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「あみこ」(2017)「どうせ死ぬ、頑張っても意味がない」と考える女子高生の恋と絶望!その先に見るものは?

 

ナミビアの砂漠」(2024)の監督山中瑶子さんが19歳から20歳にかけて、独学で撮り上げた長編初監督作品。「ナミビアの砂漠」が良かった!ということでWOWOWで観ました

第68回ベルリン国際映画祭のフォーラム部門に史上最年少で招待されたほか、香港国際映画祭やカナダのファンタジア映画祭など、各国の映画祭で上映された作品です。

どうせ死ぬと全てをあきらめた高校生が同じ考えをもつ男子高校生に、この人しかいないと恋焦がれ、やがて絶望の淵に立つ。ストーリーも凄い!が、高校生の心を映像化、これが面白い!笑った!そして絶望の中で彼女は何を掴んだか!山中監督の作家性がはっきり出ている作品で、主人公の成長した姿は「ナミビアの砂漠」のキャラクターの中に生かされています

監督・脚本・編集:山中瑶子、撮影:加藤明日花 山中瑶子、録音:岡崎友理恵、音楽:大堀翔太郎。

出演者春原愛良、大下ヒロト、峯尾麻衣子、長谷川愛悠、廣渡美鮎、他。

物語は

「どうせ死ぬんだから頑張っても意味がない」という考えを持つ女子高生あみこ(春原愛良)が、同じようなニヒリストだがサッカー部の人気者のアオミくん(大下ヒロト)に恋をする。一生忘れられない魂の時間を共有した2人は、運命共同体になるはずだったが……。(映画COMより)


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あらすじ&感想

冒頭、2月3日。あみこが教室からラグビーの練習を見るとアオミが見つからない。仰天してひっくり返り泣き出した。ひっくり方で如何にあみこが動揺しているかが分かるというもの。(笑)あみこがアオミと初めて話したのは1年前だった。

〇1年前の12月、あみこはアオミから声をかけられ“ひとり恋愛”に墜ちた。

 あみこは忘れ物して教室に戻る。教壇に座ると誰もいない教室は案外狭くて絶望がみえるという。一度通り超したアオミがあみこが居るのに気づき教室に入って来て「つんとしてるね」と声を掛けサッカーユニフォームに着替える。アオミが「サッカーが嫌いで外に出るのも嫌なのに何故やっていると思うか」と聞く。あみこが応えられないと「練習が終わるまで待ってろ!」と練習に出掛けた。

あみこはスマホで音楽を聴きながら待つが、寝込んでしまった。そこにアオミが戻り、あみこのスマホを調べ、「ロータス・フラワー(レディオヘッド)か」という。あみこが何故この曲が好きなのか?夕暮れの中、ふたりは山道を使って帰り始めた。

アオミがサッカーが嫌いなのにやる理由

その前に、あみこに「何を目指しているか?」と聞いた。「早稲田に行って稼ぐとしてもお金はわずかで、愛だと結婚して子供を作る。が、いずれ捨てられる。どの段階で幸せと感じるの?」と答えた。(笑)アオミは「どこに行っても意味はない、全員死ぬんだから。しかし、こんなことを考えずに高校生活を送る。大人になってあの時はと語るのが今だ!だから意味ないが考えないで最強者になればいい」と答えた。このあと「君は賢いよ!」と付け加えた。あみこは「アオミ君のその恰好、何か真理を感じた」と答えた。

あみこはアオミの家庭環境を聞いた。「親以上に姉2人に愛されている」と云った。あみこは家庭のことは話さず「友達は奏子(峯尾麻衣子)だけ、でも深いところでは繋がっていない」と話した。あみこは「女性には365日のうち一日は何に使ってもいい日がある。そういう日にAV女優にスカウトされたら私はどうなってもいいやる!」と話してアオミを驚かせた。あみこは何故こんな話をするのか?(笑)

あみこは帰宅して、夜、奏子にアオミのことを聞いた

帰宅すると自分でスパゲティを作って腹ごしらえ。この食べ方が石破総理より汚い!(笑)こういう食べ方は母親の躾がなかったからだ!

奏子に電話した。奏子は「好きな人できた!アオミ君は授業を聞いているだけで覚えられるタイプ」と云った。あみこは奏子にもアオミに会って話したことを言わないことにした。ベッドで「君は賢いよ!」とアオミに云われたことを思い出し、枕を抱いて泣いて喜んだ。この喜び方!(笑)

あみこの孤独と死にたい思いの原因は語られないが・・・。

あみこは家族のことをアオミに聞いても自分のことは話さない。家に居ても母親は出てこない。躾が出来ていない。父親はいないようだ。後に出てくるが、「奏子のところに3日ほど泊まる」といっても母親の答えはない(夜の商売か?)。自分は可哀そうな子で北越地区で8位入賞できるぐらいと思っている。(笑)孤独と死にたい主原因は家族にありそうだ。

以来、あみこは教室に居残り。ひとり教壇に座りアオミを待つ!(笑)

 あみこはビデオレンタル店を彷徨。でもアオミに会えない

 〇3月、廃炉のある丘であみこと奏子が会っていた

奏子は編み物、あみおは寝そべって糸球から赤い糸を繰り出す役割。あみこはどんどん糸を繰り出し、彼女の胸は赤い糸で埋まる。(笑)これが面白い画になっている。ロケ地がすばらしい!あみこは耐えられなくなって「好きな人が出来た!」と走り出した。あっけに取られて、奏子が追った。

〇6月、アオミに会ってから半年たった。相変わらず居残りで教壇に座り、待つ

窓からサッカー部の練習を見る。アオミは教室に戻り疲れてうっぷしているのを見届け、声を掛けず帰宅する。何故、あみこはアオミに話しかけない。

〇7月、皆が憧れる瑞樹先輩(長谷川愛悠)がやってきた

放課後、居残りの女生徒たちが「誰から誘われるか」とタロット占いをやっていた。これを無視して、あみこは机を挟んで奏子と対峙。あみこがフランス語教本を読み、奏子がメモする。あみこが「ジュテーム、ジュテーム」と繰り返す。(笑)

タロットグループが慌てて教室を跳び出す。昨年学園祭の司会に訪れた瑞樹先輩のお出ましだった。この騒ぎにあみこと奏子が窓から廊下を覗く。ふたりの覗く構図が面白い。笑った!

あみこは「何故あんな風に、自分にはない女性にエネルギーを使い可愛がることが出来るのか。私と奏子はあの女性たちと関わらず、彼女らを間抜けだ」と思った。

帰宅したあみこはテーブルに座り、足をテーブルの向こうの椅子に乗せ(この構図が面白い)、スマホで瑞樹先輩をフローしていた。

〇10月、居残り勉強が始まった

3人の女高生が居残り勉強していた。まみ(廣渡美鮎)があみこを自販機に誘って話かけてきた。このセンスがいい。まみは「部活を止めて受検勉強に励む、一緒に勉強しない」と誘った。あみこは「来週から塾に行くことになっている」と嘘ついて断わった。

あみこ自身が“スクールカースト”を作っていると見ました

 〇12月、あみこと奏子は遊園地で遊んでいたら・・・

あみこは「みんな変な顔!」とジェットコースターの客を見ていた。奏子はこれとは逆に「あの人、イケメン、アオミ君?」とメリーゴーラウンドを見ていた。(笑)スマホで撮った映像に彼女と一緒のアオミ君。

家に戻ったあみこはベットに上向きで寝て、(笑)「アオミ君は先週部活を辞めた。こういうことか!」とレモンを舐めて悔しがる。(笑)一方のアオミと瑞樹は絵本の中に何匹の鮫がいるか当てっこ。あみこは知る由もなかった。(笑)

〇1月、教室でアオミが居なくなったと男子高生が大騒ぎ

「多分瑞樹さんがアオミ君の居場所を知っている」とまみが笑う。アオミは瑞樹のアパートで料理を作って、セックスして・・・。

あみこは家に戻り、「瑞樹先輩なんか大学落ちて、上京した親友が処女喪失して帰りにみた太陽の輝きの気持ちも知らず、自転車で予備校に行けばいい(笑)」と大量のレモンを輪切りにして風呂の中で涙だしながら食べた!大量に食べるにはこの方法しかない!あみこは天才だ!(笑)

〇あみこは教室からサッカー部の練習を見て、アオミ君が居ないのを確認して倒れた!(冒頭シーン)

〇あみこはアオミに会うため上京することにした。

あみこは貯金箱からお金を取りだし奏子からお金を借りて資金を作った。奏子には「連絡はできないが必ず戻って来る」と約束した。

早朝、「ママしばらく奏子の家に泊まる」と言い残し(母親は居たのか?)制服にベージュのコのート、赤いリュックを背負って出発。新宿につきマック店で腹拵え。(笑)

瑞樹が通う予備校の前で彼女が出てくるのを待ち、つけた。瑞樹は公園で化粧して繁華街に出て、そこでガールズバーのキャッチに挨拶して消えた。

あみこはこんなアルバイトしている瑞樹先輩に勝負するめの準備を始めた。

街中を大声で歩く男をつけて、男の真似して「嘘つき、嘘つき」と発声練習。(笑)公衆電話で口喧嘩の練習。(笑)いちゃいちゃしてるアベックに「本当に愛してるなら踊って見せて!」と三人で踊り度胸をつけ、「日本人は勝手に身体を動かすなんてできないの」と難癖をつける練習をした。(笑)

ガールズバーを出た瑞樹をつけて彼女のアパートに着いた。アパートの踊り場で朝を迎え、瑞樹が出勤するのを待った。アオミを撲るため拳に“PURE“と書いて部屋への突入準備。(笑)瑞樹がアパートを出た。

〇あみこはアオミの居る部屋に突入

アオミはベッドに眠っていた。あみこはコートを脱いで制服になり、アオミの上に乗り「アオミ君!」と揺り動かすが目を覚まさない。(笑)「アオミ君、何でここにいるの?このベットでやっているの。なんであんな女と。私たちのあれは魂の会話じゃなかったの?何か言って!」と責めた。アオミが「俺、サンボマスターが好きだ!」と寝惚け眼で喋った。アオミはあみこのことなど覚えていない。あみこは「この低俗野郎が!」と唖然として後ろにひっくりかえった。 (笑)

そこに忘れ物したと瑞樹が帰ってきたが、あみこが追い返してドアーに鍵かけた。

あみこはアオミと対峙し「立派な紐になった。君にこんなこと出来ないよ」と話す。アオミは「どうでもよくなった、死にたくなった」と答えた。おみこは「君はずるい!私は可哀そうな人ランクで北信越地区のベスト8に進出できる。でもアオミ君は長野県でぶっちぎりの1位だよ」と笑った。「バカ、死ね!瑞樹先輩のどこがいい」とPUREの拳で殴った。(笑)

帰りの電車ホームに佇むあみこ。「黄色い線までお下がりください」のアナウンス。あみこが下がらず、崖っぷちの中で考えていた。最高のおわり方だと思った!

まとめ:

深いテーマを持ちながら、スカッとするとても面白い青春恋愛劇だった

絶望のあみこ、ホームから電車に飛び込むか?これまで見て来たように、これを面白く描いてくれましたが、「死ぬ、死ぬ」と言いながらあみこは強い子でそんなことにはならないでしょう!自分で壁を作り、自分を閉じ込めてしまったことを反省。これをPUREの拳でぶち壊す、いやPUREだけではどうにもならない現実。しっかり考えて良い相手を見つけるでしょう。テーマも良いが、あみこの心情を面白画で描写、これがすばらしかった。

春原愛良さん、高校生らしい熱演でとてもよかった

お金を使わないでもこんなに面白い映画が作れるということ再認識しました。(笑)

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