映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「ドクター・スリープ」(2019)

f:id:matusima745:20191201063526p:plain
1980年スタンリー・キューブリック監督によって映画化されたスティーヴン・キングの傑作ホラー「シャイニング」の続編、前作の40年後を舞台に、惨劇を生き延びた少年ダニーのその後の物語を描くということで観ました。いずれの原作小説は未読です。監督は「ジェラルドのゲーム」「オキュラス/怨霊鏡」のマイク・フラナガン

タイトル通り、オカルト・死・アルコール依存・少年少女誘拐・差別などこの世界の恐怖をシャイニングで救済してしまうという、ホラー、アクション、ヒューマンありのエンターテイメントドラマでした。怖さと言う点では前作「シャイニング」、テーマ性・ドラマ性では本作が優れています。
スタンリー・キューブリックの「シャイニング」とスティーヴン・キングの「ドクター・スリープ」の良さを合わせもつ作品だと言われていますが、作品のラスト30分のオーバールックホテルの決闘がフラナガンの創作で、フラナガンの「ドクター・スリープ」ということで良いと思います。

主演はユアン・マクレガー。共演はレベッカ・ファーガソンクリフ・カーティス、カイリー・カラン、クリフ・カーティス、カール・ランプリ―、エミリー・アリン・リンドらです。

あらすじ:
40年前の冬、コロラド州ロッキー山上のオーバールックホテルで惨劇が起き、父親に殺されかけた少年ダニー。大人(ユアン・マクレガー)になってからも深いトラウマを克服できず、アルコール依存症に苦しみながらも、今はホスピスで働き、“ドクター・スリープ”とあだ名され終末期の患者たちから頼りにされる存在となっていた。ある日、そんなダニーのもとに謎のメッセージが届く。送ってきたのは彼と同じ特別な力“シャイニング”を持つ少女アブラ(カイリー・カラン)だった。折しも巷ではオカルト集団“真の絆”による児童連続失踪事件・首謀者ローズ(レベッカ・ファーガソン)が起きていて、やがて自分にも危機が迫っていることを察した彼女は、ダニーに助けを求めるのだったが…。<allcinema>
              *
物語は3つのストーリー、ひとつがアブラの話し、彼女は強烈なシャイニングを持っている。次がダニー、大人になっていくキャラクタの話し、さらに連続事件を起こす“真の絆”というオカルト集団事件の話しが、物語の進展にしたがい、オーバールックホテルでの決闘というひとつの物語に集約されてくる。いずれもいくつかの映画作品のオマージがあり、3つの物語が交差しながら描かれるという、ひやひやドキドキの2時間30分を感じさせない作品になっています。

何と言ってもテーマ性のある作品。飲酒中毒(麻薬も含めて)による死、病院で孤独の中で死を迎える老人の死、オカルト集団による少年少女殺害事件など現代社会の死を取り扱い、強く生きていく勇気を与える作品になっている。

「シャイニング」(1980)のオマージュ作品となっており、いくつもの懐かしいシーンに出会い、新しい解釈が加えられるのがよかった。このために40年昔のオーバールックホテルを再現して見せてくれる!

「シャイニング」(1980)を観ている者には、この作品の怖さであるジャック・トランスの狂気はどこから来たのかという問いにきっちりと答えをくれ、あのハロランがダニーの師になったように、次はダニーがアブラの師となっていくという温かい師弟の愛の物語になっている。

ダニー役のユアン・マクレガーの演じる影のある飲酒中毒者はこれを克服しセラピス職員としてまたアブラへの愛を与えていく人間味のある演技が温かくとてもいい。オカルト集団のリーダー・ローズ役のレベッカ・ファーガソン、狂気をはらんだ演技が怖かった!そして、特別な“シャイニング”を持つ少女アブラ役カイリー・カラン、1000人規模のオーデイションで選ばれたというが、可愛いし、闊達でアクションもしっかりこなし、見事な演技でした。もうひとり、オカルト集団の毒のある少女ネークバイト・アンデイを演じたエミリー・アリン・リンドの狂気ある演技に魅入りました。

****(ねたばれ)
冒頭、1980年のフロリダ。湖畔で遊ぶ少女バイオレットにオカルト集団“真の絆”のリーダー、ローズが「魔法の帽子おかしい!ローズ・ハット」と近づき、(手籠めにして殺し、連中を集めて生気を吸うというショッキングなシーン)から始まり、
その後、ニューヨークに移動。紳士を呼び止め映画館に誘って首を切り金を盗むアンディを仲間のキャンピングカーが屯する森に連れてきて、よってたかって彼女の生気を吸う。このときのアンディの狂った眼つきが凄い。

f:id:matusima745:20191201152012p:plain
こうして連中が、シャイニングを持つ子供を探し拷問、殺害して生気を吸う。
力が亡くなってきていい獲物がいるとアイオワ・アチャにやってきて、将来大リーグからオファーされるだろう少年野球選手・ブラドリーに目を付けた。力が弱ると魔法瓶に貯めておいた生気の香りを嗅ぐローズがなんとも異様だ!

f:id:matusima745:20191201152117p:plain

オーバールックホテルで惨劇後、ダニーは2に37号室の浴室で起こったことがトラウマとなり、少年となったころダニーを救おうとしてジャックに殺されたハロランが現れ「あのお化け、手や足の血を吸うヒルだ。女が現れたら使え」と小箱を渡した。この小箱は後の大きな伏線になる。
2011年ニュージャージー。ダニー26才。心は休まらず父と同じように酒にのめりこむ。バーで酔いつぶれ喧嘩して子持ちの女に救ってもらうが、目覚めて自分の財布を見ると金がない。そこで女の財布から金を盗むという哀れな生活をしていた。そこにハロランが「金は返せ!」と現れた。

ダニーは放浪の末、ニューハンプ州フレイジャーにやってきて、ミニチュア広場管理人のビル(クリフ・カーティス)に出会い、彼の紹介で屋根裏の部屋を見つけ、教会の断酒会に参加するようになる。そこで出会った医師ジョンからフレイジャーの老人病院のホスピス職員として働くことになる。
断酒のほうもメダル表彰を受けるほどになり、ホスピス職員としてシャイニング術を使い患者に「ドクター・スリープ」言わしめるほどに大きな信頼を置かれるようになる。

フレイジャーから30km離れた町アニストンにアラブが暮らしていた。彼女は手品師の技なんぞすぐに見破るし、家では天井にナイフやホークなどの調理品をぶら下げてみせるというシャイニングの持ち主。しかし、学校では孤独。両親は、この力を人に見せるなと促している。

ある日、アラブはダニーの存在に気付き、ダニーの部屋の黒板にハローの文字を送った。これにダニーは「やあ!」と返信、ふらりはテレパシーで結ばれる仲となっていった。

こんなときは、真の絆によるアイオワ・アチャでの少年野球選手・ブラドリー誘拐事件が起こった。ローズがブラドリーの胸にナイフを刺し生気を吸うとき、バラドリーが発した声がアブラに届き、アブラはダニーに「レッドラム」の文字を黒板に送った。

f:id:matusima745:20191201063634p:plain

ローズはこのとき誰かに見られていると感じ、部下のクロウ(ザーン・マクラーノン)にイーストコースト(2400km離れている)にいる。いずれ会うことになると伝えた。

アブラは少年少女誘拐事件の記事を調べ、ローズと目星をつけ、第4エターナルクラーク会社の空き地にいると推測する。アブラは自分の幽体をローズがショッピングしているスーパーマーケットに送り、ローズに接触。ローズがアブラの頭に触るとぶっ飛ぶ。スターウオーズのカイロ・レンとレイの幽体接触のオマージュ?

アブラはミニチュア公園でダニーに会いローズの件を話すと、「ダニーは接触するのは辞めとけ」と諭した。ところが、ハロランが現れ「君は立派に更生し人のためになっている、力も十分ある。あの子を助けてやれ、お前にはまだ貸しがある」と告げた。(笑)

f:id:matusima745:20191201063701p:plain

ローズは幽体をアブラの家に送ったが、再びぶっ飛ばされ、この生気が欲しいと部下のクロウにアブラ拉致を命じた。

ダニーはアブラと親友ビリーとともに、第4エターナルクラーク会社の空き地に乗り込んだ。この戦闘でアンディとその仲間が土になって消えた。サノスのスナップで消されたアベンジャーズたちのように。(笑) しかし、ビリーが死亡、アブラはクロウに麻酔をかけられ車で連れ去られたが、途中で麻酔から覚め車から脱出しクロウを殺害した。

ダニーは「必ずローズは殺しにやってくる」と、戦いの場をオーバールックホテルを選び、アブラとともに急いだ。懐かしい場所という感じ!

アブラを車に残し、ハンマーを持ってホテルに入った。高圧電源室で電源を入れ、管理人室でレッドダムという文字を見て怯えた母ウエンディ―の記憶が蘇った。

f:id:matusima745:20191201063746p:plain

次にゴールドルームにやってきて、バーカウンターに座るとバーテンのロイドが「奢りです!」と酒を注ぐ。酒を断った。ロイドは「酒は薬だ」と言い、「男は挑戦するためには子や妻が邪魔になる。あんたどうするか?」と聞いてくる。「飲まん!」と断った。こうやって酒を飲ませて父をダメにしたんだ!

間もなくローズがやってきて、戦いとなった。ローズが外に出て、雪の迷路の中をアブラを追った。アラブは巧みにローズに挑む足に傷を負わせた。
ゴールドルームに戻ったローズに、ダニーはハンマーで挑んだが階段を転げ落ちた。ローズがダニーの首を絞め生気を吸う。このとき「ダニー、ダニー」と追いかける父ジャック、水色のドレスを着た少女の影が浮かんだ!ダニーが小箱を開けると亡霊たちがローズに飛び掛かり、ローズの生気を吸い死に追いやった。

ダニーはロイドをハンマーで叩き斬った。そのいときアブラが237号室に入るのを見た。追うとバスルームに老婆がいた。ダニーがハンマーを振り下ろしたがとどかなかった。とどかなくてよかった!老婆はアブラに化けていた。昔この部屋に入ったとき父ジャックに殴られた意味が分かった!

ダニーはアブラを外に避難させ、ボイラー室で、燃え上がる炎とともに逝った。
ダニーは「あなたはひとりではない。他にもいるかもしれない。初めて会ったとき能力を隠せと言ったがそのままでいい!」とアラブの中で生きることにした。

               *
「ドクター・スリープ」を観て、クレーディー一家殺しの犯人はジャックではないかと思っていました。しかし、見事な外れでした。しかし、こう予想したことで、「ドクタースリープ」をしっかり楽しめました。現在社会の恐怖のもとを全部、オーバールックホテルで焼き殺してくれるという、ホラーというより、勇気の貰えるヒューマンドラマとして楽しめました。
****


映画『ドクター・スリープ』US版メイン予告【HD】2019年11月29日(金)公開