映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「NOPE/ノープ」(2022)難しいことを考えないで、最高傑作のUFO映画を楽しむ!

アメリカの田舎で牧場を営む兄妹が、父の死に関わる謎の飛行物体の正体を探す中で、次々と不可解な現象に巻き込まれていく恐怖の顛末をミステリアスかつスリリングに描き出すSFスリラー

ゲット・アウト」(2017)「アス」(2019)のョーダン・ピール監督作。ホラー/スリラージャンルに人種や社会の問題を描き込むという、私にとって灘作、3作目にして大作に挑むという監督の意気を見ようと楽しみにしていました。1回目観て、これちょっと作風が違うのかなと2回目を観ての感想です。(笑)

ピール監督作品と構えないで観て、楽しめる作品でした宇宙生物との壮大な遭遇物語で、ストーリーも面白く、深みのある映像に、忘れられない作品になりました。監督の人種とか格差視点なんど忘れて、観て楽しんだ方がいい!兄妹愛に泣かされ、何故“この愛”を監督は描かねばならなかったのかと。

監督・脚本:ジョーダン・ピール撮影に「TENETテネットなどクリストファー・ノーラン監督のカメラマン:ホイテ・ヴァン・ホイテマが参画。衣装デザイン:アレックス・ボーヴェアード、編集:ニコラス・モンスール、音楽:マイケル・エイブルズ。

出演者:主演は「ゲット・アウト」のダニエム・カルーヤと「バスラーズ」のキキ・パーマー、共演に「ミナリ」のスティーヴン・ユァン、マイケル・ウィンコットキース・デヴィッド、他。

物語は

ロサンジエムス郊外にあるヘイウッド家の牧場では、映画やテレビのために馬の調教を行っていた。しかし半年前に父が亡くなり、息子のOJ(ダニエム・カルーヤ)と娘エメラルド“エム”(キキ・パーマー)が継いでからは苦しかった経営がさらに悪化していた。そこで元子役のリッキー・“ジュープ”・パク(スティーヴン・ユァン)が経営するテーマパークに馬を売り、急場をしのごうとする兄妹。しかしリッキーからの牧場を買い取りたいという申し出には、家業を守りたいOJがためらいを見せる。そんな中、OJから父の死の際に体験した不可解な出来事を打ち明けられたエムは、決定的証拠を捉えたバズり動画の撮影を思いつく。やがて起こる奇怪現象の連続。それらは真の“最悪の奇跡”の序章に過ぎなかった。果たして彼らは・・・。


www.youtube.com

あらすじと感想(ねたばれ:注意):

タイトルの前にふたつのシーンの紹介がある。ひとつは、TVのコメディ番組「コメディの誕生日」収録中で起こった事件。映像のないセリフのやり取りと笑声、そのあとコーディが動かなくなった女性の周りをうろつく映像シーン。やたら女性のヒールが立っているのが気になる。(笑)

ここで「私はお前に忌まわしい汚物をぶつけ、卑劣な扱いをし、見せ物にする(旧約聖書ナホム書より)」という字幕が示される。猿は東洋人ということで、「有色人種の復讐」がテーマであることを示唆しています。

もうひとつがDJの父親が“なにかの異変”で命を落とすシーン。隆盛時のヘイウッド牧場、父親との関係、跡を継ぐと決めたOJとここで働くことを嫌かって街に出たエム。

物語はOJとエムに兄妹がUFOを映像に収めるべく奔走する物語を主軸に「コーディ家に帰る」に名子役ジュープの名で出演していたリッキーのトラウマが絡むものとなっている。物語はOJの父が亡くなって半年後から始まる。

ハリウッドのCM撮影スタジオ。馬・ラッキーと女優とのCM撮影。OJが調教師として初登場。しかし、実直で口少ない彼には自己紹介も馬の紹介もうまく出来ない。遅れてやってきた妹のエムが流暢に牧場の由来を語る。「先祖は1887年黒人騎手として映画を撮った」と映像で示し、「名前はないが写真が残されている由緒ある牧場だ」と訴えた。この喋りが、脚本、歌手、女優を目指して家を出たが芽がでない鬱憤を晴らすようだった。(笑)キキ・パーマーの演技はこの1発で決まりでした!

ところが、女優との撮影時、フラッシュに驚いたラッキーが後ろ脚を蹴り、女優が驚き、OJとエム、ラッキーは解雇された。「馬の後ろには立つな!」と教えていても、この様だ!

馬とチンパンジーが絡むことで、人と動物の関係もテーマになる。

 OJはラッキーを売りにリッキーのテーマパーク「ジュピター・パーク」と尋ねた。エムは井戸を覗くと写真が出てくるプリクラがあることを知った。

リッキーはコーディ事件以来、人気を失い、パークを運営。パーク内に「コーディ家に帰る」のコーナーを設け有料で稼いでいた。リッキーはラッキーを買い、次のアトラクションを練っていた。リッキーが「牧場を売れ」というが、OJには売った馬を買い戻し、牧場を続けたいと考えていた。

ヘイウッド牧場。夕日が沈むころ、放牧していた馬・ゴーストが突然駆け出した。OJが走り出ると、異様な雲、異様な音、瞬間的にUFOを見た。そのとき、一時停電が生じた。リッキーのパークから「1時間後には、あなた方は別人となってこの場を離れる。僕と家族は・・」の声が聞こえた。

雲、闇の牧場の中での異常現象をスペクタクルに見せてくれます。撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマの腕の見せ場でした!

OJがエムに「父の死はUFOが関係しているのでは?」と話すと、「映像をオプラに持ち込めば5~10万ドルにはなる」という。

ふたりは早速電気店を訪れ、店員エンジエム(ブランドン・ペレア)の案内で監視カメラを購入し、設置も依頼した。

「リモートにするか」と聞かれ、これは断った。カメラを設置しているこころにリッキーがやってきて「新作ショーだ」と“星との遭遇”パンフレットを渡して帰った。

その夜、リッキーから贈られた“星の遭遇“のマスコット人形“ジュープちゃん”を見ていると、馬のいない厩舎の電灯が点灯した。OJが点検にいくと真っ暗な中に影がある。人の動く気配!捕まえぶん殴ると、宇宙人に変装したリッキーの子供たちだった。恐怖心を煽るように丁寧に作られたこのシーンに、やられたという感じ。「シャイニング」のオマージュ?

OJは子供に「なめるな!行く」と伝えた。

翌日、OJが馬場に出るとクローバーが突然暴れて走り出す。大音響、大きな雲が出現、竜巻の発生、停電。この状況を、リモートを断ったにも関わらず、エンジエムが見ていて、エムに異変を連絡してきた。(笑)エムがOJに注意を促す。OJは何ものかにに追われ、小屋で逃げ込んだ。監視カメラにカマキリが張り付いて、この事態を観測できなかった。(笑)

エンジエムはUAP(未確認航空現象)に興味を持っていて、OJにリモート協力を断られたが、内密でやっていたというわけ。彼がリモートしていたことで動かない雲の存在が明らかになった。この件で彼の役割が評価され一緒に行動することになった。

エムはハリウッドのスタジオで会った引退間近の神格化されつつあるカメラマン・アントレス(マイケル・ウィンコットに電話し協力を求めた。彼は「不可能を可能にするかもしれない」とエムの申し出を評価して電話を切った。

リッキーは“星との遭遇”ショーに当たり、コーディ事件(1988)を思い出していた。プレゼントの箱が開けられ風船が出て弾ける音。コーディが女性をいたぶる様を、ジュープは机の下に身を隠し見ていた。血まみれのコーディが近づいてきて自分とハイタッチしたあと撃たれた。撃った男が出てきて女性を起こし「もう一度リハーサルよ」の声。

リッキーはこのショーで、過去の栄光を取り戻したと考えていた。

“星との遭遇”ショーの開始。リッキーは家族、観客席のコーディに攻撃された女性を紹介して、「私と家族は絶対的な光景を目撃しました。あなた方も今日、目撃するでしょう。スクールバス2台分の大きさ、馬を食べる」と紹介し、檻に隠していた宇宙人への餌ラッキーを晒した!そのときリッキーは空に異変を感じた。

「席を立つな!」、空を見る観客たちの叫び声。なにが起こったか?

牧場にいたOJは落ちていた“星との遭遇”ショーのパンフレットを見て、ジュピター・パークに何があったかとやってきた。会場のスピーカーから「またお越しください」の声が流れていた。そこで見たものは散らかっているゴミ、誰もいない観客席。そしてラッキーだった。何が起こったか?そこにUFOが襲ってきた。小屋に逃げ込んだが、よく覚えてない。目覚めたときは夜、雨だった。エンジエムに携帯電話するが出ない。次にエムに「船じゃない!」と知らせ、トレーラーにラッキーを乗せて牧場に向かった。

エムは家の中で轟音、窓に流れる赤い雨に、何が起こったかと恐怖に陥った。そこに異変を知ったエンジエムが駆け付け、部屋にナイフを持って入ってきた。ふたりが大混乱。「サイコ」のオマージュ?

牧場に戻るOJ。豪雨と防風、轟音で車のエンジン停止。そこに爪のようなものが車のウインドウを破る。血の雨が降る。ジュピター・パークの看板などガラクタが大量に降って来る。雨・風が弱くなり、爪は木馬の脚だった。この恐怖!どう表現するか!

朝になって、家に戻ったOJはエムとエンジエムをエンジエムの車に乗せ、街のダイナーに逃げ込んだ。エムは「止める1」という。OJはこれまでに経験したことを考えた。「ラッキーをトレーラーに載せて、あいつを見ないで逃げた。ラッキーがCM撮影時フラッシュが目に入って暴れた。“星との遭遇”ショーでラッキーが生きているのは“やつ“を見なかった」。OJは「目を見なければ喰われない!時間を止めてはだめだ!」と言い、撮影を主張した。

ニュースが「ジュピター・パークで天候異変によるものか、事変があったらしい」と報じた。

このニュースを見たアントレスがヘイウッド牧場にやってきて、「相手は動物だ欠点はある!ガラクタを喰わせ弱らせる、やってみよう!」と準備に入った。OJはこの生き物に“Gジャケット”という名をつけた。Gジャケットはエムが初めて受け取る馬でOJが父親に叱責されながら調教した馬の名。この名のつけ方がいい、泣かされますね!(笑)

OJはラッキーを走らせGジャケットを引き寄せる。アントレスがフィルムで手回しカメラで撮る。エンジエムはアントレスの助手、エムはモニターで監視。Gジャケットの接近を探知するための風船(スカイダンサー)の設置。それぞれの役割を決めて、機材準備し、配置に着いた。

朝、いよいよ撮影開始。エムが大音響で作戦開始の音楽を流した。スカイダンサーに異変を発見したエムが撮影ポイントを示す。それをアントレが追う。フルムの交換をエンジエムが援助する。そこにオートバイで「(ゴシップサイト)TMZの記者だ」という男がやってきた。

「パークで何があった!」と走り去った。障害物に引っかかって横転。これを追うOJ。「(危ないから)やめろ!」とエム、そこにGジャケットが姿を見せた。巨大なクラゲ?(笑)アントレは撮った!しかし、エンジエムが確認するが返事がない。OJはGジャケットに追われ小屋に退避。Gジャケットがアントレとエンジエムを飲み込んだ。「ジョーズ」のオマージュだ?

エムにGジャケットが襲い掛かる。エムは部屋を出て走った。エムを救出するため、OJはラッキーに乗り風船を曳かせて、Gジャケットを追った。これは西部劇で砂漠を走るシーン。音楽もカントリーミュージックになっている(笑)。

エムは記者のオートバイの位置に来て彼を探すが見つからない。彼のオートバイでジュピター・パークへ、Gジャケットを見ないで、走った。これを追うGジャケット。「北北西に進路を取れ」のオマージュシーン?

Gジャケットはいろいろな姿に変化した。まるで“エバンゲリオン“の使徒のようだった。(笑)

エムはGジャケットをジュピターパークに誘導し、パールのマスコット風船“ジュープちゃん”を空に揚げてGジャケットに食わせ、井戸のプリクラカメラでGジャケットを撮った。何度も挑戦するが撮れない。Gジャケットが“ジュープちゃん”を飲み込んで爆発して落下。取材に訪れていたTV記者が「動揺を隠せない!未確認物体が上空で破裂しました」と報じていた。電気が使えるようになり、パークの放送が「楽しかったらまた来てね!」と告げていた。

エムがパークの出口を見ると、そこにラッキーに騎乗したOJの姿があった。エメラルドの顔に笑顔が戻った。そのとき、井戸のプリクラカメラが天空で爆発直後の映像を排出した!

まとめ

次第に明かされていく詳細なUFOの生態。ミステリアスで、最期にはホラー化していく。笑いもある。音響が凄い!すばらしい映像表現力でした。ジュピター・パークで行われた“星との遭遇”ショーの惨事、それを見てOJがヘイウッド牧場に戻るシーン、エムとエンジエムの恐怖体験を含めて、とんでもない恐怖体験の描写でした!恐怖描写の一級作品です!

GジャケットとOJ、エムの牧場でのチェイス・アクション、面白かった。なんといってもGジャケットの風体、その変化の面白さ

スティーブン・スピルバーグ監督の「未知との遭遇」「E.T」「ジョーズ」を軸に、「西部劇」、ヒチコック作品、「エヴァンゲリオン」など名作映画をなぞりなから、圧倒的なエンターテインメント“UFO”物語になっています。映画界における黒人監督としての意地を見る思いでした!

ジョーダン・ピール作品といえば、人種や社会の問題を描き込んだ作品ということになり、本作の視点は?

冒頭の「有色人種の復讐」という視点はOJ、エム、リッキーが有色人種であるがゆえの浮かばれない人生物語になっており、作品を通じての視点となり、応援したい気持ちで観ました。

誰も見たことないものを見る/見せることが異様に肥大化した社会の視点で描かれていると言われるが、これはよく分からなかった。

OJとエムが“最悪の奇跡”に出会い、事態の悪化に伴いお互いを気遣い、ラストではエムはバズリ動画のことなど忘れてOJの無事を喜ぶというふたりの絆。これこそがSNS情報社会の中でもっとも大切なことだと思う。

監督はコロナの中でどう映画を楽しんでもらうかを考えて、「現実を忘れるきっかけになればいい」と作った作品だという。映画愛に溢れた本作、むつかしいことなど考えないで観たらいいと思います。

              *****