んだ。

砂漠での追撃戦、シナリオに無理があるが映像としては面白い。ちょっとやりすぎたかな!(笑)

イギリスの記者ルナ・クシャイがイラン・パキスタン国境で開放された。ファルサド大佐が「モサド職員を捕らえたとき彼にこう言った『テヘランに長居するとイスラエルが無くなるぞ』と。彼は殺されると受け取ったが心からの助言だ。国に尽くす者同志は国に帰って確認するんだ。何のために戦うか」とルナに声を掛けた。意味深いセリフだった。 

まとめ

英国の工作員トムはCIAの要請でイラン核施設を爆破し、アフガニスタンで新たな任務に就く中、核施設爆破計画が国防省内部からリークされ、顔が晒されたことで懸賞金が掛けられ、現地通訳モーと共にコッズ部隊、タリバン軍閥、赤ユニットの追撃を逃れ国外に脱出する物語。

核施設爆破劇は虚構だが、脱出劇になるとリアリティがあり、原作者ミッチェル・ラフォーチュンの経験がしっかり生かされた人間臭い物語となり、さらに混迷するアフガニスタン、国際社会へのメッセージが込められており、この種作品にあって異色なものになっていると思った

工作員のトムと現地通訳モーの絆をメインにした物語というのがいい

脱出アクション。地上兵器主体、在来兵器の戦闘をロケで見せる。とてもリアリティでよかった。夜間戦闘、GBU爆弾に迫力があった陸上自衛隊の富士火力演習でもこれほどの迫力はない。サウジの砂漠、荒廃地をアフガニスタン戦場に見立てたロケによる戦闘シーンは疾走感があり、とても楽しめるものになっていた。

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