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「ライトハウス」(2019)不快で絶望的な恐怖を味わうが、結末はプロテウス神話で、人が持つ闇だった!

外界と遮断された灯台に派遣された2人の灯台守。ふたりはそりがあわない。険悪な状態になっていく中、悪天候で交代船が期待できず、酒びたりになって、狂気と幻想に侵されていくスリラー劇。第72回カンヌ国際映画祭(2019)では国際映画批評家連盟賞の独立選出部門受賞作です。

A24作品として「ウィッチ」のロバート・エガース監督の2作品目、とても話題になっている作品ということで、WOWOWで鑑賞しました。

監督:「ウィッチ」(2016)のロバート・エガース、脚本:ロバート・エガース マックス・エガース、撮影:ジェアリン・ブラシュケ、美術:クレイグ・レイスロップ、衣装:リンダ・ミューア編集:ルイーズ・フォード、音楽:マーク・コーベン。

出演者ほぼ「TENET テネット」のロバート・パティンソンと名優ウィレム・デフォーの2人。


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あらすじ

海鳴りになか、絶海の孤島に2人の灯台守が着任した。1人は若い男・イーフレイム・ウィンズローロバート・パティンソン)、もう1人は老人・トーマス・ウェイクウィレム・デフォー)。荷物は全部ウィンズローが持っている。

ウィンズローが灯台に入ると、すぐに寝室を探す。ベットに隠された裸の人魚像(スクリムショー)を見つけ、胸の中に仕舞い込んだ。そして光を送る蒸気機関を見た。

ウェイクの「神は荒れ狂う狭間で苦悩する魂を救いたもう」というお祈りで食事が始まった。ウェイクが乾杯!と杯を上げるがウィンズローが「飲まない!」と断った。これにウェイクが「若造!」と威嚇し、この灯台でやるべきこと、掃除、石炭クベ、家具の清掃、貯水槽の青銅等と家政婦のやるような仕事を言いつける。ウィンズローが「灯を見たい」と訴えると、「それはわしの仕事、朝までわしがやる」と拒否。完全にウェイクの支配下でふたりの4週間の生活がはじまった。

ウィンズローは何ら反発せず従順に、石炭くべから仕事にとりかかった。まるで犯罪容疑者で捕まったものが横柄な若い警官の指図で動かされている拘置所生活に似ています拘置所とはこういうところ。この男、ここを出たら必ず警官に仕返しをしたいと思っているでしょう!(笑)こんな感じでドラマを見ていました。

ウェイクは灯台の光の部屋(ランタンルーム)で裸になり「お前に乾杯、美しきもの」と恍惚な表情を見せる。この表情を海辺から石炭を運ぶウィンズローが見た。海の中に入って人魚の声を聴き(錯覚?)、夜ベットで人魚と寝ている夢を見た。

次に朝、ウェイクに「貯水槽の清掃、油を持ってこい!」と屁をこきながら命じられた。(笑)ウィンズローは「やっていられねぇ」と思うが、しっかり仕事に取り組む。この気持ちが感じどころです!

臭い貯水槽の清掃、小屋の修理、石炭運搬、警報機小屋の清掃を行った。片目の海鳥が邪魔をする。「馬鹿にするな!」と石を投げた。

次に油ドラム缶を苦労して灯台ランタンルーム室近くまで引き上げると、ウェイクが降りてきて「これ使え!」と小さな油缶を渡し「ドラム缶を降ろせ!」と指示した。それでもウィンズローは怒らず、我慢した。

夕食時、ウェイクは「明日が便所を掃除しろ」と言い、自分が船長だったときの話として「波が静かだと船員は退屈になる。この状態で何が一番怖いか?反乱だ!これを消すには酒だ」という話を聞かせる。ウェイクは今のウィンズローに気持ちを知っていて話を持ち出す。これにウィンズローがどう反応するかと冷や冷やさせられます。

ウィンズローが「前任者は辞めたのか?」と聞くと「死んだ!」と言い、「人魚の話が出たらその兆候だ!灯りの中には魔法が宿りこれが救済だ!」と答えた。さらに「海鳥に手を出すな!海鳥殺しは不吉だ!」と注意した。

ウィンズローはおかしくなっているのか?ウェイクがおかしくしているのか?

寝ているウィンズローの部屋の窓を海鳥がつつく、ウィンズローがスクリムショーを見ながら手淫をし、部屋を出て灯台のランタンルームを見上げた。

朝になると、ウィンズローはウェイクの指示通りに働いたが、「部屋の磨きが足らない!」と激怒された。灯台の塗装では、作業綱をウェイクに斬られるという嫌がらせを受けた。

夕食時、遂にウィンズローは「若造と言わず、名前で呼んでくれ!木こりが嫌でやってきた」と抗議した。ウェイクは「灯台は妻だ!」と言い「海鳥には死んだ船乗りの魂が乗り移っているから殺すな!」と注意した。

ウィンズローが下からランタンルームを覗いているとウェイクのうめき声。“どろり“と精液?が落ちてきた。

朝、ポンプで水を汲むと血液が出てきた!貯水槽の中を調べると大量の海鳥の死骸。片目海鳥がおちょくる!ウィンズローが捕まえて振り回して殺した。風向きがかわった。何が起こるのか?

「視察船がくるまではもつ、明日この島を出る」と話しながら、ウェイクとウィンズローは小屋に板を貼った。そして夕食時、ふたりは「帰れるぞ!」と酒盛りをした。ウェイクがめずらしく修道女と寝た話をする。(笑)「お前は立派な灯台守になれる。最初は俺の頭をぶち割るかと思ったが」と話した。ウィンズローが「灯のことを教えてくれ!」と頼むが「誰にも触れさせん!」と拒否されたが、話しているうちに「好きにしろ」ということになった。

朝、ウィンズローは海に糞を流し、石炭を運び蒸気を上げた。海辺を散策していて人魚に出会った。その陰部に触ると人魚が奇声を上げた!

夜、ふたりは海辺に出て視察船を待ったが姿を現さない。嵐がやってきた。海水が食料庫に浸入し塩タラがダメになった。ふたりは食べ物のことで激しく揉めた。ウィンズローは寝ているウェイクをナイフで襲おうとしたが見つかって失敗した。

ウィンズローは酒を煽り石炭を運び、人魚と交わった!スクリムショーを叩き切って泣いた。海から引き揚げたロブスターの網にひとりの男が引っかかっていた。錯覚?この様子をウェイクが灯台から眺めていた。

ふたりは酒を呑み、仲良くするかと思えば喧嘩になる。そのうちにウィンズローが「木こりで仕事をしていたときに上司を殺した。その上司がウィンズローで実の名はトーマス・ハワード、なりすましだ」と話した。「なぜ俺に秘密を話した!」というウェイクが本物のウィンズローに見え、眼から光を放って追って来た。こいつは神だ!(笑)ハワードはここから逃げた。

ハワードが救命ボートで逃げようとするところを、斧を持ったウェイクに捕まった。救命ボートは破壊され、「検察官に報告し免職だ!」と宣言された。ハワードは「お前が助手を殺したな!スクリムショーで狂わせる。俺は狂わされん!」と反発した。ウェイクは「秘密を喋って狂ったか!俺はお前の想像物かもしれんが、お前はカナダの森林を彷徨っている」と威圧した。この声でハワードが倒れこんだ。

大波が小屋を襲った。ふたりは酒を呑み続けた!散乱した小屋の中でハワードがウェイクの日記を読んだ。そこには「酒に溺れ、ホラを吹き・・」と悪口しか書いてなかった。ふたりは激しく言い合ったスが、ハワードは「もう一度チャンスをくれ!ランタンルームを見せてくれ!」と土下座して頼んだ。しかしウェイクはこれまでの行為が赦せないと断った。

ハワードはウェイクに犬の首輪を着けて、堀穴に埋めた。ウェイクは「ランタンルームに何があるか?プロテウスの形をしたものが我らの心から溢れ、プロテウスの熱き火と溶け合う。神の恥辱と恐怖で我らの目を焦がされ、監獄の底に沈められるぞ!お前は罰せられる!」と叫びながら土の中に埋まった。ハワードはウェイクからランタンルームの鍵を奪い灯台に向かった。ところがウェイクが這い出してハワードを追って来たが、これを斧で刺し殺した。

ハワードはランタンルームで強い光を浴びた。ハワードが階段から転げ落ちた。負傷して動けないハワードに海鳥が群がってきた

感想

従順だったウィンズローがウェイクの言葉に翻弄され狂っていうミステリー、自らが殺人者であることを告白してからのホラー劇

眼を背けたくなるような汚物と性行為、狭い空間、海鳴りと色彩のない風景、襲い掛かるカモメ、単純な肉体労働。これほどに闇に落とされ、不快で絶望的な恐怖を味わうが結末はプロテウス神話で、人が持つ闇だった。

モノクロ画像で、画像サイズは1.19:1。狭めた空間で、漆黒の中ランプの明かりで浮かんだふたりが対峙する緊張感と怖さは圧巻でした。まるで宗教画を見る思いでした。

モノクロがこれほどまでに美しいとはそして海鳴りや不快な音と音響効果がしっかりした作品でした。臭い匂いもあった!(笑)

そしてロバート・パティンソンウィレム・デフォーの会話劇、この長セリフが秀逸でした!ロバート・エガース監督!次作を楽しみにしています。

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