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「ジョゼと虎と魚たち 」(2020)痛みを感じ“生きる力”と“大きな愛”を知る!

 

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原作は田辺聖子さんの同名短編小説、2003年に実写映画化されています。これをアニメ化し、ジョゼに清原果那さんを当てているということで、観ることにしました。

足の不自由な女性・ジョゼと管理人と呼ぶ大学生・恒夫との関係性のなかで紡がれる純愛物語。

健常者という言葉は1度ジョゼが叫ぶだけで、障がい者という言葉は出て来ません。実写版はこの関係に田辺さんの毒が利いた描写があったと記憶していますが、時を経て、今の時代、お互いの気持ちを理解し、自分自身の心と向き合い、前に進んで行こうとする、クリスマスに観るにふさわしい幸せを感じる、暖かい恋物語になっていていました。

監督:タムラコータロー、脚本:桑村さや香、キャラクター原案:絵本奈央、キャラクターデザイン:飯塚晴子、総作画監:督飯塚晴子、撮影監督:神林剛、音響監督:若林和弘、音楽:Evan Call、主題歌:Eve

声優:中川大志、清原果耶、宮本侑芽興津和幸、Lynn、松寺千恵美、盛山晋太郎、他。


アニメ映画『ジョゼと虎と魚たち』ロングPV

あらすじ:

ダイビングショップでアルバイトする鈴木恒夫、二宮舞、松浦隼人の三人。アルバイトとダイビングに明け暮れる毎日。恒夫は海洋生物学科を専攻する大学生で幻の魚クラリオン・エンゼルを求めてメキシコ留学を目指して学費稼ぎに必死だった。そんな恒夫に舞は思いを寄せている。隼人がそんな舞の気持ちに気付いていたが・・・。

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そんなある夜、ショップを終えての帰り、暴走する車椅子から飛び出してきた女の子(ジョゼ)を受け止めたことが支所の出会い。ジョゼは祖母チヅから「外は恐ろしい怪獣ばかり」と他人を避けて暮らしていて、この夜外出して車椅子が暴走したのだった。

ジョゼの最初に発した言葉が「あんちゃん、おおきに!」だった。(笑) 年頃なのに男の子などと付き合ったことがない。容姿は歳に似合わないちょっと幼げで可愛いが、外界から全く閉ざされた生活のため、態度が大着で言葉が汚い。(笑) これを清原さんが上手い大坂便で演じてくれます。

お礼にと連れていかれたジュゼの家。恒夫はご飯にタコ焼きをいただくが、ジョゼは話もせず本を読み、襖の中に消えてしまう。彼女の世界は襖の中。祖母はら「家にいるだけ!その間私はパチンコ」という奇妙なアルバイトを持ち掛けられ、恒夫はこれなら金が稼げると引き受け、ジョゼの管理人になった。

ところが大変だった。ジュゼは襖の中で「正座しておれ!」とこの正座が1週間も続いた。そして「四葉クローバー10本探して来い!」。10本の四葉のクローバーを探してもらったが、ジョゼには何にも良いことも起こらない。恒夫はバーで仲間と飲んで、とにかく稼ぐ!と頑張ることにした

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恒夫は卒論の指導を受けている教授から奨学金でメキシコに行けると聞かされ喜んだ。襖の中でジョゼは海の中で魚たちと戯れている夢を見ていた。

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恒夫がやってきて、ジョゼがいるかと襖を開けると、そこは美しい海中のようで、美しい絵があった。ジョゼが居ない!ジョゼはこっそり家を抜け出していた。慌てて追いかけた恒夫に「海に連れて行け!」と命令。初めての電車旅なのに偉そうに乗ったことがあるふりをする。(笑) 海に着くと初めての海に大興奮。「海の味はどんな味?」と車椅子から這い出して海に。恒夫は背負って海に入り海水を舐めさせた! このことで祖母から大いに叱られたが・・・。

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祖母が居ない間に、ふたりは外出してグレープを食べたり、観覧車に乗ったり、ステークを頬張ったりと楽しんだ。水族館に連れ出し、恒夫がジンベイ鮫の説明をした。この水族館の美しいこと!見事です。

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祖母もこんなふたりを見てジョゼに仕事を勧める相談員に、その必要なしと断る始末。

恒夫は図書館に連れ出した。そこでジョゼはフランソワーズ・サガンの「失われた横顔」を借りた。「私のサガンが好き!この本を読む人は初めて!」と司書の岸本花菜さんと仲良しになった。ジョゼには初めての女性友達となった。花菜さんに「彼氏?」と言われて、ジョゼは真っ赤になった!(笑)

恒夫はジョゼをアルバイト先のダイビングショップに連れていった。これが拙かった!舞が馴れ馴れしく恒夫に話しかけるのを見たジョゼは怒ってひとりで帰り、「もう二度と来るな!首!」と告げられた。(笑)

ジョゼが図書館に花菜さんを訪ねると「子供たちの読み聞かせ会を係がいなくなって開けない、代行やって!」と頼まれた。ジョゼには読み聞かせは初めてのことで上手く出来なかったが、絵を描くと子供たちがとても喜んでくれることを知った。

恒夫は留学も決まり、自作のクラリオン・エンゼルの行灯を持ってジョゼに会いに来た。クラリオン・エンゼルに会うために勉強してきたことを話し、ジョゼに会いたい気持ちを明かした!

ジョゼが「あんたとなら一番怖い虎に会える怖くても縋れるから!」とふたりで動物園に出掛けた。虎を見ながらジョゼが「あんたのように、絵の仕事をしたい」と打ち明けた。

突然祖母シヅが亡くなった。恒夫は「自分が相談に乗るから絵の道は捨てるな」と諭したが、民生委員の人から「現実を考えなさい!」と促され、絵を描くことを諦め、恒夫に管理費は払えないことを告げた。舞から「恒夫は留学が決まっているから自由にしてあげて!あんたと付き合っているのは同情からよ」と聞かされた。

恒夫が絵の本を買ってジュゼを訪ねると、部屋に絵がない。全て捨てたという。「最後の仕事や!海に連れて行って!」と命令。海にきて、ジョゼは「塩っぱい!」と泣き「絵を描くのは止めた」という。「好きなことを諦めるな!」と諭すと「健常者には分からん!」と。

雨が降ってきた。ジョゼが車椅子で帰り始め、恒夫が追っかけた。広い道路に出たところで車椅子がひっくり返り、ジョゼが道路に投げ出され、恒夫が助けようとして乗用車に跳ねられた。

恒夫が目を覚ましたとき「ジョゼは?」と看護師に尋ね、怪我んはないと聞いて安堵した。しかし、恒夫は右腿骨折で緊急手術を受け、医者から「いままでのように走ったり歩くことはできないかもしれない」と告げられた。教授から「3月に留学は無理なので別の学生を推薦した」と告げられた。

ジョゼの見舞いに「君のせいではない。リハビリしてもダメかもしれない」と、ジョゼは何も言えなかった。

舞の見舞いに「留学とかどうでもいい。俺はいままで何も分かっていなかった。欲しいものに手をだすことが如何に怖いか!」と心境を明かすと、舞は「恒夫が好き」と告白した。そして、ジョゼを尋ね「恒夫が留学を諦めたから私が貰う。あなたより私の方がずっと幸せにできる」と告げた。ジョゼは「管理人は諦めんよ!それがあいつや!私は何も言えんが、気持ちの大きさでは負けん!」と言い返した。どん底の体験を持つジョゼだからこそ出てくる言葉だった。「じゃ何かしてごらん!」と泣いて舞が帰っていった。この様子を隼人が見ていた。

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ジョゼが図書館で本を読み、絵を描き、花菜さんの力を借りて絵本を作り始めた。その絵本を子供に読み聞かせる日、隼人に頼んで恒夫を病院から連れてきてもらった。

子供たちを前で、ジュゼは自作の「人魚と輝きの翼」を語った。物語はジョゼが恒夫に出会ったときから自分が如何に救われたか、恒夫の脚が折れても強い心で夢を目指せ、「心の大きな翼でどこにでも飛んでいけ!」というメッセージを伝えるものだった。恒夫は泣いた。この日からの恒夫のリアビリは留学に挑戦するためにと変わって行った。

恒夫は退院の日、ジョゼに迎えにくるよう伝えていたが、ジュゼが来なかった。家にもいなかった。動物園の虎の居場所にやってくると、積もった雪に車椅子の轍があった。その轍は街へと続いていて。ジュゼは自立する勇気を恒夫から貰っていた。

ジョゼを掴まえた恒夫は「ジュゼが好きだ!」と伝えた。するとジョゼも「管理人が好きや」。恒夫がキスすると「想像したんと違う!」と。(笑)

 

感想:

タイトルの意味、実写版ではよく分からなかったが、こんなに鮮やかに心に響いてくるとは思わなかった!

ジョゼという名はフランソワーズ・サガンの小説から採った名前。決して真に幸せにはなれないと諦念しながらも、何かに集中してやってみたいと思っている子。

闇夜に恒夫と偶然な出会いで、障がい者だからと外の世界を知らず閉じ込められていた心が開かれたところに、祖母シヅの死で生活の場を失い管理人恒夫との別れを決意するまでの前段。ここまでは実写版とほぼ同じ展開で、外のいろいろなものに触れふたりの距離がどんどん埋まっていくラブストーリーが心地よい。ここからの後段失ってみて気づく痛み、これを乗り越えて生きていこうとする相手への想いが、実写版では描かれない本作の肝となる部分で、“ジョゼという名にふさわしい”物語の完結編としたことに納得、すばらしい結末だと思いました。しかし、やや説明不足で急ぎ過ぎましたね!

ジュゼの「健常者には分からん!」という痛みと「気持ちの大きさでは負けん!」という痛みを知ったが故の言葉に“生きる力”を感じます。また恒夫の「欲しいものに手をだすことが如何に怖いか!」という言葉に、自分が怪我をしてジョゼの痛みが分かったという“大きな愛”を感じます。

アニメだから描けるふたりの美しい心の交流を見せてくれます。ふたりの心はで結ばれており、冒頭のダイビングの映像から始まり、ジョゼが夢見る海中、ジョゼが初めて見た海の風景、水族館など海の描写がふたりの心象を著わすようにとても美しく輝いている。そして物語にリアルさを与えるための美術、部屋や街の風景が実写のように繊細に描かれています。

大坂出身の清原さんの声の演技が、歯切れよく、生意気そうで切なくて、うまい演技でした。そしてEvan Callの曲が、ジョゼと恒夫の気持ちを掻き立てるように雰囲気に合っていてとても良かったですね!

年末にすばらしい作品に出会えてよかったです!本年のレビューはこれが最後。皆さん、よいお年をお迎えください!!

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