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「トラ・トラ・トラ!」(1970)ハワイ奇襲攻撃の謎、もうこんな戦闘シーンは描けない!

間もなく終戦記念日。何かこれに関わる作品ということで、本作を選びDVDで鑑賞しました。日米のスタッフ・キャストによる共同作品。

トラ・トラ・トラ!」とは1941年12月8日の大日本帝国海軍による真珠湾攻撃時、空母から発信した攻撃機隊が米国に気付かれず真珠湾に到着し、飛行隊長が奇襲に成功したことを告げ発信した暗号のこと。

ということで本作は、日米両面から見た真珠湾攻防の顛末を描いた戦争映画です。物語の始まりは山本五十六中将が連合艦隊司令長官として連合艦隊の旗艦“長門“に着任したときから始まり、連合艦隊真珠湾攻撃を終え戦域を離れるまでの日米両軍の行動が描かれています。1970年度アカデミー賞特殊視覚効果賞受賞作。

ノルマンディー上陸作戦を描いた大作「史上最大の作戦」(1962)の成功にあやからろうとした20世紀フォックス社長・ダリル・F・ザナックの企画

日本側の監督が当初黒澤明さんだったが、数個シーンを撮って降り(降ろされ・・)、揉めに揉めて舛田利雄さんと深作欣二に決まった作品。「黒澤明とハリウッドの戦い」と言われる映画製作における日米戦争だった。映画よりこちらの話の方が絶対に面白い!黒澤さんは降りたが、脚本は黒澤さんのものと言われていますが、クレジットに名はない。

原作:ゴードン・W・プランゲ著「トラ・トラ・トラ!」、ラディスラス・ファラーゴ著「破られた封印」。

監督:リチャード・フライシャー舛田利雄深作欣二脚本:ラリー・フォレスター、エルモ・ウィリアムズ(ノンクレジット)、ミッチェル・リンドマン(ノンクレジット)、小国英雄菊島隆三黒澤明(ノンクレジット)撮影:チャールズ・F・ホイーラー、姫田真佐久、佐藤昌道、古谷伸、萩原健、上田宗男、萩原憲治。編集:ジェームズ・E・ニューマン、ペンブローク・J・ヘリング、井上親弥、音楽:ジェリー・ゴールドスミス(編曲:アーサー・モートン)。

出演者

マーティン・バルサムジョゼフ・コットン、E・G・マーシャル、ジェームズ・ホイットモア、ウェズリー・アディ、ジェイソン・ロバーズ、レオン・エイムス、エドワード・アンドリュース、ジョージ・マクレディ、キース・アンデス、他。

山村聡三橋達也東野英治郎宇佐美淳田村高廣島田正吾千田是也、内田朝雄、北村和夫、藤田進、安部徹、十朱久雄、久米明、中村俊一、他。

出演者が多い!誰を主体にしたドラマなのか?日本軍については連合艦隊司令長官山本五十六を中心に置いた物語で分かりやすい、米軍については、中心となる人物が見え難い。日本の動きに合わせて、陸・海の情報課長の情報で動く陸軍参謀総長、海軍作戦部長、ハワイに在住する太平洋艦隊司令長官・ハワイ方面陸軍司令長官の物語と言っていいのかな?

年月日が入らず日独伊三国軍事同盟、南部仏印進駐などの日本の動きに合わせ、日米軍の動きが描かれるが、分かり難い!特に米軍。見どころは、製作企図から分るとおり、後段の戦闘シーンです。CGのない時代の戦争もの、見ごたえがあります。その反面、ストーリーは少し塩気が抜けている!と思います。


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あらすじ

1939年(昭和14年)9月、山本五十六中将(山村聡)が連合艦隊司令長官として旗艦長門に着任。軍楽隊の奏する「海行かば」の登舷礼で迎えられた。ちょっと身が締まる映像です!

日独伊三国軍事同盟へと動く中央にあって、強くこれに反対する海軍次官・山本中将は目障りと、連合艦隊司令官長官へ転出させられた。

山本長官は巨艦主義から空母の時代という持論に基づき、航空機からの魚雷攻撃を視察して効果を確認し、大西少将(安部徹)に空母によるハワイ攻撃の研究を命じた。大西少将が「雷撃機での攻撃は無理だ」と進言すっると「無理でもやれ!」と指示した。(笑)大西少将は「適任者がいる」と海軍のエースパイロット源田実中佐三橋達也)の名を挙げた。このキャストは謝りでしたね。

米国海軍情報部日本の暗号を解読する機材の開発に成功した。解読情報を海軍のクレーマー少佐と陸軍のフラットン大佐(E・G・マーシャル)がそれぞれ政府、海・陸の高官に伝達の役を追うことになった。フラットン大佐は伝達先に大統領と空軍長官の名がないことに疑問を持った。

ハワイ。太平洋艦隊司令長官としてキンメル中将(マーティン・バルサム)が着任。真珠湾の出入口が狭いことを気にしていたが、湾内の水深が40mで空中からの魚雷攻撃はないと聞いて安堵していた。

1940年(昭和15年7月)第2次近衛内閣の成立日独伊三国軍事同盟(1940.9)北部仏印進駐(1940.9)と状況が進む中で、

源田中佐が第1航空戦隊参謀として着任。連合艦隊によるハワイ攻撃計画担当は連合艦隊作戦参謀・黒島大佐が担うことになり、源田案「海軍空母機動部隊は択捉島の単冠湾に集結し、機を見て南下、アメリカ太平洋艦隊を撃破する」を基に具体化が始まった。

機動艦隊の艦長・参謀を長門に参集し、山本長官は「週末、未明、敵空母6隻を狙うハワイ奇襲攻撃構想」を明らかにした。

米国。ハワイ陸軍長官としてショート中将(ジェイソン・ロバーズ)が着任。部隊視察でハワイ在住の日本人による破壊を恐れ、警戒が容易と全戦闘機を1ヵ所に集めた。これには反論が多かった。陸軍長官には空に対する警戒心がなかった!

陸海の合同会議で常時ハワイ周辺海域の警戒を検討したが、機数不足から常時は無理だった。対空レーダー1基(映画では)が配備された。ただし通信システムがなかった。(笑)

1941年(昭和16年7月)南部仏印進駐

山本長官は吉田善五海軍大臣宇佐美淳也)に面談しハワイ攻略の必要性を強くした。兵棋演習を実施。第1艦隊司令長官南雲忠一中将(東野英治郎)から「作戦は無理だ!」という意見がだされたが、山本長官は「作戦をやるやらないは論議するな!」と強く戒めた。

8月、淵田美津雄駐中佐(田村高廣)が赤城飛行隊長として着任(第1次攻撃隊長予定)。真珠湾の地形モデルが出来上がり、具体的な攻撃要領の詰めに入った。そして、ハワイと酷似している錦江湾で航空攻撃訓練が開始され、水深40mでの機雷攻撃に確信を持つに至った

近衛首相(千田是也)に「万一対米戦になった場合の海軍としての見通しを聞かれ、「1~2年は暴れて見せますが、それ以上が保証できない。外交にラストワードはない!」と伝えた。

米国暗号文書「日本のインドシナ駐留」をキャッチしたフラットン大佐が「大統領に見せるべきだ」と主張したが受け入れられなかった。

キンメル司令長官がマーシャル陸軍司令長官(キース・アンデス)とスターク海軍作戦部長(エドワード・アンドリュース)の署名文書「日本国に対する制裁として全面禁輸を行なう。警戒態勢を取られたし!」をみて、上層部は情報を与えないので自分で考えるしかないと「空と海のパトロールを増やせ!」と指示した。(笑)そして本格的な戦闘機や対空配備訓練、艦艇による海上哨戒が始まった

ハル国務長官は日独伊三国軍事同盟にサインした来栖三郎(十朱久雄)が遣米特命全権大使に就任したことで日米関係の先行きに悲観していた。

1941年(昭和16年11月)ハワイ攻撃命令の下達

「海軍空母機動部隊は択捉島の単冠湾に集結し、機を見て南下、アメリカ太平洋艦隊を撃破する。攻撃開始は12月6日予定、X日とする。X-1日午前1時までに交渉が可決したら引き上げる」と下達し、単冠湾への集合を命じた。

米海軍情報部。11月25日、「日本は外交交渉を11月29日で終了する」という日本大使館あて暗号電報を解読した。そして、日本軍の輸送船団が台湾沖を南下してるという情報を得ていた。ブラットン陸軍大佐は「海軍はまだ日本にいる!必ずハワイを攻撃してくる」と分析したが、クレーマー海軍少佐は「証明できるか?」と聞いた。ブラットン大佐は「マーシャル陸軍参謀長、スティムソン陸軍(ジョセフ・コットン)長官を説得する」と奔り出した。マーシャルには不在で会えなかった。

ハル国務長官、スティムソン陸軍長官、ノック海軍長官でこの暗号電報を協議した。ハル国務長官は「ブラットン大佐の言う通りだ!が、実行部隊の意見に従う。これからは海軍の出番だ」と発言。海軍長官が「大統領に報告し、全員に待機態勢を取らせる」と発言した。この後、マーシャル陸軍参謀総長の文章が、副官からノック海軍長官に渡された。

単冠湾。機動艦隊。「12月2日午後0530、ニイタカヤマノボレ、X日は12月8日」の電報を受領した。

ハワイ太平洋艦隊司令長官室。キンメル長官は副官から渡された「すぐにも戦争突入の危険がある。戦争が避けえない場合、米国は日本からの一撃を望む。防衛措置を制限するものではない。貴官は防衛のため必要とする措置を取り、市民に不安を起こさせないこと」というマーシャル将軍署名入電文を読んだ。キンメル長官は「曖昧だ!警報を出せ!」と副官を叱りつけた。(笑)

キンメル長官は指揮官を参集し命令を下達した。「日本はフィリピン、タイ、マレー等を攻撃する見込み。開戦に備え警戒せよ」。ハルゼー中将(ジェームズ・ホイットモア)に「ミッドウエーに空母を派遣する。なるべく戦闘機を飛ばさないでくれ!」と命令し、「艦船もつれていくか?」と聞くと、「艦船は脚が遅いからダメだ」と断り「敵と遭遇したときの明確な指示をくれ」と聞く。キンメルが「常識でやれ!」と答えると「妙な命令だな!」と言って出て行った。(笑)

連合艦隊の機動艦隊が南下中。

米海軍情報部12月6日、フラットン大佐が「日本大使館に待機命令を寄こした!何かある?南下中の日本軍輸送船団はマレー半島まで14時間で着くが、日本の空母が見つかっていない!」と日本軍のハワイ攻撃の可能性を感じ取った。フラットン大佐とクレーマー少佐が手分けして暗号情報を伝えに走った。

日本大使館に「13部の解読以外に職員を当ててはならない」と電文が届いた。「専門のタイピストがいないで間に合うかな!」と外交官が心配した。

機動部隊指揮官・南雲中将が出撃に当たっての訓示を行ない、日本海海戦時と同じくZ旗が掲げた

米海軍情報部。夜になって「最終文書は明日だ!最終文書は来てないが、13章の文章を伝える。これだけは大統領に伝える」とクレーマー少佐が妻の運転する車で出かけた。大統領には会えず、副官に預けた。海軍作戦部長には「夜、遅い!」と副官から面談を断られた。ところがルーズベルト大統領から呼び戻され「天皇に親書を送った。続きが入り次第伝えてくれ!」と言われた。

ハワイでは週末のダンスパーティーが開かれていた。「明日はB-17 機が12機くる」と事態に楽観的な会話が交わされていた。

日本大使館に「以下の回答を12月7日午後1時(ワイントン時間)米国政府に通告せよ」と電報が届いた。外交官のつたないタイプで通告文の作成が始まった。

マーシャル陸軍参謀総長は「11時30分(ワシントン時間)外交交渉による合意は不可能になった。日本は午後1時に攻撃してくると思う」(日本の暗号は解読されていた)と各基地に伝達するよう指示した。

12月8日未明(ハワイ時間)、空母赤城から第1次攻撃隊が発艦。真珠湾に米艦艇群が居るのを見て、淵田飛行隊長が「トラ、トラ、トラ」を発信した

特殊潜航艇が米監視艇に発見され、また攻撃編隊がレーダーで捕らえられたが、米軍の当直将校の判断「まさか?そんなことはない!」で無視された。(笑)

攻撃開始は0800の国旗掲揚時だった、日本の飛行編隊が真珠湾の艦船、飛行場、軍事施設に襲いかかった。右往左往する高官、兵士。ここは映像で確認してください。

野村大使(島田正吾)がハル国務長官を訪ね最後最後通告を渡した。ハル長官は「50年に渡る自分の歴史の中で、これほどの虚偽と歪曲に満ちた文章を見たことはない」と野村大使を追い返した。

機動部隊指揮官南雲中将は戦艦4隻撃沈、2隻大破の成果を見て、「敵空母はいなかった。敵の潜水艦は追ってくる。我々は好運であった。機動艦隊は無傷だ。戦いは始まったばかり、先は長い!」と戦闘海域を離れることを決意した。

この時期、キンメル長官はワシントンからの電報「午後1時、日本は最後通牒らしものを提示する。意味不明であるが十分注意されたい」を見た。

ハワイ攻撃の成果を呉の連合艦隊旗艦・長門で聞いた山本長官は「ハワイ攻撃に狙いは米国の艦隊並びに基地を徹底的に叩き、戦意喪失にあった。米国の報道によると真珠湾攻撃は日本の最後通牒を受け取ったのは攻撃を受ける55分前だったと言っている。これで眠れる巨人を起こし、奮い立たせた」と感想を述べ、席を立った。

感想

日米共同製作作品。日米対等に描かれていて、これは黒澤さんに負うところが大きかったのではと推測します!

日米戦争の顛末を考えると、日本は米国の合理的作戦計画に負けたのではないでしょうか。黒澤さんが降りた理由もこれではないかと思います。

山本五十六の話はよく知られた話ばかり。「1~2年だけなら保障できるがそれ以上は責任を持てない」という合理性のない作戦計画!ならば、なぜ機動艦隊とともに行動し、現場で指揮をしなかったのかと疑問を持ちました。

米軍については、「国民の参戦意識高揚のため、あえてハワイを見捨てた」という話をよく耳にしますが、いつ誰が発案したのか?映画ではマーシャル陸軍参謀総長とスターク海軍作戦部長の共作ということになり、シビリアンコントロールという視点から問題がある。

この戦さ直後、キンメル太平洋艦隊司令長官とショートハワイ方面陸軍司令長官が罷免された。キンメル将軍の名誉回復はいまだなされていないと聞くと、当時「よくここまで描いたな!」と感嘆します。

この戦での米軍の情報活動については大いに学ぶところがありますね!

後段の戦闘シーン。CGもVFXもない、実機実艦を持って撮った映像だけに、「トップガン」と同じようにリアルな戦闘映像となっていますが、ここに人間ドラマがないから戦闘の痛みが伝わらない。しかし、日本軍は民間施設を攻撃してない!ジュネーヴ条約をしっかり守るというすごく清い国民性を示している

米国のヨーロッパ重視は今でも変わらないのではないでしょうか。そんなことを考えながら、本作を見終えました!

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