映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「あの頃。」(2020)“一生ものの友”と“心の休まるところ”がある青春!

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今泉力哉監督作ということで楽しみにしていました。いろいろな愛の形、片思いをユーモアをもって描き愛の本質を問うてくれますが、本作では“ハロー!プロジェクト”に魅せられ、アイドルに青春のすべてを捧げ、仲間たちと熱く語り合ったアイドルオタクたちのバカバカしくもかけがえのない日々が描かれます。 

アイドルオタクのバカバカしい話どころか、宇佐見りんさんの著書「推し、燃ゆ」芥川賞を受賞するという、今日ではしっかり社会に認められるに至っている話なんです!(笑)

原作は劔樹人さんの自伝的コミック「あの頃。男子かしまし物語」、未読です。

脚本は「素敵なダイナマイトスキャンダル」の富永昌敬さん、撮影は「愛がなんだ」「いちごの歌」の岩永洋さんです。これは観ないわけにはいきません!

出演者は松坂桃李・仲野太賀・山中崇若葉竜也・芹澤興人・コカドケンタロウ・大下ヒロト・木口健太・中田青渚さん、他。

前段でアイドルオタクのバカバカしさ?を笑って、後段でオタクたちの友情に泣いて、ラストで「あのころ。」が在って今の俺があるんだ!と思わせてくれるユーモアがあって、切なくて、暖かい作品でした。

ハロプロオタク6人の面子。最初は胡散臭いやつらだと思っていましたが、ラストでは名前も性格もしっかり覚えて、みんな愛すべきやつらで、もっと観ていたいと思わせてくれるような作品でした!出演者のみなさん、それほどに演技が嵌っていました!


松坂桃李主演!映画『あの頃。』予告編

あらすじ(ねたばれ):

2004年、大坂。音楽を志す劔樹人松坂桃李)はバンドチーフから「アルバイに一生懸命でこっちがダメ」とダメ出しされて、自室に篭っているところに「これでも観ておけ」とDVDが差し入れられた。これが「松浦あやの“桃色片思い”」だった。観たとたんに口ずさみ涙が出てきた。好きなことに没頭せよ!です。自転車CDショップに走り、「ハロー!プロジェクト」に彩られたコーナーを物色していると、店員のナカウチ(芹澤興人)が「見て!」と「ハロプロあべの支部」のイベントちらしを差し出した。

劔は早速ライブホール“白鯨”で行われるイベントに参加してこのバカバカしいオタクトークの「男の最高の趣味や!」に笑った!終わって、「打ち上げ会に!」と誘われ、居酒屋でまたまたオタクの話をきく。最初に「挨拶せい!」と声を掛けてくれたのがコズミン(仲野太賀)だった。石川梨華推しのヒロ(山中崇)がリーダーだという男たち6人。実際は誰がリーダーなのか分からない連中だった。

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イトウ(コカドケンタロウ)の部屋に集まり、ライブイベントのDVD鑑賞や推しアイドルの話。劔はオタクグッズの製作を一手に引き受けている西野(若葉竜也)から「お前はこれ!」と松浦あやのポスターを貰い、嬉しくて自室に飾り、グッズを揃えた。

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支部のイベントに大学の女友達、奈緒(片山友布)と靖子(中田青渚)を誘った。これが縁で大学祭に参加することになった。「無職のおっさんの集まりでこんなイベントは受けん!」と思っていたところ、大受け!もうそんな時代だったんだ!メンバーは大喜びで、学生と一緒に藤本美貴「ロマンチック浮かれモード」を唄って大盛り上がりだった。(笑)

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メンバーはもう一心同体、風呂に入って盛り上がった。「俺たちには卒業式はない!中学10年生がずっと続けばいい!」と、こんな集まりだった!

コズミンに「目を見て、ありがとうと言って来い!」と松浦あやの握手会に行くよう勧められた。劔はあや(山崎夢羽)に会った。しかし何か物足りなさを感じた!「俺は音楽と向き合うことから避けていた」と気付いた。

メンバーにバンドやることを提案し、西野の知合いで藤本美貴推しのアール(大下ヒロト)を加え7人の「恋愛研究会」というバンドを作った。イベントでは揃いのキャップとTシャツでモーニング娘恋INGを熱唱し遅い青春謳歌していた。

劔は石川梨華卒業コンサートに参加し、「これで卒業です!」という姿に感動し「梨華ちゃん!」と声を出して応援し、涙した。「アイドルには卒業があるのか!俺は・・」と思った。

チケットを贈ってくれた中学校の先生(西田尚美)には「素敵な卒業式でしたね。また!」と声を掛けられ、握手して別れた。アイドルの卒業式には摩訶不思議な魅力があるんだ!

コズミンがアールの恋人奈緒にちょっかい出したことで、メンバーも絡んで揉めに揉めたが、コズミンのみっともない「スイマセンデシタ」という謝罪で決着した!メンバー全員が絡んで決着したところがいい。(笑) 

 こんな日々が流れるなかで、それぞれが人生の中でハロプロと同じくらいの大切なものを見つけていった。

2008年、東京。劔はナカウチの勧めで一緒に東京に出てきて、ライブハウスで働きながらベーシストとしての音楽活動を開始していた。

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バンドメンバーに正式に加えられた日、コズミンのネット呟きで、ガンであることを知った。「あいつは何している?」と思った。

コズミンは相変わらずのアイドルオタクで、風俗店でガンをネタに値切っていた。(笑) メンバーが駆けつけ本人の望を聞いて、恋愛研究会イベントで生前葬を行い、本人が望むブロンズ像を贈ることになった。ずっとオタクでいたいらしい!

当日、コズミンは松場杖でやってきて白装束で、定番の「恋ING」をボーカルとして熱唱した。そして棺に入り「人生で一番楽しいのは、皆で過ごしたあの頃。切なかった!東京で何してる?アイドルは幾つになっても可愛い!」という。劔はこれを聞いて泣いた!

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 コズミンの最期は看護師にイヤホーンを着けてもらって「恋ING」を聞きながら逝ってしまった。

感想:

好きなことに熱中し、そこで知り合った仲間たちとの“あの頃”。後段のアイドルオタクのままのコズミンとアイドルオタクを卒業した他のメンバーが生前葬で“あの頃”の想いを語るシーン。これがテーマでした!

アイドルオタクのままのコズミンの人生はつまらないものであったのかと言うと決してそうではない。今の時代にこんな葬儀を行って貰える人は珍しいでしょう。僅かな時間ではあったが一生ものの友を得て、心の休まるところがあるという、アイドルオタクであったが故の、すばらしい人生であったと思います。

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アイドルを終えて次の人生に向かっている劔たち。メンバーの名前を聞けばあの頃を思い出し、今が一番楽しいと感じ、“あの頃”が励みになるという未来に繋がる“あの頃”、いずれにとっても忘れられない青春の記憶です。

このまま続いて欲しいと思えるハロプロあべの支部の6人。まさか松坂さんがと思わせてくれるオタク化けぶりがすばらしい。次の推しが仲野さん。短気でけちなお騒がせオタクであったが、後半では主役に躍り出て、精一杯オタクで生きる姿は、愛しい人生を全うしたいと願う気持ちが伝わる演技でした。「すばらしき世界」に次ぐ本作で、大きな俳優さんに育ったなと思いました。

もうひとり終始松坂さんと行動するナカウチ役の芹澤さんの暖かい雰囲気が、“オタク”と言う莫れと作品の品格を保証しています!(笑)

 私のブログ説明「宮﨑あおいさんを応援します」。この面子と同じ想いです!(笑)このころ。2005年、NANAに嵌りました!そして「純きら」、「篤姫」・・。 “推し“の意義をしっかり描いてくれた作品、すばらしい作品でした。

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