映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「TOKYO!」(2008)

f:id:matusima745:20210218094711p:plain

ポン・ジュノ監督作をほぼ観終わって、この作品を選びました。本作はミシェル・ゴンドリーレオス・カラックスポン・ジュノという3人の監督が、東京の街を独自の視点で描くオムニバス作ということで、まさにコロナ禍、オリンピック組織委会長問題で揺れる今、観るべき作品だと挑んでみました。ゴンドリー監督は本作が初めて、カラックス監督作は「ボンヌフの恋人」(’91)のみです。


映画『TOKYO!』予告篇 『TOKYO!』movie_trailer

それぞれの作品タイトル:

ミシェル・ゴンドリー監督:生きることに思い悩む女性の体が徐々に木になっていく「TOKYO!/インテリア・デザイン」

■カラックス監督:水道から現れる謎の怪人が街を恐怖に陥れる「TOKYO!/メルド」

ポン・ジュノ監督:10年間引きこもっていた男が、恋する女性を追って外界に足を踏み出す「TOKYO!/シェイキング東京」

各々が30分程度の作品ですから、作品の感じ方は大きく観る人次第で、何を語っているのかな?と想像逞しくして楽しみました。

監督は“自作の色彩”をしっかり出しながら、大きな視点で東京を見てくれ、それでいて辛辣でした!

いずれの作品も謎が一杯でしたが、ぐっと胸を刺す忠告がカラックス監督、ユーモアたっぷりに夢をくれたのがポン・ジュノ監督、しかり東京を見て嘆いてくれたのがゴンドリー監督???

いずれの作品からも、「日本は内向的だ!」と、もっと外に開かれた社会を目指さないといけないと思いました。

「TOKYO!/メルド」

出演者:ドゥニ・ラバン、ジャン=フランソワ・バルメール石橋蓮司、他。

f:id:matusima745:20210218094812p:plain

突然銀座にドゥニ・ラバン扮するゾンビがゴジラのマーチに合わせマンホールから這い出して、手当たり次第通行人を攻撃し、花菜とお札を求めて闊歩し市民を驚かせる。警察に追われて地下道に潜り、旧軍の残した手榴弾で、東京の各所に出現してテロ攻撃、“下水道の怪人”と称される。警察に捕えられるが、この男の話す言葉がわからない。唯一言葉の分かるフランスの弁護士ボランズの通訳のもと裁判を実施。名前はメルド(糞)だという。(笑)テロの目的を糺すと「罪のない人が好きでない。人間が好きでない。自分は生きることが好きだ。日本人は汚らわしい!日本人の目は女性のあれに似ているから」「母が聖女でお前たちみんなで犯したから、私はお前たちの息子だ」とよく分からないことをいう。(笑) 法廷の外には裁判を擁護、反対派が現れ大混乱。判決は「死刑」だった。

3年後、突然に刑を執行。絞首刑だった!検視官たちが去ろうとすると、メルドが生き返り「次はニューヨーク公演だ」という。(笑)

                  

菜っ葉服と義眼がよく似合うドゥニ・ラバンの熱演でカラックス監督の描く世界に入り込めます!

メルドの出現で、政府は海外の渡航を突然制限し、赤いひげの外人が襲われる事件が頻発する。そして3年後に突然に絞首刑執行。日本人の人権に対する姿勢が問われ、また地下水道に眠る戦車や日章旗が描かれることから、日本人は大きな戦争犯罪を犯しながら俺のやった小さな殺人罪を問えるのかと言っているように感じられるのですが? 花と札束は増えたが人として大きく育ってないと言っているように!

「TOKYO!/インテリア・デザイン」

出演者:藤谷文子加瀬亮伊藤歩大森南朋、でんでん、妻夫木聡、他。

f:id:matusima745:20210218094849p:plain

大雨が続き約100万人が避難しているという夜、映画監督志望のアキラとその恋人ヒロコが車で、東京の友人アケミのアパートに、東京での職が見つかるまでと訪ねてきた。アケミのアパートはひと間で風呂はなかった。駐車場は中古家具店の前(閉店中)を厳守するように言う。アケミは「大きな会社に勤める者は小さなアパートに住む」という見栄っ張り子だった。

翌朝、ヒロコが暗いうちに起きると、もうアケミは出勤していた。アキラとヒロミはアパーツ探しに走るが、モダンなアパートを紹介されるが猫の死骸がベランダにあったり、借賃が高すぎる。仕事探しもラッピング程度の仕事で、採用されたのはアキラだけで、ヒロミは手先が不器用でダメだった。その後もアパートは見つからず、おまけに駐車違反でどこかに車を移動されてしまった。

何とか車を探し出してフィルムを取り出して映画試写会は実施出来たが、アキラは持て囃され、ヒロコは孤独感を感じる。

アケミに嫌味を言われアパートを追われるように出た。ヒロコは腹を空かせて職探しに出て、足が、腕が棒木となり、椅子となっていった。(笑)

夜中に音楽家大森南朋)が座って、座り心地を確認して家に持って帰った。ヒロコは音楽家に座って仕事をしてもらい、彼が居なくなると、風呂入り、好きなことをしている。こんなに自分が役に立つとは思わなかったという。

                  *

大雨の中での車の渋滞、車のウインドウから見る東京の街並み、猥雑な東京の街がよく描かれた、美しい映像だった。狭いアケミのアパート。アケミの仕事っぷりや薄っぺらな人との関係、大量の駐車違反車の集積所。現実をしっかり見て、東京の住み難さをよく描いています。ヒロコがここで住むためには、椅子となって、人の役に立ち好きなことができると満足していますが、若い人がこれで良いのでしょうか?

「TOKYO!/シェイキング東京」

出演者:香川照之蒼井優竹中直人荒川良々、他。

f:id:matusima745:20210218094923p:plain

私(香川照之)はひとり暮らしで10年間、TVも観ず世間と付き合わず、父から送金を受けて働かず、引きこもりしている。そのせいか、部屋はしっかり整理されて見事です。十年分のピザ箱が積み上げられている。土曜日にピザをデリバリーしてもらうぐらいで人に会うことはない。運動を兼ねてご飯は立って食べる!うんこはロール紙の芯で手に痣が出来るほどに時間を掛けて、よい夢を見る!(笑)

ある土曜日、可愛い女の子(蒼井優)がピザを配達してくれた。11年ぶりに目を合わせた!ぐらぐらと胸騒ぎがしたが、地震だった!彼女が失神。どうしていいのか分からなかったが、腕にいくつものボタン(針のつぼ)が書いてある。ガーターにも絵が描いてある。ボタンを押すと彼女は「完璧!」と立ち上がり、帰っていった。

もう一度彼女に会いたいと2日間考えて、ピザ店に電話すると店長(がやってきて、配達員が皆引きこもりだという。

自分で出掛けるしかないと、白いスニーカーで外にでた。眩しい!渋谷のスクランブル交差点にも誰ひとり人がいない。ピザはロボットによって配達されていた。

地震が起きると一斉に人が建物から出てきて道路は一杯になるが、地震が収まるとまた人がいなくなる。

家にいる彼女を見つけて「今出ないと、一生出れないよ!」と呼び出し、LOVEのボタンを押すと彼女がうれしように笑った!するとまた地震

                 

会話がほとんどないが香川照之さんの仕草で孤独の寂しさ、不安、彼女に会ったときの驚き、喜びが分かるという、ユーモアたっぷりの演出でした。ピザにスニーカーは監督作では定番のグッズ。めっちゃめちゃに可愛い蒼井ちゃん!ペ・ドゥナ以上でした!

ポン・ジュノ監督にとって日本人は優秀で、地震が発生すれば一斉に同じ行動がとれが、引っ込み思案な国民。広い世界に出てきなさいという監督のエールだと思っています。まるで天岩戸神話のようでした!

             ****