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「ゴールデン・リバー」(2018)さすがフランスの巨匠が描いた西部劇だ!

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フランスの名匠ジャック・オーディアール監督が初めて英語劇で挑んだ西部劇サスペンス。第75回ベネチア国際映画祭(2018)での銀熊賞(監督賞)作品。

監督作品は初観賞です。正直、“テーマは何か”と戸惑いました!タイトルに引っ張られました!邦題は間違いだと思います。原題はThe Sisters Brothers。

1850年代、サンフランシスコのゴールドラッシュを背景に、殺し屋の兄弟が人生を賭け、一攫千金を夢みて挑戦。夢敗れて人生で本当に大切なものは何かを掴むという西部劇というよりヒューマンな物語でした。当時のアメリカの近代化を風刺し、これが現在も続いているのではないかと思わせる結末に、さすがフランスの巨匠が描いた西部劇だと感動しました。

殺し屋の世界をふたりでなければ生きられなかった兄弟の絆を、ジョン・C・ライリーホアキン・フェニックスが男臭く、何とも言えない良い味で演じてくれます。これも見どころです!

原作はパトリック・デウィットの小説「シスターズ・ブラザーズ」。脚本:ジャック・オーディアール、撮影:ブノワ・デビエ。
主演はジョン・C・ライリーホアキン・フェニックス、共演はジェイク・ギレンホールリズ・アーメッドなどでさすがの布陣です。


映画『ゴールデン・リバー』予告編

あらすじ:
1851年、オレゴン準州。兄イーライ(ジョン・C・ライリー)と弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)による殺し屋“シスターズ”が夜間襲撃するシーンから物語が始まる。銃口から出る火炎を遠景で見せる銃撃戦というのも異例で、銃撃戦がドラマの主題ではないことを示しています。いわゆる銃器で相争う西部劇の時代は終わり、科学で近代化していく西部開拓を丁寧に描かれます。

燃え上がる幕舎に馬を求めて走るイーライ。6~7人殺したというチャーリー。
この成果を提督(親分)に報告するのは弟のチャーリーで、提督から指揮官がいれば成功したと言われたという。弟が兄貴に威を張りたいらしい。そして新たな命令「南に下りモリスと合流して、ウォームという山師を追え!」を受けたという。兄弟の間で、なぜ弟が兄に指示するのか?

イーライが弟の髪を切ってやり、準備を整えて、マートレ・クリークヘ出発。

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途中駅馬車に出会い、これを追って街の宿に入った。しかし、モリス(ジェイク・ギレンホール)はウォームを追って出発した後だった。次の町までは2日だというので明日朝立つことにした。
イーライは活気つく町の風情を見て回り、雑貨屋で歯磨セットを買い、歯を磨いて寝た。(笑)チャーリーは相変わらず酔払って拳銃をぶっ放して騒いでいた。
次の朝、チャーリーは泥酔で馬に乗れない。イーライが馬に括りつけて出発。

一方、モリスはマートレ・クリークの宿でウオームに出会い、ウオームが砂金堀でサンフランシスコを目指していることを知り、自分はジャクソンビルへ行くと同行することにして、40ドルで馬を買い与え、駅馬車と一緒に向かった。

シスターズはモリスの置手紙「7日後にジャクソンビルに到着。ここでウオームを確保しておく」を見て、山を行けば2日で行けると荒道を採った。
霧に苦しみながら、イーライは毒クモが口から入り体調不良になり(笑)、ジャクソンビルを目指した。

モリスはウオームが化学剤で砂金を見つけ出す方法で砂金堀に挑もうとしていることを彼のノートを盗み見して知った。モリスは日記をきちんとつけ、ルソーの本も読むというインテリ男(弁護士)。
モリスにノートを盗まれたことで、ウオームはモリスの実の顔に気付き別れようとするが、彼の武力も必要と砂金堀の目的「暴力を終わらせ、新しい社会システムを作る。人間関係が敬意により統制される社会、無欲な社会をつくるためだ」と明かし、モリスの協力を求めた。ウオームはフランスからやってきた砂金堀?うまい設定です。

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モリスはウオームの話に感激して「新しい自由のために!」とふたりで作るW&Mカンパニー設立に合意して砂金堀に挑むことにした。

シスターズがジャクソンビルに着くと、モリスとウオームが出発した後だった。「やつは舐めている!」とメイフィールドを目指して発った。

カルフォルニア州メイフィールド。盛り場の女ボスの名が町名になっているという。ここでもモリスとウオームが宿を発ったあとだった。チャーリーが女を抱くために泊まるという。イーライは娼婦からの情報で、メイフィールドが部下にモリスを追わせ、シスターズを始末したがっていることを知った。逃げ出すシスターズ、酔っぱらってもチャーリーの拳銃の腕は冴えていた。この場を切り抜け、サンフランシスコに向かった。実はチャーリーがウオームを追うのは彼の化学探知法を盗むことだった。

サンフランシスコの賑わい、宿のシャワーにびっくりしたふたりはホテルのレストランで飲み、今後の人生について、イーライが「提督と縁を切ろう!暴力は暴力を呼ぶだけで終わりがない」と国に戻ることを勧めたが、チャーリーは「兄貴と別れても、別のやつと組んで、提督の後釜を狙う」と反対した。これにイーライが「俺を抜きにして!」と笑ったことで、チャーリーがぶん殴って出て行った。

次の朝、チャーリーが何事もなかったようにイーライを砂金堀に誘う。(笑)これがふたりの関係なんです。だからこれまでやってこれた。

チャーリーがメイフィールドの宿で、ウオームが買った土地を調べていて、アメリカ川・フォルサムにいるという。

シスターズはフォルサムに向かった。が、夜間露営中眠っていて、待ち伏せたモリスとウオームに掴まった。しかしそこに川下で金堀をしていたやつらが襲ってきた。これを撃破するために4人は協力。一緒に砂金堀をすることになった。

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小さなダムを作って、化学液を加え、反応して光を放つ金塊を集める。集めだすとすべての金塊が欲しくなる。そのうち濃度が低下して金塊が見えなくなった。

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チャーリーがウオームが止めるのも聞かず、残りの化学液を加えたため足が爛れ、砂金を集めるどころかこれが原因でモリスとウオームは命を落とした。チャーリーも右腕(拳銃を持つ手)を負傷した。

シスターズはふたりを葬って、現場を去ったが、提督の遣わし者レクサスらに襲われた。イーライが医者を雇いチャーリーの腕を切り落とし、彼の拳銃をもってレクサスに立ち向かった。

イーライは弟チャーリーを庇いながらオレゴンに戻り、提督を殺そうと館に入ると、なんと提督が棺に中にいた。(笑) チャーリーはその場を去ったが、イーライがチャーリーに代わって、右手で提督の顔を殴った。
そして、ふたりで母親の待つ家に戻った。そこで安らぐふたりに・・・

感想:
科学で近代化が始まった西部アメリカ。民主主義の楽園作りを目指すウオームとモリス。これに暴力ものを言う社会に生きようとするシスターズが加わったゴールド探し。欲が欲を求め、暴力が暴力を引き起こすというどうしようもない人間の業のなかで、チャーリーが化学薬品量を間違え、腕を負傷したことでゴールド探しが終わった。チャーリーは腕を失って初めて自分にとって大切なものは兄イーライであり家族の愛、故郷の風に触れる幸せに気付くという結末が良い。

しかし、ダラスに自由国を求めようとしたウオームの夢。この町が後にケネディ大統領暗殺の場になろうとは!ジャック・オーディアール監督の皮肉でしょうか?アメリカの監督では描けない西部劇でした。

駅馬車やバー、宿の建造物、町の賑わい、歯磨きなど当時の文化をしっかり描き、毒クモに噛まれたり、イーライが持つスカーフのエピソードなどユーモラスで楽しめるドラマでした。

兄イーライが最期まで、弟チャーリーが酒乱でどうしようもない父親を殺したことに、これは自分の役割だったとチャーリーを守り続ける兄の愛には涙です!! 
提督が死んでいたとは!ラストまで予想を裏切られるというとても面白い作品でした。
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