韓国映画。周囲の騒音が一定のデシベルを超えると制限時間が半減して爆発するという特殊爆弾テロ予告。めずらしい設定で何を描くのかとWOWOWで鑑賞。
全く予想を覆させられた。
爆破事件をリアルにサスペンシブルに見せてくれるが、その事件の背景、潜水艦沈没時の副館長の決断に震えた。事件を追いながら自分ならどう判断するか。これが面白い!
監督:ファン・イノ、撮影:パク・ジョンチョル、編集:キム・チャンジュ、音楽:モク・ヨンジン。
出演者:キム・レウォン、イ・ジョンソク、チョン・サンフン、パク・ビョンウン、イ・サンヒ、チョ・ダルファン、チャ・ウヌ、イ・ミンギ
物語は、
韓国有数の大都会・釜山のある一軒家で、爆破事件が発生。そのニュースを目にした元海軍副長カン・ドヨンのもとに、一本の電話がかかってくる。それは爆破事件を起こした犯人からのものだった。犯人は次のターゲットがサッカースタジアムであることを知らせ、通報したり観客を避難させたりしたら、爆弾はすぐさま爆発すると脅してくる。そして、そこに仕掛けられた爆弾は普通のものではなく、周囲の騒音が一定のデシベルを超えると制限時間が半減して爆発するという特殊なものだった。ドヨンは事態を把握する間もなく、5万人の観衆で埋め尽くされたスタジアムへ急ぐ。仕掛けられた爆弾を捜索するなかで、犯人がドヨンを脅迫してきた理由や、事件の意外な真相が次第に明らかになっていく。(映画COMより)
あらすじ&感想:
台風が接近するグアム東方沖を航行する潜水艦“ハルラ”。副館長ドヨン(キム・レウォン)に対する乗組員たちの信頼感が描かれ、魚雷のエコー音のあと「ハルラが沈没、消息不明、故障のおそれもある」というニュースが流れる。
それから1年後、
ドヨンはハルラ事件について将校たちに特別講演を実施。
事故原因は潜水艦の隔壁の故障だと報道陣に説明した。「生存者は貴方がいなければ助からなかったのか」「乗員をどう統率したか」などの質問が出たが、ドヨンは答えなかった。
講演後、軍事保安部のチャ・ヨンハシ(パク・ビョンウン)から「生存者を見舞うのは控えて欲しい」と注意された。
ドヨンは生き残りのノ元曹長を見舞った。
ノ(チョ・ダルファン)は呆けたかドヨンに「テリョンが殺したいやつがいると言っている」と内緒に教えてくれる。ドヨンが「テリョンは潜水艦沈没で死んだ」と言っても、「生きている、昨日会った」と言い張る。
その帰りに、本部から「ハルラ乗組員のキム・ユテク少佐宅で爆破事件発生」と知らされた。
ドヨンの妻ユジョン曹長(イ・サンヒ)は爆発物処理隊のエキスパート。
娘ソリョンを連れて外出中に公園に仕掛けられた爆破物処理に呼び出され、ソリョンをタクシーで家に帰し、公園に急いだ。タクシーを追う車があった。
ドヨンに若い男の声でスマホに爆発予告が入った。
「魚雷1、2番が発射されました(上官に対する言葉使い)。公園はまだ大丈夫。次のターゲットはアシアード競技場S15の11列。通報しても、観客を批難させても爆発する。60分後です」と予告された。ドヨンはこの予告に元部下が関与しているとハルラ潜水艦が魚雷接触時のことを思いだした。
物語は、次々と予告される爆破物の処理とともにハルラ潜水艦沈没に関わる背景が描かれ、海軍本部とドヨンの確執、テロリストが明かされる。
ドヨンがアシアード競技場に到着。
ドヨンは猛スピードで競技場に掛けつけた。ここでの車の暴走が見どころ。
競技場ではサッカーの試合中。ドヨンは必死に探すが見つからない。そこにテロリスト(イ・ジョンソク)から電話が入る。「爆弾は騒音に反応して爆発します(敬語)。VIP席を見ろ100デシベル以上で半減する」と伝えてきた。サッカー観戦中の記者オ・デオを見つけ、「試合を止めてくれ」と依頼した。デオはグランドでパーフォーマンスした。この間に長官が観戦しているVIP室で爆弾を見つけ、退避勧告を出し、爆発したが損傷なしだった。
次の予告が入った。「魚雷3号を発射する。チャンサアパート公園。奥さんが処理するはずだが、処理できない!4番目をウオーターパークのプール。大勢の子供たちが泳いでいる」と予告。
軍事保安部ヨンハンはふたつの爆弾事件から「警察には連絡しないで解決する」とテロ容疑者名簿を警備隊に渡して捜査を開始した。
ドヨンはデオ記者を伴ってウオーターパークに急ぐ。
パークに到着。プールは休憩時間中だった。警察と偽ってプール使用許可の笛を吹かないよう係員に指示し、プールに飛び込み捜索を開始した。テロリストから「娘ソリョンを確保、黒いバンにいる」と連絡があった。ドヨンはデオに「黒いバンを捜せ!ドアを開けるな!」と指示した。
ドヨンによる市民プールの爆弾処理とユジョンによるチャンサアパート公園の爆弾処理を交差させながら描くことで緊張感を煽る。
プール内の爆弾捜索・処理。
プール管理本部に「泳いでもよい」の電話が入り水泳許可の笛がなる。大プールに子供たちが一斉に入り泳ぎ出す。危機一髪でドヨンが発火装置を見つけ抱え込んだ。この映像にはドキドキさせられた!
チャンサアパート公園の爆弾処理。
ユジョンが完全防護衣で発火装置を処置したが擬似装置だった。ユジョンに娘ソリョンが拘束された映像が送られてきた。
テロリストはドヨンに「魚雷3、4発不発。第5弾発射!方位0度、距離3m」と指示してきた。直後、ユジョンが吹っ飛ばされ、病院に収容された。
ドヨンに「娘ソリョンが死にますよ」の予告が入る。デオが「黒いバンを発見した」とドヨンを伝えた。ドヨンが着いたときバンが爆発。中に娘のソリョンは居なかった。
入院中のユジョンには若い男性介護士(テソン)が付き添っていた。
テソンはハルラ生存者の元ハルラ武装官で海軍大尉。「22名が海の底に沈んでいる。ドヨンを英雄視するのではなく刑務所に送るべきだ」と考え、ハルラで弟テリョンを死なせたことを後悔していた。
ドヨンに「ユジョンが病院に収容され無事だ」と本部から伝えられた。デオが「犯人は軍人、誰ですか?」と聞く。ドヨンはノ元曹長を訪ね、再度テリョンの存在を確認することにした。
ノ元曹長の証言。
ドヨンは「テリョンはテソンの間違いではないか」とテリョンが泊まっていた2階の部屋を調べた。そこで爆弾の設計書、アシアード競技場の模型を見つけた。
テロリストはテソン海軍大尉と判明した。
ドヨンはテソンに「何のマネだ!」と電話した。
テソンは「沈没の原因は隔壁の故障ではない。何故真偽を問わない、保身のためか」と問い、「イーストホテルで会おう」と伝えてきた。
保安部は「魚雷が我が国の物と知っている乗員はドヨンのみ」と警備隊を投入してドヨンの行方を追い、テロリストはテソンと断定した。
テソンは病院からのドヨンに電話し、ユジョンの介護士として付き添っていた。
テソンはユジョンに「私が生かしてあげました」と話しかけた。警備隊のイ・デウがユジョンを訪ねて病院にやってきた。テソンがエレベーターの中でデウを殺害しユジョンを自分の車に匿った。そして、ドヨンに「ユジョンを拘束している」と彼女の写真を送った。
ドヨンとデオが病院に到着し、ユジョンを捜すが見つからない。
デオは病院から外を眺め、(時限爆弾の)コーヒー缶を思い出し、カッフェを見つけ、そこを捜索。身体に爆発物をつけられた娘ソリョンを発見した。デオはドヨンにソリョン発見を知らせた。
ドヨンは病院の奥所からテソンが指定したイーストホテルを見ていた。ホテル前で2台の車が炎上。ホテルからテソンの声が聞こえた。ドヨンはホテルに奔った。
ホテルの大広間で長官主催のパーティが開催されていた。
テソンが海軍大尉とし爆弾を身体に着け(死を覚悟して)「22名の仲間を失った。今、再び軍幹部が我々を見捨てて逃げようとした」と軍が魚雷による潜水艦事故を隠したことに抗議していた。起爆装置はユジョン、ソリョンに連動。会場は大混乱!
ドヨンは「これは俺とお前の問題だ!俺が責任を取る」と話し合うことを求めた。
潜水艦ハルラ沈没&救出の経緯が描かれる。
潜水艦の沈没は公海上で見失った自国の魚雷だったが、長官の指示ではこれを隠した。また、潜水艦沈没後11日目、沈没潜水艦の救援は15日以上遅れることが分かり、長官は現場にいないとして、艦内が酸欠になることについての決断を艦長に任せた。
艦内が酸欠になることについてのドヨンの決断。
全員軍人らしく死ぬという案、何名でもいいから生き延びようという案。艦内は喧々囂々と意見が出た。ドヨンは乗員の半数を生かすとしてくじ引きで、船尾組と船首組に分け、船尾組の酸素給送を止めた。両組はお互いに「最後まで気品を保ちましょう」と誓った。この時、テソンは弟のテリョと籤を交換して自分が死ぬことを申し出たが、ドヨンが認めなかった。
ドヨンがテソンに「君と弟の籤を交換させればよかったと後悔している」と謝罪した。
テソンはユジョンの隠し場所を明かした。ドヨンはテソンから爆破装置を奪おうとして揉めているところに、ヨンハンが駆けつけテソンを射殺した。
ドヨンはユジョンを救出し、娘のソリョン救出のため、車をぶっ放し、倉庫に突入した。
ドヨンはハルラ潜水艦沈没について記者会見を行なった。
沈没は我が国が見失った魚雷に触れたこと。22人を死なせる決心をしたのは自分であることを明かした。「当時に戻れたらどんな判断をするか?」という質問には答えなかった。
まとめ:
作品の大半は連続爆破事件を回避するハルラ潜水艦副長ドヨンとこれに協力するデオ対テロリストとの攻防が描かれる。
スリリングでテンポが良い。複数の爆弾処理現場シーンを重ねて見せ、観る人の頭を描きまわし、ハラハラドキドキ、サスペンシブルだった。爆破現場のリアルさ、カーアクションがすばらしい。これはもう韓国映画のお家芸です。
事件の背景がラストで明かされ、これが作品のテーマだと思った。
連続爆破事件は、ハルラ沈没の原因を隠蔽する死を賭けた軍への抗議、そして、乗員22名に死の決断をさせたにも関わらずこれを受け容れた副館長のドヨンへの反発。さらに弟テリョンへの贖罪が原因だった。
潜水艦沈没時、救援までに酸素が持たないと乗員の半数を救う(半数は死)と下した副館長ドヨンの決断。生々しく潜水艦沈没時の艦内が映し出され、ドヨンが苦しみ、潜水艦員が泣いて従った決断。正しかったかどうかと作品を観る人に問う。
ドヨンが亡き乗員の墓に詣でたとき、彼ら全員が将校に昇進しドヨンに敬礼するシーンで、ドヨンが記者の質問に答えなかった答えを示した。
潜水艦要員の育成は大変だ!こういう景色を見せる韓国映画が凄いと思った。
テロリストでテソン大尉を演じたイ・ションソク。若いが海軍軍人がよく似合って、テロリストとしても凄みがあってすごくよかった。フアンのために!
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