イーストウッド、82歳での主演作品。今では90歳で撮っているから驚きはないですが、当時は一度引退してからの復帰ということで大変な話題になったようです。
「人生の特等席」というタイトルは、作品内容を表現してないが、「イーストウッドにはこの席が一番」と讃えているような洒落たタイトルです。
イーストウッドの映画人生を大リーグの伝説的スカウトマンに見立てて描いたような作品でした!
監督は長年イーストウッドとともに映画製作してきたをロバート・ローレンツ、初監督作品。脚本:ランディ・ブラウン、撮影:トム・スターン、美術:ジェームズ・J・ムラカミらイーストウッド組の常連です。
主演はクリント・イーストウッド、共演はエイミー・アダムス、ジャスティン・ティンバーレイク、マシュー・リラード、ジョン・グッドマンらです。
あらすじ:
アトランタ・ブレイブスの伝説的スカウトマン・ガス(クリント・イーストウッド)。妻を亡くし幼い娘ミッキーを親戚に預けてのスカウトマン稼業に励んだせいで、娘とはすっかり疎遠になっていた。最近ではすっかり視力が衰え選手の動きがよく見えない。球団はガスの勘よりデーター重視のスカウトマン・フィリップ(マシュー・リラード)を重用しようとしていた。
一方、娘ミッキー(エイミー・アダムス)は弁護士になっていて、共同経営者となるための重要懸案担当を打診されていた。
この年のスカウト最大の目玉、高校選手の打撃王ジェントリー (ジョー・マッシンギル)を追うため、親友のピート(ジョン・グッドマン)がミッキーに援助を求めた。
ミッキーがガスの目の症状を確認し治療を勧めるが、聞き入れない。とりあえず休暇をとって父親のスカウトにつき合うことにする。
ガスは頑固もので、野球はミッキーと一緒に観るが、宿に還れば寄せ付けない。
ガスがかって投手としてスカウトしたフラナガン(ジャスティン・ティンバーレイク)は肩を壊して引退し今はレッドソックスのスカウトマン。彼もフラナガンを追っていて、彼との出会いで、ガスとミッキーの距離が縮まってくる。
見えないはずのガスが球種と打った球の行方を言い当て、音で分かるという。しかし身体の動きが分からない。ミッキーに「カーブを打ったときの腰の回し方を一塁側から見て来い」と注文を出す。なんでミッキーが分かるの?(笑)
最終試合でジェントリーがカーブを打って、これがホームランでチームは優勝した。この打席を観察したミッキーの所見は「手が泳いでいる」だった。
ガスは「ジェントリーは辞めとけ」とフラナガンに話し、ピートには「採るな!」と進言した。
これでレッドソックスはジェントリーを諦めたが、ブレーブスはピートの意見を無視してフィリップのデーターから彼を採った。フラナガンは「嵌めたな!」とガスを非難した。
ガスは潮時と引退を決めて視察地を後にした。ミッキーは残り、自分が捕球してみて“よし“という高校生投手を見つけフェンウェイ・パークに連れ戻った。この投手とジェントリーの対決は?ガスとミッキーのこれからは?
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感想:
スカウトの話しのようで、そうではなく長い間の父と娘の確執がベースボールに対する共通の想いでのなかで解けていくというとてもハートフルな父娘の絆の物語です。
ミッキーが凄いスカウト眼を持つという脚本はすこしいいかげんだと思いますが(笑)、イーストウッドの頑固で涙もろい、エイミー・アダムスの父に優しく寄り添っていく名演技で、この欠点も全部許せるという感動物語でした。
また、エイミーがどう生きるかと「好きな野球!」とフラナガンを選択することに共感でき、ハッピーエンドがいい!!弁護士たちの男社会を批判した点でも評価できる。
「ジェントリーはカーブが撃てる選手か?」のカーブに掛けて、もっと大きな意味のあるカーブ、ガスとミッキーの人生の曲がり角を意味するという絶妙なタイトルでした。
どの作品もイーストウッドが訴えるものは“一途な人生”で、同じだなと感じます。イーストウッドが運転して走る車から見る風景は、いつ観ても心に沁み癒してくれます!
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