映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 」(2020)今の日本にぴったりのドラマ、すばらしい映像でした!

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作品に出てくるキャラクラーには自分に重なるところが沢山あると思います。それだけにいろいろな考えができ、謎が売りの作品。ネタバレはいけません!

読まないで作品を観てください!(ということで最小限のネタバレをしながら感想を書きます)

冒頭でこれまでの3作品「序」、「破」、「Q」の要点紹介があります。特に「Q」をしっかり観て、分からないところを押さえておくとよいと思います。 

総監督:庵野秀明、監督:鶴巻和哉 中山勝一 前田真宏、脚本:庵野秀明、音楽:鷺巣詩郎、テーマソング:宇多田ヒカル「One Last Kiss」。

声優:緒方恵美林原めぐみ宮村優子坂本真綾三石琴乃山口由里子石田彰立木文彦清川元夢長沢美樹、他。


『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告【公式】

あらすじ:

前作「Q」ニアサードインパクト後から物語が始まります。

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パリの旧市街上空にヴィレの戦艦ヴンダーが到着。19年ぶりのパリという赤木リツコ山口由里子)指揮下に “ユーロネルフ第1号封印柱”の復元オペテーションが行われる。これを阻止しようとEVA-44A群が現れるが、これらの撃破をマリ(坂本真綾)が搭乗するEVA8号機が引き受ける。

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アンチLシステムを投入しで真っ赤に染まったパリが元の世界に戻る。武器やエヴァのパーツ予備などを補給し、ヴィレはネルフとの最終決戦へ向けての準備に取り掛かる。ここまでは予告編で提示されていて、観ておくと大画面と音響で楽しめます。

ここでマリが「どこにいても必ず迎えに行くから。待ってなよ、ワンコ君」といつもの決めセリフでシンジに呼び掛ける。これが最終章での鍵となります。マリの出自が明かされ最期までシンジと行動し、謎の多かったマリの行動が理解でき、本章の主役とも言っていい活躍でした。「ずるいよな!監督」でした。(笑)

一方、シンジ(緒方恵美)、レイ(擬き)(林原めぐみ)、アスカ(宮村優子)は大気が汚染され真っ赤に染まった街を彷徨。そこに今では医者となっているトウジ(席智一)がジープで迎えにくる。レイはトウジの家に、アスカとシンジはケンスケ(岩永哲也)の家で生活し、再生されていく自然や村の生活を見ながら、思いがけない加持リョウジに会うなどで身体と精神を癒していき、いよいよネルフとの決戦(ヤマト作戦)に参加するため戦艦ヴンダーに帰還する。

レイは村人と接し人の優しさを知り、食べようとしないシンジに食を支え、去るべきときを知っていたように消える(消された)。彼女は母の霊でしたね!これでシンジは大人へと独り立ちできました。これはゲンドウのせめてもの息子への贖罪であったかもしれません!

そしてヤマト作戦が開始され、・・・・。

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感想:

劇場版しか観ておりません!遂に完結です。すばらしいドラマ、映像でした!

ヒト型人造ロボット“エヴァンゲリオン”が知的生命体リリンを求め来襲する謎の生命体“使徒”と戦い、人が再生されていく物語。人類創設から数千年を経て、我々の何が再生されなければならないのか

見たことのないロボットの戦闘、使徒と戦うネルフ、後にネルフに対抗するヴィレの活動や人の成長、人間関係を観るのが楽しみでした。そこには隠された謎が多く、常に疑問を抱きながら、次作を待つことになり、これが又、楽しかった。

理解不能な(笑)「Q」編があって、この最終編でこれまでの謎が回収されるという、全編を通じて映える作品となっていました。劇場版「エヴァンゲリオン」はシンジの成長物語というような狭いものではなく、登場人物すべての愛の物語でした。すばらしいです!

テーマは「人類補完」。人間のどこが不都合か?孤独を如何に克服するかではなかったかと思い、まさに現在の大問題で、人間の悪の根源はここにあるといってもいい。英国の閣僚には孤独相が設けられ、日本もこのポストが作られるという時代、まさに今の時代に必要な物語だと思います。

シンジがサードインパクトで生き残った村人により、荒れた土地で、少しずつ再生されていく。手植えの田植え、魚釣り、五衛門風呂などと原始の生活から始まっていることに、この作品の意味があると思います。

サードインパクトを起こしたシンジが、レイ、アスカとともに幼いことの友人トウジ、ケンスケや村人と過ごして身体・精神を癒し、ヤマト作戦(ヴィレ対ネルフ決戦)に参加していくところに、テーマが隠されていると見ました。村で過ごすシーンに尺の3割強を費やした意味があります。荒廃した村は東北大地震の被災地に重なり、東北被災地の回復は「人類の再生」というぐらいの気持ちで立ち向かわねばならないですね!

背景は箱根の風景(芦ノ湖一帯)で実に美しい映像でしたから、箱根の皆さんへの感謝の意もあったかも知れませんね!(笑)

決戦でそれぞれのキャラクターの魂はどう再生されていったか。これが本作のテーマです。

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決戦を前にして亡くなった人への追悼!こんなことがあったのかと、「破」でふたりに何かあったなとは思っていましたが、艦長ミサトの加持の想いに泣いた。アスカとシンジの別れ。エヴァ3号テスト時にシンジが採った行動に対するアスカの感謝と今のシンジへの想い、涙なしには語れない!

ヴィレが絶対絶命の危機に陥って、曝け出る隊員の本音、想い。人は何をもって生きるか。これこそが人の再生でした。アスカは利己的な子でしたが、ヴィレの皆と交わる中で決して一人では生きていけないことを強く感じた。最後に彼女が果たした行為には、皆さんへの感謝でした。涙が溢れます!

ゲンドウ(立木文彦)の人類補完計画とは何であったか?孤独だったが故に陥った心の闇を癒すものだった。これをシンジとユイの魂で癒されていくところは秀逸で、“描き方がぶっとんでいて”暖かいものでした!今の世間の闇が描かれているように思います。この悩みを癒してこの世を去っていくゲンドウの心に、本シリーズを「完」とする庵野総監督の苦悩した心の内を見たような気持ちでした。

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さてシンジですが、ヴンダーに戻っても彼の居場所はなかった。艦内でいろいろな彼に対する厳しい意見を耳にして、ヴィレの絶対絶命の危機に対するミサトの決意を目の当たりにし、村で会った加持リョウジを思い出し、自分がやらなければならないことは何かを悟ります。かっての自分のためにレイを救うというような狭い考えでなく、人として何をなすべきか、父を殺すことであっても。シンジの父親を超えた成長した姿をラストの映像と声で確認してください。

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女性たちの活躍がしっかり描かれた作品で、日本オリンピック委員長騒動がいかに馬鹿げたものであったかと、気持ちがよかった!特にミサトの艦長としての指揮、状況判断、覚悟が見事でした。世界の何処に出しても大丈夫!また、女性の姿絵が美しかった!

“あきらめない!”という生き様、アニメの楽しさを教えてくれたスタッフ、キャストの皆さん、ご苦労様でした。「ありがとうございました」。

             *****

「野球少女」(2019)男女に差はない、自分の長所を信じて前に進むことは間違いでない!

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韓国映画には力強さがあると、できるだけ観るようにしています!

韓国プロ野球には女子はダメという規定はない。なのに誰もプロでやろうとしない。初めから女子は無理という風潮がある。でも私はリトルリーグから野球をやって賞も沢山もらって、高校3年で130kmの速球を投げられる。プロでやりたい!そんな少女がひとりのコーチに出会い、世界を変えていくはなしです。

本作もなんの変哲もない物語ですが、韓国の野球事情や苦しい生活環境のなかでプロ選手になることがいかに難しい夢であるかを知り、この夢を強い意思と努力で追い、これに触発されるように周囲が変わっていく人のやさしさを感じる作品でした。なんといっても主演のイ・ジュヨンのひた向きな演技、透明感に、自分を含めて4人の観賞でしたが、最後まで惹きつけられました!

エンデイングの主題歌「空の中で夢を見る」、とても爽やかで、ドラマに合っていました。

監督・脚本は本作が長編デビューとなるチェ・ユンテ

出演:イ・ジョヨン、イ・ジュニック、ヨム・ハラン、ソン・ヨンギュ、クァク・ドンヨン、チュ・ヘウン。


3/5(金)公開⚾︎『野球少女』予告編

あらすじ(ねたばれ):

高校3年生のチュ・スイン(イ・ジョヨン)はリトルリーグから高校まで野球づけの少女。すっと一緒だった球友がイ・ジョンホ(クァク・ドンヨン)。

父親(ソン・ヨンギュ)は失業中で土地建物取扱士取得の勉学中。家族の生活は母親(ヨム・ハラン)に頼っている。年の離れた妹がいる。スインはこのような生活環境のなかでプロ選手を目指して頑張っている。

3年生になってプロからの誘いは、同級生のなかでジョンホただ一人。中学まではスインの方が手も大きかったし球速もあった。高校になって逆転したが、決して今の力が限界だとは思っていない。

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パク監督は「女性だからな!」とプロ行きを諦めている。韓国ではこれが一般風潮。しかし、韓国のプロ規定に選手の男女区分は存在しない。

学業の方は運動選手は特別扱いで、試験も居眠りして無回答でも単位は取れる。(笑)それだけに3年生での進路決定は大切だ。「いい加減に見切りをつけて勉強を始め就職に備えて欲しい」という母親の想いがあり、「もう見切りをつけて!」という母親と衝突する。

スインは諦めずトライアウトを受けようとするが、受付で女性だと知って、実技は受けられない。スインの女性友達、アイドル志望のバン・ハングル(チュ・ヘウン)に「ギター買って曲作る!」と話しかけ気休めをする。(笑)

パク監督は後輩のチェ・ジンテ(イ・ジュニック)をコーチに招聘した。というより、ジンテは独立リーグでプロを目指していたが叶わず、飲んだくれて妻子にも見放され、監督が見るに忍びず面倒を見ることにしたのだった。

監督は「プロを諦めて韓国ナショナルチームに入ってはどうか?」と指導するが、スインはあくまでもプロを志すと断った。ジンテも「無駄だ!」と思った。

ジンテは「野球部に何で女の子がいる?」と思った。スインはジンテに自分の力を見て欲しとグランドに誘い130kmの速球を投げたが、ジンテはスインを見向きもしないで、打てない打者にコーチする有様。スインはこれからの1年間をどう過ごすかと、自分のブースで考えた。このブースはトイレを改造したもので、スイン専用のものだった。(笑)

次の朝から、スインが早朝からランニングを始め、球速150kmを目指して、再出発を誓った!昼夜をとわずの練習で掌は血まみれ!それでも129kmの球速しか出ない!

ジンテはコーチにやりがいを感じはじめ、妻子と別れることにした。妻から「独立リーグでコーチになった人は成功している」と励まされた。

ジンテは自分の指導方針に従い、全員にグランド50周の特別メニューを課した。スインには「練習に出て来ないでよい」と指示したが出てくるので、ひとりで走れ!と命じた。スインの練習は相変わらず昼夜に及びボールに血が滲んでいった。

そんなボールを見たジンデの心が動いた!ジンテは「スインを怪我させてはいかん!」と監督に相談すると「気にするならテストを受けさせろ!あいつの利点はボールの回転数が多いことだ」という。ジンテは彼女の指導録を調べた。

部員の主力は合宿で学校を離れるが、スインは費用が出せないと居残りとなり、ジンテが面倒を見ることになった。訪ねてきたスカウトに「あの子を頼む!」とトライアウト招聘を打診すると「あの子が野球選手に見えるか?」の無碍なく断られた。これを見ていたスインは「バカどもめ!」と胸の中で叫んだ!

ジンテはスインに「現実を観ろ!」と話すと「高校では野球は出来ないと言われたが、こうやって出来ている。だからやる!トライアウトを受けられれば十分だ!」とコーチになって欲しいと申し入れした。

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ジンテは球速に拘るスインを説得して回転数の高いボールを投げる練習をすることにした。スインはトライアウトに参加できることを信じて、当初は全くコントロールが悪かったが、徐々によくなってきた。ジンテは常にスインに付き添って練習した。これを見たジョンホも練習につき合うようになった。

スインの練習熱意がジンテ、ジョンホを動かすようになっていった。ジョンホ

が「中学時代、あいつがいたから俺は頑張れた!」とジンテに漏らした。シンテも同じ気持ちだった。

父親が不正受験で警察に捕まった。母親はグローブを焼いて仕事に就くことを勧め、スインは事務でなく現場で働くことになった。それでもスインのバックには燃えたグローブが入っているのを見た母親は娘の気持ちに耐えられなくなっていった。スインは仕事を続けながら練習に励んだ。

そんなある日、ジンテから練習の誘いがあった。ジンテはそこにスカウトを招いていた。スカウトはスインを見て「あの女の子が!男子並みだ!」と驚いた。

ジンテは焼肉を奢って、グローブを贈り、トライアウト参加を伝えた。ジョンホ

は爪を保護するようにとマニュキアを贈った。

スインはトライアウトの日に備えて、家でも職場でも暇を見つけてトレーニングした。父親にキャッチボールをしてもらった。

母親がトライアウトに反対したが父親が「部の部屋にいるだけでも苦しんだ!スインの苦しさを察してやれ!」と説得した。

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トライアウトの日。スインはマウンドに立ち、ナックル投球で文句のない成績を挙げ、受験者たちから大声援を受けた。これを見た母親は「自分の考えが間違っていた!」とスインに詫びた。ジンテは母親に「スインが自分で辞めるというまで口を出さないように!」と伝えた。

学校で結果を待っているところに「来て欲しい!」という連絡が入った。

スインは球団事務所を訪ねた。オーナーから提案されたのは「プロになるにはボールの早さが必要だ。野球に女子が関わるのがいい、フロントで働いて欲しい」というものだった。スインは「自分のトライアウト映像観てくれましたか?野球は難しいスポーツです。ボールが速いかどうかだけでなく勝ことです!」と質問し、部屋を出た。「ちょっと待ってくれ!」と追いかけてきたスカウトに「私が野球選手に見えますか?」と問いかけて、去った。

この結果にシンテは「お前のお陰で、俺はここに居れた!」とスインに感謝した。

オーナーはトライアウトの映像を確認し、プロ2軍選手として採用され6000万ウオンで契約となった。母親はそれは払えないと言い・・・(笑)

スインが晴れてプロ球団のマウンドに上がり、スコアボードを見上げた!

感想:

韓国には女子独立リーグはない。1997年韓国プロ野球が主催する試合に先発登板したアン・ヒャンミ選手が唯一女子選手として参加した試合だそうで、監督はヒャンミ選手に触発される形で、脚本を作ったとのこと。

日本では2008年独立リーグで日本初のプロ野球選手となった吉田えりさんの記録があります。彼女はナックルで有名で、監督はこのエピソードを使ったと言っています。

女性の人権をテーマにした作品です。しかしこの作品は、主人公は誰にも文句を言わない、ひたすら自分で努力して、限界に挑戦していくところが特色。スインの人生は自分が決める!という言葉が人を勇気づけてくれます。

人の見方は変わる。監督、コーチ、仲間、家族、そして球団のオーナーさえもスインの生き方によって変わっていくところが見どころでした。夢を追うには、堅固な意思と血を吐くような努力が必要です!人はそれを見て変わる!

就職難、受験難やアイドル志望など細かいところに今の韓国事情が表現されていて、これを知るのも楽しみでした。

初監督作品にしてシネマスコープで撮る力がある。韓国の映画への情熱ではないでしょうか。

             ***

「哀愁」(1940)一日も早く平和が訪れますようにと、“哀愁”だけの映画ではない!

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恋愛映画の名作中の名作、NHKBSプレミアムで初観賞しました。公開が1940年で、物語は1939年9月から始まるという物語。それが戦時下の悲哀だという、驚きました。よくこんな映画が作れたなと!日本なら戦時意識の高揚ということで発禁でしょう。(笑) 木下恵介督は「陸軍」(‘44)で女々しい母親を描いたと陸軍に叱責され、浜松の田舎に雲隠れしました。(笑)

原作はロバート・E・シャーウッドで、第一次世界大戦時の悲恋物語。この物語の冒頭とラストシーンに、まさに今フランスの戦場に向かう老大佐の回想を付け加えて第二次世界大戦冒頭の物語にしたことで、哀愁物語となり平和の願いが込められた作品になっていると感じます。

監督:マービン・ルロイ、脚色:S・N・ベールマン ハンス・ラモウ ジョージ・フローシェル、撮影:ジョセフ・ルッテンバーグ、作曲:ハーバート・ストサート

出演:ビビアン・リーロバート・テイラー、ルシル・ワトソン、バージニア・フィールド、マリア・オースペンスカヤ、他。


哀愁(映画)/ 別れのワルツ(蛍の光) Waterloo Bridge (film)/ Auld Lang Syne 

あらすじ:

1939年9月3日、イギリスがドイツへ宣戦布告し、開戦により慌ただしくなるロンドンの街。子供たちが粛々と避難を開始している。

ロイ・クローニン大佐(ロバート・テイラー)はフランスへ赴くため車で駅へ向かう途中、ウォータールー橋へ立ち寄ると、運転手に橋の向こうで待つように告げて歩き出す。その手には幸運のお守りのビリケン人形があった。

この人形を手にした20年前の記憶が蘇る。

第一次大戦、連合軍の危機を救うべくカンブレーの戦に派遣されるロイ大尉(ロバート・テイラー)。のちにカンブレーの戦は戦史に名を遺す激戦地となるのですが・・・。

9月3日、ウォータールー橋を歩いて駅に急いでいたところ、突然の空襲警報で、地下鉄に避難。そこで出会ったのがバレリーナのマイラ・レスター(ビビアン・リー)。マイラはロイが戦場に行く人だと知って「戦争が憎い!」と言うと「戦争は興奮する」とロイ。彼女は心配して「御無事で!」とピリケン人形をプレゼントした。ロイはこの心遣いとマイラの美しさに心奪われてしまった!

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ロイはマイラの舞台「白鳥の湖」を観たのち、彼女を呼び出して、クラブで食事をした。ロイは「平和なときよりも戦時下の方が、出会いに生きる喜びを感じる」とマイラに近づくと、「高い代償よ!そのために殺し合うの?」とこれを諫める。ここでマイラが戦争を否定し、平和を主張するところにこの作品の隠れたテーマがあると思います。

ロイは「人生を楽しむためにだ」と言い直し、「私は未来を持てない。平和時なら出身校の話でもするだろうが、私たちは違う!」とマイラに迫る!ラストダンスを蛍の光で踊り、ふたりはキスをした。

しかしマライは素っ気なく「さよなら」と挨拶して劇団宿舎に戻った。

ロイは劇団のマダム(マリア・オースペンスカヤ)から夜中に帰ってきたことで叱責され、二度目は首にすると告げられた。しかしマイラはロイと素っ気ない別れをしたことを悔いて、親友のキディ(バージニア・フィールド)に胸の内を打ち明けた。

ふっと窓から雨の降る玄関を見ると、ロイのおろおろした姿が眼に入った。マイラにもう迷いはなく、走りだした。恋に燃えるビビアン・リーの美しさにうっとりです!

ロイは地雷のため出発が2日伸びたという。ロイは「結婚しよう!」とマイラを連れて連隊隊舎に急ぐ。結婚には連隊長の許可が必要だという。連隊長は踊り子との結婚を認める責任は取れないと、ロイの叔父である名誉連隊長(C・オーブリー・スミス)の許可を取れという。参謀長は「踊り子か!俺は断れてた!腹を括ってやれ!」と許可が下りた。

ふたりは指輪を買い花を持って教会に急いだ!ところが牧師さんに「3時以降の結婚式は禁止されている」と断られた。明日の結婚式を約束して、ふたりは別れた。ところがロイの出発が繰り上げとなり、マイラが駅に駆けつけたが、列車が蛍の光とともにホームを離れる瞬間だった。

劇団を首になったマライはキディとともに仕事を探しながら、戦場からのロイの手紙を唯一の希望を託す毎日だった。ある日、母に会って欲しいという手紙が届いた。マライはカフェで義母となるマーガレット(ルシル・ワトソン)を待つ間、ふと夕刊を見ると戦死欄にK・ロイの名があった。憔悴したマライはマーガレットにとまともな対応ができず、彼女は怒って帰っていった。

マライは落ち込み、病み、キディの世話になる有様。キディが娼婦として生活を支えてくれていたことを知り、自分も生きるためにと街頭に立った。

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ある日、駅に立っていたマイラは生きて帰ってきたロイに会った。驚いた!ロイは「待っていてくれたのか!」と笑顔で抱きしめてくれるが、マイラは複雑な気持ちだった。何度も告白しようとしたが、ロイの喜びように言い出せなかった。

ロイはマライを伴いスコットランドの大邸宅に帰還した。マーガレットは笑顔でふたりを迎えた。近所の人々が集まり盛大な帰還祝のパーティーが開かれた。

多くの参加者はマライを踊り子と見て、この家にふさわしくないと思っているなかで、ロイは終始マライと踊り、名誉連隊長もこれ見よがしにマライと踊ってくれた。マーガレットも怒って帰ったことを詫び良い友達になれると喜んでくれた。ロイは「いつも一緒にいれるから」とピリケン人形をマライに返した。しかし、マイラは自分が許せなくなり、真実をマーガレットに話して家を出た。

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マイラは霧のウォータールー橋を彷徨って軍のトラックに飛び込み自死した。駆けつけたロイが落ちていたピリケン人形を拾い上げた。

ロイ大佐はマイラの言葉「愛したのはあなただけ!」と思い出し、パリへと向かった。

感想:

公開日がダンケルク撤退作戦時に重なり、当時の人はこの結末に、ピリケンさんを胸にパリに向かった大佐が無事で、一日も早く平和が訪れますようにと祈ったでしょうね。“哀愁だけの映画”ではなかったのではないかと思います。

日本では1949年に公開されましたので、マライの境遇に泣き、原題はWaterloo Bridgeですが、邦題「哀愁」となったと思います。

戦闘シーンが全くない、空襲警報のサイレンのみでありながら、ロイとマライの運命的な出会いが戦争に振り回されるという、戦争の悲哀がしっかり伝わり、“蛍の光”が忘れられない作品でした。

この作品は一度見より二度見の方が、先を読んだようなマイラのセリフが胸を突き、泣けて、うまい脚本・演出だと思います。

ビビアン・リーの演技。出会って結婚を約束するまでの可憐で明るい笑顔の姿。一転して街の女に堕ち、ロイを再会しても、心が晴れない姿。ロイの邸宅で義母マーガレットに「お母さんは世間を知らなすぎですわ」と凄みを利かして喋る姿。全てを失い霧のウォータールー橋を彷徨する姿。これらの姿全てが心に残る作品でした。

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「あのこは貴族」(2021)階層社会から脱出して自分たちの生きる場所を掴みとろうとする女性たちの物語!

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原作は映画「アズミ・ハルカは行方不明」の原作者山内マリコさんの同名小説、未読です。主演が門脇麦さんと水原希子さん。これで観ることに決めました。

階層社会に苦悩する女性たちが、シスターフッド “対立するのではなく穏やかな連携”で自分たちが住む場所を得ていくころがなんとも感動的でした。

「アズミ・ハルコは行方不明」(”15)に比べて、女性の連携がより優しいものになっていて、男性は“女性の笑顔の恐ろしさ”を知るべしです。(笑) 私にとってはある種の衝撃的な作品でした。

監督・脚本:岨手由貴子、撮影:佐々木靖之、音楽:渡邊琢磨。

出演者:門脇麦水原希子高良健吾石橋静河山下リオ、他。


映画『あのこは貴族』予告編

あらすじ(ねたばれ):

2016年元旦の東京。東京中心部の夜景が美しい。開業医の榛原一家のホテルでの夕食会へ、三女の華子(門脇麦)がタクシーで急いでいた。運転手がホテルに着くと「うらやましい!」という。確かに高貴な方はこんな豪華なところで食事をするんですね。(笑) 華子が着くや「婚約者はどうした?」と聞かれる。「結婚できないというの」と言えば、「27歳になって、探しなさい!」と結婚を急かされる。「どんな人が良いの?」と聞かれて「普通の人!」という。この普通というのが分からない。私のような田舎者には華子の普通は異常。(笑)結婚は他人任せで、決められた人と結婚するのが普通のようだ。

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幼いころからの友人は皆さんすでに結婚している。結婚してないのは華子とバイオリニストして活躍する相葉逸子(石橋静河)だけ。逸子は「ドイツで活躍したい!」と言い「焦らないで良い、1回の見合いでうまくいくことないから!」と慰めてくれるが、華子は焦りを感じて、仲人や友人の勧める人に会って見るが、彼女の住む世界の人とは違っていて気が進まない。彼女は上級社会に住む人でなければやっていけない!

そんなとき姉の勧める義兄(中山崇)の顧問弁護士・青木幸一郎(高良健吾)と見合いをした。幸一郎はハンサムで物腰が柔らかくて優しそう。帰りに彼の「また会って欲しい」に、華子はこれで万事うまく行くと思った。

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逸子に会ってお見合いの結果報告。「幸一郎はバイオリンをやったことがある」と話すと、「凄い名家かも。私たちより上の階層よ!その家は政治家。地方から出てきて頑張っている人とは本質的に出会わない。東京は住み分けされているのよ!」と華子には良い縁組だと喜んだ。このセリフ、社会に階層があることを見せつける凄みがあります!

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幸一郎の運転する高級車で彼の家を訪ねた。家の家業はリースであることや家族の話を聞き、母親譲りの指輪をプレゼントされた。ベッドでいよいよ結婚かと指輪を見ていると彼のスマホが鳴り、それは女性からだった。女性の名は“時岡美紀”。

東京で働く美紀は2017年元旦、故郷富山の実家に帰省した。そこはさびれた街並みだった。家でくつろいでこれまでを振り返っていた。

高校を卒業して、親友平田里英(山下リオ)と東京の名門私立大学に進学した。入学早々、里英が「この大学には付属校からの入学者=内部者と受験で入学してきた外部者というスクールカーストがある」とを教えてくれた。二者の対立エピソードは映画「愚行録」(’17)に詳しく描かれています。

美紀と里英は学友とホテルのラウンジに行くと、内部者はそれ見よがしに高価なお茶を注文する。こいつらには永久に付いていけない!里英が「こいつらは貴族よ!」と叫ぶ。同級生に幸一郎が居て、講義ノートを貸したことがあった。

美紀は父親の失業で授業料が払えなくなり大学を中退し、キャバレーでホステスとして働いて凌いだ。キャバレーにやってきた幸一郎と再会し、結ばれた。彼の紹介でIT企業に勤めるようになり、ふたりの関係は10年も続いていた。美紀は大学や東京で働くことの悲哀、苦しさを嫌というほどに知っていた。しかし、さびれた何もない故郷?に帰る気はない。東京で生きるしかないが・・・。

久しぶりの帰省で高校の同窓会に参加した。誰とも話さないで里英を探した。やっと再会できて喜んだ。里英が「東京で企業する!あんた今の会社どうやって入った」と聞く。美紀は「客に紹介してもらった」と答えた。里英は騒ぐ男性たちを見て、「田舎ではあんなのが三代目なんがから!」と前向きに企業を考えていた。

男性が酔っぱらって近づいてくると、そのとき美紀のスマホに幸一郎からのメールが入った。「シャンペンパティーへの誘い」だった。

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華子は豪邸に招かれ、幸一郎と礼式にのっとった婚約を交した。幸一郎の両親から「調べさせてもらった。嫁にふさわしい!」と言われ、後で雄一郎に糺すと「興信所で調べた。うちは政治家だ、当たり前だ」という。華子にとってはもう一段高い階層の世界があることを知り“普通でない”違和感を持った。伝統的な美しい婚約の儀式を守ることが目的で、そこに喜びがあることとは全く違うように見えました!

幸一郎と美紀はシャンペンパティーに参加した。そこでは逸子がバイオリン演奏していた。美紀は演奏を終えた逸子が高く積み上げたカロンをつまみ食いしている姿に親しみを感じて、「今度演奏してもらえますか?」と声を掛けた。名刺を持っていなくて幸一郎の名刺を借り、その裏に自分の連絡先を書いて渡した。(笑)

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逸子は華子の幸せを願って、彼女を美紀に会せ、幸一郎に対する言持ちを話させることにした。ホテルのロビーラウンジに美紀を呼び出し、華子が幸一郎と婚約していることを話し、これを知った美紀の心情を聞いた。

美紀は「幸一郎とは10年来の付き合いだが、私をそういう女(ホステス)だと見ていたから」と自分は結婚する気はないと明かした。

逸子は「私の父親は不倫をしていて母はそれに目をつぶっているが、こういう場合私は別れられる女でありたいと思っている」と明らかに、「日本では女を分断する価値観がまかり通っているが、私はそれが嫌なんです」と華子に会わせる意義をはっきりさせた。

社会に揉まれてきた美紀は華子と対立して無為な時間を費やすより早く自分の住む場所を見つけたいとこの考え方に同意した。東京に住むために幸一郎を利用していたと言ってもよい。美紀は大学を中退したが社会でいろんな考え方を吸収し、痛みの分かる“賢い女性”に成長していた。そこに、華子がやってきた。

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華子は美紀にご挨拶代わりにと“お雛様展”のチケットを渡した。(笑)これに美紀は驚いた!自分の家ではお雛など飾らないし、同じ東京に居ながらこんなにもかけ離れた階層の人がいるのかと思った。美紀は「あなたは婚約しているんですね!私はつき合っていないし、婚約もしてない!」と応えた。

美紀は幸一郎の呼び出し「悲しいよ! 10年間も一緒にいて、私がどこの生まれかを聞かなかった!餞別!」と故郷のお土産を渡した。

そして里英に会って「企業するの?」と聞くと「コネがない!」という。「紹介できるやつと別れた」と告げると、「自分も経験がある。田舎から出てきて搾取されている」と。自転車にふたり乗りし、ふたりは歓喜しながら東京の街を走った!

華子は結婚したとたんに、幸一郎は政治家の叔父に駆り出され、ひとりぼっちになった。親族からの子供を産むプレッシャーに苦しむ毎日だった。

一方、里英は「このままで年を取ってしまう。時間がない、今しかない!」と一緒に郷里に帰って企業することを美紀に提案した。美紀は「待っていた!」とこれを受けた。突飛な展開に見えて、ふたりの関係、表情を見ていて、これが受け容れられるという演出がすばらしい。

幸一郎は父を亡くし、葬儀に内妻だった女性が現れ遺産を要求される。母は幸一郎に「あんたの出番!」と発破を掛け、幸一郎は抵抗もせず叔父の秘書となり政治活動にのめりこんでいく。華子は仕事を持ちたいと義兄に相談するが、これが同じ階層の人で、話にならない。母に相談すると「姑が往生するのを待ちなさい!」という。(笑)このセリフが最もこの階層の人の思考を表現しているように思えます。

華子が「夢はないの?」と幸一郎に聞くと「まともに家を継ぐだけでいい、そういう風に育った!お前もそうだろう」と言う。華子は涙が出てきた。この人に自分は理解してもらえないと。今の世襲政治家さんを観ていて、そうなんだろうと思いました。(笑)

華子はタクシーで病院からの帰り、自転車で走っている美紀を見つけて、タクシーを降りて美紀のアパートを訪れた。美紀の部屋はいろいろなもので飾られ美紀らしい部屋だった。うらやましいと思った。部屋から見える欠けた東京タワーもこれまで見たことのないもので、東京に違う場所があることを知った。美紀は「そっちの世界と、うちの地元。似ているね」とアイスキャンディーを食べながら東京の街を見ていた。

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美紀が「事情は知らないが、どこにいても、最高に楽しいと思える日があるよ!あんたの旦那さんとでも!」と話しかけた。「階層は違うが、想い悩んでいることは同じで、これにはお互い連携しなければ」という気持ちで。華子の覚悟が出来た。華子は夜の街をタクシーに乗らず“歩いて”自宅に帰った。

その夜、幸一郎に「会った最初の日に、観て欲しいといった映画を覚えている?」と絶対に答えがないことを知りながら聞いて、ふたりはビールを飲んで眠った。映画はオズの魔法使いで華子はドロシーの旅にでることにした。眠っている幸一郎は「まさかこれが・・」と気づかなかった。これが“普通の男性”ではないかと思っているのですか。(笑)

華子が離婚を口にすると「政治家は離婚で揉めるわけにはいかない」と義母から殴られた。 華子は家を出た。

美紀と里英は「これが見納め!」と東京をカメラに収め、故郷を東京っぽくすればいいだけと東京を後にした。

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1年後、華子は逸子のマネージャーとなり、逸子を車に乗せて信州?の演奏先に急いでいた。児童養護施設での演奏会。そこに「自分の選挙区」と訪れていた幸一郎と再会した。逸子の演奏を聞きながら、二階にいる幸一郎を見て微笑んだ!

感想:

シスターフッドで階層・格差世界は変えられる。

絶対に相いれない階層の華子と美紀が、互いの世界の生き苦しさを共有し、連携して、新しい世界に飛びだすという痛快な物語になっていた。物語は華子の人生を綴るように「東京」「部外」「邂逅」「結婚」「彷徨」という章立てで、実にテンポよく物語が展開し、分かりやすいセリフが秀逸でした。

岨手由貴子さんは本作が監督2作目ですが、その脚本・演出力はすばらしく、今後の作品を注目したいと思います。

映像で見せてくれる作品。

東京って住み分けさえていて、違う階層の人とは出会わないように出来ている」という逸子の言葉のように、見たことのない華子の住む階層世界を徹底的に映像とセリフで見せてくれ、この世界から華子が飛び出す瞬間が圧巻でした。

階層を表す映像、特に高級ホテルのラウンジや豪邸、美術品などがすばらしかった。そして階層社会で交わされるセリフが、「姑が往生するまで待て」など、絶妙で面白かった。

階層の生き苦しさから放たれるように変化していく感情が、自転車やタクシー、車の運転、食べ物(アイス、ジャム、マカロンの山)、名刺交換、雨の変化などで表現され、ユーモアがあって、テーマの本質をつく演出になっています。

キャステングと演技のすばらしさ。

東京に住む華子と富山から出てきた美紀。これを演じる門脇麦さんと水原希子さんは、観る前、これまでのイメージから役が逆ではないかと思いました。(笑)

ところが良家の門脇麦さんが普通の人になっていく。これに反して水原希子さんは東京に出てきたが故に、とても大きな洗練された決意をする人になっていくという、ふたりのキャステイングが役にぴったりだったことに驚いています。水原希子さんが主演のように見える作品でした。なにか賞をいただけるかもしれませんね!

さらに華子と美紀を会わせるというシスターフッドのコーディネーター役を勤める逸子役の石橋静河さん。バイオリニストで、ドイツで活躍しているという雰囲気をうまく出して、登場シーンは少ないが、納得させてくれる演技でした。

また、美紀の親友里英役の山下リオさん、明るくて“あの際どいセリフ”をペラペラと喋る肝っ玉お嬢さんらしい雰囲気があり、これも見事でした。作品の気風を表すように女性4人の演技が光っていました。

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「TOKYO!」(2008)

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ポン・ジュノ監督作をほぼ観終わって、この作品を選びました。本作はミシェル・ゴンドリーレオス・カラックスポン・ジュノという3人の監督が、東京の街を独自の視点で描くオムニバス作ということで、まさにコロナ禍、オリンピック組織委会長問題で揺れる今、観るべき作品だと挑んでみました。ゴンドリー監督は本作が初めて、カラックス監督作は「ボンヌフの恋人」(’91)のみです。


映画『TOKYO!』予告篇 『TOKYO!』movie_trailer

それぞれの作品タイトル:

ミシェル・ゴンドリー監督:生きることに思い悩む女性の体が徐々に木になっていく「TOKYO!/インテリア・デザイン」

■カラックス監督:水道から現れる謎の怪人が街を恐怖に陥れる「TOKYO!/メルド」

ポン・ジュノ監督:10年間引きこもっていた男が、恋する女性を追って外界に足を踏み出す「TOKYO!/シェイキング東京」

各々が30分程度の作品ですから、作品の感じ方は大きく観る人次第で、何を語っているのかな?と想像逞しくして楽しみました。

監督は“自作の色彩”をしっかり出しながら、大きな視点で東京を見てくれ、それでいて辛辣でした!

いずれの作品も謎が一杯でしたが、ぐっと胸を刺す忠告がカラックス監督、ユーモアたっぷりに夢をくれたのがポン・ジュノ監督、しかり東京を見て嘆いてくれたのがゴンドリー監督???

いずれの作品からも、「日本は内向的だ!」と、もっと外に開かれた社会を目指さないといけないと思いました。

「TOKYO!/メルド」

出演者:ドゥニ・ラバン、ジャン=フランソワ・バルメール石橋蓮司、他。

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突然銀座にドゥニ・ラバン扮するゾンビがゴジラのマーチに合わせマンホールから這い出して、手当たり次第通行人を攻撃し、花菜とお札を求めて闊歩し市民を驚かせる。警察に追われて地下道に潜り、旧軍の残した手榴弾で、東京の各所に出現してテロ攻撃、“下水道の怪人”と称される。警察に捕えられるが、この男の話す言葉がわからない。唯一言葉の分かるフランスの弁護士ボランズの通訳のもと裁判を実施。名前はメルド(糞)だという。(笑)テロの目的を糺すと「罪のない人が好きでない。人間が好きでない。自分は生きることが好きだ。日本人は汚らわしい!日本人の目は女性のあれに似ているから」「母が聖女でお前たちみんなで犯したから、私はお前たちの息子だ」とよく分からないことをいう。(笑) 法廷の外には裁判を擁護、反対派が現れ大混乱。判決は「死刑」だった。

3年後、突然に刑を執行。絞首刑だった!検視官たちが去ろうとすると、メルドが生き返り「次はニューヨーク公演だ」という。(笑)

                  

菜っ葉服と義眼がよく似合うドゥニ・ラバンの熱演でカラックス監督の描く世界に入り込めます!

メルドの出現で、政府は海外の渡航を突然制限し、赤いひげの外人が襲われる事件が頻発する。そして3年後に突然に絞首刑執行。日本人の人権に対する姿勢が問われ、また地下水道に眠る戦車や日章旗が描かれることから、日本人は大きな戦争犯罪を犯しながら俺のやった小さな殺人罪を問えるのかと言っているように感じられるのですが? 花と札束は増えたが人として大きく育ってないと言っているように!

「TOKYO!/インテリア・デザイン」

出演者:藤谷文子加瀬亮伊藤歩大森南朋、でんでん、妻夫木聡、他。

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大雨が続き約100万人が避難しているという夜、映画監督志望のアキラとその恋人ヒロコが車で、東京の友人アケミのアパートに、東京での職が見つかるまでと訪ねてきた。アケミのアパートはひと間で風呂はなかった。駐車場は中古家具店の前(閉店中)を厳守するように言う。アケミは「大きな会社に勤める者は小さなアパートに住む」という見栄っ張り子だった。

翌朝、ヒロコが暗いうちに起きると、もうアケミは出勤していた。アキラとヒロミはアパーツ探しに走るが、モダンなアパートを紹介されるが猫の死骸がベランダにあったり、借賃が高すぎる。仕事探しもラッピング程度の仕事で、採用されたのはアキラだけで、ヒロミは手先が不器用でダメだった。その後もアパートは見つからず、おまけに駐車違反でどこかに車を移動されてしまった。

何とか車を探し出してフィルムを取り出して映画試写会は実施出来たが、アキラは持て囃され、ヒロコは孤独感を感じる。

アケミに嫌味を言われアパートを追われるように出た。ヒロコは腹を空かせて職探しに出て、足が、腕が棒木となり、椅子となっていった。(笑)

夜中に音楽家大森南朋)が座って、座り心地を確認して家に持って帰った。ヒロコは音楽家に座って仕事をしてもらい、彼が居なくなると、風呂入り、好きなことをしている。こんなに自分が役に立つとは思わなかったという。

                  *

大雨の中での車の渋滞、車のウインドウから見る東京の街並み、猥雑な東京の街がよく描かれた、美しい映像だった。狭いアケミのアパート。アケミの仕事っぷりや薄っぺらな人との関係、大量の駐車違反車の集積所。現実をしっかり見て、東京の住み難さをよく描いています。ヒロコがここで住むためには、椅子となって、人の役に立ち好きなことができると満足していますが、若い人がこれで良いのでしょうか?

「TOKYO!/シェイキング東京」

出演者:香川照之蒼井優竹中直人荒川良々、他。

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私(香川照之)はひとり暮らしで10年間、TVも観ず世間と付き合わず、父から送金を受けて働かず、引きこもりしている。そのせいか、部屋はしっかり整理されて見事です。十年分のピザ箱が積み上げられている。土曜日にピザをデリバリーしてもらうぐらいで人に会うことはない。運動を兼ねてご飯は立って食べる!うんこはロール紙の芯で手に痣が出来るほどに時間を掛けて、よい夢を見る!(笑)

ある土曜日、可愛い女の子(蒼井優)がピザを配達してくれた。11年ぶりに目を合わせた!ぐらぐらと胸騒ぎがしたが、地震だった!彼女が失神。どうしていいのか分からなかったが、腕にいくつものボタン(針のつぼ)が書いてある。ガーターにも絵が描いてある。ボタンを押すと彼女は「完璧!」と立ち上がり、帰っていった。

もう一度彼女に会いたいと2日間考えて、ピザ店に電話すると店長(がやってきて、配達員が皆引きこもりだという。

自分で出掛けるしかないと、白いスニーカーで外にでた。眩しい!渋谷のスクランブル交差点にも誰ひとり人がいない。ピザはロボットによって配達されていた。

地震が起きると一斉に人が建物から出てきて道路は一杯になるが、地震が収まるとまた人がいなくなる。

家にいる彼女を見つけて「今出ないと、一生出れないよ!」と呼び出し、LOVEのボタンを押すと彼女がうれしように笑った!するとまた地震

                 

会話がほとんどないが香川照之さんの仕草で孤独の寂しさ、不安、彼女に会ったときの驚き、喜びが分かるという、ユーモアたっぷりの演出でした。ピザにスニーカーは監督作では定番のグッズ。めっちゃめちゃに可愛い蒼井ちゃん!ペ・ドゥナ以上でした!

ポン・ジュノ監督にとって日本人は優秀で、地震が発生すれば一斉に同じ行動がとれが、引っ込み思案な国民。広い世界に出てきなさいという監督のエールだと思っています。まるで天岩戸神話のようでした!

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「あの頃。」(2020)“一生ものの友”と“心の休まるところ”がある青春!

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今泉力哉監督作ということで楽しみにしていました。いろいろな愛の形、片思いをユーモアをもって描き愛の本質を問うてくれますが、本作では“ハロー!プロジェクト”に魅せられ、アイドルに青春のすべてを捧げ、仲間たちと熱く語り合ったアイドルオタクたちのバカバカしくもかけがえのない日々が描かれます。 

アイドルオタクのバカバカしい話どころか、宇佐見りんさんの著書「推し、燃ゆ」芥川賞を受賞するという、今日ではしっかり社会に認められるに至っている話なんです!(笑)

原作は劔樹人さんの自伝的コミック「あの頃。男子かしまし物語」、未読です。

脚本は「素敵なダイナマイトスキャンダル」の富永昌敬さん、撮影は「愛がなんだ」「いちごの歌」の岩永洋さんです。これは観ないわけにはいきません!

出演者は松坂桃李・仲野太賀・山中崇若葉竜也・芹澤興人・コカドケンタロウ・大下ヒロト・木口健太・中田青渚さん、他。

前段でアイドルオタクのバカバカしさ?を笑って、後段でオタクたちの友情に泣いて、ラストで「あのころ。」が在って今の俺があるんだ!と思わせてくれるユーモアがあって、切なくて、暖かい作品でした。

ハロプロオタク6人の面子。最初は胡散臭いやつらだと思っていましたが、ラストでは名前も性格もしっかり覚えて、みんな愛すべきやつらで、もっと観ていたいと思わせてくれるような作品でした!出演者のみなさん、それほどに演技が嵌っていました!


松坂桃李主演!映画『あの頃。』予告編

あらすじ(ねたばれ):

2004年、大坂。音楽を志す劔樹人松坂桃李)はバンドチーフから「アルバイに一生懸命でこっちがダメ」とダメ出しされて、自室に篭っているところに「これでも観ておけ」とDVDが差し入れられた。これが「松浦あやの“桃色片思い”」だった。観たとたんに口ずさみ涙が出てきた。好きなことに没頭せよ!です。自転車CDショップに走り、「ハロー!プロジェクト」に彩られたコーナーを物色していると、店員のナカウチ(芹澤興人)が「見て!」と「ハロプロあべの支部」のイベントちらしを差し出した。

劔は早速ライブホール“白鯨”で行われるイベントに参加してこのバカバカしいオタクトークの「男の最高の趣味や!」に笑った!終わって、「打ち上げ会に!」と誘われ、居酒屋でまたまたオタクの話をきく。最初に「挨拶せい!」と声を掛けてくれたのがコズミン(仲野太賀)だった。石川梨華推しのヒロ(山中崇)がリーダーだという男たち6人。実際は誰がリーダーなのか分からない連中だった。

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イトウ(コカドケンタロウ)の部屋に集まり、ライブイベントのDVD鑑賞や推しアイドルの話。劔はオタクグッズの製作を一手に引き受けている西野(若葉竜也)から「お前はこれ!」と松浦あやのポスターを貰い、嬉しくて自室に飾り、グッズを揃えた。

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支部のイベントに大学の女友達、奈緒(片山友布)と靖子(中田青渚)を誘った。これが縁で大学祭に参加することになった。「無職のおっさんの集まりでこんなイベントは受けん!」と思っていたところ、大受け!もうそんな時代だったんだ!メンバーは大喜びで、学生と一緒に藤本美貴「ロマンチック浮かれモード」を唄って大盛り上がりだった。(笑)

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メンバーはもう一心同体、風呂に入って盛り上がった。「俺たちには卒業式はない!中学10年生がずっと続けばいい!」と、こんな集まりだった!

コズミンに「目を見て、ありがとうと言って来い!」と松浦あやの握手会に行くよう勧められた。劔はあや(山崎夢羽)に会った。しかし何か物足りなさを感じた!「俺は音楽と向き合うことから避けていた」と気付いた。

メンバーにバンドやることを提案し、西野の知合いで藤本美貴推しのアール(大下ヒロト)を加え7人の「恋愛研究会」というバンドを作った。イベントでは揃いのキャップとTシャツでモーニング娘恋INGを熱唱し遅い青春謳歌していた。

劔は石川梨華卒業コンサートに参加し、「これで卒業です!」という姿に感動し「梨華ちゃん!」と声を出して応援し、涙した。「アイドルには卒業があるのか!俺は・・」と思った。

チケットを贈ってくれた中学校の先生(西田尚美)には「素敵な卒業式でしたね。また!」と声を掛けられ、握手して別れた。アイドルの卒業式には摩訶不思議な魅力があるんだ!

コズミンがアールの恋人奈緒にちょっかい出したことで、メンバーも絡んで揉めに揉めたが、コズミンのみっともない「スイマセンデシタ」という謝罪で決着した!メンバー全員が絡んで決着したところがいい。(笑) 

 こんな日々が流れるなかで、それぞれが人生の中でハロプロと同じくらいの大切なものを見つけていった。

2008年、東京。劔はナカウチの勧めで一緒に東京に出てきて、ライブハウスで働きながらベーシストとしての音楽活動を開始していた。

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バンドメンバーに正式に加えられた日、コズミンのネット呟きで、ガンであることを知った。「あいつは何している?」と思った。

コズミンは相変わらずのアイドルオタクで、風俗店でガンをネタに値切っていた。(笑) メンバーが駆けつけ本人の望を聞いて、恋愛研究会イベントで生前葬を行い、本人が望むブロンズ像を贈ることになった。ずっとオタクでいたいらしい!

当日、コズミンは松場杖でやってきて白装束で、定番の「恋ING」をボーカルとして熱唱した。そして棺に入り「人生で一番楽しいのは、皆で過ごしたあの頃。切なかった!東京で何してる?アイドルは幾つになっても可愛い!」という。劔はこれを聞いて泣いた!

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 コズミンの最期は看護師にイヤホーンを着けてもらって「恋ING」を聞きながら逝ってしまった。

感想:

好きなことに熱中し、そこで知り合った仲間たちとの“あの頃”。後段のアイドルオタクのままのコズミンとアイドルオタクを卒業した他のメンバーが生前葬で“あの頃”の想いを語るシーン。これがテーマでした!

アイドルオタクのままのコズミンの人生はつまらないものであったのかと言うと決してそうではない。今の時代にこんな葬儀を行って貰える人は珍しいでしょう。僅かな時間ではあったが一生ものの友を得て、心の休まるところがあるという、アイドルオタクであったが故の、すばらしい人生であったと思います。

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アイドルを終えて次の人生に向かっている劔たち。メンバーの名前を聞けばあの頃を思い出し、今が一番楽しいと感じ、“あの頃”が励みになるという未来に繋がる“あの頃”、いずれにとっても忘れられない青春の記憶です。

このまま続いて欲しいと思えるハロプロあべの支部の6人。まさか松坂さんがと思わせてくれるオタク化けぶりがすばらしい。次の推しが仲野さん。短気でけちなお騒がせオタクであったが、後半では主役に躍り出て、精一杯オタクで生きる姿は、愛しい人生を全うしたいと願う気持ちが伝わる演技でした。「すばらしき世界」に次ぐ本作で、大きな俳優さんに育ったなと思いました。

もうひとり終始松坂さんと行動するナカウチ役の芹澤さんの暖かい雰囲気が、“オタク”と言う莫れと作品の品格を保証しています!(笑)

 私のブログ説明「宮﨑あおいさんを応援します」。この面子と同じ想いです!(笑)このころ。2005年、NANAに嵌りました!そして「純きら」、「篤姫」・・。 “推し“の意義をしっかり描いてくれた作品、すばらしい作品でした。

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「ヘレディタリー 継承」(2018)ミニチュアで作った物語が現実になっていく家族崩壊物語!

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アリ・アスター監督の長編レビュー作、“現代ホラーの原点”と言われる話題作をWOWOWで観賞しました。祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われて崩壊していく一家を描いたホラー作品です。

ホラー作品をあまり観ないのでホラー作品のなかでの評価づけをすることはできませんが、観た後に尾を引くという恐怖の重さとストーリーの緻密さ、深みに圧倒されました。絶賛されているとおりの素晴らしい作品です。「ミッドサマー」(2020)に繋がる作品になっていて、観ておくべき作品だと思います。

家系の中に流れる血の秘密を隠して家族が崩壊する様に、家族にとって生きていくなかで何が大切かを感じました。

監督・脚本:アリ・アスター、撮影:パウエパヴェウ・ポゴジェスキー、音楽:コリン・ステットソン。

出演者:トニ・コレット、ミリー・シャピロ、アレックス・ウルフ、アン・ダウト、ガブリエル・バーン、他。

ねたばれを見ないで観賞することをお勧めします。


【超恐怖】これが現代ホラーの頂点 11.30公開『ヘレディタリー/継承』90秒本予告

あらすじ(ねたばれ):

2018年4月3日、長い闘病生活の末、エレン・リーは78歳で娘アニー(トニ・コレット)の家で死去。夫と長男はすでに故人。娘の夫はスティーブ・グラハム博士(ガブリエル・バーン)。子供は長男のピーター(アレックス・ウルフ)と娘のチャーリー(ミリー・シャピロ)です。

グラハム家で葬儀場への出発にあったて、スティーブが自室に寝ているピーターを起こし、庭に作られた小さな小屋(ツリーハウス)でエレンを偲んで出てこない娘チャーリーを迎えに行く。このシーンに親子関係が現れており、チャーリーはエレンに特別に可愛がられていたようだ。

葬儀でアニーが挨拶をした。「母は秘密主義で内向的でしたが、こんなにたくさんの人が・・・」。このときチャーリーはチョコを食べていて、スティーブが「ナッツは入ってないな!」と確認をする。彼女には“ナッツアレルギー”がある。

葬儀後の日々。ミニチュア・ジオラマ作家のアニーは「小さな世界アニー・リー」の新作発表に取り掛かった。今は終末医療のシーンだった。

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アニーがチャーリーの部屋に行くとリーの絵を描いている。チャーリーは「お婆ちゃんに男の子になれと言われた」という。アニーも「ママもそうだった。あなたは赤ちゃんのとき泣かなかった!」と答えた。本棚に「サトニ」の背表紙の本があるのを見た。

アニー母の遺物を整理していると遺言が出て来た。「どうか許して、多くを言えなかった。失うものを嘆かないで!“犠牲は恩恵”のためにある」。アニーはこれを見て怒り、整理を止めた。

チャーリーの奇行が始まった。チャーリーを演じるミリー・シャピロの感情を無くした表情にぞっとさせられます。

授業を聞かず、ミニチュアで遊び、絵を描く。放課後撃たれた鳩の死骸の首を斬り落とす。彼女は絆かったが遠くからこの行為を見ている人がいた。

ピーターは授業には興味がない、そこに「マニファナやるか!」のメールが来る。これに嵌っていた

アニーはアトリエでジオラマ製作に熱中。「リーの墓が荒らされた!」という電話連絡をスティーブが受けたが、アニーには言わなかった。

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その夜アニーは「映画を観てくる」と夫に話し、実はグループセラピーの会に参加した。「2年前に、強制的にこういう会に出た。救われました」と言い「母は解離性同一性障害でした。父は自分が赤ちゃんのころ餓死、妄想性のうつ症。兄は統合失調症で母の寝室で首つり自殺“母に身体の中に何者かを招き入れた”と言った。母は人を操るので夫が不干渉ルールを定め、長男は母に近づけなかった。その替わりに娘を差し出した。罪悪感で苦しんでいます。責められています」と告白した。

すこし丁寧に書きました。このなかに、あとで気付くのですが、物語の始まりでこんなにも沢山の伏線が仕込まれ、これが逐次明かされていく展開は鳥肌ものです!怖い!

チャーリーに異変が続く。森に入るとお婆ちゃんが見える。ミニチュアに触っていて念波が走る。窓に光は走る・・・。

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ピーターにパーティの誘いが入り、出かけようとすると、アニーは嫌がっているのにアニーが連れていってという。アニーには「済まなかった」という気持ちがあった。

パーティで、ピーターは友達に誘われ二階でマリファナを喫っていた。チャーリーはひとりぼっちで、ケーキに手を出し、それにココナッツが入っていた。激しく痙攣するチャーリーを車に乗せ病院に走行中、道路上の障害物で急ブレーキを掛けると車がサイドスリップし、窓から顔を出していたチャーリーの首が電柱にぶつかり吹っ飛んだ!ピーターが驚くが、何を想ったが納得したようにそのまま家に戻り、チャーリーの遺体を残したまま自室で眠れない夜を過ごした。朝になって、出かけるアニーの悲鳴が上がった!

葬儀の後、スティーブがチャーリーの部屋に入り壁がサザスであることに気づき、ツリーハウスでチャーリーの描いた絵「犬や猫に追われる鳩。歯との首に王冠が乗っている」を見た。アニーもこの部屋で眠っていた。

ピーターは学校でマリファナに誘われ、夜、自転車で帰宅する。誰かにこの姿を監視さられている。アニーがこれを見た。次の日、アニーがカウンセリングに出掛けると、「私も苦しんでいる。相談して!」と連絡先を渡された。「ジョーン(アン・ダウト)」とあった。

郵便受けに「著名な霊能力者との一夜!死者からのメッセージ」というパンフレットが届き、アニーがジョーンを訪ねた。玄関マットに見覚えがあった。チャーリーの遺体の状況を話すと「ピーターとの関係は?」と聞くので、「当時自分は夢遊病者で、ある夜、ふたりを道連れに自殺しようとしたが、ピーターに気付かれそれ以来喧嘩ばかり」と話をした。この日はこれで終わった。

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アニーがジオラマにチャーリーの事故現場を付け加えたことに夫が「ピーターの気持ちも考えたら・・」と注意した。夕食の席で、アニーとピーターがどちらがチャーリーを殺したかで大喧嘩になった。この時のトニ・コレットの形相が怖い! アニーは席を蹴ってアトリエに篭った。

アニーはジョーンを訪ね、チャーリーを呼び戻してもらった。が、途中で怖くなり止めてもらった。「自分でやってみなさい!」とローソクと呪文が書かれた紙が渡され「あんたがやったんでしょう?」と暗示を掛けられた!

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アニーが寝室で寝ようとして、窓に虫がぞろぞろと這ってるのが目に入った。この虫がチャーリーの顔にたかっているように思え、ピーターの部屋に入って行った。ふたりがぶつかった。ピーターが「あんたは何故、俺を殺そうとする」という。アニーは「救うためよ!」と泣いた。アニーはピーターを産みたくなかった。流産をしようとしたがかなわなかった。

アニーは嫌がるピーターとスティーブを説得し、居間でチャーリーを呼び出す儀式をすることにした。激しくが泣く。部屋が振動するなかで、ローソクが突然吹き上がり、チャーリーが現れたと思ったが、ふたりの「止めろ!!」コールで、この儀式を止めた。

ピーターが授業中に念波を感じるようになった。アニーは個展を目前に控えているにも関わらずジオラマを壊してしまった。学校からの電話にも出なかった。スティーブが学校にピーターを迎えにいった。

家に戻ったスティーブが異臭に気付き、アニーのアトリエを見てアニーの異常さに気付いた。

夜、アニーの夢遊病が始まりピーターの部屋に入り諍いになる。チャーリーの部屋でピーターの顔が描かれた絵を発見、この絵に油をかけて燃やそうとするが、自分が火傷して、焼却できなかった。

アニーはこのことをジェーンに相談しようと訪ねるが不在だった。玄関のマットに見覚えがあり家に取って返し、リーの遺品を調べた。するとオカルト教団のバイブルがあり「招換」というページがマーキングされていて「地獄の王、ベイモンは儀式は完了後、定められた者の身体に残る。王の臣下への財産は(絵)」、さらにアルバムにはリーがジョーンと並んで写っていたグラハム一家の写真もあった。この写真が信徒によって祈られている。

アニーはアルバムを抱え、屋根裏に上がるとそこにリーの首がない遺体がオカルト教団の紋章とともにあった。

ティーブは友人にアニーの状態がおかしいので調べて欲しいと墓の状態を調べて貰った。友人から暴かれた墓の写真が送られてきた。

ピーターは教室で念波を感じ外に出るとジェーンから「お前を追い払う!サンタニー!ピーター!肉体から出ていけ!」と大声で叫ぶ。ピーターは教室に戻り顔を机にぶつけ気を失った。学校から連絡があり、スティーブが家に連れ戻した。

ティーブとアニーのふたりで車からピーターを降ろし部屋に寝かした。アニーが「屋根裏にリーの遺体がある、調べて欲しい」とスティーブに頼むと「あんたが墓から連れてきた。いい加減にして警察に委ねるべきである」と渋った。が、一応確認した。そしてこの写真を焼いて欲しいと燃やそうとして焼却できなかった写真を「焼いて欲しい!」とストーブの前で油を振りまいて渡した。スティーブが渋るのでストーブの火を点けた。スティーブは黒焦げに焼けた!

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ツリーハウスの光で目覚めたピーターが居間でスティーブの遺体を見て驚いているところに、アニー(?)が近付いてくる。屋根裏に逃げた。そこでアニーが首を吊って切り落とす姿、全裸の男女の姿が眼に入り、庭に飛び降りた。

ピーターの身体に光を放つ虫が留まり、アニーの亡霊に導かれツリーハウスに入ると、首のないリーとアニーが傅くなかで戴冠式が行われ、ベイモン王となった。ベイモン王は地獄の8王のなかのひとり。オカルト教団信者のベイモン万歳の声が響いた!

ピーターがベイモン王になり、これに傅く教団のミニチュアが残されていた!

感想:

ぐだぐだと書きましたが、精巧に作られた伏線の繋がりを追うためでした。記録に残しておかないと分からなくなります。さほどによく出来たドラマです。

葬儀挨拶、遺書、遺品、セラピーでの懺悔、霊媒師への告白。これらがチャーリーの死や母の墓地暴き、アニーとピーターの確執の謎へと繋がっていく。この謎をなぞるように音響や犬の鳴き声、意味不明な絵などを通して恐怖に陥れ、それがクライマックでは別次元のオカルト的恐怖の世界へと誘ってくれます。

いくつかの疑問が解けないままですが、これを探す中で、深みにはまっていきます!眠れなくなりますよ!(笑)

グラハム家は代々オカルト教団信者で、教義に基づき長男を悪魔に差し出し、その犠牲の上で繁栄を保ってきた。しかし、アニーの反逆でこの継承が断たれ、教団の怒りに触れて滅亡するという話でした。

冒頭、ツリーハウスからミニチュア・ジオラマ、家族の住む部屋へと映像が移動し、物語の進展にともないこれが逆に動いてツリーハウスでピーターがベイモン王となりグラハム家が滅亡する。

アニーはグラハム家の安泰を願って、母リーの魂を鎮めるよう、ピーターがベイモン王になるジオラマを製作しようとした。母の魂を鎮めるため“スプリチュアルリズム”に関する論文に基づき綿密に母の魂を入れるようスタートしながら、チャーリーの死、ピーターとの確執から、精神が侵されていき、最後にはジオラマを破壊してしまう。まさかジオラマの世界が現実のものになるとは思わなかった。家族を失ったアニーの悲しみが伝わります。

トニ・コレットのどんどん怖くなっていく怖い顔とミリー・シャピロの無表情な顔に圧倒される作品でした。

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