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「コーダ あいのうた」(2021)字幕がいらなくなるほどに手話は素晴らしい言語、そして音楽が聾者と健聴者を結ぶ!

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第94回アカデミー賞(2022)で作品賞、助演男優賞(トロイ・コッツァー)、脚色賞の3部門にノミネートされ、同3部門を受賞した作品。記念公開はうれしい!早速出かけました!

フランス映画「エール!」(2014)のリメイク作品とのこと、未鑑賞です。

家族の中でただひとり耳の聞こえる少女の勇気が、家族やさまざまな問題を力に変えていく姿を描いたヒューマンドラマ。

タイトルの「CODA(コーダ)」は、「Children of Deaf Adults=“耳の聴こえない両親に育てられた子ども”」のこと。音楽の世界では、楽曲の終わりを表す音楽記号で次の章が始まる意味を持つということで、この子が新しい世界に旅立つというこのドラマにとてもふさわしいタイトルになっています。

監督:シアン・ヘダー、脚本:シアン・ヘダー、撮影:パウラ・ウイドブロ、美術:イアン・リーダーマン、衣装:ブレンダ・アバンダンドロ、編集:ジェロード・ブリッソン、音楽:マリウス・デ・ブリーズ、音楽プロデューサー:ニック・バクスター音楽監修:アレクサンドラ・パットサバス。

出演者;エミリア・ジョーンズ、トロイ・コッツァ、マーリー・マトリン、ダニエル・デュラント、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ、エウヘニオ・デルベス、エイミー・フォーサイス、他。コッツァー、マトリン、デュラントの三人は聾者です。

あらすじ

海の町でやさしい両親、父フランク(トロイ・コッツァー)、母ジャッキー(マーリー・マトリン)と兄レオ(ダニエル・デュラント)と暮らす高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、ルビーはひそかに憧れるマイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)を慕って合唱クラブに入部した。合唱クラブ顧問のV先生(エウヘニオ・デルベス)はルビーの歌の才能に気づき、ボストンの名門音楽大学バークリーの受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。

感想(ねたばれ:注意)

冒頭シーン。小さなトロール船上。忙しく漁する父と兄、荒波の中でのふたりの手話。高校生だが大人びたルビーが歌う「心をとらえて離さない!この思いを伝えたい!不思議な気分!」。ルビーが歌に惹かれているというテーマソングが、力強くて、爽快だ!

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港に上がり、ルビーがセリで値段交渉して売りさばく。父と兄がこれにスラングで文句を言う。この冒頭シーンでコーダの役割が分かります。

ルビーが高校に登校。部活に合唱クラブを選んで、下校しようとすると、そこにカーラジオを大音響で鳴らす父フランクの車がルビーを迎えにくる。聾の世界に音がないことを表し、これが健聴者にいびられる原因になり、ルビーの悩みでもある。

こんなフランクがどうやって音楽を理解するのか?

ルビーは皮膚科に連れていかれ通訳する。「死にほどかゆい!火事になったみたいだ!まさに燃える大根だ!」。ルビーにしか訳せない!(笑)診断結果はインキンタムシ!これどう訳す?(笑)

この作品ではフランクが笑わせてくれます。演じるトロイ・コッツァーはまさにフランクで、そこにいるだけで可笑しい!(笑)アカデミー賞助演男優賞は当然でした!

食事中の家族。とても静寂!ところが兄のレオが携帯(電話)をいじっている!母が「交際サイトは止めなさい!」という。今の時代、携帯が聾者の翻訳機になっている。彼Gはこれで恋人を探し、将来を夢見ている。

合唱クラブの練習。ルビーは当初自分の声は笑われるのではないかと歌うことができなかった。V先生は身振り手振りで大きな犬や小さな犬の発生法を真似て“身体を動かして声を出せ!”と手話のようにして発声法を教える。ルビーはこの教育で歌うことに興味を持ち出す。V先生役のエウヘニオ・デルベスが面白可笑しく演じてくれます!

V先生は秋のコンサートで歌うためにと、ビリーとマイルズにマーヴィン・ゲイ&タミー・テルのデュエット曲“Youre All I Neeg To Get By”を歌わせることにした。「運命の人だとわかった!人生をあなたのために尽くす!・・・」という歌詞が良い。こんな曲で歌うふたりは絶対にくっつくよ!(笑)

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V先生がルビーに「音楽大学に行かないか」と勧めるが、「考えたこともない」という。「歌うということはどういうことか?」と聞くと、ルビーは笑って手話で答えた!V先生は「手話は歌うことに繋がっている!」と納得した。

ルビーはマイルズを自宅に呼んで練習をすることにした。ところがとんでもないことが起こった!フランクとジャッキーのセックスが始まった。その声が大きい!(笑)。ルビーが注意するとフランクが「お前は騎士にならねばならぬ!鎧の装着法・・」とコンドームの使い方を教えてくれる。このシーン、通訳がなくてもちゃんと分かります。(笑)これをマイルズが学校で喋り、これ以来ふたりは疎遠になっていった!

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V先生はルビーに個人教育としてジョニ・ミッセルの曲「青春の光と影」をレッスンすることにした。先生には自分が叶えられなかった夢をルビーに重ねていた。

そんな中で政府から漁獲生制限が課せられ、監視員が船に乗り込むことになった。集会でフランクは「チンポをしゃぶれ!」とルビーに通訳させて(笑)、この案に反対し、漁師組合を作って自家売りをすることにした。これでルピーは交渉の通訳で一層忙しく、先生のレッスンに遅刻するようになり、歌どころではなくなっていった。

先生から「大学はどうする?」と聞かれ、家族に進学することを話した。両親は「お前の歌を聞いたことがない!一生家族と一緒だ!」と全く受付なかった。ルビーは「もう疲れた!歌うのが好きだ!」と伝えた。

マイルズから「なんでもするから付き合ってくれ!」とデートを申しこまれた。この日、漁を休んでルビーはマイルズと湖でデートしていた。そして、ルビーはマイルズの愛を知った。

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ところがこの日、運悪く漁船に女性監視員が乗り込んできた。沿岸警備隊船が注意勧告に近づいたが、父と兄はそれに気づかず、女性監視員は役立たず、拿捕され、以後監視員を乗せなければ営業禁止となった。家族にとって漁業を続けるにはルビーは欠かせない。ルビーは残ることにした。

母のジャッキーは喜んだ。「生まれたとき耳が聞こえると分かったときどう育てていいか分からなかった」という。ルビーも「いつも3人は一緒で私だけ別だった!聾であったらよかったと思った」という。聾者と健聴者の両世界に生きるルビーの悩みが分かるセリフでした。

兄のレオだけは違っていた。「家族の犠牲になるな!お前は特別だ!」と進学を勧めた。レオの大きな愛だった。レオはルビーが家族に加わったことで、健聴者社会を恐れず、自ら事業を起こしたいという夢を持ち、健聴者の彼女と付き合っていた。ルビーに頼りっきりの両親にはうんざりしていた。

秋のコンサート。会場には父母に兄、そして兄の彼女が駆けつけた。ルビーとマイルズが歌う。ここからは父母と兄の立場でコンサートが描かれ、なんの音もない!無音!フランクとジャッキーは感激する周りの人を眺めて、そういうものかと、拍手に合わせて手を叩く。

コンサートが終ってV先生が「大学にやってはどうですか?」とフランクに進めた。これをルビーが止めた。

夜、家に戻ったところで、フランクが「あの歌を唄ってくれ!」とルビーに求めた。ルビーは「人はお互いに誰かを必要としている歌だ」と説明して歌った!フランクはルビーの喉に手を当て振動でその歌を聞いていた!

朝起きると、漁に出ず、家族は車でバークリー大学のオーデション会場に向かった。

ルビーは飛び入りのV先生のピアノ伴奏で「青春の光と影」を、手話を交えて歌った!会場の二階で聞く家族にしっかり伝わった。

そしてある日、合格の発表はあった。ルビーは両親とは離れて新しい生活が始まるが、家族には歌で繋がることになった。

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まとめ:

聾者の中にたったひとりの健聴者がいるという複雑な家族関係の中で、お互いが駆け引きするが、そんな中にも信じられないほどの大きな愛があること、そして人生は自分で選べ!という結末に感動しました!

聾者の会話は手話で翻訳され字幕で表示されますが、この映画を見ているうちに字幕がいらなくなるほどに手話に慣れ、手話は素晴らしい言語だということがわかります。そして音楽が聾者と健聴者を結ぶという感動的なシーンに絶対に泣かされます!笑いが一杯で、明日への希望が湧いてくるという誰にでも受け入れられる良作。

テーマは聾者のアイデンティティを受け入れる多様性社会の実現。

 エミリア・ジョーンズ。美しくって力強気演技、歌、手話、そして漁師の娘としてすばらしい演技でした。そしてコッツァー、マトリン、デュラントの三人は聾者家族、これは圧巻でした。彼らがいうように聾の演技には聾の俳優さんを使うべきですね!

テーマの副題にあるように、音楽がすばらしい!サウンドトラックを購入したいですね!

脚本勝負の作品!この作品がアカデミー賞作品賞となったことで、今後、日本映画にも受賞チャンスはあるぞ!と喜んでいます。

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