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「ソウル・ステーション パンデミック」(2016)ヘスンが、本当に怖かったのは?

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大ヒットした韓国のゾンビホラー「新感染ファイナル・エクスプレス」(2017)の前日譚となるアニメです。

ソウル駅で始まった感染パニックを、ある女性の決死のサバイバルを軸に描くというもの。

ポスターで分かるように絵としての魅力はないかもしれない。しかし、ここで描かれているのは「新感染ファイナル・エクスプレス」にはない韓国の社会構造批判です。社会の底辺の人達の苦しみがユーモアたっぷりに描かれています。「ゾンビってなんだ!」それは底辺のさらにその下の人々というように捉えられます。「パラサイ」(2019)と同じテーマで、これに過ぎたる作品かもしれません。😊

監督は社会派アニメーション作家として知られ、「新感染ファイナル・エクスプレス」で実写長編監督デビューとなったヨン・サンホ。脚本:ヨン・サンホ編集:ヨン・サンホ イ・ヨンジュン音響監督:オ・ユンソク、音楽:チャン・ヨンギュ

声の出演:「サニー 永遠の仲間たち」「怪しい彼女」のシム・ウンギョン、「7番房の奇跡」「王になった男」のリュ・スンリョン、他。絵が絵ですので(笑)、よく感情の入った字幕版にしたいですね。😊

一緒に暮らす恋人のキウン(リュ・スンリョン)とケンカし、夜のソウルの街をひとりさまようヘスン(シム・ウンギョン)。その頃、ソウル駅では息絶えた血まみれのホームレスが生き返り、人を襲い出した。襲われた人がゾンビとなり、さらに人を襲っていく恐怖の連鎖が巻き起こり、ゾンビウィルスによるパンデミックの発生を知ったキウンは、ヘスンの父と名乗る男(リュ・スンリョン)とへスンを探す。ヘスンはキウンと会えたか?そして彼らのき行先はというパンデミックスリラーです。

感想(ねたばれ):

アニメは「これ、なんだ!“というポンチ絵のようだが、韓国社会の闇を写し出すストーリーがリアル過ぎて、一気に物語の世界に持っていかれます!

冒頭、「福祉は万人に保証されるべきだ」と論議している男たちの前を、首に怪我をした老人が通り過ぎる。「助けねば」と近寄ると「臭い!」と逃げ出す。「福祉の必要性は分かるが、ホームレスには行き届いていない」という韓国の実情を示しているのではないでしょうか。アニメならの表現です。こういう視点でこのアニメを見ることになります。

ソウル駅のコンコースにはごろごろとホームレスが転がっている。この老人もそこにごろりと寝た。

「ソウルのビルの8割は我が立てた」と手柄にする、懐のよさそうな人には「手榴弾を投げてやりたい」というホ-ムレス。マンション建設ブームを終えて、不景気で今では家に住めないホームレスたちが一杯いる。

隣の男が「兄どうした?」と老人の傷を見て、駅員に交渉するが「出て行け!」と取り合ってくれない。ホームレスのための宿泊センターは刺青のある立派なホームレスで占められており、ホームレスにも階層があって、急病のホームレスが出ても入れない。(笑)

隣の男が薬を買って老人のところに戻ると、老人が亡くなっていた。駅員を呼んで戻ってくると老人が消えていた!隣の男が駅を出て路地を探すと、老人が男の首にかじりついていた。老人がゾンビに!

ヘスンは家出してキウンに助けられて旅館住まい。宿泊代のためにヘスンは風俗店務め。ヘスンが目覚めるとキウンが居ない。探すとネットハウスに居た。ヘスンが「もう辞めたい!」というが「俺が拾ってやった女が」と無視。韓国は男性優位社会で、ヘスンの希望など通らない!キウンはネットに「良い女がいるぞ!」と投稿、ヘスンの今夜の相手を探していた。

ネットでこれを見た男が「ヘスンの父だ!」と連絡してきた。キウンが父親をソウル駅で出迎え、ヘスンに電話するが出ない!父の車で旅館に戻ると、ゾンビが客に喰いついていた!

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ヘスンはキウンの連絡でソウル駅に父に会いにきたが、そこでゾンビに出会い逃げて警察署に逃げ込んでいた。沢山のゾンビが寄ってきた。ゾンビは異様な体の動きと白目で人に食らいつき血を吸う。

ヘスンは名もない浮浪者、警官と一緒に留置柵に逃れた。(笑)警官が「ホームレスが襲ってくる!ホームレスの暴動だ!」と救助を要請している。名もなき浮浪者は「怪物だ!」と訂正すると、警官は浮浪者に拳銃を向ける。違うだろうが!と。警官はホームレスを目の敵にしていたんだ!

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この警官がゾンビに噛みつかれ、名もなき浮浪者が拳銃を手にした。機動隊が到着してゾンビとの闘いが始り、その隙に表に抜け出したヘスンと名もなき浮浪者は警察の救急車に救われた。病院に運ぶと走る救急車内で「病院はゾンビで一杯だろう!」と名もなき浮浪者が大暴れ。救急車が暴走して転覆。車を抜け出したふたりは地下鉄駅に急いだ。ふたりは地下鉄の線路路伝いに出来るだけ遠くに逃げることにした。ホームはゾンビが一杯でこれをやり過ごして、先に急いだ。

キウンと父親はゾンビに囲まれた宿を抜け出し、ヘスンと連絡が取れ、病院へ急いだ。病院はゾンビで一杯だった。キウンと連絡が取れない。できるだけ見晴らしのいいところでヘスンからの連絡を待つことにして車を走らせていた。

ヘスンと名もなき浮浪者は会賢駅(フェヒョンえき)に辿り着いた。ヘスンは「ここに来て!」とキウンに伝えた。

会賢駅では、乗客がゾンビを壁でブロックしていたが、出口には機動隊が車両を連ねて乗客は外に出れない状況だった。ゾンビが激しく追ってくるので乗客は外に出たいと車両の壁に飛びつくと、容赦なく放水してきた。名もなき浮浪者が車の壁を越えようとして撃たれ、「俺はゾンビではない!家さえあればこんなことにはならなかった」と悔やんで亡くなって行った。市民が懸命にゾンビと戦っていた!「警察な何をしている!」の声。

ここにやってきたキウンと父親が機動隊と「中に娘が居るんだ!」と掛け合うが埒が明かない状態。コネがないと警察は動かない!

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機動隊が首都警備隊(軍隊)に替った。もう外には出れない。そのとき黒服の男がケーブル線を使ってビルに脱出しているのを見た。ヘスンもこれに習った。が、途中でゾンビに足を噛まれた!やっとビルに移れた。そこは見たこともない高級家具が置かれた。展示用の高級マンションだった。誰がこんなところで生活しているのか?福祉はどうなっている?

ふわふわしたベッドで眠っている、キウンと父親がやってきた。父親を見てヘスンは驚いた!風俗店の店主だった。(笑)「金を返せ!」と挑んできた。キウンが部屋にあった包丁で切りかかったが逆に包丁を取り上げられ首を斬られた!怖いのはゾンビだけではなかった。

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ヘスンは逃げた。追ってくる店主。ついにヘスン捕まって暴行されようとするとゾンビに噛まれた足から毒が回り、ヘスンはゾンビになって店主の首に噛みついた。

会賢駅のバリケードを越えて外に出てくる市民に軍隊が一斉に銃撃を加えた。何のための軍隊か?

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ヘスンはゾンビだらけの街を駆けたが、本当に怖かったのは何か?彼女にはゾンビになる以外に生きる道はなかった。

こうして彼女はソウル駅、に忍び込み、「新感染ファイナル・エクスプレス」物語へと繋がる。

貧しさがゾンビ化の原因となりましたが、ジム・ジャームッシュ監督作「デッド・ドント・ダイ」(2019)では資源の食いつぶしがゾンビ化の原因でした。

「ソウル・ステーション パンデミック」は跳んだゾンビ作品と言ってよさそうですね。😊

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