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「犬王」(2022)自分の名前で、生きたいように生きる。あの世で迷いがない!

古川日出男さんの小説「平家物語 犬王の巻」を元に、南北朝時代に実在していた能楽者の犬王と、その犬王の人生を謡った琵琶法師・友魚の物語をミュージカルアニメで描くという。

監督は「夜は短し歩けよ乙女」「映像研には手を出すな!」の湯浅政明さん初めての時代劇で、かつミュージカルに挑むことになりますが、平家物語は「祇園精舎の鐘の声……」の有名な書き出ししか知らない文学音痴ですが(笑)、いかなる映像になるのかと楽しみにしていました。

脚本:野木亜紀子キャラクター原案松本大洋音楽:大友良英アニメーション制作:サイエンスSARU。

声優:アヴちゃん(女王蜂)、森山未来柄本佑津田健次郎松重豊、他。


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あらすじ(ねたばれ:注意):

冒頭、現在からあっというまに600年間を駆け抜け、時の権力者足利義満柄本佑)が「壇ノ浦に沈んだ三種の神器があれば」と玉手箱を開けると能面が出てくる。するとその面をつけて犬王(アヴちゃん)が踊ると、世が治まる!相棒だった友有(森山未来)がいない?失われたふたりの物語が始まる!

壇ノ浦の戦から10年。檀の浦のイオ村に、京からやってきた者たちに三種の神器引き上げを要請され、友魚と父親(松重豊)が海に潜って発見した。収納箱を開けると草薙の剣の輝きで父親は亡くなり、友魚は両眼を失明した。

友魚は仇を打とうと京へ旅立った。旅の途中で出会ったのが当道座の琵琶法師・谷一(後藤幸浩)。平家物語を謡って平家を追悼する旅の途中だった。友魚は谷一を追い、いつの間にか弟子になり、物語を立派に諳んじるようになっていった。京に入って、当道座のナンバー2定一(山本健翔)から琵琶法師・友一の名が与えられた。

このころ猿楽「比叡坐」の棟梁(津田健次郎)の三男として犬王が生まれた。が、父親が能楽師としての野望を遂げるため当時流行りの平家物語を語る琵琶法師たちと犬王の命を悪魔の生餐として差し出したため、腹の中にあった犬王は人目に晒せないほどの異形の子をして生まれ、常にひょうたん面をつけて育てられた。

このアニメでは犬王が面の目玉から外を覗く映像があります。視界がうんと狭いが、ここから見る世界は、自分とは関係がない、客観的に物ごとが見える利点があった。彼は異形にも関わらず明るい子で敏捷だった。時に面を外して女たちを脅して楽しむこともあった。しかし、当時の猿楽は義満の御台所・業子の贔屓で藤若(後の世阿弥)が大人気で、異形の犬王は稽古をつけてもらえなかった。いつもひとりで見よう見真似で踊りを身につけていった。

犬王と友一の出会いは、犬王が面を外して友一を驚そうとしたが、友一がめしいでその姿に驚かなかったこと。そして友一の奏でる琵琶の音が気にいった。

友一は定一に連れられ如意嶽から京の町を見た。めしいの目で見た光景は平家の怨念で燃える赤い炎だった。

父親(幻)が現れ、「平家の亡霊はついてないか?俺には山ほどついている」と打ち明けた。そこに「その話、聞いてやる」と犬王が現れた。

犬王は父とは違う自分の舞を舞うと決意し、ここで名を“犬王”と定めた。友一は“自分の謡だ”と友一の名を捨て、「友有」とした。

犬王が自分の出自と自分の平家物語(犬王版)を語り始め、友有が謡いをつけ、大王が踊ることになった。

友有が、まずは客寄せにと京の三条大橋上に立ち、琵琶のバチをギターピックのように爪弾き謡う。隣には弦に弓を当て琵琶をウッドベースのように弾く男と太鼓を抱え叩く男がいる。まさにロックバンドフェスだ。

そして大橋の下にセットした舞台に犬王が登場一の谷合戦の悲劇。脱出する舟に載せてくれとせがむ平家人の腕。刀でぶった斬られた腕。犬王の異形の長い腕が引っ張られ、ぶった切られる等、犬王の激しい踊りで見せる。

さらに戦は壇ノ浦に。増援兵をクジラに見立て、クジラ出現を待つが裏切られる平家の悲しみ、遂に海中の都を求めて身を投げる悲劇が、「平家は滅んだがまだ終わってない!」と炎を振り回しクジラに乗って、謡い踊った。舞台装置にプロダクション・マッピング演出と、観る人を唖然とさせる!

京の町で犬王の舞と友有の謡が「平家の亡霊が舞う!」と大評判となり、比叡坐の舞台には閑古鳥が鳴くありさま。ふたりは「平家の亡霊が自分たちを知って欲しいんだ!」と謡い、踊った!

義満がこのパフォーマンスに「流行り琵琶があるが、平家物語の教本は足利だけでよい」と示し、犬王に、面を外して踊ることを条件に、天覧の舞を命じた。観台所・業子が懐妊中で、「あの面では大変なことになる!」という声が上がったが、犬王はこれを受けた。

犬王と友有は京のいたるところでパフォーマンスを見せ、京の町民たちは熱狂した。最後は比叡座での公演だった。友有が「これが最期になるかもしれないな!」と言うと「ここからが始まりだ!」と犬王が答え、舞台に立った。大がかりな舞台演出で、犬王がロープを使って天に舞った。これに父親が激怒したが、訪れていた女官たちがうっとりとして見ていた。

足利義満の別邸北山殿で天覧能が始まった。犬王は面を外して舞った!業子が「やわらかい!」と 声を上げた!

「天下が乱れる!」として友有坐は禁止となった。谷一らがやってきて「当道座が潰れる。平家の物語は統一された」と犬王版を取り上げようとした。友有がこれを拒否したため、役人に捕らえられた。

友有は三条河原で父(幻)の「友有戻って来い!名を捨てて!犬王は承知した」という声を聴いた。刑執行人に名を聞かれ「壇ノ浦の友魚だ」と答え、斬首されあの世にいった。その夜、密かに犬王が友有の墓を詣でた。

室町殿に招かれた犬王は義満から「平家物語が逸脱され過ぎる!もうやるな!世が乱れる」と言われ「私の踊りを見て欲しい」と踊って見せた。犬王は猿楽師の第一人者としての名声を得て行った。

今の世(このアニメで)でふたりは出会った。友魚が「いつまでここにいるのか?」と大王に問うと「600年も友魚になっていたのか、名を戻しては分らんよ!」と答えた。ふたりは大王と友有になって謡い踊りながら大空に上っていった。

感想

大王と友有は平家の亡霊を介在して結ばれるべくして結ばれたバディだった。大王が語る人生に友一が共鳴し琵琶で謡うロック、このロックに共鳴した犬王の想像を絶するパフォーマンス。ふたりが相手を認め合うことで、新たな平家物語ができ、民衆の喝采を受けるようになっていった。まさに室町時代のポップスターだった。

室町の謡いと舞を可視化したとんでもない映像に、湯浅監督ならではの凄みがありました。「何度も繰り返され、物語が進まない」と不平を漏らす人がいるかもしれませんが、ハマれば踊りたくなる!これが狙い。室町時代の音楽(ロック)フェスに参加した気分にしてくれます。足で床を踏み鳴らして観ていました!(笑)

しかし、よくもこんな奇想天外なフェスを考えましたね!平家亡霊の怨念をどう詩に起こし、これに曲をつけ、絵にしていくか。この難題をすばらしいチームワークで成し遂げました。これこそが犬王の物語に挑戦した湯浅監督の狙いだった。

しかし、鬼才の湯浅監督には耐えられても、スタッフは大変だったでしょう。(笑)大友さんが曲作りに泣かされたというのも頷けます。(笑)作詞家と歌手、声優としてのアブちゃんの活躍。犬王キャラにぴったりで実像を確認しておく必要がありますね!ロック歌手としての森山さんの歌唱力も凄かった。アニメの顔がお二人の顔に見えましたよ!(笑)

ふたりのその先の運命!

民衆に受け入れられ大ヒットしていく二人の活動は時の権力者・足利義光には都合が悪く、公演禁止となった。犬王は友有を生かすため犬王版で踊ることを諦めたが、友有は自分の壇ノ浦の悲劇体験から犬王版を諦められず、捉われ斬首刑に処せられた。犬王は友有の謡いで舞い美しくなっていった顔を晒して踊り、天皇に寵愛されるまでの能楽師になり、平家物語正本に名を遺した。友有の生き方は不憫で、理不尽ではないか!

しかし、犬王が正本に名を遺したことで、友有は川日出男さんによって今の世に生かされた。

お互いに、自分の名前で、人の言い成りにならない生き方で生きたが故に、あの世で迷いはない。本作のラストに“落ち”があって、犬王はあの世で600年間、友有を探したが見つからなかったという。友有が友魚と名を変えていたからだった。今、出会ったふたりは友有と犬王となり、謡い舞い狂って、天に昇って行った。

物語というものは時の支配者の都合のいいように書き換えられるということ。世は諸行無常だ!だから「自分の生きたいように生きろ!」と教えてくれているようでした。この話は湯浅監督の物語、苦悩なのかもしれませんね!とても面白く観ました!

キャラクターたちの姿、風景など、室町の風情が楽しめるようしっかり描かれていました。

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