巨額の遺産を巡って繰り広げられる攻防戦を予測不能な展開で描いた韓国ノワールアクション。
これでタイトルが「貴公子」とは?これで観ることにしました。(笑)
タイトルは“コピノ”(混血児)の方が良かったのではと思いますが「貴公子」!このことが分かる出来でした。ストーリーもアクションも弾けた作品で楽しめますが、やはり貴公子:キム・ソンホの活躍かな?フアンの方必見の作品です。
韓国ルワールと大宣伝ですが、少し違った、コミカルなルワールでした。もっとシビアーに描いた方が韓国らしさが出た作品ではなかったかと思う。
監督・脚本:パク・フンジョン、撮影:シン・テホ・、音楽:モグ。
出演者:キム・ソンホ、ハンカン・テジュ、キム・ガンウ、コ・アラ、他。
物語は、
フィリピンで病気の母のために地下格闘で日銭を稼ぐ青年マルコは、韓国人の父の行方を知らない。そんなある日、彼の前に“父の使い”を名乗る男が現れ、マルコは韓国に向かうことに。飛行機の中でマルコが出会ったのは自らを“友達チング”と呼ぶ謎の男“貴公子”。不気味に笑う貴公子に恐怖を感じ逃げるマルコだったが、彼の執拗な追跡と狂暴ぶりに徐々に追い詰められていく…。
なぜ、マルコの前に突然、父親は現れたのか…? 謎の貴公子の目的とは…?すべてが明らかとなった時、マルコはさらなる危機に見舞われる。(映画COMより)
あらすじ&感想:
冒頭で貴公子登場、
日本人を処分したという倉庫で、いかがわしいチンピラの処分を請け負った貴公子が登場。強いこと強いこと!最期に白衣に着替えメスを見せて脅す。
貴公子とは何者か。これが最後まで分からないというのがこの作品の面白いところ!
マルコは父が韓国人で母がフィリピン人の“コピノ“。
韓国の男性とフィリピンの現地女性の間で生まれた2世をフィリピンで言う言葉。コピノの大半は貧困で教育もろくに受けられず、汚物のたまった掘っ立て小屋で粉ミルクすらまともに摂取できない最底辺の生活を余儀なくされているという。
韓国に問われる大きな社会問題に目を付けた作品。これだけで観る価値があります。
マルコは手術が必要な母親を抱え、コピノとして苦しさの中で生きるため、
体力を生かして八百長ボクシング、スポーツ賭博、闇の仕事にも手を貸し、今では母親の手術費稼ぎに追われていた。マルコは育ての親・コリアン・フィリッピン養護施設のキム先生に父親の捜索を依頼し、先生から「信じておれば見つかる」と励まされていた。
ある日、マルコは銀行強盗の助っ人を頼まれ、電源の切断と警備員の無効化を担当した。
上手くことは運んだが警備員に追われ逃走中にベンツ車に跳ねられた。相手は韓国人女性のユンジュ(コ・アラ)で「貴方コピノ?」と驚いた。マルコは金で解決と思っていたがユンジュはマルコを病院に入院させ、精密検査を受けさせた。このあと、マルコはキム先生から「父親が見つかった」という知らせを受け、自宅アパートで韓国からやってきたカン弁護士に会った。「父親が会いたがっているからすぐ韓国に来て欲しい」とパスポート等必要書類が渡された。
カン弁護士はホギョン学術研究財団のハン理事(キム・ガンウ)にマルコのことを連絡(具体的には描かれない)した。財団は数個の大学と病院を運営しているという。
ハン理事は「3社が財団の不正を暴いた」という報告を聞きながら、カン弁護士の連絡を聞いた。「空港に迎えに行く」と応え、人工呼吸器に繋がれた理事長の父親に「フィリッピンから間もなくやって来る。“雑種人間”だけどもうすこし頑張れ!」と声をかけた。
“雑種人間”というところに韓国人のコピノに対する強い偏見があるようです。これがテーマと言ってよいと思う。
貴公子はカン弁護士がマルコのアパートを訪ねるのを見ていた(後をつけていた)。なぜ彼がつけているか?最後まで分からない!これが面白いところです。
マルコは航空機のビジネス席で韓国に飛んだ!
マルコの席に貴公子が近付いてきた。貴公子は「急遽韓国に行くことを不思議と思わないか?」「英語を使え!」「お前は死にに行く」と謎めいた話をして席を離れた。
空港に着くと、マルコはベンツ車に乗せられ父親のところへ向った。
父親のところに向かうにはおかしい、数台のベンツ車のコンボイだった。
ユンジュは空港でカン弁護士から「任務終了」を告げられた。ユンジュはカン弁護士を補助する弁護士だった。ユンジュはハン理事の妹で学生のガヨンに会ってマルコの資料を渡した。ユンジュは何者か?
ハン理事は財団の不正、後継者争いを暴いた関係者ふたりをえげつない方法で処刑し、これを医療関係者に見せつけた。
ハン理事は黒服に身を包んだ警護団に処刑者を隠密処理するよう命じ、父親のところに向け出発。法政大学理事長の不祥事を思い出しました!(笑)。
マルコが気付くと貴公子がベンツで並行して走っている!
貴公子が拳銃で撃ってきた。マルコの乗るベンツが横転、森の中に落ちた。マルコが車から這い出すと、貴公子が「又会った!」と笑う。マルコは逃げ出した。
ハン理事のところに非通知で「1000万ドル寄こせ!」と電話が入る。ハン理事は警護団にマルコ奪回のための出動を命じた。
ここから貴公子のマルコ追走劇がど派手に描かれる。
徒歩で逃げるマルコを貴公子が車で、徒歩で追う。マルコは交差する道路で下の道路に飛び降りると貴公子も飛び降りて追う。マルコがトンネルの中に逃げ込む。追う貴公子がせき込み追跡を諦めた。貴公子は胸を病んでいるらしい。これが物語にどう繋がるか?
マルコはカン弁護士に助けを求めた。ところが電話に出たのはユンジュ弁護士だった。ユンジュはマルコの居場所を掴み、ベンツで駆けつける。このドライブテクニックが凄い!
マルコが迷路の路地に逃げ込む。これをマルコが追う。ドローンで撮影し、この追走劇を面白く見せてくれます。貴公子の車が路地で動けない。そこにユンジュが駆けつけマルコを救出した。
ユンジュの車をカン理事の警護団が追う。
6-10台による高速道路でのカーチェイスを見せてくれ、これは見ごたえがあります
ユンジュは森の中に逃げきった。ユンジュは「あなたの父親がいる建物に近い。父親は死にかけている。財団の理事長よ、ラッキーボーイ。あなたの兄は必死よ。あなたの心臓が欲しいの。後妻が理事長に相続をガヨンにするよう遺書を書かせたから」と話し、「私は後妻側、どうせあなたは殺されるのだから」と拳銃を突きつけた。
その時、貴公子がユンジュの車にぶつかってきた。
この展開にツッコミを入れたいところだが、物語の面白さとテーマの良さで、大目に見ることにしました。(笑)
貴公子とユンジュが撃ち合いになった。マルコは逃げ出したが、あっけなくハン理事の警護団に捕まり、理事長の大豪邸に連れてこられた。
理事長の邸宅に着いたマルコにハン理事が「兄だ!父親に会え!」と勧める。
ガヨンはマルコが連れてこられたのを見て拳銃を準備し、ことの成り行きを見ていた。
マルコは父に会ってたじろいだ!ハン理事の「親孝行しろ!」の声でマルコの首に麻酔薬が打ち込まれた。
手術台にマルコは父と並んで眠っていた。ところが麻酔が切れて目を開けた。驚く医師たち。麻酔を打ったのは貴公子。貴公子が医師に化けて侵入していた!この展開、調子が良すぎる。(笑)
ハン理事が警護団を率いて手術室に現れ、貴公子と対峙した。
貴公子はマルコを人質に、ハン理事と1000万ドルでマルコを渡す交渉を始めた。ガヨンが拳銃で貴公子を撃ち銃激戦となった。貴公子は左脚を負傷したことに気付いた。ハン理事が「何を考えている」とガヨンの射撃を止めた。
ハン理事は交渉に応じ、貴公子の示す口座に1000万ドル振り込んだ。貴公子はマルコを解放した。すると、警護団が貴公子に銃を突きつけ取り囲んだ。これは貴公子の読みどおりだった。
貴公子は「俺はプロだ、舐めるな!」と隠し拳銃を取だし反撃に出た。手術室は大混乱、血が飛び散る修羅場と化した。ハン理事は絶命した。貴公子はマルコに支えられながら邸を後にしようとするとガヨンが拳銃を向けてきた。貴公子が「財産は君のものだ」と話すと「バカにしないで!そこの雑種族を殺して!」と要求してきた。マルコは「ここの財産などいらない」と叫んだ。貴公子が「天井のカメラが見ているぞ!」とガヨンを戒め、ここにやってきた経緯を明かした。
ユンジュ弁護士が移植心臓を欲しがり臓器売買に関わる貴公子に相談にきた。貴公子は「自分は心臓病で死ぬ運命にある。恩のあるフィリピン・コリアン養護施設を充実させたい」とキム先生と謀り、力のあるマルコを選び、マルコとともに韓国に渡りボギョン財団から金を奪う計画を明かした。これを聞いたマルコは「息子の心臓を欲しがる父親がいるか!」と激怒した。これが韓国人のコピノに対する感情らしい。
貴公子はマルコに「こんな家族の一員でなかってよかったな!俺はお前と同じコピノだ」と打ち明けた。
貴公子は「警察がくる」というガヨンを残してマルコに車を運転させ豪邸を離れた。
フィリピン・コリアン養護施設は建て替えられ、マルコの母親は入院し手術を受けた。
驚いたことに、貴公子の心臓病は医者がタバコを止めさせるために付けた偽病名だった。(笑)
まとめ:
ミステリアスで徹底したアクションを追求した作品だった。
貴公子は何者かが次第に明らかになるが、最後まで分からないというミステリアスな展開。コピノ出身の貴公子がコピノの処遇改善のためにマルコを囮に財産譲渡で揉める韓国の巨大財団から金をむしりとる話で、これを阻止するため数々の敵が現れてくる。これを徹底したアクションで描いて見せた作品。
暗い物語になるところが、コピノ出身の男に貴公子という名を付し、コミカルに描かれ、韓国ノワール作品ということには違和感を持ちました。
貴公子役のキム・ソンホ、容姿端麗でまさに貴公子に見え、さらに格好いいアクションを見せる。そしてコピノ役のハンカン・テジュ、「父に会いたい」と走って!走って!逃げるシーンが多かった。この一本気な演技もよかった。(笑)
とてもリアルな韓国の社会問題を捕らえた作品でツッコミどころも多いが、テーマ性を持ったミステリアスで壮烈なアクションを伴う作品、楽しめました。
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