映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「プリシラ」(2024)愛はあったか、歌わないプレスリーの妻の苦悩と旅立ち!

 

エルヴィス・プレスリーの歌が聞けるかと楽しみにしていたら、一曲もなかった。(笑)歌うエルヴィスの裏の世界、妻プリシラの離婚にいたるまでの物語だった

原作:プリシラプレスリーの回想録「私のエルヴィス」(1085)、未読です。

監督・脚本:「マリーアントワネット」(2006)のソフィア・コッポラ撮影:フィリップ・ル・スール、編集:サラ・フラック、音楽:フェニックス、音楽監修:ランドール・ポスター。

出演者:ケイリー・スピーニー、ジェイコブ・エロルディ、ダグマーラ・ドミンスク、アリ・コーエン、ティム・ポスト、オリビア・バレット、他。

物語は

14歳の少女プリシラケイリー・スピーニー)はスーパースターのエルビス・プレスリー(ジェイコブ・エロルディ)と出会い、恋に落ちる。やがて彼女は両親の反対を押し切って、大邸宅でエルヴィスと一緒に暮らし始める。これまで経験したことのない華やかで魅惑的な世界に足を踏み入れたプリシラにとって、彼のそばでともに過ごし彼の色に染まることが全てだったが……。(映画COMから)


www.youtube.com

あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、16歳のプリシラがメンフィスのエルヴィス邸“グレースランド”に敷かれたピンクの絨毯を歩いて部屋に入り、ドレッシングルームで化粧するシーンから始まる。(ラストシーンはこの逆になる)。

1959年、西ドイツでエルヴィスとプリシラは出会った

プリシラは西ドイツの米空軍基地内のイーグルクラブでテリー軍曹に「エルヴィスのパーティーに行かない」と誘われ、参加したのがエルヴィスとの出会いだった。この時、プリシラは14歳で高校1年生、エルヴィスは24歳だった

2回目のパーティーでエルヴィスが「昨年母を亡くしてホームシックだ、同じ故郷(テキサス)の人と話したかった。君を母に合わせたかった」と口説いた。プリシラは孤独だったし、憧れのエルヴィスの“この言葉”に天にも上った気分になった!

エルヴィスが両親を「一緒にいるのが楽しい、門限には必ず返します」と説得しデートした。映画館では映画「悪魔をやっつけろ」(1953)を観て、エルヴィスは「ハンフリー・ボガートのセリフを口にし「マーロン・ブランドやジェイムス・ディーンのような俳優になりたい」と話しキスして別れた。クリスマスには豪華な時計がプレゼントされ「一緒にアメリカに帰れないか?」と聞かれた。

エルヴィス帰国の日プリシラは空港で見送った。そこには沢山のフアンが集っていた。「沢山の手紙を書いてくれ!」と言われ、約束した。

プリシラは学業に手につかず、エルヴィスが載った記事雑誌を読んで、そこには恋の噂もあったが、ひたすら返事を待った。

1961、「映画で忙しかった」と謝り「メンフィスに来てくれないか」と電話がかかってきた。両親は反対した。が、エルヴィスから送られて来たファーストクラスの航空券とプリシラの熱意に負けて許した。

16歳のプリシラが始めてグレースランドを訪れた

豪邸に驚いた。にこやかな料理人のアルバータ(オリビア・バレット)に迎えられ、部屋に案内された。そこには沢山の仲間とビリヤードを楽しむエルヴィスがいた。「上の部屋で待っていて!」と言われ、2階のエルヴィスの部屋で待っていた。

こうやって、プリクラはいつもエルヴィスに待たされる人生が始まった。(笑)

 プリシラは豪華なベット、数々の置物等に驚いた。多分お伽の国に来た気分だったのでは。プリシラは化粧室で大人になった気分でつけまつ毛を着け化粧した。エルヴィスが部屋に入り、ふたりはベットに寝そべって話す。「これ以上はしない、その時が来るまで」とキス以外がしなかった。この奇妙な関係は結婚式まで続く。

睡眠薬を飲まされたプリシラは2日間眠った」とエルヴィスに起こされた。(笑)

ラスベガスに連れていかれ、カジノで遊ぶ。いきなり大人の世界に入って行った。サングラスでふたりは街を散策。プリシラは大人びた子供のように見える。エルヴィスは「ふたりの世界は同じだ」とプリシラを説得し、西ドイツに戻した。

帰国したプリシラの姿に両親は驚いた。登校するプリシラの姿も他の学生とは違っていた。そして勉強に手がつかない!渡米したがるプリシラに両親は「高校を卒業してから」と説得するが受け入れない。そこにエルヴィスから「カトリック校に入れて卒業させる」と申し出があり、両親はプリシラとともに渡米しグレースランドを見て、プリシラの希望を認めた。

プリクラは学校に通いながら、エルヴィスの帰りを待つ日々が続く

 エルヴィスは映画撮影で不在だった。白いピアノのある部屋で待つ。エルヴィスの父ヴァーノン(ティム・ポスト)に励まされ赤い車で登校。学生たちの目に晒される。(笑)帰宅して勉強。エルヴィスから「電話したとき必ず出ること」と伝えられ、まるで部屋に閉じ込められたようだった。

エルヴィスが映画を撮り終え戻ってきた

エルヴィスは仲間(メンフィスマフィア)と一緒に戻り、食事は仲間と一緒で、ここで皆に紹介された。エルヴィスは「卒業が第一!」という。ベットでは「感情に流されるな!」とセックスはお断りだった。これはエルヴィスの愛情だと思った。

エルヴィスはプリシラ洋服店に連れ出し、仲間と一緒にプリシラにドレス着せて評価選定、大量のドレスを持ち帰った。エルヴィスひとりでは選ばない、仲間の意見を聞く。“エルヴィスの優柔不断さに精神的な弱さを感じた”

エルヴィスはプリシラに衣装を与え、髪の色、化粧を指定し、自分好みの女性に替えていったプリシラが赤いドレスを買うと「今はダメだ、目立ちすぎる!」と怒られた。(笑)

プリシラはこのスタイルでエルヴィスと彼の仲間と一緒に、メリーゴーランドや花火を見て楽しんだ。眠るとき、エルヴィスは常に睡眠薬を飲むプリシラは自分の長い黒髪に触れ「エルヴィスを信じるしかない」と思った。プリシラは拳銃射撃を教わった。

この環境の中で、プリシラはシスターから「卒業は難しい」と告げられた。勉強はエルヴィスの仲間がいてうるさい!はかどらない!

試験当日、隣の子に「エルヴィスの部屋に来ない!」と誘い、答を見せてもらい回答した。(笑)

1963年、高校の卒業式当日

プリシラは式典にエルヴィスを参加させず外で待たせて、式典に参加した。無事、卒業証書が授与された。(笑)エルヴィスからのプレゼントは赤にシボレー・コルヴェアだった。

エルヴィスとプリシラは寝室に立て籠もり、食事を届けされ、数日を過ごした。エルヴィスはプリシラに色々なコスプレをさせ、ときに娼婦のような恰好で写真を撮り、ふたりはふざけ合って過ごし、“プリシラがやっと大人になった”感激を楽しんだ。エルヴィスにはおかしな趣味があると思った。(笑)

プリシラは薬を止めるよう求めたが、「医者に認められている」とエルヴィスは拒否した。エルヴィスに意見するのは初めて。彼女の大きな変化だった

エルヴィスは仲間と悪ふざけをする。拳銃射撃やドーザーで廃屋を破壊して楽しむ。プリシラはこれを見ている。エルヴィスの性格に何か異常なものを見たのではないか。

エルヴィスはハリウッドに行くと告げ、仲間と一緒に出発した

プリシラはひたすらエルヴィスの帰りを部屋で待つ。甘い言葉のフアンレターが大量に届く。「エルヴィスの恋」が載った雑誌を見る。電話で確認すると「今は拙い!忙しい、愛している」と電話を切る。プリシラは信じていた。しかし、「エルヴィス、アンと婚約」の記事を見て、エルヴィスに会うことにした。

プリシラはハリウッドに出掛け、エルヴィスに会って確かめた

エルヴィスは「嘘だ!マスコミの仕業だ、もうすぐ落ち着く」と話す。プラシラは怒ってメンフィスに戻った。

プリシラは子犬と主の居ないグレースランドでエルヴィスの帰りを待った

エルヴィスが仲間と一緒に戻ってきた。ベッドで「手に負えない事態だ!愛したのは君だけだ」と謝る。(笑)そしてエルヴィスは仲間と一緒にプールで遊び、プリシラと戯れる写真を撮らせた。

そこにスリーピーという女性の「いつ会える!」と手紙が届いた。プリシラが怒りを露わにすると「寂しさのないところ、親元に帰れ!」とジャンプスーツを投げつける。プリシラが泣き出すと「君には俺が必要だ!」と言い出す。

エルヴィスは大佐(マネージャー)からのレコード製作を断り、届いた映画の脚本が悪いと投げ出す。(実がエルヴィスの映画は売れなかった)プリシラが「どういうこと?」と聞くと脚本を投げつける。すぐにそのあと「悪かった!」と謝る。エルヴィスは精神的な脆さがると思った。唄うエルヴィスには見られないところだ。

エルヴィスはスピリチュアルな本を取り寄せ、宗教に嵌った

エルヴィスとプリシラはLSDを服用、異常な世界を体験した。エルヴィスは本を読み、その効用をプリシラに説く。プリシラが断ると「怒り狂った女だ」と罵倒する。プリシラは大佐に本の送達を止めるよう依頼した。これでやっとエルヴィスの精神混乱が収まり「結婚しようと」と言い出した。

1967年5月1日、結婚式を挙げた

エルヴィスは「もう大人だ」とプリシラを抱き上げて皆に紹介し、その夜ふたりは結ばれた。プリシラは間もなく妊娠した。エルヴィスは喜んだ。

エルヴィスが「上手くいってない、別居して欲しい」と言い出す。プリシラが「私のせい?」と聞くと「俺だ」と謝る。エルヴィスは「しばらく置いて、別居しよう」と言い、プリシラは同意すると、「待ってくれ!俺が間違っていた」と言い出すプリシラは「いずれ別れる!」決心したと思った。プラシラはエルヴィスの付き添いで出産した。

1969年エルヴィスは伝説のラスベガスのインターナショナルホテルでの興行”を終え、国内ツアーに出ると言うプリシラは家族写真を撮って、エルヴィスを送り出した。

1972年、プリシラは子供とホテルに滞在し、空手を習い始めた。

パーティーに空手の先生と出席するようになった。パーティー参加中にエルヴィスから会いたいと電話が入った。ホテルを尋ねるとエルヴィスはベットに伏せっていた。プリシラは離婚を切り出した。エルヴィスは当初信じなかったが納得し「またどこかで会おう」と認めた。プリシラは涙で部屋を後にした。

プリシラグレースランドに戻り、想い出の部屋を見て、お世話になったアルバータらに見送られ、白の服装、白い車で、グレースランドを後にした。

まとめ

プリシラに愛はあったか。ラストシーンのプリシラの涙に「愛はあった」と思う。これに添えられた曲がビリー・バートンの「オールウエイズ・ラブ・ユー」で、歌詞が良い、涙っぽくなった

離婚後も2人は友人関係にあり、以前よりも密に連絡し合うようになったと言われ、映画「エルヴィス」(2022)では、エルヴィスの最期のツアー出発をプリシラが子供と一緒に見送っている。

エルヴィスのとらえどころのない行動(女性問題を含む)、傷つきやすさ、すぐに挫折する(睡眠薬を含む)など精神的な弱さをプリシラは見て来た。プリシラはその都度強くなっていったように思う。エルヴィスフアンには受け入れられないかもしれないが、プリシラの離婚に納得した。

 プリクラ役のケイリー・スピーニーが少女から大人になっていく過程が、会話や表情の他に化粧と衣装の変化で見事に演じられていた。ソフィア・コッポラ監督の真骨頂だ。これは高く評価され、第80回ベネチア国際映画祭(2023)で最優秀女優賞を受賞している。

この時代、ましてや相手がエルヴィスでは、女性が離婚を言い出すのは勇気のいることだったと思う。1960年代のファッション、グレースランドが見れたのがよかった。

                                                        ****