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「スターリングラード」(2001)ソ軍の伝説スナイパーの自伝、愛の物語だった!

ロシア・ウクライナ戦争の渦中にプーチン大統領は2月2日、ボルゴグラードスターリングラード)に駆けつけて“WWⅡスーリングラード戦”の勝利を祝い国民の士気を鼓舞した。それほどにスターリングラードはロシアにとっては誇りにしている戦場。

WWWⅡナチ独逸軍の進攻を阻止し攻勢の起点となった戦争。壮大な戦闘スペクタクル物語だと思っていたら全く別ものだった。(笑)

原題はEnemy at the Gates戸田奈津子さんもいい訳が見つからなかったのかな。(笑)

監督:「ラマン/愛人」のジャン=ジャック・アノー原作:ウィリアム・クレイグ、脚本:ジャン=ジャック・アノー アラン・ゴダール撮影:ロベール・フレス、編集:ノエル・ボワソン ハンフリー・ディクソン、音楽:ジェームズ・ホーナー

出演者:ジュード・ロウジョセフ・ファインズレイチェル・ワイズ、ボブ・ホスキン、エド・ハリスロン・パールマン、ガブリエル・トムソン、エバ・マッテス、他。

物語は

1942年9月。1カ月にわたり、ナチス・ドイツの猛攻にさらされてきたスターリングラードに、新兵として赴任してきたヴァシリ・ザイツェフ。彼はウラルの羊飼いの家に育ち、祖父に射撃を仕込まれた天才スナイパーだった。やがて彼の射撃の腕はソビエト軍の志気を高めるために利用され、ヴァシリは英雄へとまつりあげられていった。(映画COMより)


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あらすじ&感想

1942年6月、枢軸軍はスターリングラード攻撃を開始し、ボルガ河西岸に迫っていた。スターリンスターリングラードから一歩の後退しないと次から次へと動員をかけた。

1942年9月20日、徴兵を受けたヴァシリ(ジュード・ロウ)は軍用列車でボルガ河の渡渉場に到着。艀に乗り換えスターリングラードへ渡河。砲撃を受け河には死体がそこら中に浮いている状況。空中から機銃照射を受ける。上陸すると2名1組にして1丁の銃と弾薬(弾倉)が渡される。射手がなくなったら次の者に替るというもの。「逃亡者は射殺する!」の号令下、ヴァシリは弾薬を受け取りそのまま敵陣地の攻撃に加入した。敵の重機でほぼ全滅の状況。敵の掃討作戦が始まった。

ヴァシリは死体の中に身を隠し掃討を逃れた。ソ軍将校が廃屋に入り水浴びをし始めた。すると隣の兵士が射撃を始めた。ヴァシリもこれに加わり射撃し、進出してきた敵をなぎ倒しアジトに退却した。隣の兵士は人民委員で第2級政治将校・ダニロフ(ジョセフ・ファインズ)だった。彼は兵士の士気高揚のための宣伝ビラ発行を担当していた。

アジトには家主のフィリポス夫人、息子のサーシャ少年、志願兵のターニャ(レイチェル・ワイズ)がいた。ダニロフは「ウラル出身の若い兵が到着。ヴァシリが敵将校を射殺」と宣伝ビラを撒き、地下の兵士たちを激励する。

スターリンはこの正面にフルシチョフ政治委員を送り込み戦闘指導に当たるフルシチョフは司令官に自決を迫り、将校たちに「スターリンの名の街にふさわしい戦闘をする!」と一歩も下がらないことを示した。そしてダニロフを参謀とし新聞発行を命じた。ヴァシリは狙撃班に配置された。

ヴァシリの狙撃班での成果がダニロフによる新聞で広く軍内で知られるようになっていった

ヴァシリはターニャにダニロフのいる作戦本部に勤務するよう勧めた。

独軍司令部はスナイパーによる死亡者の増大に「ヒトラーの感を信じてここが天王山だから(笑)」とスナイパー育成教官のケーニッヒ少佐を本国から呼び寄せヴァシリ狩りを開始した。ケーニッヒは「罠で捕まえる」と宣伝新聞を配るサーシャをチョコレートなど食べ物で手なずけてヴァシリの動きを探り始めた。

ヴァシリは射撃壕から射殺した証拠として相手の認識票をもぎ取りに出ると正確に撃って来る相手がいることに「罠に嵌っている」と気付き始めた。ダニロフはケーニッヒが暗躍している情報を掴みヴァシリに伝えた。そしてスナイパーの名手として名高いバイエルンの貴族クリコフとペアを組ませた。

このクリコフがケーニッヒの罠にいとも簡単に嵌って亡くなった。

ダニロフは司令部の通信係となったターニアに好意を持つようになっていった。しかし、ターニアはユダヤ人の父はパレスチアの地こそが我々の地だと土地を買い、自分には射撃を教えた」と話し、狙撃班への転属を申し出た。

ダニロフはヴァシリにターニャの転属希望を諦める説得を依頼した。しかいターニャは「3週間前、父母がナチに連行され鉄橋の上で撃たれ亡くなった」と言い、転属を諦めないという。ヴァシリはクリコフのスナイパー銃をターニャに譲った。

サーシャ少年からヴァシリの行動がケーニッヒに漏れていた。化学工場のパイプラインを使用して神出鬼没に行動することが、ケーニッヒの待ち伏せで出来なくなってきた。さらにヴァシリの隠れ場所を空爆で襲ってくる。

ダニロフから止められているにも関わらず、ターニアがヴァシリを追う。パイプラインの出口でケーニックの射撃で脚止めされたヴァシリは、ターニアに指示してガラス破片で光を反射させケーニッヒの射撃を混乱させ、ケーニッヒを撃った。

独軍はボルガ河まで150mまで進出してきた

 ダニロフはアジトを尋ねサーシャに「ケーニッヒ少佐に伝えろ!全狙撃手を工場に配置する」と指示した。

ヴァシリは「次が最期になる!貴方は教育を受けている人で生き残って戦争のあと必要な人だ」と司令部に残ることを勧めた。その夜、天幕の中でターニャがヴァシリを求めた。とても窮屈なセックスだった。(笑)ジャック・アノー監督は「このシーンは絶対に外せない」と言っている。(笑)

ヴァシリはダニロフに「これが最後になる!自分は普通の人でいい、今までのことは虚像だ!」と伝えた。ダニロフは「何が言いたい!希望なら役を降ろす」と答えた。そこにサーシャ少年が「少佐の靴に泥が付いていた。泥なら化学工場裏のボタ山だ」と報告した。

これを聞いたヴァシリは「子供を利用するな!」と注意した。すると「サーシャは自分からやっているんだ!君が信用できないんだ。明朝、化学工場を奪回する。サーシャ少年に呼びに行かせる」と指示した。

ヴァシリは早朝、まだ闇のなかサーシャに誘導されボタ山に着いた。そこにケーニッが現れた。猛烈な砲撃と空爆があった。遺体の中から鉄十字勲章を集める男がいた。

この状況に、

独軍本部は「ヴァシリは死亡した。明日夕刻、飛行機でベルリンに戻れ!君が生きていると相手に利用される」とケーニックに命令した。

ダニロフは「やつらは嘘つく」と「ヴァシリは生きている」とニュースを流した。そしてターニャに「戦争が終ったら俺がいる」と励ました。

独軍「ヴァシリは2度と愛する者に会えない、降伏せよ」と放送した。

ケーニックの前でサーシャが「ヴァシリが亡くなった」と泣く。ケーニックは「俺が殺してないから生きている」と言い、「駅の出口の側、給水塔に必ず現れる」と暗示をかけた。

ダニロフは「ヴァシリは生きている。彼は我々の一部だ」とニュースで流した。そこにヴァシリが「英雄は消えた、彼は死んだ。本物は俺だ。寝ていたよ!」と現れた。ダニロフは「フルシチョフに伝えておく」と返事した。ヴァシリは「ターニャはボタ山に行った」と伝えた。サーシャ少年が「少佐は独軍のデマだと言っていた。駅であなたを待っているといっていた」とヴァシリに伝えた。

ヴァシリが給水塔に行くとターニアの「ヴァシリ!」と探す声が聞こえたヴァシリの姿を見て「死ぬことはない!出会ったばかりよ!サーシャからここにいると聞いた」と言い、ふたりがキスした。これをダニロフが見ていた。

ヴァシリがターニャに「ここにくる列車の中で本を飛んでいたキムが美しかった」と話しながら塔を見ると、そこにサーシャ少年が吊るされていた。ふたりは仰天した。ヴァシリは「必ず自分がケーニックを倒す!」と誓い、ターニャをアジトに帰した。独軍がすぐそこに迫っていた。

ターニャはフィリポス夫人を連れてボルガの東側に避難することにしたそこに独軍の砲弾が降り注いだ。ターニャが砲弾で負傷して動けない。担架に乗せられ船に運ばれた。夫人は「母さんは無事!向こう岸に渡ります」の張り紙を残して船に乗った。もうターニャの姿はなかった。

廃墟の中でヴァシリはダニロフに出会ったダニロフは「ターニャは砲弾で即死した。フィリポス夫人を船に乗せて戻ろうとしていた。君はいい人間だ最後に君に役い立った。ケーニック少佐の居場所だ!」と飛び出しケーニックの射撃目標になった。ダニロフはケーニックの標的になった。ヴァシリは撃ち返しケーニックを射殺した。

2か月後、1943年2月2日、ソ軍は勝利に湧いたファシストが無条件降伏した。ヴァシリは野戦病院を尋ね歩き、ターニャを見つけた!

まとめ

伝説のソ連スナイパーの生き様を、独・ソのスナイパー対決のスリリングな戦いの中で、ひとりの女性をふたりの男性が愛する愛を描いた戦争エンターテイメント作品だったジャン=ジャック・アノーらしい愛の物語だった

独ソのスナイパー同士の騙し合いの戦闘シーンを緊張しながら観ることが出来た。その最後の闘いで、恋敵のダニロフがケーニックの標的になり、ヴァシリに手柄を持たせるというダニロフの忍恋に泣いた!

スターリングラードという戦場をリアルに描き、まさに現在進行中のウクライナ戦争に重なり、しっかりと戦争の悲劇を伝えてくれる。特に子供を戦争の玩具にするというシーンは辛いシーンだった。

冒頭の戦闘シーンは「プライベート・ライアン」にも匹敵する。独軍の爆撃シーン、ボルガ渡渉場で大混乱する群衆、天才スナイパーの狙撃戦など戦場シーンの描写が秀逸だ。劇中で、ユダヤ人の聖地を作る話が今のイスラエルハマスの戦闘にも繋がるという、ロシアの英雄伝を西側が作った意義があった。

ジュード・ロウのスナイパー役。スナイパーとして冷静で軽快なフットワークを見せながら、相手スナイパーの力量の怯え苦しみシーン、ターニャに惹かれていくシーンなど、戦場で複雑な感情をしっかり見せる演技だった。ターニャ役のレイチェル・ワイズ聡明で美しかった。何としても戦場で戦うという強い意思の見える演技が印象に残った。

ジャック・アノー監督が恋愛映画だけではないぞ、戦争物語も情熱だ!と作ったという戦争エンターテイメント作品、面白く見せてもらいました。

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