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「グラン・トリノ」(2008)“老人の最期はかくあるべし”

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本作、クリント・イーストウッド監督作ということでWOWOWで観賞しました。監督が本作を俳優業最後の仕事と位置づけ、今後は監督業に専念して俳優業から引退すると明かしての公開だったと聞き、“なるほど“と言える作品で、このことを胸において観るととても感慨深い作品だと思います。

朝鮮戦争従軍経験を持つ年老いた元自動車工の男。ぶっきらぼうで取っつき難いが、隣に引っ越してきた東洋系の家族と親しくなり、ある事件で起こったその家族の悲劇を、身を挺して守るという物語。

テーマは生と死、贖罪で、監督作品でこう切り出してくるところが面白い。(笑) 年老いた男が下した最期の決断、正義イーストウッド監督らしい。男の最期はこうありたいと思いました!

脚本:ニック・シェンク、撮影:トム・スターン。

出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハーク、リストファー・カーリー、ドゥア・モーアら。


グラントリノ

あらすじ(ねたばれ):

朝鮮戦争で伝説の英雄と言われるウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。フォードで車組み立て工を終え、いまでは家具修理の便利屋。ふたりの子供たちは立派に成長し、それぞれ家族を持ち孫もいる。最愛の妻とのふたり暮らしであったが、その妻を失い自失呆然、今日は妻の葬儀日。

若いヤノビッチ神父(クリストファー・カーリー)の「生とは、死とは何か。死は悲しい喜びです。」という説教を聞き「若い牧師に何が分かるか?」と嘯いた。(笑)

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その神父が家を訪ねてきて、妻が亡くなる前に「夫に懺悔させて欲しい」と願い出ていたという。コワルスキーは朝鮮戦争での忘れることができない辛い記憶で無口で頑固な男になっていた。

こんな折に、隣に東洋系の大家族“ロー家”が引っ越してきた。うさんくさいやつらだなと思った。一家には気の弱い少年タオ・ロー(ビー・ヴァン)と気立ての優しい姉のスー(アーニー・ハー)がいた。

ロー家はベトナムラオス、タイの山岳地帯にすむモン族。ベトナム戦争共産主義者の報復を恐れアメリカに亡命、いまではすっかり東洋人の街になったデトロイトに住み着いていた。こんな街になったことがコワルスキーは気に入らないらしい。

タオの従兄スパイダー(ドゥア・モーア)はストリートギャングのリーダーで、タオを仲間に引き入れようとやってきて、コワルスキーの持つグラン・トリノに目をつけた。タオにこれを盗み出す先陣を命じてガレージに侵入したが、コワルスキーが気づき失敗した。

スパイダーはタオ家を訪ね、再度の盗みを狙ってひつこくタオを誘い、揉めていた。隣に住むコワルスキーが銃をちらつかせて追っ払ったことで、「あなたは英雄だ!」とロー家一同に感謝された。タオは正直に車泥棒に入ったことを認めた。正直な少年だった!

事件を知った牧師が訪ねて来て「神に打ち明ければ重荷が下せる。命令で残酷な行為に走った男でも安らぎを得ることができる」と懺悔を促した。「命令されずに自らやったことが恐ろしいのだ!」とコワルスキー。

スーが男たちに言い寄られているのを助けたことで、スーからロー家のホームパーティ―に呼ばれ、そこで見たモン族に人たちは自分が思っていた人たちとは違っていた。言葉は通じないが、親切で受け入れてくれる。何よりも料理が美味かった!(笑) 体調が悪く吐血した。スーが心配してくれる。長男夫婦が訪ねてきて財産狙いで老人ホームを勧めるのとは大違いだった。(笑) 「身内より気持ちの通じるこの連中のほうが身近だ」と思った!

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タオが「お詫びをしたい」というので、空き家の修理を任せたが、しっかりやり遂げ、コワルスキーはタオと心が通じるようになっていった。

タオの将来のためにと建設工になることを勧め、自分が持っている工具を譲り、ベルトを買い与え、知合いに紹介するために床屋に連れていき、自己紹介の練習もやった。(笑)

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工員姿で帰るタオをスパイダーたちが襲い、工具を壊し、タバコをタオの頬に押し付けて去った。これを知ったコワルスキーは一味のひとりを捕え、拳銃で脅し、「タオに手を差すな!仲間に言って置け!」と激しく蹴とばした。

その夜、スパイダーたちがコワルスキーの屋敷を銃で襲ってきた。ローの家に駆けつけるとここも彼らに襲われていた。スーが連れ去られ、レイプされて戻ってきた。彼女は警察に何も話さなかった。

コワルスキーは「自分の性格がこうした」と悔やんでも悔やみきれなかった。そこに牧師が来て「タオは復讐する。あんたと一緒にやつらを討ちたい!」という。コワルスキーは「あんたが?」とびっくりした。(笑)

コワルスキーは風呂に入り、床屋で髭を剃り、洋服をしつらえ、牧師に懺悔して、タオを呼び「朝鮮戦争で降伏する少年を撃った。俺の手は汚れている。だから今夜は俺ひとりでやる。お前の人生は今からだ!」タオをガレージに閉じ込めスパイダーたちのいる屋敷に乗り込んだ。

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コワルスキーは彼らの前に立ち、「血の繋がった女をレイプするチンピラ・カーボーイ!」と拳銃を構える振りをして挑発し、彼らに狙い撃ちされ即死。

牧師はコワルスキーの葬儀で「生と死が何かを教わった」と挨拶。遺言でタオがグラン・トリノを相続した!

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感想:

朝鮮戦争ベトナム移民、暴力などの今の悩める時代を取り込んで、俳優イーストウッドがアクションも銃撃になく、それらを全部背負って未来の青年に託して最期を全うする物語。俳優業最後の作品にふさわしい作品だと思います!

なかでも青年にその命を繋ぐ結末「夢の香り」(1992)の老中佐に通じるところがあり、“老人の最期はかくあるべし”と感動しました。

朝鮮戦争の痛みを今も引きずっているという男。アメリカはここから転げ落ち始め、ベトナム戦での大きな傷、そして戦、戦の連続。物語の背景をここに置いたことがすばらしい。メッセージ性のある作品になったと思います。

自分の懺悔のために全身を相手に撃たせ、少年の将来に託すという結末。まるでアメリカの将来を見据えているように思えます。グラン・トリノは老人にとっては理想アメリカなんだ!少年は老人の夢を託されたのだ。同じ血が流れている者同士が、この国で争うな!という厳しい言葉でした。

さてこの作品で俳優業の最期にすると言ったイーストウッド作品が良すぎました!これでは止められない。(笑) これをロバート・レッドフォードの引退作「さらば愛しきアウトロー」(2018)と比較すれば分かります。レッドフォードが戻ることはないでしょう!(笑)

最後に第1騎兵師団でなく第7歩兵師団(フォート・オード、銃剣師団)にして欲しかった!(笑)

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