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「名探偵コナン 純黒の悪夢」(2016)黒組織女性工作員の“脳の謎”を解き、公安警察とFBIに協力して、自らの運命を賭けて黒組織と対立!

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名探偵コナン 緋色の弾丸」(2021)を観て、赤井一家に興味を持ち、「コナン特集」をやっているWOWOWで観賞しました。「名探偵コナン」劇場版シリーズ第20作という節目の作品です。

名探偵コナンvsFBIvs公安という前代未聞のバトルロワイヤルミステリー。コナンと黒ずくめの組織が全面対決し、当時シリーズ最大のヒットを記録したという作品。(WOWOWシネマ解説)これはちょっと大袈裟!(笑)

原作は言わずもがなの青山剛昌さんで、監督は劇場版「異次元の狙撃者」(2014)で赤井を初登場させた静野孔文さん。脚本は櫻井武晴さんで本作以降の「ゼロの執行人」(2018)「緋色の弾丸」(2021)に絡んでいきます。撮影はお馴染みの西山仁さん、主題歌はB’z「世界はあなたの色になる」。

警察庁内のコンピューター室に黒組織女性工作員が侵入しNOCリスト(黒組織潜入スパイ名)を覘き見され、これを追う公安警察とFBI、コナンの活躍を描いたもの。

記憶喪失に陥った黒組織女性工作員“脳の謎”を解き、これまで良好な関係を築いてきた公安警察とFBIに協力して、自らの運命を賭けて黒組織と対立するという構図は“シリーズ”20作目にふさわしいです。さらに精巧度を挙げたカーアクションや二輪式観覧車で繰り広げる“緊迫感のある”アクション描写も見どころです!

注目のFBI捜査官・赤井秀一が本格的な登場してきて、赤井と公安警察“安室透”がストーリーに大きく絡む物語になっていて、特にふたりの事件に組む姿勢に注目です。

あらすじ(ねたばれ):

スタイル抜群の工作員?が警察庁のコンピューター室に侵入、灯を落としてノックリスト(NOC)資料を脳に読み込み、透明な5色の色彩カードを右目に当てているところに、異変に気付いた風見警部補が入って来て格闘となった。部屋を飛び出し、スリングロープで地上に降りて準備していた車中で、リストにあった名前「スカウト、アカビット、カ・・・」とメールしながら逃走。これを公安警察捜査官安室が「これは公安のものだ!」とFBI捜査官赤井と競りながら追う。遂に赤井の狙撃で工作員の車は海に落下。「なんでこの野郎!」の安室!(笑)

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翌日、コナンたち少年探偵団は阿笠博士とリニューアルオープンした東都水族館を楽しみにやってきた。東都水族館のウリは水族館のイルカショーと世界最大の2輪観覧車、そしてホワイト・オレンジ・ブルー・グリーン・レッド5色の噴水ショーだった。

そこで記憶喪失の女性に遭った。コナンは女性が左目は青,右目は白目であることに疑念を抱き、激しい携帯の壊れ方、ガソリンの匂い、ガラス片から、昨夜の事件に関係あるのではと毛利探偵に警察への通報をお願いした。毛利探偵は仕事がきたと慌てて走り出す・・・。(笑)

少年たちが「記憶が戻るかも!」と女性を連れ出して、ダーツを楽しむ。そして日本一だという二輪式観覧車に乗ろうと搭乗口へのスロープを登っていて、元太が落下。これを見た女性が元太を追って飛び出し元太を確保した。

灰原がこの状況から「右目がつくり物、高い身体能力から黒組織のナンバー2ラムで、記憶喪失は演技?」と怯えた。コナンは本当の記憶喪失だったら黒組織を潰す好機だと思った。

コナンと灰原が論議している間に少年たちと女性は二輪式観覧車で上空に。噴水ショーが始まると女性が「頭が痛い!」と苦しみ始め「スカウト、アカビット、カースリット」とうわ言。これを光彦がノートに書き取った。

女性は病院で脳検査。これには高木、佐藤刑事が立会した。生まれつきの脳球障害があり、右目は透明で黒いカラーコンタクトをつけていたと分かった。

検査を終わった女性は警察病院に入院となった。

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灰原が不安がる。コナンは阿笠博士に依頼していた携帯の解読結果「スカウト、アカビット、カースリットは・・」を知り、安室が昨夜喫茶店に居なかったことから、「まさか?安室さんが標的になっているのでは?」と。

コナンはFBIのジェイムズに呼び出され、工作員のスカウト、アカビット、カースリットが殺されており、ノックリストがバレると世界がパニックになると協力を依頼された。

少年探偵団が女性を見舞い、ダースゲームの賞品“白いイルカのマスコット”を渡してオセロを楽しんでいたら、公安の風見がやってきて女性は公安預かりとなりいずこか連れ出された。

コナンのところに阿笠博士から「バーボンとキールの名がある」というメールを受け取った。コナンは灰原が止める手を振り払い「俺は運命から逃げない!逃げたくない!」と病院を走り出た。

バーボン(安室の黒組織員コード名)とキール水無怜奈の黒組織コード名)が黒組織に逮捕され、とある倉庫でジンによる「ノックがどうか?」の首実検がなされていた。

元太、光彦、歩美は観覧車から夜景を楽しもうと東都水族館に行くことにして鈴木財閥の園子のコネを使った。

コナンがスケボで走っているとFBI車のシェイムスに出会った。コナンが阿笠博士の携帯解析結果を示すと「女性は黒組織のキュラソーだ!俺たちはバーボンとキール救出に向かうから、君はそっちに向かってくれ!」と言い去った。

コナンは「キュラソーとは5色のオレンジの皮を使ったお酒の名前。この配色はどこにある?脳障害による特殊能力を考えると公安の動きは説明できる」と東都水族館に向かった。😊

バーボンはFBIによって上手く逃げ出した。コナンがキュラソーの携帯で「バーボンとキールは関係ない」とジンに送ったことで、黒組織は方針変更してキュラソーを奪回することにして、キールは解放された。

公安の風見たちは安室の指示でキュラソーを観覧車に乗せて記憶を戻そうと南側の観覧車を貸し切り手配して、東都水族館に向かっていた。

公安の通信を傍受した黒組織・ジンはオスプレイによりキュラソーを奪回すると、これまでキュラソーを監視している女性幹部工作員ベルモットに奪回時の停電処置と万一の場合の爆破準備を命じた。

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コナンが観覧車登場口に着くと、すでに元太・光彦・歩美たち、風見とキュラソーを乗せたゴンドラは出発しており、他は乗車禁止となっていた。コナンは赤井がいるのを認めた。

階段を伝って頂上に登ることにした。途中で消化ホース収納箱を調べると時限装置を発見、さらい車軸柱に電線が張り回されていることを確認して頂上に。そこでは安室が「あなたに助けてもらったことには感謝するが、キュラソーは公安が貰う、手を引いてくれ!」と赤井と交渉するが赤井が受け容れず、ふたりは激しく争っていた。

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(笑)そこにコナンが駆けつけ、観覧車で爆薬が仕掛けられていることを告げると、喧嘩を止め、安室が爆破回路の遮断に奔走、「相手は空からだ!」と赤井が射撃態勢についた。 5色の噴水が上がるなかでキュラソーが苦しみ記憶が戻り、風見を蹴り上げて手錠を外してベルモットに連絡を入れた。「オスプレイで救出する!」と聞かされたが、キュラソーはゴンドラを抜けて下に駆け出した。

シンらはオスプレイによるゴンドラを吊り上げようと中を調べると男(風見)と少年(コナン)しかいない。「キュラソーは逃げた!」と奪回を止めて射殺に作戦変更し、ベルモットに停電!を指示した。無差別に観覧車を撃って来る。

キュラソーは下に降りる途中で子供たちの救援に駆けつけた灰原に出会った!「あんたシェリー?」と声を掛けた。灰原は声が出なかった!「今の私の方が気分が良い」と黒組織を裏切ったことを告げて、「自分が標的になって走るからシュリーは子供を救って!」と走り去った。

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キュラソーへの集中射撃。安室が爆薬を投げてオスプレイの姿勢を崩して、赤井はコナンが投げた花火ボールの照明でオスプレイのローターを射撃。行動の自由を失ったオスプレイが観覧車の車軸に射撃を集中してくる。車軸が外れ回転して水族館を襲ってくる。コナンはあらゆる方策を試すが止まらない!そこにキュラソーが大型クレーンで飛び込んできて、観覧車は止まった。

キュラソーの遺体は確認できないほどの痛み。そこに焼け焦げたイルカのマスコットがあった。公安警察官が「なんですかね?これ記憶媒体!」と言うのを聞いたコナンは「違う!記憶ではない、“想いだ”と」と呟いた。

感想:

コナンと言えば「とにかくべらぼうに張られた伏線が、あれよあれよという間に回収されるところが痛快だったが、本作では早い段階で相手は黒組織と決まってしまい、コナンの大きな謎解きがない。そのかわりにド派手なアクションでした!(笑)

コナンより相手のキュラソーが見た目恰好よくて、脳障害で抜群の記憶力があり、記憶喪失から目覚め自分を犠牲にして多くの人を救うという結末に、コナンの主役は、天海祐希さんに宛書されたようなキュラソーに、完全に持って行かれました!

そして安室が「なんとしても公安で解決したい」と何でも射撃で解決しようとするFBI赤井と競い、協力するところはしっかり応じるところが恰好いい! コナンより光っていた!

キャラクターの心情が丁寧に描かれているように思います。特に灰原によく出ていた。櫻井さんの脚本によるものでしょう。

観覧車での黒組織と安室、赤井、コナンのアクション。本作の一番の見せ場でした。キュラソーは記憶を取り戻すのか、黒組織はオスプレイで彼女を奪回できるか、脱げたキュラソーはどうなると、赤井はオスプレイを射撃できるか、車軸をやられた観覧車は?とひやひやどきどきで見せてくれますが、あまりにも仰天展開すぎました。(笑)

冒頭のカーチェイスは見せ場でした!エンドロールで実写とアミメの映像を見せ、いかにこのアニメの描写が精巧に作られているかを知ります。大したものだ! 赤井は謎のままだった。

安室の活躍、6月6日WOWOWシネマでPM700から「ゼロの執行人」が放送されます。これは必見です!

          ***

声優(新登場):

安室 透 / バーボン:古谷徹

水無 怜奈 / キール三石琴乃

ベルモット小山茉美

キュラソー天海祐希

           ***

「HOKUSAI」(2021)「時代のせいにするな、己の“好き”を貫け!」

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「HOKUSAI」というタイトルで観ることにしました。

青年期に版元蔦屋重三郎に出会ってから晩年小布施(長野県)で「男波・女波」を描き上げるまでの、代表的な絵をモチーフに北斎の絵師としての生き様を描いたものです。

製作・脚本河原れんさん、“お江”役で出演しています。この作品は河原さんの作品と言っていいのではないでしょうか。監督:「探偵はBARにいるシリーズ、「相棒シリーズ」の橋本一さん、音楽:「八日目の蝉」の安川午朗さん、撮影監督:ニホンマツアキヒコさん。

出演者:柳楽優弥田中泯阿部寛永山瑛太玉木宏、滝本美織、青木崇高河原れん津田寛治、他。

物語は4章から成り立っていますが、青年期の何故絵を描くかに苦悩する姿と老年期の幕府の弾圧を受けながら表現の自由を求めて描き続ける姿が描かれています。

杉浦日向子さんの「百日紅」や朝井まかてさんの「眩(くらら)」が頭にあったせいか、北斎像としてはちょと違うかな!という印象。何か・・・塩気が抜けた感じ! しかし、北斎の代表的な絵をモチーフに「好きな絵」を描くことから「時代に抵抗して、絵は世の中を変えられる」と“波”を描き続ける北斎の生き様は感動的でした。「時代のせいにするな、己の“好き”を貫け!」というメッセージがよく伝わる作品でした。

あらすじ(ねたばれ):

歌舞伎、遊郭などの町人文化が開花した文化文政時代の江戸の町。砂地に棒切れで絵を描くのちの北斎少年。しかし、この文化は幕府の堕落に繋がると弾圧の方向に向かっていた。

美人画全盛の時代に勝川春郎のちの北斎柳楽優弥)は貧しい長屋で花の絵を描いていた。

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版元の耕書堂が幕府役人の手入れを受けて、室内は大混乱。しかし店主の蔦屋重三郎阿部寛)は「絵が世の中を変える!」とびくともしない。お抱えの絵師・喜多川歌麿玉木宏)を吉原の遊郭に住まわせ美人画を描き続けさせていた。歌麿を訪ねた重三郎はそこで花魁・麻雪(芋生悠)から“もうやだ、あの山猿!」(笑)という絵師・勝川の話を聞いて、彼を訪ねて「自分のところで絵を描かないか」と誘うが、「人に指図されて自分の絵が描けない!」と断られた。

重三郎が勝川は困っているだろうと金を届けたが、勝川は「受け取れん!」と重三郎を吉原に尋ね、花魁をモデルに絵を描く歌麿に会った。歌麿から「あんたの絵には色気がない。目の前のことしか描けない。命がない!」と揶揄され、帰ろうと思ったが重三郎に止められ、歌麿の描きっぷりを見学した。重三郎から「何故絵を描いている?」と問われたが答えられず、金を置いて長屋に戻った。勝川春章門下でただ絵が好きで描いていただけだった。

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勝川は女郎部屋に上がり女郎の表情をよくみて描いたが気に入るものはなかった!

重三郎は新進気鋭の絵師・東洲斎写楽(浦上最周)の役者絵が気に入って店に招き宴席を設けたところに勝川が絵を見にやってきて、重三郎が「まあ上がれ!」というので末席に座った。そこに歌麿もやってきた。上席の写楽に参加者から絶賛の言葉が投げ掛けられ、これに耐えられず勝川が「あんな絵が!遠近法も分かってない!」と罵倒した。写楽の「心の赴くままに絵を描くだけですよ!お気に触りましたか?」という返事を聞いて長屋に帰った。

そして「何故俺は絵を描いているのか」と旅に出た!野を越え山を越え、雨に打たれ、歩いて、歩いた。筆を折ろうと思ったが折れなかった。海に出た。そのまま海に入って行った!勝川は死ななかった!生かされた!海辺の砂に絵を描いた!

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旅を終え、重三郎に「描きたいものを描いた!」と絵「江島春望」を見せた。「波か!面白い、こうくるとは思わなかった。こんな波は見たことも聞いたこともない!“波と旅人”、お前にしか描けない!“ふたつとあらず”のサインも良い、名が北斎か、これも面白い」と褒めた!そして世界地図を取り出して「俺は世界と商売をする。“絵は世の中を変えられる”」と喋って、よろけるように襖に消えた。重三郎は北斎が帰って来るのを待って、亡くなった。こうして北斎は世間に知られる絵師になっていった!

北斎は妻・コト(滝本美織)に送られて、絵を持って武家の出の戯作者柳亭種彦永山瑛太)の屋敷に通うようになっていた。寝食を忘れるほどに彼の描く戯作に絵を描いていた。

あるとき種彦が「絵が話を食っている。でしゃばるな!」という。北斎は「あんたの話はここにある。読み手は想像で読むんだ!」と意に介しない。こうして奇想天外な妖怪の世界に嵌っていった。(笑)

ふたりで妖怪講談を聞いていたとき、歌麿が幕府役人に捕らわれたという知らせが入った。講釈師がうちにも手が及ぶと怯える。北斎は家に戻って「こんな時だから人を元気づけるために」と絵を描いた。

妻コトが身籠ったという。北斎は生まれてくる子供のために絵を描いた。そして生まれた子をあやしながら絵を描き続けた。

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それから23年後、北斎白髪の老人田中泯)になって、妻コウを亡くし成長した娘・お江河原れん)と荒れ果てた家に住んでいた。種彦が「戯作を描いている」と花を持って訪ねてくる。幕府の弾圧がきつくなっていて、北斎は「昔ある男が絵は世の中を変えると言った」と種彦を励ました。

そんなある日、家の外に出ると突然大風が吹いて人が吹き飛ばされる。この様を、目に見えない空気までも北斎は絵にした。200人を越える弟子たちに向けた絵手本北斎漫画」として残した。

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69歳を迎えた日、脳梗塞で倒れた。お江が「もう筆が持てないかもしれない、親父さんには言えん」と泣いた。しかし北斎の描きたい意欲が凄まじかった。震える手で粥を食べ、筆を握って絵を描いた。そして、足を引きずりながら「病に罹った今だからこそ見えるものがある」と命を探す旅に出た。

野を歩き、花を描き、大木に出会い、カエルに拾い、山道を歩き、海に出た。浜辺を歩き赤い富士、青い富士を仰いだ。旅を終えて家に戻り絵にした。

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お江が「種彦がお上に狙われている」という。「たまたま武家に生まれただけ、書きたいものを書けばいい、止められん!」と。

ある日、西村屋与八が描いて欲しいと“ベロ藍”の絵具を持ってきた。雨で溶いて頭に浴びて色合いを感じた。世に言う北斎ブルーだ。弟子たちが見守るなかで“ベロ藍”で大波と富士山を書いた。この絵を版画として沢山の富士山の絵「富岳三十六景」が描かれ、大繁盛した。種彦はこれを見て書き続ける覚悟が出来た。

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種彦は幕府役人が「柳亭種彦を知っているか?」と聞いて来るが「そんなやつは知らん!」と白を切っていた。が、北斎が弟子たちと宴を開いているところにやってきて「お世話になりました」と挨拶する。

北斎は「何時の日か指図されずに生きて行ける世の中が来る。生きているうちにそんな世界を見たい!」と種彦を励ました。

役人の厳しい追及に種彦は「柳亭種彦は自分だ!」と告白し、斬殺された。駆けつけた北斎は種彦の遺体と対面し、首がないことを確認して泣いた!そして自宅に帰り「こんな時だから描く」と描き始めた。

血にまみれた種彦が「描いてくれ!」と首を差し出してくる!まるで彼の描く戯作そのものだった。北斎は怒りの中で描いた。「種彦は言いたいことも言えないままだ!」とこの絵「生首の図」をお江に見せると「これでは捕まる、江戸を出よう!」という。ふたりは小布施(長野県)の豪商高井鴻山青木崇高)のところに奔った。

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高井に「生首の図」を見せると「世が変わりますよ、その日まで預からせてください」と絵を引き取った。北斎は「残したい絵が見える!」と高井に絵具を準備してもらって、波の絵「男波・女波」を描き始めた。北斎は90歳になっても絵を描く情熱を失わなかった。「天が10年いや5年の命をくれるなら、おれは本当の絵描きになってみせる」という言葉を残して亡くなった。

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感想:

世界で一番有名な日本人アーティストとして名の上がる人物の伝記。アート的な演出で、歴史的なエピソードにどれほどの信ぴょう性があるかと気になり、物語に乗れなかった。江戸風俗研究家の杉浦日向子さんが描く北斎の人物像。奇行の絵師として気が短く、粋を好み、洒落っ気たっぷりな江戸っ子という雰囲気が感ぜられなかった。

自分の絵を描くことで苦しむ姿より、時代に抗して自由を求めて描くということに力点が置かれているように思えました。北斎といえば「性根入れて、あがいて、あがいて描く!」でしょう。

各エピソードは出演者の熱演でとても面白かった。

北斎蔦屋重三郎によって見出されたというエピソード。重三郎を演じる阿部寛さんの姿が、写楽の絵の役者そっくりで、「絵で世の中(世界)を変えていく」という持論に説得力がありました!(笑) 北斎の絵「江島春望」を褒め、ふらふらと襖の奥に消えていく後姿になんとも言えない寂しさを覚えました。

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北斎が自殺するために?海に入ったが波に浮かび富士が目にし“絵師として生きる”と覚醒するシーン。海に生かされ“波”をテーマに「生きる」を描き続ける北斎の生き様を見せてくれたように感じました。

後段、年老いた北斎が“ベロ藍”に興奮するシーン、田中泯さんが身体にそれを浴びて喜びを表現する熱演に圧倒されました。しかし、これが北斎かと問われると・・・。

北斎が怒りで首のない種彦を追悼しながら描くシーン、血だらけで描いてくれとにじり寄って来る種彦・永山瑛太さんのホラーっぽい真柏の演技、これを怒りで描く北斎田中泯さんの表情、すざましかった!これが作品のテーマになった感じ。「HOKUSAI」で観る作品でした!

                            ***

「ライド・ライク・ア・ガール」(2019)美人騎手のド根性ものがたり!

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オーストラリア・メルボルンカップで女性として初めて優勝したミシェル・ペインの努力と挫折の半生を事実に基づいて描いた物語。ヒューマンドラマとして家族愛を描いた作品としても十分に楽しめます。

メルボルンカップは競馬界の“聖杯”で世界中から注目を浴びる。3200mで競うこの極めて過酷なレースは騎手にとっての夢の舞台。この国では当日が祝日になるくらいの国民的行事のようです。

主人公ミシェル・ペインは、2015年、155年の歴史の中で初めてこの大レースを女性が制覇した騎手。なんとこの時のオッズが単勝で101倍!

監督:レイチェル・グリフィス(「ハクソー・リッジ」出演女優)、脚本:アンドリュー・ナイト、エリス・マクレディ、撮影:マーティン・マクグラス、編集:ジル・ビルコック、他。

出演:テリーサ・パーマーサム・ニールティーヴィー・ペイン、サリバン・ステイプルトン、他。

騎手目線での迫力あるレース映像。女性蔑視のなかでの勝負、ダウン症を抱える家族の物語です。テリーサ・パーマーが美しい!

あらすじ(ねたばれ):

競馬調教師のパディ・ペイン家(サム・ニール)。母は主人公・ミシェル(テリーサ・パーマー)の生後半年の時なくなった。子供たち10人中8人が騎手という一家。ミシェルの上にダウン症の兄スティーヴィーがいる。兄弟姉妹で助け合ってきたが、ことの他ふたりはとても仲が良かった。そして夢は騎手になってメルボルンカップで勝ことだった。このありさまを幼い頃の実人物の写真で見せてくれ、これが後のテリーサ・パーマーによく似て、大美人です。😊 

教会で牧師さんから「信じれば奇跡が起こる」と教えられ、兄弟姉妹が相互に馬になって競馬ごっこで過ごすという子供時代。父パティの調教につき合い、兄弟姉妹5人がレビュー。

10年後、摂食障害とうそついてトイレで姉のブリッドが出場している競馬放送を聞く(笑)

乗馬して父親の指示通りに牧場を走る。そこで騎手として必要な勝つための秘策を叩き込まれる。「出走する前にコースを歩いて感触を掴め!戦い方は地面に描いてある」、「スピードだけでない大事なのは忍耐、囲まれて息もつけず、ダメだと思っても諦めるな!周りの馬は順番に疲れを見せ始める、すると突然目の前に間隙が開く。神の声をしっかり聞け!でないと間隙はあっという間に閉じる」。

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この作品は「突然目の前に間隙が開きそこを衝く」というスリリングな映像がウリです。😊

最初のレース、「女はあっち!」と控室もないありさま。「間隙を待て!」と父に言われて挑んだがビリだった。次のレースも駄目だった。間隙が見えない。父がもう止めろと。でも続けた。パララット競馬場、父の「スピードだけが勝負でない」を覆い出し、ペース配分を考えてトップを取った。そのとき姉ブリッドが落馬して亡くなったことを聞かされた。

2年後、父親の持ち馬では勝てないと、他の調教師と組んでみたいと父の反対を押し切って、転々と調教師を訪ね歩く旅に出た。スティーヴィーが寂しそうに見ていた。このティーヴィーは実在の兄ティーヴィー・ペイン本人が演じます!演技が上手い!

コーフィールド競馬場。憧れの競馬場だった。調教の手伝いをしたいと調教師たちの部屋に顔を出しても誰も相手をしてくれない。「やだせてくれたら」と言われる有様。

姉キャッシーが引退して結婚するという。ミシェルは嘘ついて他人が乗る馬に乗ってコースを走り調教師たちの目を惹く作戦に出た!しかし声がかからない!(笑) 叔母がマネージャーに付き、叔母の機転でレースに出られることになった。ふたりで競馬場を巡る旅に。走っては寝る旅だった。風呂は男たちと一緒だった。

またまた叔母の機転でG1レース出場、馬はクラスキーと決まった。ムーニーバレーレ競馬場、スティーヴィーが応援に駆けつけてくれた。ミシェルは父の教えどおりに早朝芝を点検した。内側が湿っている。スティーヴィーがクラスキーを見て気にいった。馬もそうだった!(笑)

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レース。「のけろ!」と当てられて、「バカ!」と罵られ、走り続けた。競馬レース中に危険な妨害を仕掛けられ、罵声を受けながら、走っているなどとは知らなかった。これをしっかり走る馬列のなかで撮ってくれますから、興奮しますね!こんなに危険なレースかと。

トップでゴールに入っても「採決委員会に訴える」と脅されて勝を譲ることに。そこに「ウラジオストックG1だ。体重を50kgなら任せる」という調教師が現れた。2日で3kgの減量だ。厳しい減量だった。

そして姉キャッシーの結婚式にも参加した。そこで父からスティーヴィーが名のあるダレン・ウィアー(サリバン・ステイプルトン)の調教施設で働くことになったと知らされた。兄から「父が自分のところに置いておきたいのは、整然母がお前を騎手にさせないでと遺言したからだ」と聞かされた。

サランラップを身体に捲いて暖房のある車に乗り減量に成功。(笑)

サンダウン競馬場、1300mレース。父の教えてくれた「隙間が見えた!」。トップにはなったがゴール直後に落馬、ウラジオストクも転倒!ミシェルは馬が立ち上がるのを見て気を失った。

脳の内外に出血、右前頭葉に損傷」という重傷。父が介護に付いた。そんななかで必死にリハビリに励んだ!そして馬に乗れるように回復していったが家族会で「結婚したら、病気になったら誰が面倒見るの?」ということになった。スティーヴィーが「俺がみる!」と言い、父が本人に任せると言った。これでミシェルの決心が付いた。

ティーヴィーを厩に贈って、そこでプリンスオブペンザスに出会い、ミシェルは直観で気に入った。調教師ウィアが「君より怪我が多い。君が現役なら試していい」という。ミシェルはプリンスと海辺を走った。とのかく美しい映像です!

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ウィアにプリンスでレースに出たいと申し出ると「君は傷だらけで無傷なところがない」と断わられたが「勝つ力がある!」と主張し乗るために、ティーヴィーとバディを組むことになった。

ミシェルがプリンスに乗るようになって勝続けた。進路妨害で訴えられ、ウィアが「乗りたいなら、抗議するな!」と注意されたが採決委員会で「間隙はあった」と抗議して、20レースの出場禁止を喰らった。

こんなとき父パティが心臓発作で倒れた!スティーヴィーが「父が亡くなったら俺はどうなる」と聞く。「私が面倒みる!家を建てる、あなたは厩務員になって!」と答えた。このことがレースへの意欲を駆り立てた!

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プリンスがメルボルンカップ出場権を得た。ウィアが「危険を冒し出場権を勝ち取った彼女に掛けたい」と主張したが、馬主たちが「女性では勝てない!」と揉めた。そこにミシェルが乗り込み「力だけでは勝てない。馬をよく知っていること、コースを読む技術、そして何よりも忍耐が必要だ」と主張した。「世界一になるにはあの勢いだ!」とウィアがまとめた!(笑)

コース権はスティーヴィーに引かせた。みごとに1枠を当てた!

試合当日、早朝、ミシェルは父の言葉どおりに早朝コースに出て芝を点検し、父の言葉をしっかり噛み締めていた。騎手というよりファッションモデル姿で競馬場入り!(笑)

第155回エミレーツメルボルンカップがスタート、ミシェルはしっかり馬を抑え後方につけて、間隙が開くのを待った。その時が来た、一瞬だった!

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「騎手に選ばれるためにできる努力は全てしました。この馬なら勝てると思ったからです。女性を見下す人の鼻をあかせたと思ってます」と実物ミシェル。

感想:

厳しい競馬レースの話が、結婚式の華やかなどの楽しいことが上手く組み合わされ、コミカルで音楽が軽快に、美しい映像で描かれます。スポ根の堅苦しさがない、“明るくて楽しめ作品”です。それでいて、馬列の中にあって前の馬を追いながら間隙を待つ“スリリング”を味合わせてくれるという緊迫の競馬レースが見られます。😊

ミシェル本人の体力・気力(根性)に圧倒されますが、女性蔑視になかで、これを批判するのではなく、映画「G.I.ジェーン」(1997)のオニールが特殊訓練に耐えて特殊部隊の中に女性の地位を確立したと同じように、自らの力で「女性でもメルボルンカップの勝者になれる」と示したことがすばらしい。

もうひとつ、ダウン症の弟のためにとこれを目標にしたこと。勝つためにはミシェルだけの努力ではどうにもならない!沢山の人の運が重なっています。それを引きよせたのはミシェルが持って生まれた能力、人と人の絆が感動的に描かれています!

「荒波こえて挑み続ける 伝説ボートレーサー」、日高逸子さんもミシェル・ペインに劣らないですよ!

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「お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方」(2021)

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今の自分に必要な作品とタイトル名で作品を選びました。

結婚50年を迎える夫妻。定年退職した夫が家にずっといることで、妻は夫の在宅のストレス症に陥る。相手への気遣いがまったくなくなり、夫は健康麻雀、妻は健康コーラスに通って趣味仲間にお互いの愚痴をぶつけて鬱憤ばらし、もはや2人は熟年離婚寸前となっていく。よく聞く話、私の話です。(笑)

そんな中で、若い葬儀屋社員が娘に配布した婚活パンフレットに誘われ妻が就活フェアーに参加した。そこでプレゼントされたメモリアル映像サービスが契機となりと、夫婦に大きな転機が訪れるという物語。

就活となると葬式や納骨場所の選定、エンデイングノートや遺言などが話題になりますが、その前に誰に遺言を書くの?誰に葬儀を任せるの?ということが大問題です。これがなければ就活の具体化は進まない!本作は「就活の基本となる、もっとも大切なこと」を説いています。そして死を迎えるまでにどう生きるかという“生き方”、“死生観”の問題に触れています。

ちょっと大げさに表現しましたが、そこがコミカルに描かれ、大部の人が「そういうことだよな!」と納得がいくストーリー展開で、ネタに借り物が多いが、コミカルに描かれ“ゲラゲラ”笑える作品でした。😊

年配の方には自分の経験を重ねながら作品を楽しみ、ちょっとしたヒントが貰えるかもしれません。若い人には、作品のなかにとても機智に富んだセリフが出てきますので、これを味わい「人として大切なことは?」と考えることになります!

監督・脚本:香月秀之、撮影:松尾誠、編集:人見健太郎、音楽:MOKU、主題歌:財津和夫切手のないおくりもの」。

出演:水野勝、剛力彩芽松下由樹、西村まさ彦、石橋蓮司高畑淳子大、橋爪功、他。出番は僅かですがそうそうたるベテラン俳優の皆さんの出演です。😊

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、外資系IT会社が倒産し人間関係に関わりたいと葬儀社に就職した菅野涼太(水の勝)が目覚め、出勤するシーンから物語が始まります。死者を扱う者として何が必要なのかが描かれます。

涼太は延命装置で生かされいた母親を父敬一(西村まさ彦)がそれを断ったことで母は死亡、父親とは絶縁状態にある。

新社員の涼太は上司の桃井梓(松下由樹)の指導を受けながら、終活フェアーを開催して会員募集することになった。大原亜矢(剛力彩芽)が営業しているチキンカーで食事して、終活フェアパンフェレットの紙袋を置き忘れたのが縁で、パンフレットが彼女の手に渡った。

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大原亜矢の父母は来年結婚50年を迎える熟年夫婦。父真一(橋爪功)は定年退職して10年、典型的な亭主関白。妻千賀子とはことあるごとにすれ違い喧嘩ばかり。喧嘩しているうちに離婚はない!(笑) ふたりにいつ会話がなくなるか?という状態。

千賀子は健康コーラスで唄って、ランチ会で仲間と亭主の悪口を喋ってストレス発散。(笑)一方の真一は健康マージャンでこれまた女房をネタに憂さ晴らし。(笑)

ここでの会話は黒川伊保子さんの「定年夫婦のトリセツ」から持ってきたもので機智に富んでいてべらぼうに面白い!麻雀仲間の大和田(大和田伸也)が喋る女性論、これが本作での夫婦円満策になっているんです。😊

女性は愚痴を聞いてもらいたい!共感してもらって問題を解決する脳を持っている」。

真一はこの教えを家に持ち帰り千賀子相手に実行してみるがもう千賀子には通じない!(笑)

黒川さんは「人生なんて、本当に言葉ひとつ」と言う。なるほどと思えるからぜひ読んでみたいと思います。

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千賀子が就活フェアに参加し、桃井から亡くなってからの戸籍の除籍や、銀行、パスポート返納のことなどのレクチャーのあと「生きているうちに人生の整理し新たな気持ちで残りの人生を明るく謳歌する塾春”の時代を迎えましょう」と説かれた。そして入棺体験し、メモリアル映像サービスの抽選に応募した。

メモリアル映像サービスに当選して、涼太が大原家を訪ね千賀子にアルバムを借用にやってきた。アルバムの古い写真を見ていると心が不思議と癒されてくる。そこに真一が麻雀から戻り、涼太に会い「葬儀屋がくるとは不吉だ!」と言い、「自分はネジ一筋で生きてきたことに誇りを持っているが君に誇りがあるか」と聞く。涼太は返事ができなかった。

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涼太はまだ新米で葬儀の現場に関わったことがなく悩んで桃井に相談した。彼女は「葬儀屋と蔑まれたが、人が死ぬと頼られる存在に“誇り”を感じている。人は死者を現実と受け入れられず遠いところにしまっておきたいの。だから天国はあると信じている。愛がなければ務まらない。そのうちわかります」という。

10年も会わなかった父啓一がやってきて「今は介護施設で働いている。お前がやっている仕事は人の役に立っていい仕事だ。再婚するので相手に会ってくれ!」と話して帰っていった。涼太は返事しなかった。

ある日、千賀子が髪を染めているところに真一が麻雀から戻って{飯は!}と急がせた。千賀子は斬れて物も言わず健康コーラスに出掛け、その後ランチ会で仲間のお喋りを終えて帰ろうとしたとろころで脳梗塞に倒れた。

真一は病院に駆け、千賀子の精密検査が終わるまで廊下で待っていた。亜矢が駆けつけ「毎日一緒にいるのに気付かなかった!」と悔やみ、これを聞いて真一は「口喧嘩か!切れていたから」と初めて悔やんだ。家に戻っても冷蔵庫に何があるかも、印鑑がどこにあるかもわからない有様。70年のメモリーが消えるかと不安になった。

真一は葬儀屋にアルバムを持って涼太を訪ね、謝って、メモリアル映像を作ってくれるよう申し出た。涼太はこのアルバムを見て、自分と父との楽しかった記憶を思い出していた。

真一の兄は突然亡くなったという知らせが義姉からあった。家族で熊本に帰省して兄の葬儀に参加した。そこで聞く義姉の「こんなにあっけなく亡くなるとは思わなかった!先週感謝の会をやろうと言っていたのに!」という言葉に、死を覚悟した生き方が必要だと悟った。

家族で改修中の熊本城や阿蘇山麓を旅し、家族の有難みが分かった。亜矢の発意でこれを記録に残し、終活の一環として銀婚式を行うことにした。この話を葬儀屋の涼太に申し出ると、「葬儀屋がやるのか」と社長がびっくりしたが、ホテルを借りて行うことにした。ホテルで?(笑)

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健康コーラスメンバー、健康麻雀メンバーに集まってもらっての銀根式。夫婦にとってこれまで知らなかったことが明かされる。かっての仕事仲間・山田(石橋蓮司)の「結婚とは・・・」という名言紹介には“なるほど”と笑い、我慢・忍耐こそが夫婦であるための秘訣であることを知らされる。(笑)そしてメモリアル映像が披露された!真一と千賀子は涙した。

真一の挨拶のなかに「仲良くする」と相手を思いやることの決意が語られ、亜矢の両親に贈る言葉には愛されたことへの感謝の気持ちが込められていた。

そこにフィリッピンから「パパ!」と親子がやってくるなんぞ想像もしなかった。千賀子が“やっぱりそうだったか”と仰天した。(笑) 

式が終わって、企画の涼太は「人と接するには相手を赦すことだ!」と感じた。

涼太は父親の再婚の相手に会う気はなかったが、会うと伝えた。

感想:

真一は妻千賀子が病で倒れて孤独の恐ろしさを知り、兄が亡くなり義姉の悲しみを見て、これらは誰の人生にでも起こりうることですが、終活を準備しておかなければならないと気付いた。早く気付いてしっかり準備して、残された人生を謳歌することが大切だと教えてくれます。この作品では“塾春”と呼んでいます!

終活といえば葬儀のこととか、遺産、遺言などの手続きが話題になりますが、こんなことは葬儀屋さんや弁護士さんに任せておけば全てやってくれます。しっかりやっておかねばならないのは夫婦の絆、家族の絆です。

年取ってくると、若いときと違って、真一に見るようにこれが拗れている!どうこれを元に戻すか。それの特効薬は「相手の事情を慮り、相手の気持ちを慰撫する言葉」。この映画のメモリアル映像シーンを見て感じるように、過去の記憶を辿ることです。

金婚式は、相手の良いところを再認識するとともに参加者みなさんが未だ見ていなかった、気付かなかった相手の姿を知る好機でした。真一が「里親になっていた!」、こんなこと想像だにしなかったでしょう。誰にも見せなかった優しさを見せてくれます。(笑) 

娘の彼氏が葬儀屋さんだったとは、これは最大の親孝行です。(笑)くだらないと思えるところがある作品ですが(笑)、良いところも沢山ある作品。橋爪さんと高畑さんにこの役を演じさせるのが憎い!(笑)そして水野さんのフレッシュさがとても生かされた作品でした。

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「名探偵コナン 異次元の狙撃手」(2014)名スナイパー赤井の初登場、セリフは任務を終えての「了解!」のみ!こいつは何者だ!

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名探偵コナン 緋色の弾丸」(2021)を観て、赤井一家に興味を持ち、「コナン特集」をやっているWOWOWで観賞しました。「名探偵コナン連載20周年記念作品として劇場版シリーズ第18作、第38回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞受賞作品です。

物語は、高さ635メートルの「東都ベルツリータワー」を見学中のコナンたちが狙撃事件に遭遇し、この事件に絡む。犯人像が米国で起きた同種事件、海軍特殊部隊「Navy SEALs」で活躍したスナイパーの名前が上がり、日本で黒組織を追っていたFBIと日本警察が共同作戦で犯人を追うことになった。

第1、第2と連続狙撃事件が発生して東京はパニック。犯人は誰か、次のターゲットが誰なのかと奮闘するコナンの活躍。

劇場版で初めて世良真純、沖矢昴、FBIメンバーの赤井秀一、ジョディ・スターリング、ジェイムズ・ブラック、アンドレ・キャメルら6名が登場します。

監督:前作「絶海の探偵」の静野孔文さん、脚本:「11人目のストライカー」の古内一成さん(2016年死去)。音楽:お馴染みの大野克夫さん。撮影:西山仁さん、編集:岡田輝満さん、主題歌:柴咲コウさんで「ラブサーチライト」。

やたら沢山の外人名と英語スピーチが出てきて混乱、(笑) さらにスナイパーの話という馴染みない話で、ちょっと“銃マニア”受けの作品です。😊 無茶苦茶な設定もありますが、そこは名探偵コナンが解く謎ですから認めることにして、軍人の生甲斐は「名誉!」、死を賭けた師弟愛のを解く。このあたりが大人の観賞ポイント。

子供さんの楽しみは夏休みの宿題は何にするかのヒント。(笑)

キャラクターの楽しみは世良真純。蘭に投げ掛けた言葉「コナンの心臓には弾は当たらない、あなたにも!」です。この謎を解いてください。😊

そして名スナイパー赤井秀一。セリフは任務を終えてのひとこと「了解!」のみ!こいつは何者だ!と、これからの作品への期待が膨らみます(笑) 原作者青山剛昌さんが赤井をリクエストして「緋色の弾丸」が出来たことが頷ける作品でした。😊

あらすじ(ねたばれ):

鈴木園子の招きで少年探偵団のメンバー、毛利小五郎に蘭、阿笠博士が鈴木財閥が建設した「ベルツリータワー」のオープニングセレモニーに参加していた。藤波宏明がビルから見える建設中のマンションを客に勧めていた。コナンはちらっと冲矢昴を見たような気がする。

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そのとき藤波宏明が何者かに討たれた。コナンは射線を確認してスケボで予想射撃場所に走った。途中で黒ずくめでオートバイで逃げる男に遭い、この男を追う。そこに世良真純がオートバイで駆けつけ、コナンを乗せて追う。オートバイによるカーチェイス

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途中で手榴弾を投げつけるという乱暴なやつ。岸壁に追い詰めたが、射撃を受けてバイクが転倒、あわやというところで駆けつけたFBIメンバーに助けられた。

FBIと警視庁、現場にいた小五郎たちを含めての合同捜査会議。FBIからシアトルの狙撃事件から、名スナイパーだったハンターの名前が挙がった。理由は彼のシルバースター栄誉章が交戦規程違反の疑惑が掛けられて剥奪され、人生を失う羽目になった復讐だというもの。被害者の藤波宏明はハンターに偽不動産を掴ませた男。ハンターが現在日本に滞在しているのでFBIが追っているという。現場には薬莢とサイコロが置いてあり、その目は4だった!

世良は友人の依頼でハンターの身体調査をしていたのだった。世良は初登場だが細かい説明はない!(笑)

FBIはハンターを最重要容疑者として捜索開始。彼の標的としてハンターのシルバースター栄誉勲章剥奪に結び付く記事を書いていた元陸軍特殊部隊大尉ウォルツ、その部下でハンターと共に戦場で行動したスナイパーの黒人ビル・マーフィー。彼らは現在日本を旅行中でジャック・ウォルツは京都に、マーフィーは日光にいた。そしてハンターの娘と離婚した不動産屋・森山仁の3人が挙った。森山は現在行方不明。

蘭はコナンを心配して「コナンを危険に晒さないで!」と世良に頼むと「コナンの心臓には弾は当たらない、あなたにも!」と答えた。

FBIのグラックからハンターが連絡を取ると思われる人物が紹介された。元司令官のマーク・スペンサー、ケビン吉野、スコット・グリーンの3名。

FBIの調査結果、グリーンはバイク店を経営していてスナイパーとしてのハンターの先生。吉野はミリタリーショップを経営していて、ハンターの教え子でハンターに心酔している。スぺンサーは「事件は米国の恥!」として「ハンターを倒すことのできる運転手の東洋人カルロス・リーを貸してやる」と言う。リーの腕前はハンターに継ぐスナイパーで78人を射殺した実績を持っていた。ちなみにハンターは79人だった。こんな話はよくない!

ジャッキーは1発で相手の“脳幹”をぶち抜く赤井が必要だと考えていた。

コナンと世良が森山の所在を確認しようとあるビルを訪ねていたところ、そこに帰宅してきた森山仁が移動中の車内で射殺された。サイコロの目は3だった。

ハンターの犯人説が高まった。カウントダウンであと2人、ウォルツとマーフィーが殺されるのではないかと想像していたところに“ハンターが射殺”されてしまった。

合同捜査会議。ハンターの日記が残されていた。「やつらが獲物を横取りし挑発してきた、やつを殺し2匹の俺の手で殺す」とあり、ハンターを先回りして藤波と森山を殺したのではないかと考えられた。また隅田川の船から撃ち、薬莢と2の目のサイコロが残されていた。射距離150mで撃たれ、1発目は外れ2発目が命中、ハンターが撃った弾は相手に命中せず屋形船に弾痕を残していた。

もう一度射殺事件が起こるぞ!ウォルツとマーフィーが目標ではない。誰が犯人か、次の標的が予測できない。無差別殺人事件として東京中が大混乱になっていった。この電光ニュースを冲矢昴が見ていた。

毛利小五郎の犯人見立て。グリーンと吉野が行方不明になっているがハンターを殺す動機がないことを知って、「犯人はカルロス・リーだ、動機はスナイパーとしてのプライド。ハンターと腕を競っているやつだ!」と言い切った。珍しくコナンが「筋は通っている」と呟いた。これは原作者青山さんの苦しい言い訳に聞こえましたが・・・。(笑)

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コナンはFBIのジュディと情報交換で弾が今までと違って軽量弾で損傷を小さくし、近距離で命中率を挙げていた。にもかかわらず1発目は外れたこと。ハンターの遺体がひどく痩せていたことを知った。

コナンは世良と一緒に隅田川河畔の事件現場を確認しながら「なぜ軽量弾を使ったか?なぜサイコロ目が2か?」と考えを巡らせた。そこにジュディから「ハンターは戦場で脳幹近くに傷を受けて射撃が出来なかった」という事実を知り、シアトルの射殺事件もハンターではなく今回の犯人が行ったこととしたら、ハンターとの対決の意味が分からない!いや意味がひとつだけある!」。これを聞いてジュディも驚いた!

そのときマーフィーをマークしていた高木刑事から「マーフィーが東都ベルスリーラインで日光から浅草に向かっている」と知らされ、コナンは「マーフィーが射殺される」とスケボで浅草駅に走り出し、これを世良が追っていた。橋の真ん中に不審車両を発見したが、コナンの背中に赤外線スポットを見つけた世良がコナンの背中に抱きつき弾を受けた。世良は一命を取り留めたが入院となり、「秀兄!」とうわ言を吐いた!病院に赤い車で冲矢が花束を置いて帰っていった。

マーフィーは車内で撃ち抜かれた!マーフィーはスペンサー名の速達で「ハンターの交戦規定違反について確かめたい」と呼び出され東京に戻っていたのだった。

病院に尋ねてきたFBIメンバーから「ハンターは射撃ができず、自分自身の射殺も犯人に頼んでいたらしい。軽量弾で損傷を小さくし初弾を外したのは犯人がびびったもの」と聞かされ、藤波宏明が射殺されたときに犯人にはスポッターが付いていた映像が示された。“う~ん“こんなことが?

マーフィー射殺で残されたサイコロの目は5だった。

ウォルツは「マーフィーが全てを喋った!千草ビルに出て来い!」という文書を受け取った。上京しリーからMK11を受取り、千草ビルに現れる相手を撃つことにした。

FBIのブラックがこれまでの捜査資料を赤井に「頼む!」と送った。冲矢は「ベルツリータワー」周辺の調査を開始していた。

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コナンはジュディからウォルツが上京し何をするかを考えた。サイコロの目5の謎を「シルバースター型」と解き、夏休みの宿題で作ったベルツリータワー周辺のジオラマから、犯人の出現場所を「ベルツリータワー」と予測していた。

そこにジュディから「グリーンは大坂で確保され、ハンターは家族を失ったあと東洋人の男と暮らしていた」という情報を伝えてきた。

「犯人は吉野だ!」とコナンはウォルツのいるビルに急いだいたところ、吉野が「ベルツリータワー」からウォルツを狙撃したが致命傷ではなかった。妨害するコナンを撃ってきた。

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コナンは怪我をしていて動けない。「スカイコートビル」から昴が吉野を射撃してきた。吉野は傷つきながら「あいつ(赤井)はこの世にいないはずだが?」と呟き、ウォルツに止めを刺そうとする。

少年探偵団が「ベルツリータワー」の夜間展望を楽しんでいた。そこにはFBIも駆けつけていた。突然停電となり歩美が吉野の人質になった。FBIも手が出せない。コナンが博士から貰っていた花火弾を「ベルツリータワー」に向けて打ち上げ、吉野の暗視ゴーグルを妨害した。そこに昴のシルバー・バレットが飛んできた。蘭が空手で犯人に絡み“捕まえた”!ブラックが昴に「ごくろうであった」と伝えると「了解!」と昴の声。

感想:

師弟愛を絡めたスナイパーの抗争に立ち向かうコナンたちの活躍、とにかくべらぼうに複雑な謎解きの展開だった!(笑) 殺人数を競うやからの抗争はダメだと、両者を叩いた結末にほっとしました!謎を解いて事件を解決しようとするコナンの正義がいい! サイコロの謎、解けましたか(笑)

しかし吉野役が福士蒼汰さんで、ハンターとの師弟愛にはぐっとくるものがありますね!柔らかい声がよかった!

FBIとの共同作戦が見どころでした

特にジュディとコナンはともに信頼し合える仲であること。そしてジュディと赤井の関係は「いつも守ってやる」ということも。この作品では赤井の姿はジュディの記憶にしかなく、冲矢としての姿しか見せなかった。これもよかった!

世良が吐く「コナンの心臓には弾は当たらない、蘭ちゃんにも!」という言葉、三人の関係に注目でした!物語の中でコナン、蘭、世良が助け合うよいスト-リーでした。なんといってもラストの蘭の空手!

世良はコナンらと同じクラスで、バイクを乗り回し、載拳道に優れている。修一兄ちゃんを慕っているが、冲矢とは知らないようですね。

650m、550m、150mの射撃距離、弾丸重量、射撃部位など専門的なスナイパー話は面白かった。射距離、秘として公表されていませんよね。(笑)スコープの倍率を知りたい!赤井は脳幹をぶち抜けるスナイパーなんですね!😊これが一番記憶に残りました!

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声優:

世良 真純:日髙のり子、赤井 秀一:池田秀一、沖矢 昴:置鮎龍太郎、ジェイムズ・ブラック:家弓家正、ジョディ・スターリング:一城みゆ希アンドレ・キャメル:梁田清之、ティモシー・ハンター:中井和哉、マーク・スペンサー:大塚周夫、スコット・グリーン:辻親八、ケビン・ヨシノ:福士蒼汰、カルロス・リー:マイケル・リーヴァス、ジャック・ウォルツ:パトリック・ハーラン

ビル・マーフィー:スティーブン・ヘインズ

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「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」(2017)運転手の目線で追う「光州事件とは何か」

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大変評判の良い作品。NHKBSプレミアムで観賞しました。

1980年5月に韓国で起きた“光州事件”を背景に、厳しい取材規制の中で現地入りしたドイツ人記者と、彼を乗せることになった平凡なタクシー運転手の知られざる“真実”の物語。

評判どおりの作品でした。事件の原因などは描かれない、政府や国軍トップなど出てこない、現場に駆け付けた記者と彼を現場に運んだ運転手の目線で事件を目の当たりにし、「自由とは何か」を映像で知る作品になっていました。すばらしい!こんな悲惨な事件を、平凡な家族や仲間繋がりでコミカルに描き、それでいて涙なしでは見られないすばらしいエンタメ作品で、事件現場描写はハリウッドを越えていると思います。名作「アルジェの戦い」(1966)クラスです!😊

監督:チャン・フン、脚本:オム・ユナ、音楽:チョ・ヨンウク、撮影:ゴ・ナクソン、編集:キム・サンボム。

出演者:ソン・ガンホトーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル、パク・ヒョックォン、ダニエル・ジョーイ・オルブライト、他。

ソン・ガンホのため口がどんどん少なくなって、表情が変わっていくのが見どころ!こういう作品に出ると益々国民的俳優さんになっていきますね!😊

あらすじ(ねたばれ):

1979年朴正煕大統領暗殺で独裁政権は終焉を迎えたが、全斗煥将軍率いる軍部がクーデターにより実権を掌握。1980年民主化を望む国民は引き続きデモを行っていた。

サウジで個人タクシー運転手をやっていたというマンソプ。韓国には仕事がなかった。今では妻を亡くし、娘のウンジョンとふたり暮らし。政治などには関心なく、家賃を払うにも四苦八苦。そんななかでひたすら娘のためにとタクシー運転手をやっている。娘が大宅の息子に虐められるのが心配。(笑)まるで「グエムル漢口の怪獣」(2006)のカンドゥです。

こんなとき食堂で飯喰っていて仲間が「光州まで送って10万ウォンくれる客を待っている!」という話を耳にして、この運転手になりすましてこの客を乗せて光州に走った。

この客とは、日本在住のドイツ人記者ピータートーマス・クレッチマン)。5月19日東京プレスセンターでBBCのジョンから「韓国は戒厳令下にありかない緊張した状況だ。野党の指導者が捕まり大学も閉鎖になっているが、昨夜から現地の知人と連絡が取れない」と聞かされ、こんな日本にいても大したニュースはないと、20日、牧師に化けてソウルに潜り込み、現地駐在員から「民主化運動を進めていた金大中は逮捕、金泳三は自宅軟禁された。政府の監視で外国記者は動けない!」と聞き、民主化運動の中心地・光州に向かうことにした。

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ピーターが何者かを知らないマンソプは高速道路で光州に向かうが途中で国軍に通行を制され、裏道を走ってなんとか市内に入ることができた。市内で学生たちが乗ったトラックに遭う。ピーターがこれを撮影し始めた。こいつは何者だ?とマンソプ。「外国人記者だ!」ということでピーターは学生たちの車に乗って撮影開始。通訳はク・ジェシク(リュ・ジュンヨル)、歌が唄いたいと大学に入ったという(笑)

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マンソプはここまで報酬として5万ウォンを貰っていたので、これで“おさらば”とソウルに帰り始めた。(笑)

帰り始めたマンソプ。息子が軍人に殴られて怪我したと泣きつく母親を見捨てるわけにはいかない。(笑)母親を病院に届けるとそこにはたくさんの負傷者が運び込まれていた。

病院に「バッグがある」とマンソプの車を探していたピーターとシェシクがやってきた。「何で逃げた!」とマンソプが責められ、これを宥めたのが現地のタクシー運転手ファン・テスル(ユ・ヘジン)。

マンソプはピーターとジェンクを乗せて市民集会場に。沢山の市民が駆けつけていた。彼らに歓迎され、マンソプは英雄になったみたいだった。ピーターはあるビルの屋上から集会の状況を撮影することにした。現地のチェ記者(パク・ヒョックォン)も一緒だった。彼は「自分の記事は放送されないかもしれない」とピーターに期待を示した。

集会が大変なことに!錦南路の大群衆に軍隊がいきなり催涙弾を打ち込み、殴る、蹴るの暴力沙汰。ピーターは至近距離での撮影を求めて、ビルを出て群衆の中でカメラを回す。マンソプは危ないからやめろと止めに入った。「君には分からん」とピーター。このとき私服軍人が外国記者ピーターがいるのに気づいた!

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撮影を終えての帰り、60万km走ったというマンソプの車が故障。明日までには修理できるとレルスに誘われ、彼の家に泊まることになった。家族を挙げての歓迎で、シェシクが歌を唄うがそれがなんとも!(笑)そのとき大きな爆発音が聞こえ、外に出るとTV局が燃え、皆が集まっているという。

ピーターたちは現場MBC前に走った。照明灯の中で繰り広げられる軍隊と民衆の戦い。シェシクが私服軍人に追われていることに気付いた。ピーター、マンソプは、シェシクはビルで逃げ込んだが、撮ったフィルムを落とした。シェシクがそれを取に行って捕まった。しかし彼は絶対に“ピーターの居場所を明かさなかった”。マンソプはシェシクを助けようとして捕まったが、ピーターの機転で救出され、テルズ家に戻ってきた。

マンソプは娘ウンジョンのためにどうしてもソウルに帰らねばならないとピーターに訴えた。朝、ピーターに気付かれないように家をでたが、テルスに捕まり、ピータ^-からだと帰りの経費5万ウォンと代わりのナンバープレート、軍に気付かれない道のマップが渡された。

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マンソプは上手く光州を脱出でき、途中で娘への土産に靴を買った。そこで遭う人々は普通の生活、光州とは余りにも違い過ぎる。食堂で見る新聞には「光州デモで軍人・警察官5名死亡。反社会的勢力と暴徒ら・・」というフェイクニュースだけ。完全に報道統制がなされていた。

マンソプはピーターたちのことを想い、顔の表情が変わった。娘ウンジョンに必ず帰ると宅束野電話をして光州に戻ってきた。

光州に戻ると、ピーターとテルスは病院でシェシクの遺体に付き添っていた。ピーターは放心状態!この惨状にマンソプはピーターに「撮ってくれ!約束したろう、世界中の人々に伝えるのがあんたの使命だと勧め、この惨状を撮った。テルスも加わってデモ現場に駆け付けた。そこで見る光景は、これまでとは比較にならない激しい銃撃を伴う国軍による攻撃だった。バタバタと撃たれるものたちの続出!負傷者が出ても相手の射撃で救出できない。現地のタクシー運転手たちがタクシーで近付き救出することになった。マンソプもこれに加わり、命をかけて救出にあたった。

チェ記者やテルスから「ここを脱出して実情を世界に報道して欲しい!」と促され、マンソプとピーターは車で現場を脱出した。しかし、軍が気づき追ってくる。山間道でもはや絶命を思ったところにテルスらタクシー組合が援助に駆けつけ、軍用車とタクシー車の激しいカーバトル。😊

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警備の厳しい出国ターミナル。ピーターが「連絡は?」と聞くからマッチのラベルにあった名前「サボク」と書いて渡した。無事出国できるかとマンソプが見送るなかで、フィルムを収めたクッキー缶を手土産にピーターが仁川空港から飛び立った!

ピーターが持ち帰った光州の惨状映像が世界に流れた。ピーターはキム・サボクという名の運転手を探し続けたが見つからなかった。

2003年12月、ピーターの光州事件報道に対して韓国からの感謝状が贈られることになった。ピーターは受賞式の席で「運転手のお陰でこの賞を受けることができた。ぜひ会いたい!」と呼びかけた。

今でもタクシー運転手をやっているマンソプは新聞でこのことを知り「こちらこそお礼をしたい!」と呟いた。

ピーターはマンソプとの再会を果たせぬまま2016年1月にその生涯を終えた。

感想:

軍隊の民衆攻撃の描き方がこの作品の肝です。殴る蹴るの暴行、催涙弾攻撃、小銃弾の射撃。これらに迫力がありました。目の前で繰り広げられる惨状に、助けたいと駆け出し撃たれる市民。絶望しかない!この映像がすばらしい!

CGだったらダメ、実写だからの迫力。特に兵士が着けている特殊な防護面に迫力を感じました。

国軍の若者たち、彼らは命じられたとおりに忠実にやるしかない!

いまだに徴兵制度のある国の若者たち、戦闘服姿と銃の構え方、敬礼の仕方が違います!これを撮れるスタッフもすばらしい!

能天気なマンソプが自分の命を投げ出しても救ってやりたい気持ちが伝わってきます。唯一この場を救えるのは外国記者による世界に向けての情報発信だというのも分かります。光州事件についての難しいことはいらない、これで十分!

マンソプとピーター、そしてシェシクにテルスと繋がる絆が感動的に描かれ、とてもうまい脚本でした。

これを契機に韓国の歴史や光州事件を勉強してみたいと思います!

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「ファーザー」!(2020)認知症で記憶力が低下する不安と恐怖を体感できる!

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本年のアカデミー賞で6部門にノミネートされ主演男優賞、脚色賞を獲得した作品。コロナ禍の真っただ中で公開されました。

認知症が進行していく父親と、その介護で疲弊していく娘の姿を認知症の側の視点から描き、観る者に記憶力の低下によって直面する父親の不安と恐怖を体感させる表現スタイルの作品だという。原作はすでに世界30カ国で上演され大絶賛された舞台劇だとのこと。

認知症の母を介護して見送りましたので、ことのほか「認知症側からの目線」ということに興味を持って観ました。

ロンドンで一人暮らしをしている81歳のアンソニー。ある日、介護人とトラブルを起こし、娘のアンが駆けつける。アンソニーには認知症の傾向が見え始め、それは日に日に悪化しているようだった。そんな中、アンから新しい恋人とパリで暮らすと告げられショックを受けるアンソニー現実と幻想お境界が譲れていくアンソニー、アンソニーを思いながらも新たな人生を踏み出したいアン。この親子がたどり着いた答えは・・・

監督・脚本は舞台のオリジナル戯曲を手掛けたロリアン・ゼレール、初映画作品への挑戦です。脚本はクリストファー・ハンプトンとの共同執筆。撮影:ベン・シミサード、美術:ピーター・フランシス、編集:ヨルゴス・ランプリノス。

出演者:アンソニー・ホピキンス、オリヴィア・コールマン、マーク・ゲイティス、ルーファス・シーウエル、モージェン・プーツ、オリヴィア・ウイリアムズ。

作品のアンソニーも私の母もほぼ同じ痴呆状態で、母はこの作品の結末と同じように「お母さん!」と呟いて逝きました。時に見せた母の“怒り”を理解してやれなかったことを悔やみます。この作品は「死生観」や「親の介護で自分の人生をどう生きるか」と悩んでいる人には、考える良い機会になると思います。私のアカデミー作品賞は「これだ!」とお勧めしたいと思います!😊

記憶を無くすることの恐ろしさ!を感じるとともにその先の世界に任せようという気にさせてくれました。

シリアスな作品ですが先の読めない認知症者が主役で、ミステリアスで大混乱をきたすが、可笑しみもあってラストまで画面に惹きつけられます!圧巻のアンソニー・ホピキンスとオリヴィア・コールマンの演技を楽しむことができます。

あらすじ(ねたばれ):

認知症者の視点で描かれているのでよくわからないところが出てきますが、ご了承の程を!(笑)

アン(オリヴィア・コールマン)は介護人が辞めたいと申し出たことで、すでに何人も辞めたので、父親アンソニー(アンソニー・ホピキンス)の認知症の度合いを気にして、父のアパートにやってきた。ドアーを開け「お父さん私よ!」と呼んでも声がない。大音響のビゼーのアリア”が聞こえてくる。

「何があったの?」と聞くと「誰の助けもいらん!」と威高に応える。介護人が辞めたのは父が時計を盗んだと嫌疑をかけたことによるものだった。寝る前に時計を外してベッドの下の小物入れにいれ、それが分からなくなっていた。

アンがこれまで何度も話していた「恋人とパリに引っ越す」話をすると顔色を変えて「俺を捨てる気か!」と怒った。(アンソニーはアンのことを考えないエゴまる出しで、かなり痴呆が進んでいる)アンは週末には会いにくるからと帰っていった。アンソニーは窓から去っていくアンを見ていた。

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アンが帰って、キチンで紅茶を入れていると“物音!がする”「アン、アン!」と叫んだ。居間に行くと男(マーク・ゲイティス)が「ここは自分の家だ!」という。「そんなバカなこれは俺のフラットだ!」と言い張るが、男が「アンの恋人で10年になる」と言う。「アンはパリに行くぞ!」と言えば電話で確認し「すぐ帰って来る」という。急に腹が立ってきて「なぜパリだ!俺をホームに入れるのか?ここを離れん」と怒鳴った。

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そこにアンだという女(オリヴィア・ウイリアムズ)が買い物から帰ってきて「何があったかと」聞く。男が来たことを話すと「ジェームスとは5年前に別れた」という。アンソニーが部屋を探すが男が見つからない。「少し前からおかしなことばかりだ!」と怒り「ここは俺のフラットだ!」と声を上げた。

いつ、どこだ!こいつらは誰だ!頭が混乱してくる!

アンが頼んでいた介護人ローラ(モージェン・プーツ)が訪ねてきた。「介護が難しい人だから」と話しているところにアンソニーが出てきて、アンのことなどそっちらかしで、「妹ルーシーに似て魅力的な人だ」と言い一緒にウイスキーを飲んだ。

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そして「ダンサーだった!」と陽気にタップダンスを踊って見せた。アンは「エンジニアだった」という。(笑)ローラが笑うと「妹のルーシーの若いころにそっくりだ。愚かに笑うところがだ!」と怒り出す。ローラは真っ青になった。(気分にムラがある!)アンソニー・ホピキンスが怒ると羊たちの沈黙」(’91)を思い出して怖い!(笑) そして「ここを離れる気はないぞ!娘の財産を俺が相続してやる」と叫び自室に引き篭った。アンは父のこの状態に、コーヒーカップを落とすほどに落胆し泣いた!

夜、父の寝室を訪ね眠っている父の首を絞めてみた。(殺意なんかはないが、こんな気持ちになるほどに落ち込むことはあります!)

アンが恋人ポール(ルーファス・シーウエル)に「私のことが分からない、他人の目だった」と話すと「心配ない」という。居間にポールがいるとアンソニーが「時計がない」とやってきて、ポールの時計を疑って見た。(笑)ポールが「あなたのことが心配だ!」と話してもアンソニーの関心は時計にしかない。緊張の一瞬だった。時計はベッドの小物入れにあった。(笑)

アンソニーは窓から遊んでる女の子を見て「いつかは会いに来てくれる!抱いてやりたいんだ!」とルーシーの話をした。アンソニーにとってアンには悪意しかない!ポールは「いつまで我々をイラつかせるんだ!」とアンを抱いた。

アンはアンソニーを伴ってサライ医師を訪ねた。アンソニーは年齢を聞かれても答えられず「フランスに行くんだ」と言い、アンは「ロンドンよ」と揉めた。(笑) サライ医師は「様子が急に変わるが心配はいいません」と言い、これにアンソニーは大満足。帰りのタクシーの中で「お父さん!」と話しかけても返事しない。(笑)

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アンが買い物をしていて、ポールから「お父さんが変だ!」と電話が入る。帰るとアンソニーはセーターが着れないと癇癪を起していた。手伝ってやると「ありがとう!」と礼を言う。このことがアンにはことのほかうれしかった!

夕飯の支度中のアンにポールが「いつホームにやる。お父さんは病気だ!」と話しかける。これをアンソニーが聴いていて「さっき聞いた!」と言い出す。怖わ! (こういうことがある、意識が正常な時があるんです!)

3人で夕食。アンソニーは「美味い!」とチキンを食べながら「この女性一日中家にいたのか?」と言い始め、ポールの一触即発状態に。アンが席を外した。ポールが「連れて行くところを決めた!ホームだ!」と声を荒げた。アンは「何故今言うの!」と注意すると「計画したイタリア旅行にも行けなかったじゃないか」と苛立つ。アンソニーはこれを聞いて、自分の寝室に逃げ込んだ。アンソニーは“ビゼーのアリア”を聞いていた。

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朝、アンソニーを起こすと「ルーシーの絵がない」と探す。ローラに任せてアンは外出した。ローラが薬を渡すと「君は修道女か!青い薬を渡して不愉快だ。あの椅子に誰が座る?」と聞く。「娘さんです」と答えると「この前は済まなかった」と謝り「君はルーシーによく似ている」と言う。(記憶が斑のようだ。)「サーカスにいたことがあるのでマジックを見せたいが、パジャマじゃ無理だ」と喋っているところに、ポールが「アンソニーどうかしたか?」と現れ、「正直に言え!いったいいつまでイラつかせる」と殴ってきたあの男になって「僕にも見せない!身勝手だ」と殴ってきた。

そのときアンが戻って来て、泣きじゃくるアンソニーを慰めた。ガウンに着替えさせて寝させたが心配だった。

夜、「お父さん眠っている!」という声が聞こえて、「ルーシーか?」とアンソニーが起き出して廊下を歩いて探す。青っぽい部屋だった!トビラを開けて入ると寝ている女が「お父さん!」と言った。アンソニーの徘徊が始まった!(こうなってくると始末に負えなくなりますね)。

朝、アンソニーが洗面を終えて、食事のテーブルに。アンが「ローラの来る前に!」と着替えさせ「隠し芸が楽しかったと言っていた」と話しているところに女が入ってきた!慌てるアンソニー、「誰だ?」と聞いて部屋に逃げ込んだ。アンが「この部屋いいでしょう、公園が見える。ここの方がずっと楽に暮せる。家より安心よ!」と言い、「パリに行く」と伝えた。「俺はどうなるんだ」というアンソニーに「ロンドンよ」と話すと「たまらん、悲しいよ」と泣きだす。アンは、泣きながらアンソニーの涙を拭いてホームを出た。タクシーに乗っても涙が止まらなかった。

質素な部屋。朝、起きて、アンソニーは時計がないとアンを呼ぶ。すると女がやってきた。「介護人か?ルーシーに似た人は?」と尋ねると女が笑って「覚えていますパリ?」と絵葉書を渡した。「ポールとパリで暮らしています」とあった。

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女と公園を散歩していて男に出会った。「フラットでの知り合いだ、君は誰だ」と女に聞くと「キャサリンです。あの男は介護人のビルよ」という。「俺は一体誰なんだ?」と聞くと「アンソニーよ」と。

アンソニーが「できればママに会いに来て欲しい。ここを出たい、ママを呼んでくれ!」と泣き出す!女が「何故?」と聞くと「全てが葉っぱのようで落ちていく!何が何だかわからん」と。(完全に記憶がなくなった)。「着替えて公園を行きましょう、そして昼寝。気分が落ち着きます」と女の声。窓の外に爽やかな木々の葉が揺れていた!

感想:

認知症者の視点で描かれることで、現実なのか幻想なのか、何時なのか?場所は?と大混乱。登場人物を6人に絞り、同じ人物が役を重複し、さらに部屋や調度品が変化することで、アンソニー精神の混濁を表現するという上手い脚本・演出でした。

これがこの作品の観どころで、記憶を無くすることの恐怖に追い込まれ、ラストで明かされる真実に涙が止まらなかった。

アンソニー・ホピキンスの狂っているのか正常なのかまったく分からないセリフ回しと、時に見せる狂気にぞっとさせられながら、沢山涙を見せてくれ、ラストの表情には涙でした。

一方のオリヴィア・コールマン、娘であることを忘れられた悲しみを目で演じ、パリに帰っていくシーンは涙なしでは見られません。アンの唯一の救いはアンソニーが時に漏らす「ありがとう」という言葉だと思います。

年取ったら「ありがとう」の言葉しかいらない!そう感じさせられた作品でした。

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