小学校時代に個性を生かす教育がいかに大切かが分かる。
黒柳徹子さんの自伝的小説「窓ぎわのトットちゃん」をアニメーションで初の映画化した作品。自由奔放な小学生トットちゃんが独自の教育方針を持つ学校で成長していく日々を綴ったもの。
黒柳徹子さんのイメージ。好奇心旺盛で、ずばずばものを言い、相手の立場を尊重、決して貶すようなことはない。芸能界だけにとどまらずユニセフ親善大使として活躍。しかし、黒柳さんがどういう環境で育ったかを知らなかった。ということWOEOWで放送される機会に鑑賞しました。合わせてNHK「黒柳徹子さん『窓ぎわのトットちゃん』の学校を語る」を観ています。
自分のやっていることに“間違いはない”と確信が持つ。人を大切にし、人のために働く、泣けるシーンも沢山ありました!
こういう人になろうと思わせてくれる人、これが本の売れる理由でしょう。未読です。
監督・脚本:八鍬新之介、共同脚本:鈴木洋介、キャラクターデザイン・総作画監督:金子志津枝、音楽:野見祐二、アニメーション制作:シンエイ。
物語は、
落ち着きがないことを理由に小学校を退学になってしまったトットちゃん。彼女が新しく通うことになったのは、電車の車両が教室という一風変わった学校・トモエ学園だった。校長先生は、出会ったばかりのトットちゃんに「君は、ほんとうは、いい子なんだよ」と優しく語りかけ、トットちゃんもこの学校と校長先生が大好きになった。個性的な生徒たちに囲まれ、トットちゃんの元気いっぱい、すべてが初めてだらけの日々が始まる。(映画COMより)
あらすじ&感想:
トットちゃん、「トモエ学園に転校する前の教室では、
授業中に先生の話を聞かないで机の蓋をバタバタ開ける。漫画を描き始める。チンドッヤが通ると窓を開けて声を掛け、生徒がそちらに気を取られて授業にならない。
昭和15年(1940)、トットちゃんは新しい小学校に転校するため試験を受けた。
校長の小林先生(役所広司)が丁寧な面接を実施した。「何を話してもいい」という小林先生の勧めで、トットちゃん(大野りりあな)は今関心があることを話し、最後にパパとママのことを紹介して「どうして私を困っている人というの」と先生に聞いた。小林先生は「君は本当はいい子だよ」と答えた。
校長先生から貰ったこの言葉がトットちゃんの心の支えになった。
次の日からトモエ学園に行くのが楽しみで、朝早く起きてランドセルを背負ってママ(杏)のお手伝い。パパ(小栗旬)のために天気予報をラジオで聞く。このことが後のTVの仕事を選ぶことになったのかなと思った。
電車の教室に入ると、まだ誰も来ていない。
トットちゃんはこの教室が大のお気に入りだった。教室に入ると電車に乗った気分になり窓にゾウさんやパンダが現れ、そして海の中へと走っていく想像の世界にいた。この創造性がトットちゃんを特異な子に見せるらしい。
授業は各自が好きなものをしていい。
大石先生(滝沢カレン)の授業。絵を描く子、ピアノを弾く子、習字をする子。運動場で遊ぶ子など。出来たら先生のところに持っていく。トットちゃんは見ていた。ビッコの子がいた。小児麻痺だという。手に触ると冷たい。山本泰明君だった。
お昼の弁当の時間。
小林先生の「山の物と海のものを持ってきたか」の声に合わせて、生徒は自分の弁当のおかずを海のものと山のものと言い当てる。こうしてバランスのある食事をする。
トットちゃんはお母さんが作ってくれた弁当を見た。小林先生が「豪華だね、デンブは海と山のどちら?」というと、みんながトットちゃんの弁当を覗く。小林先生のピアノで「食べよう、食べよう」の歌を唄って、食事が始まる。
お昼は皆でお散歩。
校外の世界を知る。神社で仁王を、流れ星の落ちた場所を見た。教室に戻ると泰明君がいた。小林先生が「一緒に遊んだら」と薦める。これをトットちゃんが見ていた。
ある日学園で、トットちゃんが財布を汲み取りトイレに落とした。
トットちゃんは汲み取り式トイレに財布を落とし、どうしても拾いたいと柄杓でウンチを外に出し始めた。今の子にこの話、分かるかな?(笑)そこに小林先生がやってきた。先生は「終わったら、もとに戻しておきなさい」と言っただけで、怒らなかった。黒柳さんは小林先生の“この言葉”が生涯の想い出に残ったという。これは大きな自立心を育てる言葉だと思った。
運動の時間、運動遊具で遊ぶ。
トモエ学園にあたらしく電車がやってくることが皆の話題になった。小林先生が夜、見にいなさい」と言った。
その夜、生徒たちは学園に集り、電車がどうやって来るかを見た。
台車に乗せれられた電車がトラックに牽引されてやってきて、コロを使って決められた位置に設置された。新しい電車は図書室だった。疑問を体験で解決するという教育。
トットちゃんはプールに泰明君を誘い、泳いだ!
素っ裸になったトットちゃん、本を読んでる泰明君を裸にして「恐ろしくない」とプールに誘い、「足で立てる」と励まし、泳がせた。ふたりは水に潜った。泰魚になった気分で泳いだ。
夏休み。トットちゃんは梯子を使って、泰明君を大きな木の上に上げた。
泰明君は失敗しながら木に登ることが出来、「木に登るとはこういうことか」と感動した。そして、「外国の大学にいる姉から聞いた話だけど“世界を平和にする魔法の箱”(TV)があるらしい。トットちゃんも出たらいい」と話して、聞かせた。
黒柳さんにはこの時期からTVに関わることが頭にあったかもしれない。
トットちゃんは夜店で両親が「弱いからダメだ」というのに「一生のお願いです」とヒヨコを買ってもらった。
ダンスの授業時間。
小林先生が「裸足になって、ピアノのリズムに合わせて」とピアノを弾き、生徒はリズム合わせ先生の言葉“歩いて”“輪になって”にしたがって踊る。こうして床が生徒たちが描いた楽譜で埋まってくる、見事な映像でした。どうやらこれがリトミックという教育法らしい。
トットちゃん、ヒヨコが亡くなりを死の世界を知る。
トットちゃんはこのことを泰明君に話した。泰明君が「ヒヨコは頑張って生きた!天国に行った」という。「どんなところなの?」と聞くと「みんな天使になる」と答えた。トットちゃんが命というものを体験していく。
トットちゃんは「演奏練習しているパパに会いに行こう」と泰明君を誘った。
パパは交響楽団のコンサートマスター。早く歩けない泰明君を自転車付のリヤカーに乗せて走った。危ない!危ない!(笑)
練習場に着くと、パパが「アンサンブルが壊れる!」と怒り心頭のドイツ人指揮者ローゼンストックをなだめていた。そこに「三国同盟が成立、アメリカは大人しくなる」という報が届いた。ローゼンストックは「私はもうドイツ国民ではない。音楽家としての使命を達成する」と練習が始まり、「うまく行った」と笑うパパを見た。
トットちゃんが大石先生を叱る小林先生を見た!
大石先生が生物の授業で「人間にもしっぽのある時代があった。女性的な高橋君にはあるんじゃない」と言ったことを取り上げて注意しているところをトットちゃんが目にした。「高橋君がどんな劣等感を持ったか考えたことがあるか?」と糺していた。大石先生は「間違っていました」と謝っていた。
運動会でトットちゃんは二人三脚で泰明君と組んで走った。
結果はラストだったが、母から褒められ、泰明君の母親から感謝された。
昭和16年12月8日、日本は米・英の戦争状態に入った。
トットちゃんはパパとママを「お父様、お母さま」と呼ぶように言われた。
沢山の人が出征していく。
相撲大会。
トットちゃんが男の子たちを負かす。山内泰二君(後の物理学者)が「お前をお嫁さんにしない」と言い出す。トットちゃんは「お嫁さんになりたい。私より強い人いない」と言うと泰明君が手を挙げた。小林先生が「危ない!」と止め、腕相撲になった。泰明君が勝った。「ずるするな1」と泰明君が怒った。
「トモエ学園はボロ学校」と囃す男の子だち。
「トモエは変な子ばっかり教えるから生徒が沢山辞めている。トモエは変な学校、そんな身体でどうやって戦う」と囃す。泰明君が「トモエはいい学校」と歌い出し、級友たちみんなが肩を組んで「いい学校」と歌って男の子らを迫る。男の子らは逃げて行った。小林先生はこれを見ていた。
銀座で警察官に「華美な服装だ」と責められるトットちゃん家族。
母が「申し訳ありません」と謝ると父が「謝るな!法令にない、人の妻をじろじろ見るな!」と怒った。トットちゃんが機転を利かせ、買ったばかりの覗きガラスを警察官に渡し「穴を覗いて」と声を掛け、警官が覗いている間に三人は路面電車に乗ってその場を離れた。(笑)ところが「華美な服装はつつしみましょう」と気勢をあげるデモ行進に出合い電車が急停車した。(笑)
弁当は日の丸弁当になって行った。
弁当に海のものがない。「私たちが我慢すれば兵隊さんが食べられる」という。トットちゃんは「じゃ、私たち兵隊さんになろう」と声を上げた。(笑)
電車のキップ切りの人も女性に代ってきた。
昭和18年、父親は仕事を休むようになった。弁当もわずかな豆になってきた。何時もお腹が空いていた。
雨の日の図書館、泰明君がアンクルトムの自伝を読んでいた。
「黒人奴隷の話で白人のために働かされているが、トムは違った、差別に負けないんだ」とトットちゃんに話す。「トットちゃんは何読んでいる?」と聞かれ「花嫁さんの話」と答えた。(笑)
学園からの帰り、ふたりはお腹が空いて「よく噛めよ、噛めよ噛めよ食べ物」と歌っていると「いやしい歌を唄うな!立派な銃後の人民だ」と男の人から注意を受けた。トットちゃんは「だってお腹が空いた」と泣いた。
すると泰明君が水溜まりの中で飛び跳ねて音を出し、そのリズムで踊ってみせた。元気が出たふたりは雨の中を走った。駅で泰明君が「これ!」と本を渡す。トットちゃん、、「学校が終ったら返す」と約束して別れた。
父に食料と引き換えに軍歌をバイオリンで弾いて欲しいと依頼がきたが断った。ママと一緒にパパのバイオリンを聞いた。
トットちゃんが登校すると、小林先生から「泰明ちゃんが亡くなった」と聞かされた。
教会での泰明君とのお別れ会。
トットちゃんは泰明君の遺体に「本を返せないね!いつか大きくなったら、どこかで会える。そのとき治っているといいけど」と声を掛けた。「トットちゃん、いろんなこと楽しかった。君のことを忘れない」という泰明君の声が聞こえた。
トットちゃんは教会を抜け出し、出征兵士を送る列の中を走った。戦争ごっこする子供たち、負傷兵、遺骨を抱く女性を見たが、泰明君との出会いを思い出で一杯だった。
学園に戻り、水溜まりの中で一杯泣いた。そこに小林先生が「大事な本だろう」と届けてくれた。
昭和19年、お母さんに赤ちゃんが産まれた。トットちゃんはしっかりした少女になっていた。
トモエ学園はしばらく閉校することになった。
生徒それぞれが将来何になりたいかを話して別れた。山内君は「物理学を学んで立派な博士になる」と話した。トットちゃんは「どんなに遠くに行っても必ず戻って皆を元気にしたい」と話した。そして小林先生に「大きくなったらここの先生になる」と話すと「君は本当にいい子だな、元気でいてよ」と声を掛けた。
昭和20年、トットちゃんは青森の田舎に疎開することになった。
トモエ学園は空襲で焼けた。小林先生は焼け落ちる校舎を見て「こんどはどんな学校を作ろうか」と言ったという。
黒柳さんは「小林先生の子供に対する愛情は焼け落ちる炎よりも大きかった」と思った。
まとめ:
この時代にこんなに自由な学校があったことに驚いた。
トットちゃんのいろいろなエピソードが楽しく描かれ面白かった。
トットちゃんの姿が黒柳さんの子供の頃はこうだったと思わせてくれる絵でした。絵がよかった、そしてトットちゃんの声を演じる大野りりあなさんの元気で可愛い声がよかった。
トットちゃんが元気で跳ねまわって、勇気があってみんなと仲良し。観る子供たちの憧れの人になると思う。
身体の弱い泰明君と大の仲良し、もう恋人だった。ふたりのプールでの水泳や水溜まりでのダンスはファンジックで最高だった。それがあんな悲しいことになって。この悲しみを乗り越えていくトットちゃん物語。ストーリーにメリハリがあってトットちゃんがお姉ちゃんになっていく姿が感動的だった。
泰明君を通して、偏見を持たない。身体の弱い泰明君を決して弱い子として見ず、常に一緒に行動する。その反面、泰明君からTVのことや黒人問題ことなど沢山のことを学んでいくところが素晴らしかった。
平和についてお父さんから音楽を通して少しづつ感じていく描写がよかった。
黒柳徹子さんのコメント
先生は、いつどこで私に会っても、「君は本当はいい子なんだよ」ってずっと言い続けてくださいました。どんな時代となっても、すべての子どもたちが取り残されない、一人一人の良い所を見い出してあげる、そんな世界であってほしいと思います。
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