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「ヘレディタリー 継承」(2018)ミニチュアで作った物語が現実になっていく家族崩壊物語!

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アリ・アスター監督の長編レビュー作、“現代ホラーの原点”と言われる話題作をWOWOWで観賞しました。祖母の死をきっかけに、さまざまな恐怖に見舞われて崩壊していく一家を描いたホラー作品です。

ホラー作品をあまり観ないのでホラー作品のなかでの評価づけをすることはできませんが、観た後に尾を引くという恐怖の重さとストーリーの緻密さ、深みに圧倒されました。絶賛されているとおりの素晴らしい作品です。「ミッドサマー」(2020)に繋がる作品になっていて、観ておくべき作品だと思います。

家系の中に流れる血の秘密を隠して家族が崩壊する様に、家族にとって生きていくなかで何が大切かを感じました。

監督・脚本:アリ・アスター、撮影:パウエパヴェウ・ポゴジェスキー、音楽:コリン・ステットソン。

出演者:トニ・コレット、ミリー・シャピロ、アレックス・ウルフ、アン・ダウト、ガブリエル・バーン、他。

ねたばれを見ないで観賞することをお勧めします。


【超恐怖】これが現代ホラーの頂点 11.30公開『ヘレディタリー/継承』90秒本予告

あらすじ(ねたばれ):

2018年4月3日、長い闘病生活の末、エレン・リーは78歳で娘アニー(トニ・コレット)の家で死去。夫と長男はすでに故人。娘の夫はスティーブ・グラハム博士(ガブリエル・バーン)。子供は長男のピーター(アレックス・ウルフ)と娘のチャーリー(ミリー・シャピロ)です。

グラハム家で葬儀場への出発にあったて、スティーブが自室に寝ているピーターを起こし、庭に作られた小さな小屋(ツリーハウス)でエレンを偲んで出てこない娘チャーリーを迎えに行く。このシーンに親子関係が現れており、チャーリーはエレンに特別に可愛がられていたようだ。

葬儀でアニーが挨拶をした。「母は秘密主義で内向的でしたが、こんなにたくさんの人が・・・」。このときチャーリーはチョコを食べていて、スティーブが「ナッツは入ってないな!」と確認をする。彼女には“ナッツアレルギー”がある。

葬儀後の日々。ミニチュア・ジオラマ作家のアニーは「小さな世界アニー・リー」の新作発表に取り掛かった。今は終末医療のシーンだった。

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アニーがチャーリーの部屋に行くとリーの絵を描いている。チャーリーは「お婆ちゃんに男の子になれと言われた」という。アニーも「ママもそうだった。あなたは赤ちゃんのとき泣かなかった!」と答えた。本棚に「サトニ」の背表紙の本があるのを見た。

アニー母の遺物を整理していると遺言が出て来た。「どうか許して、多くを言えなかった。失うものを嘆かないで!“犠牲は恩恵”のためにある」。アニーはこれを見て怒り、整理を止めた。

チャーリーの奇行が始まった。チャーリーを演じるミリー・シャピロの感情を無くした表情にぞっとさせられます。

授業を聞かず、ミニチュアで遊び、絵を描く。放課後撃たれた鳩の死骸の首を斬り落とす。彼女は絆かったが遠くからこの行為を見ている人がいた。

ピーターは授業には興味がない、そこに「マニファナやるか!」のメールが来る。これに嵌っていた

アニーはアトリエでジオラマ製作に熱中。「リーの墓が荒らされた!」という電話連絡をスティーブが受けたが、アニーには言わなかった。

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その夜アニーは「映画を観てくる」と夫に話し、実はグループセラピーの会に参加した。「2年前に、強制的にこういう会に出た。救われました」と言い「母は解離性同一性障害でした。父は自分が赤ちゃんのころ餓死、妄想性のうつ症。兄は統合失調症で母の寝室で首つり自殺“母に身体の中に何者かを招き入れた”と言った。母は人を操るので夫が不干渉ルールを定め、長男は母に近づけなかった。その替わりに娘を差し出した。罪悪感で苦しんでいます。責められています」と告白した。

すこし丁寧に書きました。このなかに、あとで気付くのですが、物語の始まりでこんなにも沢山の伏線が仕込まれ、これが逐次明かされていく展開は鳥肌ものです!怖い!

チャーリーに異変が続く。森に入るとお婆ちゃんが見える。ミニチュアに触っていて念波が走る。窓に光は走る・・・。

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ピーターにパーティの誘いが入り、出かけようとすると、アニーは嫌がっているのにアニーが連れていってという。アニーには「済まなかった」という気持ちがあった。

パーティで、ピーターは友達に誘われ二階でマリファナを喫っていた。チャーリーはひとりぼっちで、ケーキに手を出し、それにココナッツが入っていた。激しく痙攣するチャーリーを車に乗せ病院に走行中、道路上の障害物で急ブレーキを掛けると車がサイドスリップし、窓から顔を出していたチャーリーの首が電柱にぶつかり吹っ飛んだ!ピーターが驚くが、何を想ったが納得したようにそのまま家に戻り、チャーリーの遺体を残したまま自室で眠れない夜を過ごした。朝になって、出かけるアニーの悲鳴が上がった!

葬儀の後、スティーブがチャーリーの部屋に入り壁がサザスであることに気づき、ツリーハウスでチャーリーの描いた絵「犬や猫に追われる鳩。歯との首に王冠が乗っている」を見た。アニーもこの部屋で眠っていた。

ピーターは学校でマリファナに誘われ、夜、自転車で帰宅する。誰かにこの姿を監視さられている。アニーがこれを見た。次の日、アニーがカウンセリングに出掛けると、「私も苦しんでいる。相談して!」と連絡先を渡された。「ジョーン(アン・ダウト)」とあった。

郵便受けに「著名な霊能力者との一夜!死者からのメッセージ」というパンフレットが届き、アニーがジョーンを訪ねた。玄関マットに見覚えがあった。チャーリーの遺体の状況を話すと「ピーターとの関係は?」と聞くので、「当時自分は夢遊病者で、ある夜、ふたりを道連れに自殺しようとしたが、ピーターに気付かれそれ以来喧嘩ばかり」と話をした。この日はこれで終わった。

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アニーがジオラマにチャーリーの事故現場を付け加えたことに夫が「ピーターの気持ちも考えたら・・」と注意した。夕食の席で、アニーとピーターがどちらがチャーリーを殺したかで大喧嘩になった。この時のトニ・コレットの形相が怖い! アニーは席を蹴ってアトリエに篭った。

アニーはジョーンを訪ね、チャーリーを呼び戻してもらった。が、途中で怖くなり止めてもらった。「自分でやってみなさい!」とローソクと呪文が書かれた紙が渡され「あんたがやったんでしょう?」と暗示を掛けられた!

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アニーが寝室で寝ようとして、窓に虫がぞろぞろと這ってるのが目に入った。この虫がチャーリーの顔にたかっているように思え、ピーターの部屋に入って行った。ふたりがぶつかった。ピーターが「あんたは何故、俺を殺そうとする」という。アニーは「救うためよ!」と泣いた。アニーはピーターを産みたくなかった。流産をしようとしたがかなわなかった。

アニーは嫌がるピーターとスティーブを説得し、居間でチャーリーを呼び出す儀式をすることにした。激しくが泣く。部屋が振動するなかで、ローソクが突然吹き上がり、チャーリーが現れたと思ったが、ふたりの「止めろ!!」コールで、この儀式を止めた。

ピーターが授業中に念波を感じるようになった。アニーは個展を目前に控えているにも関わらずジオラマを壊してしまった。学校からの電話にも出なかった。スティーブが学校にピーターを迎えにいった。

家に戻ったスティーブが異臭に気付き、アニーのアトリエを見てアニーの異常さに気付いた。

夜、アニーの夢遊病が始まりピーターの部屋に入り諍いになる。チャーリーの部屋でピーターの顔が描かれた絵を発見、この絵に油をかけて燃やそうとするが、自分が火傷して、焼却できなかった。

アニーはこのことをジェーンに相談しようと訪ねるが不在だった。玄関のマットに見覚えがあり家に取って返し、リーの遺品を調べた。するとオカルト教団のバイブルがあり「招換」というページがマーキングされていて「地獄の王、ベイモンは儀式は完了後、定められた者の身体に残る。王の臣下への財産は(絵)」、さらにアルバムにはリーがジョーンと並んで写っていたグラハム一家の写真もあった。この写真が信徒によって祈られている。

アニーはアルバムを抱え、屋根裏に上がるとそこにリーの首がない遺体がオカルト教団の紋章とともにあった。

ティーブは友人にアニーの状態がおかしいので調べて欲しいと墓の状態を調べて貰った。友人から暴かれた墓の写真が送られてきた。

ピーターは教室で念波を感じ外に出るとジェーンから「お前を追い払う!サンタニー!ピーター!肉体から出ていけ!」と大声で叫ぶ。ピーターは教室に戻り顔を机にぶつけ気を失った。学校から連絡があり、スティーブが家に連れ戻した。

ティーブとアニーのふたりで車からピーターを降ろし部屋に寝かした。アニーが「屋根裏にリーの遺体がある、調べて欲しい」とスティーブに頼むと「あんたが墓から連れてきた。いい加減にして警察に委ねるべきである」と渋った。が、一応確認した。そしてこの写真を焼いて欲しいと燃やそうとして焼却できなかった写真を「焼いて欲しい!」とストーブの前で油を振りまいて渡した。スティーブが渋るのでストーブの火を点けた。スティーブは黒焦げに焼けた!

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ツリーハウスの光で目覚めたピーターが居間でスティーブの遺体を見て驚いているところに、アニー(?)が近付いてくる。屋根裏に逃げた。そこでアニーが首を吊って切り落とす姿、全裸の男女の姿が眼に入り、庭に飛び降りた。

ピーターの身体に光を放つ虫が留まり、アニーの亡霊に導かれツリーハウスに入ると、首のないリーとアニーが傅くなかで戴冠式が行われ、ベイモン王となった。ベイモン王は地獄の8王のなかのひとり。オカルト教団信者のベイモン万歳の声が響いた!

ピーターがベイモン王になり、これに傅く教団のミニチュアが残されていた!

感想:

ぐだぐだと書きましたが、精巧に作られた伏線の繋がりを追うためでした。記録に残しておかないと分からなくなります。さほどによく出来たドラマです。

葬儀挨拶、遺書、遺品、セラピーでの懺悔、霊媒師への告白。これらがチャーリーの死や母の墓地暴き、アニーとピーターの確執の謎へと繋がっていく。この謎をなぞるように音響や犬の鳴き声、意味不明な絵などを通して恐怖に陥れ、それがクライマックでは別次元のオカルト的恐怖の世界へと誘ってくれます。

いくつかの疑問が解けないままですが、これを探す中で、深みにはまっていきます!眠れなくなりますよ!(笑)

グラハム家は代々オカルト教団信者で、教義に基づき長男を悪魔に差し出し、その犠牲の上で繁栄を保ってきた。しかし、アニーの反逆でこの継承が断たれ、教団の怒りに触れて滅亡するという話でした。

冒頭、ツリーハウスからミニチュア・ジオラマ、家族の住む部屋へと映像が移動し、物語の進展にともないこれが逆に動いてツリーハウスでピーターがベイモン王となりグラハム家が滅亡する。

アニーはグラハム家の安泰を願って、母リーの魂を鎮めるよう、ピーターがベイモン王になるジオラマを製作しようとした。母の魂を鎮めるため“スプリチュアルリズム”に関する論文に基づき綿密に母の魂を入れるようスタートしながら、チャーリーの死、ピーターとの確執から、精神が侵されていき、最後にはジオラマを破壊してしまう。まさかジオラマの世界が現実のものになるとは思わなかった。家族を失ったアニーの悲しみが伝わります。

トニ・コレットのどんどん怖くなっていく怖い顔とミリー・シャピロの無表情な顔に圧倒される作品でした。

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