映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「よこがお」(2019)自分は「大丈夫か?」と怖くなります!

 

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「淵に立つ」の深田晃司監督作ということで、WOWOWで観賞しました。

人は善と悪の二面性を持ちますが、この悪の部分を鋭く追及し恐怖に追い込んで来るのか深田監督。本作も然りで、「淵に立つ」に比してストーリーがシンプルですが、強烈に胸に刺さります。

時制を無視し、個々のエピソードをパズルのように埋めていいき、出来上がった結末で恐怖の淵に立たされ、自分の中にもこんな悪があるに違いないと、唖然とさせられます。

原案:Kaz脚本:深田晃司撮影:根岸憲一、音楽:小野川浩幸。

主演:筒井真理子助演:市川実日子池松壮亮・須藤蓮・小川未祐・吹越満

大方斐紗子・川隅奈保子。

訪問看護師が、身内の事件で、信頼されていた被介護者の娘から不条理な仕打ちを受け、マスコミ・世間からの非難に耐えきれず、自分を見失い、遂に・・・というサスペンスドラマ。

現在と過去軸を交互に描き、色彩や音響、カメラワークでサスペンス感を高めてくれます。


映画『よこがお』予告編

ねたばれと感想(ねたばれ:注意)

映画の出だしから、順次いくつかのシーンを並びます。

美容院を訪ねた白川市子(筒井真理子)は「昔を思い出して」と米田和道(池松壮亮)を指名して“髪を切ってもらう”。市子は夫と別れたこと、看護師を辞めたなどと話し、米田はうまくこの話を受け流している。

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市子は痴呆症の始まった画家大石塔子(大方斐紗子)を丁寧に介護する。それに手を貸す塔子の孫でニートの基子(市川実日子)と中学生のサキ(小川未祐)。大石邸には基子の父母の姿はない。

在宅介護ステーションに戻った市子は仲間に「飲みに行こう」と誘われるが、「ちょっと」と断った。

市子がゴミ出ししていて出勤する米田に会った。米田が近くに住んでいることを知り、そのアパート名を聞いた。夜、自分の部屋から、米田のアパートを覘き基子がいることを確認して、薬を飲んだ。

カフェで、市子が基子とサキにテキストを使って介護法教えていた。基子は市子に憧れ看護師を目指している。そこに市子の妹の子・鈴木辰男(須藤蓮)が介護テキストを届けに顔を出し、「北海道を旅する」と出て行った。このとき辰男がサキを見ていた。

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夜、市子は歯磨きしながら、米田の部屋を覗いて、基子がいないかと確認した。

市子が婚約中の医者・戸塚健二(吹越満)と塔子の定期健康診断のため大石邸を訪れた折りに、基子の母親・洋子(川隅奈保子)が「サキが塾に行ったあと戻っていないの」と電話しているのを聞いた。

夜、市子は米田のアパートを確認すると激しく犬が哭いていた。そのせいで、(薬のせいで眠り)四つん這いになり、犬の鳴き声で“わん、わん”と何かを探し回っている夢を見た。

朝、TVで「中学生の大石サキさんが誘拐され・・」のニュースを見て、大石邸に向かうと大勢の記者たちが集まっていた。

邸に入ると母親の洋子が泣いていた。市子は塔子にトイレをさせていると、TVニュースが「サキは無事保護され、犯人は鈴木辰男である」と報じていた。市子が洋子に辰男のことを話そうとすると、基子が「あなたには関係ないこと」と制した。

市子がアパートに帰ったあと、基子のところに米田から携帯電話で「美術館に行ってきた」と連絡があった。

・・・・・

市子の行動がよくわからない!市子が緊密な関係の基子を監視する、“わん、わん”と泣く。これらの行動は何を示唆しているのか?

物語がふたつの時間軸で進んでいるからです。

辰男の事件が原因で、市子は基子の裏切りで窮地に陥り看護師を辞め、美容院で髪を切り、これ以降の市子の行動(現在)と、塔子の介護で親しくなった市子と基子の関係が崩れていく過程(過去)。ふたつの異なる時間軸が交互に描かれることで、ふたりが仲違いし、市子が追い込まれ基子に復讐心を抱いていく様に恐怖を感じよううまく仕組まれています。ややっこしい!(笑)

基子は市子を労わるように動物園に誘い、幼い女の子と裸で遊んでいたところを妹のサキに見られた話をする。そのとき、動物園のサイが勃起していて(笑)、市子が幼い辰男でも勃起するのかとパンツを脱がせ確認した話をする。

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基子は市子が結婚することを知り、これまでの関係が崩れることに不安を抱き、動物園でなにげなく交した市子の話をマスコミに話したことから、TVや雑誌で「看護師が手引きした少女誘拐事件」として報道された。

市子はマスコミに付き纏われ、介護ステーションにも記者たちが押しかけるようになり、遂に退職した。さらに迷惑をかけると戸塚との婚約を破棄した。

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人生の全てを失った市子は、基子への復讐として米田と寝てその写真を基子に送ったが、米田は「基子とは別れた!」という。

その後、市子は子どもと遊ぶボランティアで働きはじめたが、そこで基子に出会って殴られる妄想に襲われ、過呼吸に陥った。湖に入っていく幻想のなかで基子への怒りを薄めていった。

(数年後)辰男が出所し、市子が面倒を見ることにした。辰男はサキに謝罪したいというので大石邸を訪れたが、すでに引っ越していて会うことはできなかった。

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その帰り、交差点で止まっていると、基子が看護師として老人たちと散歩する姿を目にした市子は、基子に車をぶつけようとするが、これは錯覚で、長いクラクションで怒りをぶつけた。基子と話すことなく、その後のバックミラーに映し出される市子の表情は無表情で、その場を走り去った。基子への怒りは収まっていても、突然でてくる市子の怒りの感情。

なぜ市子の基子への怒りが暴走したのか。基子が謝罪に訪れても会わなかった。婚約者の戸塚が「迷惑はかまわん!」と言ってくれたにも関わらず、これを受け入れなかった。

看護師として誠実で優しい顔をもちながら、この激しい復讐心。これは市子がもつ業、説明がつかない。

“よこがお”とは、善悪の二面の感情をもつ人の別の顔。これが自分の顔でもあると思うと怖くなります。

 もうひとつ、市子は辰男を手引きなどしていなかった。報道の仕方で、人生の全てを奪われるという恐怖。

温和で善なる市子と復讐に狂った市子を演じた筒井真理子さんの演技は圧巻でした。市子に特別な感情を寄せる市川実日子さんの演技も、基子の物語でもあり、ともにすばらしいものでした。

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「海辺の映画館 キネマの玉手箱」(2020)

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お盆に観ると決めていて、大林宣彦監督の遺作、見逃すことは出来ないとコロナウイルス防護を完全にして、越県しての観賞でした。

前作「花筐/HANAGATAMI」を観ており、作風に驚きはないと思っていましたが、末期ガンでありながら前作以上の発想・演出力に驚かされました。

夢を見ているように楽しかった!声を上げて笑った。テーマ“反戦”が押しつけがましくなく、優しい監督の遺言のようで、映画館を去る時、なにか大きな精神的支柱を失ったような、悲しい気持ちになりました。「映画で僕らの未来を変えてみよう」という言葉を大切にしたいと思います。

脚本・撮影台本:大林義彦、脚本:内藤忠司/小中和哉、撮影:三本木久城、音楽:山下泰介。

出演は幾つもの役を掛け持ちで演じる厚木拓郎、細山田隆人細田善彦、吉田玲、成海璃子山崎紘菜常盤貴子さんたち。これに小林稔侍、高橋幸宏白石加代子さんら多数の小林組の方が参加します。豪勢です!

海辺の映画館の観客である現代の若者3人が、映画と戦争の歴史の中にさ迷い込み、いろんな時代や空気の中で、様々な体験を重ね、人として成長し、彼らが守りたいと願う幼げな少女(吉田玲)と3人のお姉さんたち成海璃子山崎紘菜常盤貴子)たちの物語です。

監督の集大成作として、ミュージカル、時代劇、戦争アクション、ファンタジー、ラブ&ロマンスありの超娯楽作品です。そこで描かれるのは男たちの愚かさ、女たちの悲しさが明かされ、なんでこうなっかかという歴史的精神風土と戦争のバカバカしさが浮かび上がってきます。


大林宣彦監督『海辺の映画館-キネマの玉手箱』予告編

感想(ねたばれ):

冒頭で、文明開化というけれど、野蛮開花だったという詩人中原中也に導かれて日本の歴史を訪ねるという基本的な史観が示されます。

「瀬戸内キネマ」の支配人枡馬映人(小林稔侍)が、2019年の夏、最後のオールナイト上映として「戦争映画大集」を企画。大きな視点から歴史を見るために、宇宙に住んで地球を見てきたファンタ爺(高橋幸広)が「権力の味と破壊を覚えた人類の歴史だ!小さな地球で戦ってはつまらんぞ!」と駆け駆けます。キネマ館を目指して自転車で走る少女・羽原希子(吉田玲)、この子だけモノクロ映像(最後に明かされます)。チケット売り場の老婆(白石加代子)が迎え入れた観客のなかに映画館の馬場毬男(厚木拓郎)、常連でメモ魔の鳥鳳介(細山田隆人)、ヤクザに憧れている団茂(細田喜彦)の三人組がいた。

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映画が始まると希子がステージに上がり、「映画で戦争を勉強しましょう!」と消え、次いで3人組が戦争体験をしたいと、映画の中に入っていく。

2時間59分の長尺映画。途中でインターミッションが入りますが、実はごまかしで(笑)、ここから後段に入ります。(笑) この後段こそが作品の肝です。

前段は江戸幕末の混乱から戊辰戦争西南戦争満州事変、日中戦争、太平洋戦争のエピソードをユーモア一杯に、群像劇で、日本人の戦争に対する精神風土が描かれます。インターミッション以降、この精神風土のなかでの沖縄の悲劇、広島に原爆投下が迫るなか慰問演劇を興行する桜隊を救おうと駆けつける3人組と桜隊の運命が描かれ、最後に監督のメッセージが明かされます。

前段、

いきなり戊辰戦争がトーキー映画で描かれる。ここでの希子は屋敷わらじになっていた。やってきた3人はすざましい殺人劇に腰を抜かす。(笑)

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近藤勇尾美としのり)と土方歳三(大場康正)の新選組クーデターは次々に女たちを悲劇に晒したと言う。坂本龍馬武田鉄矢)と長岡慎太郎柄本時生)が「自由人は抹殺されるぞ!」と登場し、なぜ二人が殺されたかを問い、大久保(稲垣五郎)が鞆の浦で西郷(村田雄浩)と龍馬を偲び「坂本が生きていたら暗殺された」という。西郷が別府晋介(金井浩人)の介錯で城山で自害し、これ以降を、中原中也を引き合いに、「“野卑”になっていった」と総括する。

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ここから満州事変、日中戦争へと跳ぶ。希子は遊女なり、日本軍兵士の姿を追う。水筒には特別な水があって、これで暴れまくる将校たち。官軍と新選組を一緒にしたような男たちだった。(笑)

毬男は「肺病の姉を慰めようと」映画監督になったマヌケ先生(大林監督)の姿を追っていた。

映画には落とし穴があると、川島芳子伊藤歩)が「李香蘭と食事でもしよう」と大言壮語で登場。こいつはアヘンで儲けたやつだ。僕がしっかり映画を撮っていたらこんなアクション映画にはしなかった。(笑) 

酒匂少尉(浅野忠信が希子を救い、戦争を語るところで敵兵に撃たれ、「本物の兵隊と勝負したかった」という。ここで宮本武蔵品川徹)がお通(入江若葉)を伴って登場。(笑) 討たれた武蔵が吐く言葉「老後は平等だ!平和だぞ!剣は努力である」に笑った。この奇想天外なシーンに笑った。(笑)

太平洋戦争の終わりごろ、茂は鳥取で訓練を受ける。死体の浮かぶ海での水泳訓練。兵器のガラクタを集めて、リヤカーを敵戦車に見立てての対戦車訓練。遊郭には行くなと厳命されていた。

この時期、戦意高揚映画の製作が叫ばれる。毬男(大林監督)が山中貞雄監督(犬童一心)はこれを納得して作ったというフィルモグラフィを語る。そして「無念!」と脚本を書く小津安二郎監督手塚眞)を特別な感情で追想します。とても面白い!

後段、

茂は虐められていた遊女(成海璃子)を救ったことで、この遊女に恋仲になった。

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ここでの遊女のベッドシーンはこれまでの監督にはない?ほどの熱のこもった演出で、成海さんはよく監督の求めに応じていました。遊女の女将(根岸季衣)が乗り込んできて諍いになる。そこに兵隊がなだれ込み、女将を犯す。何人もの兵隊が女将に群がり挑むさまが、“万華鏡”のように描かれ、圧巻でした!こんな映像を観ると言葉はいらない、戦争の憎さを感じます。茂は救いに駆けつけた遊女の妹希子(吉田玲)を逃がした。

沖縄の悲劇

日本人は沖縄の人を日本人と思わず、800人以上の沖縄の人を殺している。

加也(山崎紘菜)は伊良波承栄(山田隆人)と、青い海辺で、雨の日に結婚しようと約束していたが、村長さん(大森嘉之)から「おめでたい手紙だ」と赤紙が島に渡され、出征したが人を殺すのが嫌で逃げ帰った。帰ると村長が「お前のために殺された」と首に槍が刺されていた。そこに居た兵隊(笹野高史)が「お前の代わりに!」と加也を連れ出し犯した。

母も日本兵に犯されていた。「私でも役にたった!戦争が終わったら帰っておいで!」と声を掛けてくれた。

桜隊の最期

3人は広島行きの列車に乗り、そこで移動演劇隊“桜隊”に出会った。団長は丸山定夫窪塚俊介)。次の会場は広島で、欠員があるので一緒に白虎隊をやりましょうと隊員園井恵子常盤貴子)に出演を誘われ、茂が参加することになった。

列車のなかで中野武子(成海凛子)が妹優子(吉田玲)の介錯で自害するシーンを予行。戦争になると何故か皆、この芝居をするという。これを見ていた車掌(笹野高史)がにやりと笑った。(笑)

丸山を慕う惠子の希望で特別公演として無法松の一生を演じるとそこに憲兵(内田周作)がやってきて「中止!」を命じた。これを阻止するように廊下を大量の色とりどりの美しいビー玉が流れる!この演出が凄い!

ファンタ爺が「これで10分カットされ、戦後米軍に8分カット計18分カットされても、戦後日本最高の丸山映画だ」という。日本軍の精神構造を問うています。“米百票の話”を持ち出して、負けても先を見る人がいたら国を救えた。山本五十六も戦争を始めたから付和雷同だ、これが日本人の特性だ!」と悔しがる。

3人組は「明日(8月6日)だけはここを出よう」と勧めたが、丸山がここに残ると言い出し、女子全員が一緒にいることになった。

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8時15分大型の飛行機が飛んできた。惠子が「爆音が聞こえる!」と言ったとき、ピカ・・・。

ピカだけの人は即死。ドンまで聞いた人は生き残った。桜隊では5人がピカ、4人がドンまで聞いていた。希子はピカだった。丸山はここで亡くなった。惠子は丸山に脚本を抱かせておくった。「恋に焼き尽くされたかったしょう」と希子を偲んだ。

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過去は変えられないが未来は変えられる。平和を願ってこの作品を作りましたとピアノを弾きながら語る監督の言葉で、映画は終わりではなく一旦「中断」となっています。

大林監督は永遠に平和を語り続けたかったんですね!ご冥福をお祈りいたします。

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「映画ドラえもん のび太の新恐竜」(2020)なんといってもテーマがすばらしい!! 

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ドラえもん」連載開始から50周年を迎える節目の年。作品のなかでも特別な想い出があるという川村元気さん脚本によるオリジナル「ドラえもん」。

コロナウイルス騒動の混乱ななかでの公開、ここに意義アリです。この作品にヒントがあります。

人生で初めて「ドラえもん」に挑戦してみました!どんな物語なのか、何を学ぶのか、子供たちはどんな反応をするのだろうかと。

恐竜博の化石発掘体験で、のび太が拾ってきた恐竜の卵が孵化。大きく成長して飼えなくなり、白亜紀にタイムスリップして、生活できる環境に戻しにいく冒険ファンタジー物語。

コロナウイルス騒動の中でも公開でしたが、会場はほぼ満席、90%は小学校低学年以下の子供さんでした。みなさん熱心に観ていました。でも帰りに、“分からなかった!”という声が聴かれました。(笑) 配布されるマンガBOOK、パンフレットを買って、3回も劇場に通えばものにするでしょう。(笑) お父さんお母さん方は大変ですね。(笑)

テーマがデカい!これほどデカいアニメを知らない。ちょっと難しいと思いましたが、跳べない恐竜が環境に合うように進化(努力)させ跳べるようにしたのび太の優しさと、飛べるようになった恐竜に学んでのび太が懸垂が出来るよう努力するという物語、今わからなくても先々で、この映画を歌を思い出し、のび太のような人になると思いますよ。(笑) とても含蓄のある作品でした。

監督・絵コンテは「映画ドラえもんのび太の宝島”」(2018)の今井一暁さん。脚本:川村元気総作画監督キャラクターデザイン:小島崇史、CGアニメーションスーパーバイザー:森江康太、音楽:服部隆之主題歌はMr.Children

声優さん:

ドラえもん水田わさびのび太大原めぐみ、しずか:かかずゆみジャイアン:木村昂、スネ夫関智一、キュー:遠藤綾、ミュー:釘宮理恵、ゴル:間宮康弘、トップ:下和田ヒロキ、ナタリー長官:渡辺直美ジル:木村拓哉さんらです。


『映画ドラえもん のび太の新恐竜』予告編【2020年8月7日(金) 公開】

あらすじ(ねたばれ)

のび太ら5人組は恐竜博物館を見学。大きな怪獣ティタノサウルス、なかでも飛んでる赤い怪獣タベジャラに大興奮ののび太。「のび太がのびた」と冷やかされる。こんなこともあって、次の化石発掘体験では学芸員の「まだ見つかっていない怪獣化石あります。皆さんが見つけるかも!」という言葉に励まされ、恐竜の卵のような化石を見つけた。

家に帰り、タイムふろしきに包んで一緒に寝た。すると双子の恐竜、ピンク色で飛べる子をミュー、緑色で飛べない不器用な子をキューと名付けた。のび太は鉄棒の逆上がりができないで皆に冷やかされていた。こんなところが、キューがのび太に似ていた。

この子供たち、宇宙完全大百科辞典で調べると、なんと新種ではないか!「ノビタング」だ。大切に育てなければと、病気になればお医者さんに診せ、餌は自分で何を食べるのとか工夫して、毎日添い寝して育てた。動物を育てることはこんなに大変なんだぞ!

遊び場が欲しい、そこでインスタントミニチュア製造カメラで実際の建物や遊び場を撮って縮小し、飼育ジオラマセットを作った。大きくなったこいつらのために公園に連れ出し遊んだ。自慢してやろうと仲間を自宅に呼んで披露しているところに母の声。母に見つかってはまずい!と空間移動クレヨンで丸く囲んで屋根に移動したら近所の奥さんに見つかって大騒動。(笑)

もうどうにもならない!白亜紀に返してやることにして5人がタイムマシンに乗って出発。酸素濃度や恐竜の危険性などの環境を考慮した探検服や“ここどこパンダナ(地図)”、キャンピングバルーン(テント)を装備していた。

白亜紀に着いたがおかしい。植物が変だ!恐竜がデカすぎ、すぐに喧嘩を始める。おかしいぞ!と調べるとジュラ紀だった!のび太がタイムマシンの年代を間違えてセットしていた。それに飼育ジオラマセットを落としたという。のび太らしい!(笑) ここには大きな伏線が隠されています。これがすばらしい!

慌てて白亜紀に戻って、外に出てみる。恐竜がいない。タケコプターに乗って空から偵察、ティタノザウルスを見て降り立った。「新恐竜が見えない」とスネ夫「足跡スタンプ」を押すと同じ足跡が光る。これで追うことにした。もうひとつ秘密道具「たまご探検隊」を使って探すことにした。いろいろな秘密道具が出てくるのが面白い!夜はキャンピングバルーンで寝た。

ところがサル(ジル)とその上司(ナタリー長官)が彼らの行動を「宇宙の歴史を壊さないか?」と監視していた。

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たまご探検隊を追って、いろいろな恐竜」や動物に出会った。恐竜と友達にならねばと「ともチョコ」ティラノサウルストリケラトプスをと手なづけ、ゴルとトップ名付、名付け一緒に旅をすることにした。「怖い」で動物を殺してはだめだ!

旅の先は海だった。ここでジャイアンの提案で二手に分かれて捜索。ジャイアンスネ夫はミューらに似ているやつが居ると洞窟の中に入っていくとそこでオビラプトルに襲われた。ところがあのサルが出てきて救ってくれ、写真を撮られた。

一方、のび太らは、恐竜に襲われキューが飛べず捕まりそうになり、のび太はキューを守って水中に逃げた。そこにモナザウルスがいたのでその背中に乗って、不思議な島にたどり着いた。“しずか”がのび太の居場所を見つけて、みんなが島にやってきた。

その島にはキューと同じような新恐竜たちが住む島だった。ナラリー長官とジルもこのことを知った。

ところがキューは飛べないなめに雄から襲われ大怪我を負った。同じ仲間を飛べないからと襲う、「何故こんなことになった」とのび太が泣いた!こののび太の涙に泣かされますね!

のび太は自分が飛んで見せ、キューの飛ぶ訓練を始めた。何度たっても出来ない。のび太の指に傷をつけてどこかに行ってしまった。しずかが「のび太さんは痛みの分かる人。キューはのび太さんが探してくれるのを待っているよ!」とのび太の背中を押し、のび太はキューを探しに出た。すると驚いたことにキューが一生懸命に飛ぶ練習をしていた。のび太は側で逆上がりの練習をした。

デープインパクが始まった。隕石が降ってきて、地表で大爆発が起きる。6600万年前メキシコのユカタン半島で起こった異変だ。

「何とかしてして欲しい」とジルに頼んだか「これは変更できない」という。どうしても新種恐竜を助けたいと強く頼んで9時間だけ時間をもらった。

どうやって恐竜たちを救い出すか?そのとき見覚えのある島が見えた。ジュラ紀に行くときに落とした飼育ジオラマセットの1憶年後の姿だった。これに、空間移動クレヨンを使って移すことを思いついた!

のび太がクレヨンで大きな円を描き、みんなでそこに怪獣を餌で誘って寄せ集めようという作戦。

のび太が鳥獣にぶら下がって誘導しているところに、なんとキューが飛んでやってきて、危ないのび太を救ってくれた。

この光景を見たジルは「飛んだぞ!進化した」と叫び「人間も豊かな感情に進化している」と褒めた。

のび太たちは新しい恐竜の楽園を作り、借りたがるキューと」ミューをここに残して、「いつかどこかで会える」と現在に戻ってき

感想:

なんといってもテーマがすばらしい。

希少種動物をどうあつかうか、地球歴史のなかで多様性と進化が生物生存に欠かせないと教えるところがもっとも大切なテーマになっています。このことはマイノリテイをどう扱うかという問題に繋がっており、現代の大きなテーマです。なによりも「人間も豊かな感情に進化している」という言葉がいい。

また、生物を必死で育てともに生きようとする動物愛を育むという発想が良い。

のび太ドラえもん、しずか、ジャイアンスネ夫そしてジルの吐く言葉に、子供たちは感動するでしょう。きっと何かを覚えてくれているでしょう!

子供たちが幼稚園の段階でこんな作品に触れるということがすばらしいと思います。

ドラえもん一家のキャラクター。のんびりのび太、これを支えるドラえもん、愛情ゆたかなしずか、勇気のあるジャイアン、知恵のあるスネ夫の四人、これ智仁勇というリーダーに必要な資質(孫子を、多様性を示しています。うまいキャラクター作りだなと思いました!みなさんに受けるはずです!

絵は古風ですが、歴史のある作品だから仕方がない。しかし恐竜のキャラクターや行動アクション、背景画などは進化しており、ひみつ道具と相まって、面白い絵を沢山見せてくれました。

最後に使用された歌曲Mr.Childrenが2曲を提供しています。1曲目が飼育用のジオラマセットで「君にだって二つのちっちゃい牙があって」とのび太とキューとミューが遊びまわるときのもの。

2曲目はラストで生命体の永遠の出会いを「また会おうこんも道の何処かで。ほんの一瞬、たったの一瞬・・」と歌い上げたもの。いずれもテーマにぴったりで印象に残るものになっています。

川村さんによると日本の恐竜研究は日日進化して、いまや日本は恐竜大国と呼ばれるまでになり、この先にある新しい恐竜物語を描くのが目的であったとか。難しいはずです!

恐竜の話を学校で学んだという記憶がありませんから、子供たちと一緒に観て、結構楽しめました。(小学校6年の教科書に載っているそうです)

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「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(2012)サッチャーが最期に夫と交した言葉は?  

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爽やかな論理で論破し、男性以上に実行力のある女性イメージ。映画「21世紀の資本」(2019)では激しくこき下ろされる人。一体ご主人とはどんな関係だったのだろうかとNHKBSプレミアムで観賞。本作でマーガレット・サッチャーを演じたメリル・ストリープが第84回アカデミー賞主演女優賞を受賞しています。

政治の表舞台から引退。貴族院議員を務めながら、長女キャロル、秘書、お手伝いさんの助けを借りて自伝を執筆。認知症で薄れる記憶のなかで、夫を偲びそのときどきの政治を語るという物語。

原題はThe Iron Lady。「鉄の女の涙」という邦題は「あなたは幸せだった?正直に言って!」とサッチャーさんが夫デニスに問う結末にふさわしいと思います。

サッチャーさんの若いころから認知症が始まった老後までを演じたメリル・ストリープの演技がとてもすばらしいので話題はこちらに行ってしまいますが、夫デニスによって政治の舞台に立ち、そのデニスによって舞台から降ろされたサッチャーが最期に交すふたりの言葉は何であったか?これも面白い!

監督は「マンマ・ミーア!」のフィリダ・ロイド。脚本:アビ・モーガン、撮影:

エリオット・デイビス

出演者:メリル・ストリープジム・ブロードベント、ハリー・ロイド、オリビア・コールマン、アレクサンドラ・ローチらです。


映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』予告編

あらすじ(ねたばれ):

年老いたサッチャーさん(メリル・ストリープ)が食糧品店でミルクを買い、レジで「ホテルで爆発!」の新聞見出しを目にして、自宅アパートに戻り、夫デニス(-ジム・ブロードベント)と朝食。パンにたっぷりとバターを乗せるデニスに「多すぎよ!」と注意し、ミルクが49ペンスになったと嘆く。デニスは「車を売るか下宿人を置くか?」と返事する。

お手伝いさんが「旦那様のクローゼットを整理するそうですよ」と秘書のスージに話すのを聞いたサッチャーさんがデニスのためにクローゼットからネクタイとスーツを選ぶ。(笑)

秘書スージーに自叙伝のサイン書きを勧められ、サッチャーさんがいつのまにかマーガレット・ロバーツになっている。彼女の旧姓はロバーツ。戦時、食料品雑貨店を営んでいた父から、空襲時「バターに覆いをしなさい!」と急かされ、「明日はどんな空襲がくるのか?」と怯えていた記憶が戻ってくる。戦争の怖さを知っていた。

戦争が終わって、娘さんたちが美しい装いに興味を持っても、彼女はひたすら勉強に励み、オックスフォード大に進学。父親は喜んだが、母親はそうではなかった。(笑)

娘のキャロル(オリヴィア・コールマン)がやってきて、着替えを手伝ってもらいながら、新聞で見た爆弾事故を思い出し、「哀悼の意を表す声明文を出さなくては。我々いかなることがあってもテロに屈してはなりません」と言い出す。秘書がびっくり!

親しい人との昼食会。「今日の爆弾、あなたが首相ならどうします?」と聞かれ、「人間はいつも悪と共存しています。でも現在の悪は根が深く血の匂いに飢えている。罪のない人を死に追いやる。西欧文明はこういう悪を裁き、徹底的に根絶させなければなりません。さもないと我々は核の時代にテロに屈してしまいます」と喋った。この毅然たる論理はどこから出てくるのでしょうか?

キャロルが「外出はしないでといったでしょう!」と注意すると「買い物ぐらいはできます。ガミガミ言わないで!」と、ふたりが言い合う。これを見たデニスが「9文字の言葉でB、T、Nが入る「方向を変えないという言葉」を知っているかと謎かけをする。唖然とするサッチャーさんに「OBSTINATE(頑固)」だと笑った。

この物語はサッチャーさんの“頑固”から始まる物語です!

この会話のなかに今のサッチャーさんの生活が描かれており、認知症ですでに亡くなっているデニスのことが忘れられない。そして、彼女の宗教心、父から学んだ「質素倹約」「自己責任・自助努力」の政治理念が入っています。

マーガレット(アレクサンドラ・ローチ)は、父が小さな町の市長であったこともあり、政治に興味を持っていて、政治クラブに顔を出し、そこでデニス(ハリー・ロイド)に出会い、「泣き言を言わず問題に取り組み、状況を変えねばならない」と語っていた。

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24歳で下院議員選挙に出馬して落選。がっかりするマーガレットにデニスが「ビジネスマンの妻になれば当選できる」と結婚を申し込んだ。彼女は「いいわ!」と受け入れ、「でもすばらしい妻にはなれない。料理とか掃除、子育てより大切なものは生き方よ!お茶碗洗うだけの人生なんて。」、これにデニスは「そういう君と結婚したいんだ!」と応えた。

結婚して双子の子、マークとキャロルが生まれ、子育てをしながら下院議員選挙に臨み1959年、当選を果たした。

当時議事堂には女性トイレもないという有様。エリア・ニーブに「狂乱の世界へようこそ!」と歓迎され、たったひとりの女性議員だった。

その後教育相となり議会答弁に立つ「ストで教育が出来ない。暖房や電気のないところで誰が生徒に教えますか?」と激しい論戦になるが、議員たちから「そう甲高いは止めてくれ!」とヤジが飛ぶ。

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公共事業のストで街の中はゴミだらけ。「ストは政府に責任がある」と責める野党に「炭鉱組合は軍隊に支援してくれと蜂起を求めている。こんな組合と調停なんかできません!」と激しく反論するマーガレット。妥協!妥協!妥協!とマーガレットはヒース首相の政治姿勢に疑問を持つようになっていった。

この弱腰態勢を糺すために党首選挙に出馬する」と夫デニスに意見を求めた。デニスは「党首は首相だ!野心だ!」と猛反対。マーガレットは「当選することはない!確かめてみたいだけ!」と応じた。

これを喜んだエリア・ニーブらの議員によって、勝つための戦術が練られ、ファッション、喋り方などが検討された。ネックレスは高価に見えるから外すという案に「双子が生まれたときに夫が贈ってくれたもの」とこれだけは拒否した。甲高い声をどうするかと問題になったが「これがあなたのいいところ!」と変えないことにした。

しっかりボイストレーニングを経て、遊説に出た。飾らない人柄と明快な話しぶりで一気に人気が出た。「サッチャーは次期首相候補だ!」とニュースで騒がれるようになったなかで、ニーブがIRAによる車両爆破で亡くなった!

1979年の総選挙で欧州における最初の女性首相となった。バーニングの官邸にデニスを伴った。

インタビューで「今に気持ちは?」と聞かれ「どんな“気持ち”というのはない。“どんな考え“で、アイデンティティーこそが面白い!私が何を考えているか分かりますか。考えるが言葉になり行動になる。それがやがて慣習になりそして人格になる。”考え“が人を作るのよ」と応じた。

サッチャーさんは、予算案が漏れる夢をみる。このときにはデニスがいない。(笑)

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議会から「失業率が1934年以来の最悪レベルだ、貧乏人を切り捨てるな!」と責められ、街頭では抗議の大衆が首相の車に押し寄せてくる。マスコミからの吊るし上げ。こんななかでサッチャー首相は「バターの値段は知っている。私は食料雑貨店の娘、国民から離れていない。支出を削減しないと国は破綻する。良薬は口に苦し!選挙に勝ったのはこの偉大な国を救うため。国民が経済を立て直してくれると信じている」と閣僚に「イエスマンはいらない。信念に従って意見を通すのがリーダー」と妥協案なんか受け入れない。この頑固さ!

サッチャー首相は組合を潰そうとしている、炭鉱夫と警官隊の衝突ニュース。サチャー首相は「政府に手を引けと言っても、1秒たりとも譲りません!硬い決意でこの国に再び繁栄をもたらします」と声明。これにも頑固に対応!

夜に声明原稿を書くマーガレットに「マグナカルタでもあるまいし寝たら!」とデニスが勧めていたところで、爆破事件が起こった。マーガレットは爆煙のなか「デイス!」と探し回った。(笑)

英国領のフォークランド諸島の首都ポートスタンリーがアルゼンチン軍に占領される。この紛争はミサイルなど近代兵器による戦闘の先駆けだった。

英軍劣勢のなかサッチャー首相は「アルゼンチンの軍事政権はファシストの集団!英国の占領を許さない!」と、米国の仲介も断って、戦費を心配する議員を戒め、48時間内の海軍出撃を命じた。まさに鐵の女にふさわしい決断だったと思います。戦死者家族には自ら慰めの手紙を書き送った。

戦争は勝利に終わった。「強く結ばれた国民の意志を叡智と力と勇気で確認しました。たとえ犠牲を伴っても最後は善が悪に勝つ」と演説。これで景気は史上最高に、ベルリンの壁は崩れ、数々の難問が解決に動き出した。

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国民全員に税というのはおかしい」と人気の首相に反対意見が出始めた。サッチャー首相は「この国に住むならその特権よ!」といかなる意見にも耳を貸さなかった。そしてポンドの持つ健全性を捨てる気はないと欧州連合に反対

これに反対する閣僚には「英仏海峡を渡ってベレー帽を被ったら!」と揶揄し、文章の誤字にまでつべこべいちゃもんを付ける。これはもうおしまいですね!

パリで開かれた14か国トップ会議の最中、党内に反乱が起き、首相選挙で過半数が得られず、夫デニスの勧めで、決戦投票を辞退した。官邸を去るにあたって「就任時よりよくなっていることを祈ります」と言葉を残して去った。

感想:

認知症サッチャーさんが「苦渋の決断だった。あれは何だったの?」のデニスに聞くと、「チャーチル以降の偉大な指導者を、骨抜きされた臆病者どもが追い出した。能なしのゴマスリたちだ!日和見主義者たちだ!」と言うので、ふたりで「腰抜けだ!腰抜けだ!」と声をあげた。(笑) 

苦渋の決断を下すとその時代は憎まれても、いつか感謝を受けます」と言えば「あるいは忘れられ、ゴミと一緒に捨てられるぞ!」とデニス。「私の願いは世界を良くしたいと思っただけ!」と言えば「君はそれを成し遂げた!」と妻を褒めた。

サッチャーさんが「あなたは幸せだった?正直に言って!」と聞くと、デヌスは笑った。サッチャーさんは、デニスの衣類などを整理してトランクに詰め彼に持たせて、あの世に送った。「ひとりぼっちにしないで!」と声を掛けたら「君はひとりで生きていけるよ!今までそうだった」と笑った。

サッチャーさんはひとりでコーヒーを飲み、茶わんを洗った。やっと、デニスから離れて、ひとりで生きる覚悟ができた。

認知症の斑記憶のなかでの回想という設定がよく効いて、とても面白い物語でした!

夫デニスからサッチャーさんに送られたメッセージは「君は頑固!」この頑固さで首相になって、頑固であるが故に終わった政治生活。すべてをデニスは知っていた。そしてその頑固を愛した。

夫を幸せにしてあげたかったが公務で出来なかった。それだけに亡くなった後もデニスのことが気になっていた。デニスの言葉を聞いてほっとしたサッチャーさんでした。

 非常に強硬な政治方針と信念からサッチャーさんの政策には批判があります。今後どう評価されていくのかと気になりますが、サッチャーさんは「世界がよくなってくれれば良い」と気にしないでしょう。

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「グラン・トリノ」(2008)“老人の最期はかくあるべし”

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本作、クリント・イーストウッド監督作ということでWOWOWで観賞しました。監督が本作を俳優業最後の仕事と位置づけ、今後は監督業に専念して俳優業から引退すると明かしての公開だったと聞き、“なるほど“と言える作品で、このことを胸において観るととても感慨深い作品だと思います。

朝鮮戦争従軍経験を持つ年老いた元自動車工の男。ぶっきらぼうで取っつき難いが、隣に引っ越してきた東洋系の家族と親しくなり、ある事件で起こったその家族の悲劇を、身を挺して守るという物語。

テーマは生と死、贖罪で、監督作品でこう切り出してくるところが面白い。(笑) 年老いた男が下した最期の決断、正義イーストウッド監督らしい。男の最期はこうありたいと思いました!

脚本:ニック・シェンク、撮影:トム・スターン。

出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハーク、リストファー・カーリー、ドゥア・モーアら。


グラントリノ

あらすじ(ねたばれ):

朝鮮戦争で伝説の英雄と言われるウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。フォードで車組み立て工を終え、いまでは家具修理の便利屋。ふたりの子供たちは立派に成長し、それぞれ家族を持ち孫もいる。最愛の妻とのふたり暮らしであったが、その妻を失い自失呆然、今日は妻の葬儀日。

若いヤノビッチ神父(クリストファー・カーリー)の「生とは、死とは何か。死は悲しい喜びです。」という説教を聞き「若い牧師に何が分かるか?」と嘯いた。(笑)

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その神父が家を訪ねてきて、妻が亡くなる前に「夫に懺悔させて欲しい」と願い出ていたからと懺悔を勧める。コワルスキーは朝鮮戦争での忘れることができない辛い記憶で無口で頑固な男になっていた。

こんな折に、隣に東洋系の大家族“ロー家”が引っ越してきた。うさんくさいやつらだなと思った。一家には気の弱い少年タオ・ロー(ビー・ヴァン)と気立ての優しい姉のスー(アーニー・ハー)がいた。

ロー家はベトナムラオス、タイの山岳地帯にすむモン族。ベトナム戦争共産主義者の報復を恐れアメリカに亡命、いまではすっかり東洋人の街になったデトロイトに住み着いていた。こんな街になったことがコワルスキーは気に入らないらしい。

タオの従兄スパイダー(ドゥア・モーア)はストリートギャングのリーダーで、タオを仲間に引き入れようとやってきて、コワルスキーの持つグラン・トリノに目をつけた。タオにこれを盗み出す先陣を命じてガレージに侵入したが、コワルスキーが気づき失敗した。

スパイダーはタオ家を訪ね、再度の盗みを狙ってひつこくタオを誘い、揉めていた。隣に住むコワルスキーが銃をちらつかせて追っ払ったことで、「あなたは英雄だ!」とロー家一同に感謝された。タオは正直に車泥棒に入ったことを認めた。正直な少年だった!

事件を知った牧師が訪ねて来て「神に打ち明ければ重荷が下せる。命令で残酷な行為に走った男でも安らぎを得ることができる」と懺悔を促した。「命令されずに自らやったことが恐ろしいのだ!」とコワルスキーは断った。

コワルスキーは、ロー家の娘スーが男たちに言い寄られているのを助けたことで、ロー家のホームパーティ―に呼ばれた。そこで見たモン族に人たちは自分が思っていた人たちとは違っていた。言葉は通じないが、親切で受け入れてくれる。何よりも料理が美味かった!(笑) 体調が悪く吐血した。スーが心配してくれる。長男夫婦が訪ねてきて財産狙いで老人ホームを勧めるのとは大違いだった。(笑) 「身内より気持ちの通じるこの連中のほうが身近だ」と思った!

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タオが「お詫びをしたい」というので、空き家の修理を任せたが、しっかりやり遂げ、コワルスキーはタオと心が通じるようになっていった。

タオの将来のためにと建設工になることを勧め、自分が持っている工具を譲り、ベルトを買い与え、知合いに紹介するために床屋に連れていき、自己紹介の練習もやった。(笑)

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工員姿で帰るタオをスパイダーたちが襲い、工具を壊し、タバコをタオの頬に押し付けて去った。これを知ったコワルスキーは一味のひとりを捕え、拳銃で脅し、「タオに手を差すな!仲間に言って置け!」と激しく蹴とばした。

その夜、スパイダーたちがコワルスキーの屋敷を銃で襲ってきた。ローの家に駆けつけるとここも彼らに襲われていた。スーが連れ去られ、レイプされて戻ってきた。彼女は警察に何も話さなかった。

コワルスキーは「自分の性格がこうした」と悔やんでも悔やみきれなかった。そこに牧師が来て「タオは復讐する。あんたと一緒にやつらを討ちたい!」という。コワルスキーは「あんたが?」とびっくりした。(笑)

コワルスキーは風呂に入り、床屋で髭を剃り、洋服をしつらえ、牧師に懺悔して、タオを呼び「朝鮮戦争で降伏する少年を撃った。俺の手は汚れている。だから今夜は俺ひとりでやる。お前の人生は今からだ!」タオをガレージに閉じ込めスパイダーたちのいる屋敷に乗り込んだ。

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コワルスキーは彼らの前に立ち、「血の繋がった女をレイプするチンピラ・カーボーイ!」と拳銃を構える振りをして挑発し、彼らに狙い撃ちされ即死。

牧師はコワルスキーの葬儀で「生と死が何かを教わった」と挨拶。遺言でタオがグラン・トリノを相続した!

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感想:

朝鮮戦争ベトナム移民、暴力などの今の悩める時代を取り込んで、俳優イーストウッドがアクションも銃撃になく、それらを全部背負って未来の青年に託して最期を全うする物語。俳優業最後の作品にふさわしい作品だと思います!

なかでも青年にその命を繋ぐ結末「夢の香り」(1992)の老中佐に通じるところがあり、“老人の最期はかくあるべし”と感動しました。

朝鮮戦争の痛みを今も引きずっているという男。アメリカはここから転げ落ち始め、ベトナム戦での大きな傷、そして戦、戦の連続。物語の背景をここに置いたことがすばらしい。メッセージ性のある作品になったと思います。

自分の懺悔のために全身を相手に撃たせ、少年の将来に託すという結末。まるでアメリカの将来を見据えているように思えます。グラン・トリノは老人にとっては理想アメリカなんだ!少年は老人の夢を託されたのだ。同じ血が流れている者同士が、この国で争うな!という厳しい言葉でした。

さてこの作品で俳優業の最期にすると言ったイーストウッド作品が良すぎました!これでは止められない。(笑) これをロバート・レッドフォードの引退作「さらば愛しきアウトロー」(2018)と比較すれば分かります。レッドフォードが戻ることはないでしょう!(笑)

最後に第1騎兵師団でなくモントレーに駐屯する第7歩兵師団(フォート・オード、銃剣師団)にして欲しかった!イーストウッドはここに入隊し、市長をもやっている。私が隊付きした部隊です。(笑)

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「聲の形」(2016)絶対に弱い立場の人を傷つけるな!そして弱いということで卑屈になるな!

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高評価の作品。「金曜ロードSHOW!」で放送され、これが初観賞です。京アニ作品は、2作目ですが、美しい絵とも人の心を深く追求した作品だと感銘しました。

小学6年時に、転校してきた聾の女生徒とこの女生徒を虐め、蔑み、無視し、あるいは同情した生徒たちが、その後高校生となり、お互いが再び対峙したとき、彼らの気持ち・感情がどう変化していったかが繊細に描かれた作品。

聲の形とは聾者の発声「ご・め・ん・な・さ・い」「お・と・も・だ・ち」が健常者にどう受けとられるか、その形ということ。この受け取り方でいじめが起きる。

原作は大今良時さんの漫画「聲の形」。監督は山田尚子さん、長編映画3作目です。脚本:吉田玲子さん。総作画監督西屋太志さん(故人)、絵コンテ:山田尚子・三好一郎・山村卓也さん、音楽:牛尾憲輔さん。

声の出演者:入野自由早見沙織悠木碧小野賢章・金子有希・石川由依潘めぐみ豊永利行松岡茉優さんらです。


映画『聲の形』字幕付きロングPV

あらすじ(ねたばれ):

高校生の石田将也(入野自由)はアルバイトを辞め、預金を降ろして母に渡し、水門橋から川に飛び込み自殺を試みるが、出来なかった。

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彼は小学校6年時転校してきた西宮硝子(早見沙織)を虐め、これが公にされ、以後逆にクラスから虐められ、中学になっても付き合ってくれる人もなく、彼自身が人を受け入れられなくなっていた。また、西宮の補聴器を壊した代償として理容師の母親に170万円もの金を支払させたことも心に大きな重しとなっていた。

小学校6年時の石田(松岡茉優)は、母子家庭で、勉強より友だちの遊ぶのが日課。遊びのリーダーだった。目出たがり屋で、聾の西宮を悪意で虐めたのではなく、西宮が発する「ご・め・ん・な・さ・い」に戸惑うクラスの人たちに、恰好いいところを見せたかったのではないでしょうか。彼は自分が噴水池に投げ込んだ西宮の筆談ノートを誰もいなくなって必死に回収し、母親に賠償金を払わせたことに痛みを感じる子であった。許されることではないが、この年頃にはよくある虐めで、聾の西宮を生徒らに任せてしまった先生方に問題があったと思います。

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石田の虐めにクラスの植野直花(金子有希)は加担し、佐原みやこ(石川由依)はこっそり筆談ノートに書き込みをして協力、川井みき(潘めぐみ)は見て見ぬ振り、虐め仲間の島田一旗(西谷亮)は加担するが強制されてやったと証言する。

転入5か月後、「虐めで補聴器が壊された」という母親からの訴えで、石田の罪が明かされ、西宮は転校していった。西宮が5か月もいじめの中で登校していたことを考えると転校は西宮本人ではなく母親西宮八重子(平松晶子)が決めたことでしょう。

高校生になった石田には自殺したいほどの罪悪感に苛まれていた。あの日西宮が「お・と・も・だ・ち」と話した意味は何だったのかと気にしていた。

偶然手話教室を訪れたことで西宮に出会い、小6の時噴水池に投げ入れた筆談ノートを返し「友達になってくれ!」と申し入れたが、西宮の妹・結絃(悠木碧)の強いガードで会せてもらえない。(笑) 

そんなとき、虐めにあっているクラスメートの長束友広(小野賢章)を救ったことで、石田と長束が友情で結ばれた。長束の活躍で、結絃のガードをくぐり抜け、西宮に会うことができたが、筆談ノートを川に落としたことで、二人が奇しくも川の中で再会。このとき石田が見た西宮の脚が彼には眩しかった!(笑)

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これが切っ掛けとなり、ふたりは遊園地で遊ぶようになり、西宮は石田に特別な気持ちが出てくる。ふたりの行動は小6年生のころの友の評判になり、再び当時の虐めと向かい合うことになる。

川井が「西宮を虐めた全責任は石田さんが負うべきだ!」と言い、植野(金子有希)は「それはおかしい、私は笑って同調していた」と、植野は西宮にも責任があると考えていた。佐原は「石田も植野も怖かったから何も言えなかった」と言い、川井の紹介で親しくなった真紫智は「ひど過ぎる!」と石田を非難した。

みんな自分が可愛い。虐めの責任は全部石田が負うことになり、再び彼は心を閉じてしまう。そんな石田に西宮は「私と一緒にいることは石田を不幸にする」と伝えた。

美しい花火も西宮にとっては開く音のない花火だった。途中で家に戻った彼女が採った行動はアパートからの飛び降り自殺だった!

落ちる寸前の西宮の手を掴まえ、「どうかもう一度俺に生きる力を貸してくれ!」という石田。この声を聴いた西宮が石田の手を引っ張た反動で石田が落下、幸い落ちたところが川の中だった!しかし意識不明で戻ってこない。

西宮は自分の行動で石田が傷ついたことを後悔した。土下座で石田の母親石田美也子(ゆきのさつき)に詫びた。病院に見舞いに来た植野は「なぜ傷つけた!頭の中でしかものを考えられないようなやつ!腹が立つ!」と西宮を蹴とばした。これを救ったのは石田の母だった。

西宮は「石田君が築き上げたものを壊してしまった。私がもう一度取り戻したい!」と、皆に謝って廻った。しかし、植野が会おうとしなかった。しかし、このことは西宮を強くした。

西宮は石田は生きて水門橋に来ると思っていた。石田も眠りのなかで同じように脳が働いていた。石田が目覚め、夜の街を走り、水門橋に駆けつけた!

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回復した石田は西宮を文化祭に誘い、かっての仲間たちに会った。川井は「まだ完成していない」と言い添え千羽鶴を石田に贈った。石田は「それで良い!」と受け取った。佐原は「石田君は大変だったが変わっていない」と声を掛けた。石田が「そうかな?」と応えると、植野が「そんな深刻な話はしてない!バカ!」。西宮が「バ・カ!」と怒った。

石田は「みんなにお願いがある」と自分から仲間の中に入っていくことで、受け入れられることを知った。

感想:

転校生とこの子を虐めた張本人を主題に、他の生徒たちを絡めて物語が展開されますが、どの生徒にも、良いとか悪いとかかでなく、愛情を持って描いてあるのが良い。植野の強い個性があってこそ、この作品が生かされていると思います。

お互いに失敗し、苦しみながら、相互理解していけばいい。絶対に弱い立場の人を傷つけるな!そして弱いということで卑屈になるな!すべては自分の心の持ちようで“心は開かれる”ことを教えてくれる作品でした。

皆の心が解けていくなかで、長束と西宮の妹・結絃の存在が大きかった。特に結絃が石田に招かれて家族に会い、帰りに赤い傘と靴を貰って、その赤い傘で壁を作って石田の本心を聞き出すシーンは印象的でした。そんな石田に殴りかかる西宮の母親、本心を知ることの大切さを知ります。

アニメらしく誇張して、水や花・動物をメタファーに命の大切さを、そして空や夜、雨などの自然の変化、さらにキャラクターの動き(本作では脚)や音、音楽で繊細な感情を表現してくれ、はっとするような京アニ作らしい美しい映像に驚かされます!

西宮硝子の聲、リアルで早見沙織さんの努力が伺えました!

こんなに精細な作品を世に送ってくれる京アニ社が、とんでもない事件に捲き込まれたことが残念でなりません。亡くなられた方々にはお悔やみを申し上げます。そして、すばらしい作品で再登壇される日を楽しみにしております。

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「アルプススタンドのはしの方」(2020)アルプススタンドで声出して大人になるんだ!

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SNSで盛り上がっている作品ということで観賞。

高校野球夏の甲子園大会1回戦に「しょうがないよ!」と駆けつける高校生活に不満、苛立ち、不安を抱く4人の高校生。アルプススタンドのはしの方で応援しているうちに自分が救われ、仲間に「頑張れ!頑張れ!」と大声が出て、自分の青春に涙するという“清々しい作品”。懐かしい自分の姿を見たようで、高校生活での悩みなんてインフルエンザみたいなもんで、“その先に人生があるぞ”と応援したくなりました。

アルプススタンドにいる4人の高校生と応援のたったひとりの先生、応援するブラスバンド部員と演奏する応援歌、それにカーンというバット音と場内アナウンスのみで、野球選手も試合も全然出て来ない。今何回なのかも分からない、こんな野球物語で、高校生の不安や悩み、憬れ、初恋、挫折、嫉妬と高校時代の微妙な感情を描き、すべてこれらが救済され、「頑張れ!頑張れ!」と届くかどうか分からないが、大声を張り上げ選手を応援した高校最後の夏。これが人生の宝物だと思わせてくれる、「このシナリ」が凄かった。「カメラを止めるな!」(2018)クラスの衝撃でした!

原作は兵庫県東播磨高校演劇部教師の藪博昌さんの2017年の全国高等学校演劇大会で再優秀賞に輝いた戯曲。監督はピンク映画、Vシネマの名匠といわれる城定秀夫さん。脚本:奥村徹也さん、撮影:村橋佳伸さん

出演者は小野莉奈・⻄本まりん・中村守里・平井亜門・黒木ひかり・目次立樹さんら、とてもフレッシュな方々でした。これが作品によく合っていました。


映画『アルプススタンドのはしの方』予告編

あらすじ(ねたばれ):

アルプススタンドのすみっこに演劇部の安田あすは(小野莉奈)と同し演劇部の田宮ひかる(⻄本まりん)が応援していた。このふたりは野球のことはさっぱり分からないならしい。なんで応援に来なの?

そこに遅れて元野球部員だった藤野富士夫(平井亜門)が到着。スタンドの上段に暗い顔した宮下恵(中村守里)がひとりで入ってきた。

応援の厚木先生(英語)が「もっと前で応援しろ!皆で心をひとつにするんだ!」と気合をかけにやってくる。

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5回裏らしい!すぐにグランド整備が始まった(セリフ)。

安田は地方大会出品劇の脚本を書いたが、田宮がインフルエンザに罹り大会に参加できず、また演劇の全国大会は2年置きで、今年はない。もう私の演劇生活は「しょうがない!」と諦めて野球を見にやってきた。相手の田宮はこんな安田に申し訳ないと、進んでお茶を買いにゆくようなやさしい女。

藤野はピチャーとして野球部の選手だったが、園田がエースとなり自分に出場の場がないと辞めて進学を目指すが、なかなか成績が上がらない。外野手だが打てないために出番のない矢野に、なんであいつ野球を続けるんだ!野球に未練があるのか、高校最後の試合を見にやってきた! 

遅れてやってきて3人に加わらない宮下。勉強しかやらない孤独なできる女で学業TOP。ところがつい最近の模擬試験でその座を吹奏部部長の久住智香(黒木ひかり)に奪われた。これからどうなるんだろうかと不安のなかで、試合を見にきた。藤野に「園田君は野球以外で好きなものはないか?」と聞く。藤野は宮下のこの言葉に驚いた。そこに田宮が「園田と久住ができてる!」と明かす!

4人の「しょうがない」、「青春とは何だ!」と問いながら、試合が進み、まさかの矢野がピンチヒッターで登場、またエース園田が大ピンチに陥ることで、自分たちのしょうもない気持ちが、頑張れ!矢野!頑張れ園田へと変化していく。そして青春とは「これであったか」と気付くラストシーン、みごとでした。。

感想:

野球場がなくても、ブラスバンドの演奏と歓声、バットの音で野球の映画になること。

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高校野球には欠かせないバントとエースの話しでこんな感動的なドラマになるとは、驚きでした。

4人が、お茶を買いにいったときのスタンドで、トイレにいったときのコンコースで、気分が悪くなってコンコースに出てと、場所と話し相手が変わり、話題が変わり、アルプススタンドでの話が、うまい演出と脚本でこんな大きな青春物語となっていくところに感動しました。

弱い対場をいやというほどに味わっている田宮が、園田と久住ができていることでダブルショックの宮下をコンコースに誘い、「私も園田君が好き!」と明かし、宮下が「同じ人がいる!」と元気になり、ピンチに陥った園田の孤独を思い、自分を重ねるように大きな声で「園田君ガンバレ!」と今まで出したこともない声で叫ぶ。これが甲子園なんだ!

こんな宮下に「あんたは何にも知らない!私は普通だから頑張っているの!報われたいと思っている!真ん中は真ん中でしんどいの!」という久住の言葉が清い。この言葉に元気をもらい、宮下は久住の演奏にナイスを出した!

出番がない矢野がピンチヒッターで出てきた。バントで塁に選手を進めた。田宮は矢野が笑っているのを見て、舞台に立ちたいと、「“あすは”、わたしあなたと芝居をやりたい!」と言い出す。これに安田が「予防注射を射っておけ!」とやる気を出す。

園田がピンチに陥ったのをしった藤野。「なんのために野球をやるんだ!勝つためだろうが!」と己を励まし、最終回、打席に立った園田に4人が「打て!、打て!、打て!」と声援を送った。「厚木先生はよく俺たちのこと知っている、協力しよう」と。

数年後の4人の姿。ちゃんと立派な大人になっている。甲子園のお陰だ!

今年はコロナウイルス騒動でこの感激にを味わえない高校生!なんとかしてあげたいですね!皆さん、劇場に足を運んで応援してあげてください!

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