映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「閉鎖病棟―それぞれの朝―」(2019) 優しさが人を生かす!!

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原作は帚木蓬生さんの同名小説。未読ですが、他作品で帚木作品には親しみを持っており、さらに小松菜奈さん出演ということで楽しみにしていました。
監督は「愛を乞うひと」「エヴェレスト 神々の山嶺」の平山秀幸さんです。本作が初脚本作だとのこと。

人の優しさに泣けます!そして、小松菜奈さんのこれまでの作品にない演技に触れて満足しましたが、なにかひとつピンとこない。

主演は笑福亭鶴瓶さん。共演に綾野剛小松菜奈・坂東龍太・平山紙・森下能幸・駒木野隆介・大窪人衛・北村早樹子・大方緋紗子・村木仁/片岡礼子山中崇・根岸季代・ベンガル高橋和也木野花・渋川清彦・小林聡美さんらです。

あらすじ:
長野県のとある精神病院。死刑執行が失敗し生きながらえた秀丸鶴瓶さん)。幻聴に悩まされるチュウさん(綾野さん)。DVが原因で入院する由紀(小松さん)。三人は家族や世間から遠ざけられながらも心を通いあわせる。
彼らの日常に影を落とす衝撃的な事件はなぜ起きたのか。それでも「今」を生きていく理由とはなにか。法廷で明かされる真実が、壊れそうな人生を夜明けへと導く・・・。(チラシから引用)

***(ねたばれ)
衝撃的な事件。由紀が収容患者で誰からも厄介者扱いされているヤクザの重宗(渋川さん)に強姦される。由紀はそのまま病院を去ってしまうが、これを知った秀丸が重宗を刺殺し、警察に逮捕される。
秀丸の裁判は厳しいものとなるが、そこに由紀が現れ証言台に立ち、病院内であった真実を証言する。

この展開は泣けます。秀丸が自分を犠牲にして由紀を救おうとする行為に。また、自分を救ってくれ、看護師見習として自立できていることに感謝し、決して語ることではない自分の過去を裁判の場で明かし、秀丸の命を救おうとする由紀の勇気に泣けます。小松さんが法廷で苦しみに耐えながら証言するシーンは涙ものです。
また、法廷を去る秀丸にチュウさんが「俺は退院した!」と伝え、秀丸が事件で病院を去ったことで自立できる決意ができたと感謝の意を伝え、ここから三人がそれぞれの人生を踏み出すという感動物語。しかし、なにかものたりない。

前半では秀丸、チュウさん、由紀の出会いと閉鎖病棟での日常のなかで、三人がかけがえのない関係になっていく様が描かれます。

冒頭、秀丸が絞首刑に失敗し、脊髄に損傷を負い、事故ということで、この精神病院・六王寺病院預かりとなり、車椅子生活でありながら、陶器工房で働いている。病院では、患者の諍いがあればこれを制し、陶芸を教え、人望があるようです。

秀丸は間男と妻を包丁で刺殺し、寝たきりの母親を介護できないと絞殺した罪で死刑。これで死罪?さらに刑執行に失敗ということにも驚きました。

チュウさんがいつここに入院したかは描かれていませんが、秀丸がチョウさんの激しい発作を気遣って水を与えるシーンから、ふたりの親密な関係が伺われます。
そこに、母親に付き添われ、由紀が入院してくる。そして三人が親密な関係になっていくさまが、他の患者のエピソードを交えながら描かれる。

由紀は入院の面接時、妊娠していることが発覚。看護師長・井波(小林さん)が問いただそうとすると逃げて、屋上から投身自殺を図るが未遂におわる。以降、病院側がこれに触れることはなかった。これは不自然です!

由紀は逃走時陶器を壊した弁償にと秀丸の工房を訪ね、陶器つくりを教わる。由紀にはこれまでにない暖かい気持ちに触れた瞬間だった。事件を知ったチュウは、集会所で彼女に近づき優しい言葉を掛けた。 

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由紀の症状が落ち着くと家族が引き取りにやってくる。病院側はいとも簡単にこれに応じる。家に戻った由紀は父親の誘いを拒否して、再び、この病院に救いを求めにやってくる。ここで、病院側が由紀の父親(山中崇)の行動(玄関でのトラブル)に問題はないのかと疑わないことが気になる。

再入院により、秀丸、チュウさんとの仲は、プレゼントを交すほどに深くなっていく。

チュウさんは、幻聴で暴れるためこの病院に入院させられた。患者の親・兄弟がここを訪ねることはないが、チュウさんの妹とその夫が家を処分し母親を施設に入れる話のためにやってくる。この話が出ると幻聴が現れる。チュウさんは母親のことを心配している。

チュウさんは、外出が許され、患者たちの要望を聞いて買物をする。患者たちの絆の支柱になっている。チュウさんの姿を見た市民は、「あれは山の人?」と心配する。この心配を解くのが原作の狙いではなかったのかと。

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患者たちのカラオケ大会。楽しい場に重宗が乱入して暴れ、秀丸の過去が暴露される。これは十分に予測できたはずで、病院側のミスではないかと気になる。落ち込む秀丸をチュウさんが支える。

サナエ(木野さん)は、泊まるところがないのに外泊が許される。サナエさんは海辺で、パンを食べながら「星より密に」を歌い、3日後に公園で発見されるという悲劇が起こる。患者皆が泣いて送った。孤独が死に繋がることが彼らによく伝わったと思いますが、外出・外泊を認める要件はなんだったのかと気になる。

チュウさんの発意で、秀丸、由紀に昭八の三人が町に買物に出かける。買物をし、弁当を食べ、写真を撮った4人。秀丸にとっては初めての外出だと言い、彼らの楽しそうな表情には涙がでます。このことで彼らの絆は一層強くなったと思われ、チュウさんの役割は大きい。チュウさんの一連の行動こそ「閉鎖病棟」のテーマのように思えます。原作の主役がチュウさんであったということを聞くと、やはりと納得です。

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秀丸の事件後、チュウさんは母親の面倒を見ようと看護師長に「退院して大丈夫?」と相談し、「大丈夫よ!」の言葉に押され退院。看護師長は患者たちによく「大丈夫!」と励まし、患を前向きに押している。この言葉の裏に「閉鎖病棟」の深いメセージが隠されているように思え、これが明かされないことが「なにかものたりない」の原因のようです!「エヴェレスト 神々の山嶺」を思い出します。主役が変わると、原作のバックグランドが失われる!

チョウさんは退院後、造園会社で働き社長さんの期待も大きく、うまく自立していくでしょう。しかし、由紀が心配です。姿を傍聴席に露呈したままで証言していますが、彼女のこれからを考えると裁判所の“やさしさ”が足らないように感じます。


患者を演じることは“へた”をするととんでもないことになりかねない。みなさん、難しい役をしかり演じていました!

居場所をなくした者たちが、ここで出会い、痛みを共有しているが故に小さな優しさを積み上げ、さらに大きな愛へと、優しさが人を生かすことがよく伝わり、彼らに温かく接することの大切さを教えてくれる作品でした。
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『閉鎖病棟―それぞれの朝―』予告編

“いだてん”第41回「おれについてこい」

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平沢和重(星野源)の名スピーチで1964年の東京オリンピックの開催決定。田畑(阿部サダオ)を事務総長に組織委員会が発足する。顧問として大物政治家の川島正二郎(浅野忠信)が参加。」川島は東龍太郎松重豊)が当選した都知事選で田畑と対立した因縁があった。メダルを取れる競技を正式種目に取り入れようと考えた田畑は、鬼監督・大松(徳井義美)とキャプテン河西(安藤サクラ)率いる女子バレーボールチームに注目する。

感想:
「おれについてこい」は東京オリンピックで金メダルの女子バレーボールを率いた大松監督の専売特許言葉だと思っていましたが、東京オリンピック委員会を率いた田畑のやり方だったですね!

こういう人がいたから、記憶に残るオリンピックになった。政治家、官僚をこけにする態度は良くないが、国の名誉にかかわれば、このやり方でなければだめだったでしょう。よくやった!! アベサダさんの演技も冴えていました!

回転レシーブの起源が柔道。納得しました。ドラマでは大松監督より河西選手に迫力でありました! 安藤サクラさんの役作りが凄い、目の力が違います!

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東京オリンピックで柔道を正式種目に決めたことがすばらしい。これは加納事業に負うところが大きい。外国で日本人と言えば、柔道が出来ると思われるようになりました。

決まりかけた選手村「朝霞キャンプ」を「代々木ハイツ」に引き戻そうとする田畑のこだわり。その理由が「ロサンゼルス大会での記憶」。
ここではオリンピックの意義が問われていますが、政治家には田畑の叫びが分からない。
田畑の選手村選定要件は、
「選手村はスタジアムの興奮が冷めない距離でないとだめなんだ。ロスは最高だった。戦った選手たちが芝生に転がって、レコードかけて踊って、選手の記憶に刻まれるのは選手村で過ごした時間なんだ。共産主義、資本主義、先進国、途上国、黒人白人黄色人種、ぐちゃぐちゃに混ざり合って、純粋にスポーツだけで勝負するんだ。終わったら選手村で讃え合うんだ。そういうオリンピックを東京でやりたい。そのためには代々木でなければだめだ」。
とてもいいセリフでした。クドカンさんがこんな素敵なセリフを書く人とは知らなかった。薄っぺらな田畑という印象がありましたが、」これで一変、最後まで楽しめそうです。(笑)

2020年オリンピックのマラソン開催地を巡る問題。田畑なら東京というでしょうね。札幌は国際マラソン大会にすぎないということ!いい問題提起になりましたね!

***
田畑は5年後のオリンピックに向けて組織委員会が立ち上げられた。政治家が我も我もと殺到し、委員の数字は予定の2倍にもなった。頼みもしないのに自民党幹事長・川島正二郎(浅野忠信)が鷹揚にやってくる。

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組織委員会顧問に自民党幹事長・川島正二郎、会長に元大蔵大臣の津島寿一(井上順)。事務総長に田畑が就き、オリンピックの司令塔となり、この時期が田畑の黄金時代となった。田畑は国立競技場周辺を「俺のオリンピック」と称して模型化し、渉外部の岩田、式展課の松澤らを率いて辣腕を振るった。

田畑は競技種目で選定に取り掛かった。女子バレーボールにメダル獲得の可能性があることを知り、岩田(松坂桃李)、松澤(皆川猿時)とともに大坂の日紡貝塚女子バレーボールの練習の視察に出かけた。

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“鬼の大松“こと大松博文監督(徳井義美)が女子選手相手とは思えない練習をしていた。大松はインパール作戦に従事したという猛者。田畑が「軍隊式はよくない。嫁入り前の娘にバッカンバッカン玉投げて、罵倒して、なんだ!」と注意するが、「9人制が6人制に切り替わり、国際大会に出るには必要」と大松は意に介しない。徳井さんはしっかり頑張っていました!

田畑は大松を治五郎の柔道場に連れてきて、「粛々と己の技を磨き、礼に始まり礼に終わる」と練習する様を見せた。大松は柔道からヒントを見つけ女子バレーの伝家の宝刀となる「回転レシーブ」を編み出した。

このころ川島は東を宴席に招き、「田畑をどうにかしてくれ!どうにも受け付けん!」と頼むが、東は「彼は若い者の信頼が絶大」と断っていた。

組織委員会では、選手の設置場所について話し合いが行われた。7つの米軍キャンプのいずれかを1万人の選手を受け入れる選手村として活用したいとアメリカと交渉することにする。真っ先に、田畑が会場に近い代々木のワシントンハイツを押した。当時ワシントンハイツは日本のなかのアメリカだった。アメリカは朝霞と言ってきていた。
島津らは朝霞キャンプを視察。ここが広大な土地を利用出来るのでよいと喧伝し始めた。

一方、オリンピックシンボルマークは亀倉雄策前野健太)の意見でデザインを募集することにしたが、締め切り間近になっても亀倉の案が届かない。催促すると慌ててバー「ローズ」でデザインしたのが、斬新なデザインだと絶賛されるあのシンボルマークだった。(笑)

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金栗四三中村勘九郎)は68才でいまだ足袋で走っていたが、上京して聖火ランナーを目指すことにした。

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田畑は世界の黒澤(益子直純)が記録映画の監督に決定した。しかし、世間のオリンピックムードは上がらない。田畑はかってヨットでオリンピックを目指した岩田を専属の職員になれと勧め、「ロンドンオリンピックを徹底的に視察し、盗めるものは全てを盗め!」と1年間、ローマへ派遣した。

田畑は、組織委員会の職員を集め、ローマのIOC総会で東京オリンピックの競技種目が決定する前に日本がメダルを稼ぐために何を加えるべきかを検討する。「必ず勝てる、バレーボールだ」と田畑が叫ぶと、壁に掲げられた治五郎の肖像画が音を立てて傾いた。(笑)

ローマの総会で、柔道が東京オリンピックの正式種目に決定した。

岩田が、83か国、5000人を超える選手が参加したローマオリンピックの視察を終えて帰国した。
日本選手団は体操で4個の金メダル、陸・水泳が振るわず、総合で世界8位という結果に終わっていた。岩田は特にマラソンアベベの優勝が印象的だったと語った。
岩田は8ミリで撮ってきたオリンピックの映像を見せた。閉会式での電光板「1964 TOKYO」の文字を見て、松澤が大感激する。田畑は「泣いてる場合か、式典課!黒澤監督がすごいこと言っていたぞ」と気合をかけた。

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「黒澤は、映画製作を依頼したのだが、『聖火はギリシャから先ず広島に運び・・・』と開会式の演出まで考え始め、25億円を要求してきた」と田畑が話すと、岩田が「ローマでは、政府から金は全く出ておらず、サッカーくじトトカルチョ)の収益で賄われた」と言い、田畑らはこれを取り入れようと盛り上がった。

記者を招いての公開討論の場で、東がトトカルチョの件を持ち出すと、津島が「神聖なオリンピック大会の費用を博打で賄うのはけしからん!」と激怒した。
川島が「政府は十分だす!黙れ!」と大声を出す。田畑が「お役人は口を挟むな!」と応じる。
島津が「選手村はどうする。朝霞は金がかからん」と朝霞を押すが、田畑は代々木を主張する。
川島が「貴様たちのオリンピックではない。国民のオリンピックだ。オリンピックで日本は変わるんだ!貴様のやり方で盛り上がるなら、手を引く!」と田畑に釘を刺す。
田畑は「国民のオリンピックとおっしゃいましたね、幹事長!だったら国民の一人一人が俺のオリンピックだと思えるように盛り上げてくれよ、先生方。功名心で組織委員に名を連ね、公開討論にしか顔を出さん、そんな役立たずの役人や政治家は出て行ってくれ!」と応じ、トトカルチョの提案を取り下げた。

オリンピック競技場の建設が始まった。代々木の室内プールは丹下健三の設計によるものであった。

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昭和36(1961)年のIOC総会はアテネで行われ、平沢(星野源)の見事なスピーチによって、男子バレーボールが正式種目に決まった。女子バレーボールについては次の年に要請することにした。しかし、総会では近代五種を外したことで不評だった。田畑は「人気がないオートバイでどうかと聞け」と(笑)

田畑は、訪ねてきた平沢に「代々木ワシントンハイツ返還の交渉を水面下で行ってほしい」と平沢に頼み見込んだ。
平沢が「なぜ代々木にそこまで拘るんだと聞くと、「選手村はスタジアムの興奮が冷めない距離でないとだめなんだ。ロスは最高だった。混沌、カオスだ。戦った選手たちが芝生に転がって、レコードかけて踊って、選手の記憶に刻まれるのは選手村で過ごした時間なんだ。岩田をローマに派遣したのも、それを感じて欲しいからだったからだ」と田畑はいう。

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岩田が「アベベの走る姿とゴールの瞬間に鳥肌が立った。かってエチオピアに軍隊を送り出したコンスタンティヌス凱旋門を通過してまだ走れると足踏みをし、群衆に担ぎ上げられた」。ここはめずらしい記録映像で見せてくれ感動しました。「これが田畑さんのいうオリンピック!」と話す。
アベベは偉いが、名もなき予選で敗れた選手でも生涯自慢できるものにしたい。共産主義、資本主義、先進国、途上国、黒人白人黄色人種、ぐちゃぐちゃに混ざり合って、純粋にスポーツだけで勝負するんだ。終わったら選手村でたたえ合うんだ。そういうオリンピックを東京でやりたい。そのためには代々木でなければだめだ」。平沢は「私に、考えがある」と応じた。
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「あしたの家族」製作発表。瑛太さんと宮崎あおいさん主演新春ドラマ。

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TBS新春ドラマ特別企画「あしたの家族」(2020年1月放送)制作発表。これまでドラマや映画で共演してきた瑛太さん、宮崎さんが共演の松坂慶子松重豊石井ふく子さん(プロデューサー)ととも発表会見が開かれました。
https://www.cinematoday.jp/news/N0111925
https://mainichi.jp/articles/20191031/k00/00m/040/486000c
ドラマ「あにいもうと」(2018)での石井ふく子さん。「おそらくTBSに入って60年になりますがその間に(2人に)出会えなかったことを後悔した」というご発言。

再び叶えてくれてうれしいです。それも篤姫コンビでというのが凄い!松重さんとご一緒というのも、あの監督さんが観てくれるでしょう。育児で大変な時期、こんな大きなプレゼントをいただきありがたいです!充分準備ができて、大作に挑んでくれることを期待しています。

 

〇作品案内:
4年前に結婚式当日、新郎に逃げられた過去を持つ小野寺理紗(宮崎さん)はある日、結婚を考えているという恋人を家に連れてくる。父親の俊作(松重豊さん)はその顔を見て驚く。会社の元部下で、現在は上司の兵藤幸太郎(瑛太さん)だったのだ。娘夫婦と暮らそうと、2世帯住宅を建てた俊作と母親の真知子(松坂さん)は、理紗や幸太郎と同居することはできるのか。

脚本はドラマ「大好き!五つ子」の浪江裕史さん、演出は映画「ハナミズキ」やドラマ「カルテット」などの土井裕泰さん。
共演には、俊作の幼なじみの居酒屋主人役に六平直政さん、その別れた妻で真知子の友人役に一路真輝さん。

 とても面白いコメディードラマなんでしょうか。宮崎さんと瑛太さんが婚約というのが、これまでのお二人の共演で成し得なかった設定だけに楽しみですね!
さらにあしたの家族というテーマなら、孫の誕生までいけば。いまの宮崎さんにはうってつけの役です。(笑)

〇コメント
作品についてのコメントも、お二人の関係が見える楽しいものになっていてとても微笑ましいです。

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瑛太さん:
「キャスティングされてとても幸せ。台本を読んでも、すごくストレートで気持ちがよく、こんな作品に出たかったという気持ちで楽しみでした」と撮影を心待ちにしていたことを告白。
さらに、前日にクランクアップしたものの「今から家族が始まるというところだったので、連ドラ化されるのかなぁと想像してみました」と期待も寄せた。

あおいちゃんとは映画「好きだ、」(2005)、NHK大河ドラマ篤姫」(2008)で共演しているが、両作品ともなかなか「(劇中で)あおいちゃんが大好きで追いかけていたけど成就しなかったが、今回は婚約するところまで行っている。やっとあおいちゃんと恋人関係、そして結婚するまでにたどり着きました」と興奮気味に語り、「本当にありがとうございました」と感謝し、会場の笑いを誘った。

宮﨑あおいさん:
「石井さんに誘っていただけたら、やらない選択肢はなかった」とオファー時を回顧。「作品を作ることは家族になることと感じた尊い時間でした」と笑顔を見せた。また、キャスト・スタッフとの関係について、
「今までは仲間という感覚だったのが、今回、大きな家族と思えたので、(これからは各作品の)“家族を渡り歩きながら”(女優の仕事を)コツコツ続けていけたらいいなと思っています」と声を弾ませていた。
このコメントが一番うれしいですね!!
お芝居について、
「松坂さんや瑛太さんと10年ぶりに共演でき、役者を続けてきて、とても幸せと感じながら撮影していました。今回の台本に『あたし、お母さんみたいになれるかな』『絶対なりたい』という理紗のせりふがあったので、現場ではキュートな松坂さんの、松重さんに対する芝居をずっと見て、自分に落とし込みたいと思っていました。それが瑛太さんとの関係につながっていくと思ったから」と明かしました。

松坂慶子さん:
篤姫当時は、あおいちゃんは二十歳になったばかりなのに堂々と正面から(役を)受け止める精神力はすごいし健気と思っていました」と振り返る。「10年以上経ってお会いすると、ますます心が強くなられて、お幸せそうで、“ピカッと明るい光が放たれている感じ”でうれしく思いました」と宮崎の成長、変化を喜んだ。

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作品を楽しみにしています!!

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「火口のふたり」(2019)性愛こそが生きる力になる!

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原作は白石一さんの同名小説。荒井晴彦監督により、柄本佑瀧内公美さんの二人芝居で描かれる過去の別れへの後悔に向き合う物語。
荒井晴彦監督、柄本佑さんを信じて観ることにしました。性愛作品ですが、メッセージ性があり、とてもきれいな性愛というより大人の恋愛映画でした。
最近の若い人向けの恋愛映画にはない愛の本質に触れ、少子化、晩婚化、離婚、性暴力などの社会問題が顕在化する今だからこそ、この作品の存在意義があり、若い人が観るべき作品だと思います。

あらすじ:
従妹の永原賢治(柄本佑)と佐藤直子(滝内公美)。東日本大震災から7年目の夏。賢治は直子の結婚式に出席するため秋田に帰郷する。久々の再会を果たした賢治と直子は、「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」という直子の言葉をきっかけに、かつてのように身体を重ね合う。1度だけと約束したはずの2人だったが、身体に刻まれた記憶と理性の狭間で翻弄され、抑えきれない衝動の深みにはまっていく。
                 *
ふたり芝居で、大部がセックスシーンの115分R18指定作品です。
テーマは「身体の言い分」。これをしっかり表現するセックスシーンとセリフが絶妙で、ユーモアもあって退屈することはありません。

東北地震後7年の東北秋田を背景とし、断禁の愛に苦しんだふたりを通して、愛の根源、生と死、結婚などが論じられ、“どう生きるべきか”を問う脚本がすばらしい。そして、身体の言い分を聞く、ふたりの性愛演技がすばらしいです。佑さんでなければこの作品は成立しない。この作品でなにかの映画賞を挙げたいですね!また、滝内さんのきれいな身体、柔らかな表情、恥じらいのない自然な演技にも負うところが大きい。

****(ねたばれ)
賢治は東京で印刷会社に勤務していたが倒産、離婚。その後は独身で、プータロー。直子は地元でフリーター、47才の幹部自衛官と婚約。結婚式の日取りが決まり、父親からの知らせで賢治が秋田に帰り、ふたりは再会。

直子が賢治を誘って、写真集を見せる。見せたかったのは富士山火口のポスターを背景にセックスしているもの。「賢治に呼び出され、火口に吸い込まれて一緒に死のうと言われた時に撮った」という。直子にはこの記憶があるのに賢治にない。賢治がこの記憶を取り戻すように物語は進み、主役は直子ではないかと思ったりもします。富士山火口は女性を表しているようで、うまい表現だと思う。この写真のとおりの演技を見せてくれます。

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直子は賢治の身体は「蛇のようで、それが鞭に変わり、たまらないものになる」と言い、「賢治は気づいてない」と指摘する。とてもどきどきするセリフです。これが直子のいう「身体の言い分」。ふたりで交す会話は、それを身体で試すように描かれて行きます。

「一度だけ」と言った直子の言い分は賢治によって破られ、自衛官が戻ってくるまでの5日間、ふたりは、セックス・食べる・眠る毎日が続く。と言ってもこれ以降、会話が入るので、セックスシーンは抑えられます。

かってのふたりの性関係描写はわずか、賢治の結婚生活や直子と自衛官の婚約などはの映像はなくセリフのみ。これは「身体の言い分」を浮き上がらせる演出で、観る人が結末に納得するのではないでしょうか。

賢治が直子に何故結婚する気になったのかと問います。別れたときから賢治を忘れられなかったと言い、「子宮筋腫で産めないと思っていたが、回復したので子供が欲しいから」。
賢治は「そういう子宮がでしゃばるような結婚はいやだ!」。賢治は離婚で、5歳の子に会わせてもらえない。直子は自衛官との身体の言い分を思い出し、頭で考えた理由だと認識し始めます。

小さな地震の発生だったが、この時に東北地震に対するふたりの認識が問われる。直子は秋田で経験、賢治は東京で人ごととしての認識しかない。死生観、人と人のぬくもり感が違う。愛撫しながらこの問題を考えるとどうなりますか?(笑)
直子が言う「生きることのすばらしさ、裸になっても恥ずかしくない人と一緒にいたい」。賢治の身体にこの感情が刷り込まれていきます。

ふたりの最期の夜を西馬音内盆踊りで過ごす。あの世とこの世の堺で踊る亡者踊りとして有名。とても印象に残る映像でした!

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これで別れるという最後の夜、直子は「賢治が婚約者を抱いて、その手で自分に触られて感じることが嫌で逃げた。しかし、賢治は婚約者と上手く行かないと思った」、これが自分の身体の言い分だったいう。賢治は近親婚が怖かったと、当時を無念がった。

富士山噴火が報ぜられるようになる。突飛なようで、富士山噴火には関心を持つべき時期に差し掛かっており、この設定はおかしくない。人生何が起こるかわからない。直子に「この情況下で何もしないの?」と聞かれた賢治は「今の人生を生きる。直子と暮らしてセックスをするだけする。これが俺の身の言い分だ!」と返事した。

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性愛こそが生きる力になることを教えてくれて、若い人が観て考える映画だと思います。
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8.23(金)公開『火口のふたり』本予告

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「火口のふたり」「ジョーカー」…キネマ旬報ベスト・テン第1位
2/4(火) 12:43配信

 映画専門誌「キネマ旬報」の2019年のベスト・テン第1位と個人賞が4日、発表された。第1位は日本映画が「火口のふたり」(荒井晴彦監督)、外国映画が「ジョーカー」(トッド・フィリップス監督)、文化映画が「i―新聞記者ドキュメント―」(森達也監督)となった。第2位以降のランキングは、5日発売の同誌に掲載される。主な個人賞は次の通り。(敬称略)

 ▽日本映画監督賞=白石和彌(「ひとよ」「凪(なぎ)待ち」「麻雀放浪記2020」)▽同脚本賞阪本順治(「半世界」)▽外国映画監督賞=トッド・フィリップス(「ジョーカー」)▽主演女優賞=瀧内公美(「火口のふたり」)▽同男優賞=池松壮亮(「宮本から君へ」)▽助演女優賞池脇千鶴(「半世界」)▽同男優賞=成田凌(「愛がなんだ」「さよならくちびる」ほか)▽新人女優賞=関水渚(「町田くんの世界」)▽同男優賞=鈴鹿央士(「蜜蜂と遠雷」「決算!忠臣蔵」)

「108~海馬五郎の復讐と冒険~」(2019) なんで男はこれほどにバカなの!

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資産1000万円を使い果たし、“いいね”の数だけ女を抱いて愛妻に復讐!?というキャッチコピー。監督・脚本・主演が松尾スズキさん。
今年一番の笑いでした。思い出してはまた笑うという作品。しかし、内容は明かせない、なんかちょっと!という作品。人の所見が気になる作品。(笑)
R18で、このコピーでは女性は無理でしょう。劇場はガラ空き。それでも公開に踏み切る!松尾さんは本当に人を笑わせることが好きな人なんだなと思います。

共演は中山美穂大東俊介・堀田真由・酒井若菜・坂井真紀・秋山菜津子さん。ミポリンがよくこの役引き受けました。(笑) 秋山菜津子さん、〇〇痙攣で動けない!お顔を見ているだけで噴き出します、最高でした。

あらすじ:
締切りに追われる忙しい毎日を送る脚本家の海馬五郎(松尾スズキ)。ある日、愛する妻・綾子(中山美穂)のFacebookで若いコンテンポラリーダンサー(乾直樹)との浮気を知ってしまう。ショックのあまり離婚を決意した彼だったが、財産分与で資産の半分をもっていかれることに納得できず、綾子に取られるくらいなら、いっそのこと使い切ってしまおうと考える。そこで1000万円を使って、綾子の投稿に押されていた“いいね!”の数と同じ108人の女を抱くというあまりにも無謀な復讐計画に乗り出す海馬だったが…。<allcinema>

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海馬は監督をモデルにしているように思えます。(笑) 先妻がエイドリアン(LiLiCo)、綾子と結婚して7年目。なんでエイドリアンと結婚したの?これを観たかった!
7年目の妻の浮気と、妻の言い訳をよく聞かなかった。相談する相手が友人の糸井(岩井秀人)。これがまた火を着けるだけで良くなかった。
ことは3p、4pと進み50p(女の海)となる。よくもこんなバカなことを思いつく。これが大人の計画なんでしょうか?(笑) 監督、主役兼務の松尾さんは大変だったろうし、もうこれだけで大笑いです。
男はなんでこんなにバカなのか、女性のしたたかさを思い知らされます。ある種の警告なのかも知れませんね!(笑)
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映画『108~海馬五郎の復讐と冒険~』予告編

“いだてん”第40回「バック・トウ・ザ・フューチャー」

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1959年.東京オリンピックの招致活動が大洲目を迎えていた田畑(阿部サダオ)は、東京都庁にNHK解説委員の平沢和重(星野源)を招き、きたるIOC総会での最終スピーチを引き受けるよう頼み込む。断る平沢に対して田畑は、すべてを失った敗戦以来、悲願の招致のために全力を尽くしてきた自分の「オリンピック噺」を語って聞かせる。それは、戦後の食糧不足の中、浜松で天才・古橋廣之進北島康介)を見出すところから始まる・・・。

感想:
日本は敗戦とともにGHQの管理下となるが、田畑は「国が元気づくにはオリンピックが必要」と走り出す。成功した1940年オリンピック招致をなぞるように、体協組織を立ち上げ、ロンドンオリンピックには参加できなかったが裏オリンピックだとでもいうべき大会を開き、水泳で古橋・橋爪という世界的な選手を育て世界の注目を引き、政界を巻き込んで神宮競技場を国立競技場に改修し、仕上げとなる東京オリンピック招致演説を嘉納治五郎の死に立ち会った平沢和重が行うという、まるで嘉納治五郎の夢が正夢になる瞬間に立ち会ったというドラマだった。

この時代を生きた人はまだまだ多い。きっと思い出しているでしょう。古橋・橋爪の活躍がどれだけ励みになったか!東京オリンピックの成功に心躍ったか。沢山の記録フィルムが見れてよかった。

平沢を説得する政治の言葉。これは今の時代に生きている。
「アジア各地でひどいこと、むごいことをしてきた俺たち日本人は、面白いことをやんなきゃいけないんだ、一番おもしろいことを!」
率直に自分の非を認め、謝罪の気持ちを行動で示めそうと訴えている。田畑は常にオリンピックという国際的視点で物事を考えるから出てくる言葉。自分を主張することも必要だが、それだけでは世界は動かない。今の世界に繋がってくる大河ドラマでとてもおもしろいと思うのですが・・・。

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今回から1964年東京オリンピック噺へと向かいます。
昭和34(1958)年、東は出馬し都知事となった。ミュンヘンで開かれるIOC総会に向け、田畑ら招致委員会は万全を期して準備を進めていた。ところが、総会の2週間前になって問題が起きた。オリンピック招致の最終スピーチを行う予定の外交官・北原秀雄(岩井秀人)が運動会で転びアキレス腱を切ってしまった。北原は自分の後任に、元外交官で今はNHK解説委員の平沢和重(星野源)を推薦した。しかし、この男が動かない!

田畑の秘書・岩田幸彰(松坂桃李)が、「嘉納治五郎追悼特集の講道館機関誌“柔道”に貴方が寄稿した記事『心から東京オリンピック成功を祈らずにはおれない』がある。協力して欲しい」と説得するが「あれは幻だ、まだ早い」と受け付けない。
平沢はカイロでのIOC総会を終えて帰国中船内で死去した治五郎(役所広司)を看取った人物。しかし、1964年の東京オリンピック招致は時期尚早だと反対した。

田畑は土下座してまーちゃん流“オリンピック噺”を始め、説得を試みます。

昭和20(1945)年9月、終戦直後の東京は焼け野原だった。神宮競技場も被害を受けGHQによって封鎖されていた。そんななかで田畑はバー「ローズ」で東龍太郎松重豊)、松澤一鶴皆川猿時)と会っていた。田畑がオリンピックをやるということに松澤が驚いた。東は「クーベルタン普仏戦争でドイツに敗北した祖国をスポーツで盛り上げようとして、近代オリンピックが生まれた。そう考えると敗戦国日本がオリンピックを目指すのは当然だ」と賛成。この三人で日本のスポーツを立て直そうと田畑は立ち上がった。

田畑は11月にオリンピック関係者15人をバラックに集め体協の再建を決め、会長は東が務めることになった。田畑は水連理事長に就任し、戦地から戻ってきた元オリンピック選手・小池礼三(前田旺志郎)、宮崎康二西山潤)らを指導員に迎えて水泳の強化合宿も行った。そのかいあって、自由型の有望選手・古畑廣之進(北島康介)がめざましい成長を遂げた。

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古橋は田畑と同じく浜松の出身。日本選手権では世界新記録を出したが、敗戦国である日本は国際水泳連盟から除名されており、公式記録として認められなかった。

昭和23 (1948)年には、ロンドンで12年ぶりのオリンピックが開催された。そこで、田畑は裏オリンピックだとでもいうべき大会を開いた。接収されていた神宮プールの使用をGHQに認めさせ、オリンピックの水泳競技と同じ日程で日本選手権を開いた。田畑は「ここはロンドンだ。ワールドチャンピオンを作る!」と意気込んだ。
この大会の1500m自由形で古橋と橋爪四郎はオリンピックの優勝タイムを超える記録を出した。この出来事は敗戦後の日本人の心を明るくし、若者たちを鼓舞した。

昭和24(1949)年、水連は国際水泳連盟に復帰し、全米水泳選手権に招待された。占領下で選手にパスポートも発行されない時代だったが、田畑が連合国軍最高司令官マッカーサーに直談判して渡米が可能となった。マッカーサーは「徹底的にやって来い。卑屈になるな!」と激励した。この言葉には驚きました!しかし、役者さんが、マッカーサーに似てなかった。(笑)

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この大会で日本選手団は6種目中5種目を制し、古橋は前勝利を世界新記録で飾った。

昭和26(1951)年にはサンフランシスコ講和条約で日本の独立が認められ、東がIOC委員となり、翌年のヘルシンキオリンピックで日本は戦後初めてオリンピック参加を認められた。田畑は選手団長として103人の選手・役員を率いた。
古橋は自由形400mで出場8位という結果に「決して古橋を責めないでください」と実況された。橋爪は1500mで銀メダルだった。
ヘルシンキオリンピックの特徴は、費用の全てを入場料で賄い、市や国からは一切助成を受けなかったことだった。

組織委員長のフレンゲルの「オリンピックは金儲けになる」に押されて、田畑と東は吉田茂首相にオリンピック開催を直談判した。しかし吉田の腰は重く、田畑はみずから「国のため、若者のため」に政治家になろうと決意、衆議院議員選挙に静岡2区から立候補した。実家の土地を売って選挙費用を作った田畑だったが、演説で口にするのは東京へオリンピック招致のことばかりで、落選した。(笑)

田畑は昭和35(1960)年の東京オリンピックを東京で開催しようと招致運動に励んでいた。しかし、結果はローマの圧勝。東京はわずか4票しか獲得できなかった。田畑はすぐに、昭和39(1964)年のオリンピック招致を目指すことを決めた。田畑は東京がもはや焼け野原でなく経済復興を遂げていることをIOC委員に見せる必要があると考えた。

昭和31(1956)年。聖火は南半球へと渡り、オーストラリアのメルボルンで解された。田畑は英語が堪能な秘書・岩田幸彰(松坂桃李)を同行させ「今の日本を見てください。敗戦から立ち上がった!」と地道なロビー活動を行った。そのかいあって、次のIOC総会は東京で開催されることになり、併せて、わが国で立派にオリンピックが出来ることを世界に見せつけるために、アジア競技大会を神宮競技場で行うことを決定した。
しかし、治五郎が作った神宮競技場の老朽化が進んでいた。そこで総理大臣に直談判し、昭和33(1958)年神宮競技場は8万人収容可能な国立競技場として生まれ変わった。
IOC総会はNHKホールで、盛大に開かれ、ブランデージ会長は「東京にはオリンピックを開催する資格が十分にある」と太鼓判を押した。

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田畑は東に都知事選への出馬を勧めた。戦前のオリンピック招致の際、組織委員会内の意思が統一されず混乱したことによるもの。
東は「自分は医者だ」と断り、家族も大反対だった。東と妻・照子、息子が田畑の家に押しかけ断りを入れたが、田畑の妻・菊枝(麻生久美子)が「田畑ひとりの力ではかなえられません。力を貸して欲しい」と申し出ると、東が「戦後15年、俺はやりたい」と決意を翻した。

平沢が「どうしてあなたがたはオリンピックに魅せられるのですか?」と聞いてくる。

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田畑は平和、“ぺ“だと答えた。そして、5年前フィリピンに遠征したときの話をした。
「水泳選手たちが競技場の前でバスを降りると幼い少年が石を投げてきた。それをきっかけに現地の人たちが罵声を浴び始めた。出場を止めて帰国しようとしたら、宮崎や小池が「俺たちには水泳しかないから泳ぐべきだ」と主張したんだ。泳げば何かが変わるかもしれないと大会開催を決めた。俺たちは皆に頭を下げて泳がしてもらった。楽しませなくちゃいけないんだ。アジア各地でひどいこと、むごいことをしてきた俺たち日本人は、面白いことをやんなきゃいけないんだ、一番おもしろいことを!」。

平沢は、東京オリンピック開催を願う治五郎の言葉を思い出した。「これから一番面白いことを始めるんだ、東京で!」そう語ったときの治五郎の笑顔を思いうかべ、平沢は「そこだよそこ、おもしろいなら!IとOC総会での最終スピーチを引き受けた。「解説委員として原稿を棒読みにはできない。言葉で自由に話したい」と付け加えた。

平沢は娘・洋子にオリンピックのスピーチをすることを話すと小学校の教科書を暗唱するではないですか!

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平沢がミュンヘンの総会で「6嘉納の最期を看取った男です」と紹介され、演壇に立った。「6年生の教科書に、五輪の旗という話が載っています。・・・この時が来ました。五輪に示される最後の旗、アジアです!」。

いよいよ東京オリンピックがやってきます。
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映画「歩いても 歩いても」嘘でいっぱい!!

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是枝監督最新作の「真実」、フランスで撮った作品ですが、フランス映画ではなく、まぎれもない是枝監督の家族の物語で、「歩いても 歩いても」の雰囲気に似ているので観てみようと・・・。 

「歩いても 歩いても」、1968年、いしだあゆみさんが歌った大ヒット曲「ブルーライト・ヨコハマ」歌詞の一部。
ある夏の日、元開業医の夫・横山恭平とその妻・とし子の暮らす横山家に、15年前に亡くなった長男・順平の命日、次男・横山良太と長女・片岡ちなみがそれぞれの家族を連れてやって来る。この1日の何気ない団欒のひとときを描き、家族の絆を問うという物語。

家族の団欒の場で、「お母さんどんな歌を聴くの?」と話題になり、母・とし子(樹木希林)がこの曲をレコードにかけると、皆が聞き入るなかで、夫・恭平(原田芳雄)がいやな顔をするシーン。
希林さんには医者の妻というのも、この歌も似合わない。(笑) なにがあったのか?夫の浮気に、なにもかも忘れて耐えるために聴いた曲なんです(歌詞が微妙)。(笑) 
しかし、夫が亡くなると後を追うように亡くなる。ふたりが生きているとき、こんなに思い合う夫婦だなんて分からなかった。亡くなってわかる“とし子”の本心。

良太は仕事もないのにあるように電話をしまくる、大嘘。これに父も母も気づかなかった?

次男・良太の嫁ゆかり(夏川由衣)は、前夫との間にできた子・あつしを連れての再婚。義母と一緒に料理をつくり、食べ、会話するときの笑顔。しかし、良太とふたりになると、「お義母さん、あなたに寝間着、歯ブラシなら私にあってもいいのに!」と不平を漏らす。嫁を実家に連れ帰った者にしか分からない、はらはら気分です。(笑) 
ゆかりが義母に見せる笑顔は真実か。しかし、義母が亡くなると、義母に似てくるという不思議。

長女・ちなみ(YOU)、希林さんとYOUさんで作る料理。希林さんの包丁の手捌きと野菜を切る音がとても心地よい。その会話が軽妙で、この母にこの娘ありという感じ。ところがちなみが家にやってくる真の目的は、この家が欲しいから。とし子は「お父さんがね~え」と断るが、良太には「どう、この家」と誘う。親子でも隠し事だらけの嘘。

ちなみの夫・片岡信夫(高橋和也)、隣の部屋で寝た振りで会話を聞き、時機を見計らって出てきておべんちゃら。どこに真意があるなど掴めない。

この物語には、書ききれないほどの嘘が書かれています。(笑) しかし、嘘を信じるから家族としての絆が保たれる。嘘に我慢できるのが家族!!
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ブルー ライト ヨコハマ いしだ あゆみ 昭和歌謡