原作は人気の中国人ズー・ジンチェンの小説「“悪童”たち」。舞台を沖縄に移して映画化。殺人犯と少年たちが繰り広げる心理戦の行方を描いたクライムサスペンス
タイトルが「ゴールド・ボーイ」、どこかに救いがある、ボーイ・ミーツ・ガールの話で終わるはずと観ていましたが、騙された!ここまでやるかという子供の犯罪。こんな話が今の日本にあるか?聞いたことはないが、今日顕在化してくる貧富差の拡大、社会のネット化、夫婦関係の崩壊などの社会問題の行き着く先に子供をここまで追い詰めることになるかと恐怖を感じた。
監督:平成「ガメラ」3部作の金子修介、脚本:港岳彦、撮影:柳島克己、編集:洲崎千恵子、音楽:谷口尚久、主題歌:倖田來未。
出演者:岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、松井玲奈、北村一輝、江口洋介、他。
物語は、
実業家の婿養子である東昇は、ある目的のため、義理の両親を崖の上から突き落として殺害する。それは完全犯罪のはずだったが、3人の少年少女がその現場を偶然にもカメラでとらえてしまう。それぞれ複雑な家庭環境や家族の問題を抱える少年たちは、東を脅迫して大金を手に入れようと画策するが……。(映画COMより)
あらすじ&感想:
冒頭、沖縄。東ホールディングス代表取締役夫妻を婿養子の東昇(岡田将生)が崖から海に突き落とし、大声で泣きながら人を呼ぶシーンで物語は始まる。
〇昇と妻の静(松井玲奈)が自宅マンションで警察の取調べを受けた。
昇は「父は気を失っていたように見えた。母に肩を掴みふたりは落ちて行った」と証言した。静はおかしいと異論をはさむ。警察から「薬を使っていたか」と聞かれ、昇は「抗生物質を飲んでいたようだが分からない」と答えた。警察からベーター遮断剤、血圧の薬がポケットに入っていた」と教えられた。昇は「飲むと眠くなる」と答えた。
〇この殺害状況を偶然撮影した中学生たちがいた。
中学生たちは安室朝陽(羽村仁成)、上間浩(前出燿志)、上間夏月(星乃あんな)の三人だ。
中学2年生の朝陽は夏休みになる最期の日、担任が「自殺はダメだ、命だ」と懇々と説くのを聞いて、「(今は離婚している)父の打越一平(北村一輝)の義理娘アキが亡くなった理由が、自殺だった」とほっとした。
帰宅したところに、昔近所に住んでいた友達・浩が妹の夏月を連れて尋ねてきた。
浩が「親父を殺してきた、何か食わせてくれ」という。夏月が「襲ってきた父を刺したのは私です」と言った。朝陽は「13歳だから捕まらない、母がいないから家に泊まらないか」とふたりを誘った。13歳に拘るところに朝陽の異常さがみられた。
浩と夏月の関係は、親が再婚で兄弟になった関係。夏月がトイレにいるところを父親が「人殺しの娘には罰をあたえる」と襲って来たという。浩の家は民宿を営んでいて、そこで殺人事件があった。犯人が夏月の父だと言われたが、亡くなる前に「やってない」と知らせてきたと夏月がいう。
3人で外食することにしたが金がない。浩が生徒を脅して金を作った。
朝、朝陽は外で大声がする声で目覚めた。
外に出ると、「朝陽は人殺し」という張り紙がしてあり、近所の人が騒ぐ。朝陽は警官が「心あたりはないか?」と聞かれた。そこに父の一平がやってきた。浩と夏月には隠れるように指示した。
一平が「母さんいないか?」と聞く。「ホテルで働き、そのあとパン工場で働いている」と伝えた。朝陽は「なんでこんなことをおばちゃんはするのか?」と聞いた。一平は「分からん、心当たりはないか?」と聞き、「苦労させないようにする」と金を置いて帰っていった。
朝陽はこの金でカメラを買い夏月にプレゼントした。
美しい海辺で「夏月が亡き父に送りたい」という写真を朝陽が撮っていた。朝陽は間違えて動画を撮った。「崖から人が落ちている!」と異変を発見した。
〇朝陽たちは動画をPCでみて、殺人事件だと確信した。
「人に押されてふたりが崖から落下、殺人事件だ」と確信した。TVで事件が報じられ、「亡くなったのは東ホールディング会長夫妻。資産24億8千万を下だらないとあたしいう。朝陽が「資産狙いの殺人、あの人に送れば数千万は取れる」と浩と夏月に提案した。ふたりがびくつくと、「俺たちの問題は金さえあれば解決する」と説明した。
〇静は従兄で県警刑事の東巌(江口洋介)の訪問を受けた。
静は「昇が犯人だ」と伝えた。巌は「偶然にしては酷い事件だ!彼は入り婿だから財産は所有できない。彼のメリットは何か?」と聞く。静は「受け取り名義はほとんど私になっている。私が死んだらあいつの物になる。昨年、離婚を切り出した」と答えた。「離婚の原因は私に男が出来たこと。その男はここに来たことがあり、昇は知っている。もし私が死んだら昇の仕業、これだけは言っておく」と話した。
〇朝陽たちは昇に事件証拠としてカメラを担保に6000万円を要求した。
昇を葬儀場の地下駐車場で捕まえ、昇の車に乗り込み、浩が昇の首にナイフを突きつけ、朝陽と夏月が交渉した。昇は「俺が資産を継ぐことはないから6000万は無理だ」と答えた。昇はナイフを奪って3人を殺したいと考えたが、止めた。「うちの家族は複雑だから少しまってくれ」と電話番号を教えた。
この後、静の紹介で昇は巌に会った。
巌は昇の供述「気を失った人が妻を掴むか?」には不自然さがあるという。昇は「ふたりは最期まで愛し合っていた」と答えた。
朝陽は家に戻ると、母・香(黒木華)が仕事から戻って来た。
香は朝陽がアキの殺人犯にされたことをひどく怒っていた。朝陽は「父さんはなぜあんな人と結婚したの?」と聞くと「ふたりは大学の先輩後輩でお互い別の人と結婚して子供を作ったのに青春時代にしがみついている大罪人だ」と答えた。思春期真っ只中の朝陽には強い憎しみが生まれた。
〇昇は朝陽らを呼びカメラを手にすることなく60万円の支払いで済ませた。
昇と静は離婚し、静はマンションを出て行った。昇は朝陽らをマンションに呼び寄せた。朝陽は浩を残し夏月と出かけた。朝陽は部屋に入るや否や昇が本に隠していたナイフを取り上げ交渉に入った。なかなかの曲者だった。昇は「計画変更だ。俺の物はなにもない、嫌なら警察に突き出せ!」と60万円を渡した。これだけで朝陽たちは「勝った!」と満足だった。
帰り路、夏月が「自分は殺人者だからいいが、朝陽を犯罪者にした」と悔やむ。朝陽は「本当に父が死んだのか確認しよう」と夏月の家を尋ねた。
夏月の父は生きていた。
ふたりが家の中の状況を確認していると父親が戻ってきて、夏月に襲い掛かった。ふたりが戦い、夏月が父親を取り押さえた。金を渡し二度と夏月に関わらないことを約束させた。夏月はとても強い子だった。「父を刺したときナイフが骨にあたりキ~ンと音がした」と話す。(笑)
夏月が父親殺しの犯人でないことが分かり、夏月は明るい子に変った。そして朝陽に心寄せる子になっていった。
〇静が車運転中、自損事故で亡くなった。同乗者の男は大怪我、彫り物のある男だった。
朝陽たちはラーメン屋のTVで知った。昇は遺産が入ると考えた。警察署では巌が担当刑事に「昇が犯人だ」と訴えたが、「この会社には島の皆が世話になっており、あなたも身内だ。新聞社もうるさい」と取り上げられなかった。しかし、刑事が「静は麻薬を使っていた」と漏らした。
〇朝陽はマンションに昇を尋ね、「静をどうやって殺したか」と迫った。
朝陽は「僕の勝ちだ!奥さん、どうやって殺した。薬だよね、時間差が出る!」と迫った。昇は「お前は何者だ?」と恐怖を感じていた。そこに刑事の巌が事情を探りにきた。昇は「勉強を見ている子だ」と朝陽を巌に紹介した。朝陽はそこにあった微積分の教科書の問題を解きこれを証明してみせた。昇に貸を作って、朝陽はマンションを出た。
昇は静の死について「男がいるのは良く知っていた。静が他の男を愛したことは許せず殺したかったが、それさえも叶えさせてくれなかった」と説明した。
朝陽は夏月を連れて昇のマンションを尋ねた。
昇は朝陽の推理力を認めあっさりと「美容サプリに麻薬を仕込んで運転中に死ぬようにした。しかし警察と東家がずるずるの関係で公開されることはない」と告白した。
朝陽は「私にも父親とその再婚相手を殺したい。お金より人を殺したい」とカメラとの交換条件を出した。夏月は驚き反対した。が、「これは譲れない」と夏月の反対を押し切った。昇は「殺人はやらないが助けてやる。カメラを返し、6000万をちゃらにせよ」と提案した。朝陽はこれを受け入れた。昇は「こんな悪党だらけの日本はどうなる」と毒言を吐いた。(笑)
朝陽は父親夫婦を殺害する案を浩に説明した。
「母さんを苦しめた父さんは許せない。おばさんも許せない。覚せい剤で死んでもそれを伏せる警察もおかしい」と。夏月が「私も手伝う。一生朝陽と一緒に罪を背負う。これが終ったら浩と一緒に施設に入る」と賛同し、浩も了解した。
〇朝陽らに昇が加わり、アキの命日に墓地で父親夫婦を殺害することにした。
墓場の下見。昇が「怨恨だとバレる!朝陽は外す。自分と浩で遺体を埋める穴を掘る、夏月と浩で夫婦を殺す。これが終ったら一斉に縁を切る!」と殺害計画を指導した。
夏月は「やる!」と受け入れた。夏月は「施設に入って朝陽とは別れることになるが繋がっていられる」と言い、「明日1日だけデートして」と朝陽に求めた。
朝陽と夏月はデートを楽しんだ。
夫婦殺害の当日、
計画どおり殺害が進んだ。昇は穴に埋める浩の映像を撮った。朝陽は補習授業に出席し気が気で仕方がなかった。
朝陽は夏月から殺害状況を聞き、「一生好きだ!一生の人だ忘れない」と夏月にキスした。
〇埋葬穴がのら犬によって暴かれた!
「沖縄市宮里男女2名死体破棄事件」として報じられた。捜査本部は「アキは中学で首吊り自殺、父親は3年まえに妻の香と離婚、息子の朝陽はアキとトラブルがあった」と掌握していた。巌はこの情報を掴み「朝陽には昇のマンションで会ったことがある」と朝陽の母親・香に会うことにした。
香は「朝陽と昇の関係は分からない。浩は昔近所に住んでいた子」と話した。
〇朝陽らはマンションに昇を尋ねカメラを渡すことにした。
昇はデーターを確認せずUSBメモリーを破壊し、「これでお互いに人を殺した記憶を持つ、もう俺を脅すな!」と言った。朝陽も了解した。昇は「今日は朝陽の誕生日だ!」とピザとワインに氷をいれて出した。昇は「墓に行かなかったか?絶対にのら犬では見つからないようにしていた」と朝陽を疑った。突然、浩、夏月が苦しみ出し、朝陽も苦しんだ。朝陽は氷を口からき出し、夏月を救おうと手を出したが昇に踏まれて叶わなかった。朝陽が立ち上がりワインを飲んでいる昇の首にナイフを刺した。浩が息を吹き返した。朝陽は「これで証拠が残っているのはふたりだ。遺体が速く見つかったのは警察に早く捜査をしてもらいたかったからだ」と昇に話し、ナイフを抜いて自分の腕を切って血まみれになった。そこに巌が掛けつけた。朝陽は「助けて!人殺しです」と泣いて巌に訴えた。
○病院で朝陽は巌の取調べを受けた。
巌は「昨日は14歳の誕生日だったね、おめでとう」と言い、「だれが昇を脅そうといったのか?」と聞いた。「浩です。彼は街で学生を脅して金をとるようなやつだ」とノートのメモを見ながら答えた。「静さんが昇に殺されたと言い出したのは誰か?」に「浩です。震えていました」と答えた。「どうして父親とその再婚者が殺されているが?」に「僕のせいです。僕が殺した」と答えた。
巌は「君が殺してないことは分かっている。昇の動画も見ている。」と否定した。朝陽は「夏月が好きだった。彼女が僕の補修授業を知って“何んで殺した”と喜ぶとやった」と証言した。「墓を掘り返して見たのは君だね」には「父が喜ぶと思ってやった」と答えた。
朝陽の供述は完璧だった。
○朝陽は退院し家で療養していた。そこに夏月からの手紙が届き、母が先に呼んだ。
手紙にが「朝陽ごめん!朝陽がいないとき日記を読んだ。最初は小説かとおもったけどアリバイに使うためだったね。みんな嘘だった。怒っていないよ、朝陽がそれでいいというならそれでいい。最初からこうなると思っていた。朝陽とならどんな地獄へもいける。私は、あなたを永遠に許す」とあった。
母がこれを読んだことを知った朝陽は母・香を殺そうとしたが母の「せっかく父さんの遺産が入るから考えさせて!」という言葉で、しばらく結論を待つことにした。
朝陽は母親の買い物をするために街にでたところで、巌に出会った!そううまくはゆくまい!ここで朝陽は逮捕されると思った。
まとめ:
物語は二転三転し驚く結末に。
朝陽は顔に似合わずどうしようもない悪童だと思いました。サイコパスではない!時代が作ったこのような子が将来出てくるかと思うとぞっとします。
その背景父親が再婚して同じ歳のアキがいて、同じ学級で授業を受けるという歪んだ環境。母親は離婚し母子家庭。仕事を掛け持ちで働きほとんど家を留守にしている。大学に行ける金はない。世間に耐えられない朝陽の気持ちも理解できないことはない。しかし、ここまでやるか。
それを助長したのは父親殺しで居場所を失った上間兄妹との出会い。
朝陽にとっては同じ運命の子だった。意気投合して資産家殺人犯をゆすり金を稼ぎ、最後は殺人犯と姉妹を使って父親夫婦殺しを実行。さらにこれに気付いた母親・香を殺そうとする。もはや言葉がなった。
殺人犯・昇と少年・朝陽が繰り広げる心理戦、騙し合いの行方。
プロットが実に巧でうまく繋がり分かりやすい。大人の殺人犯・昇に子供たちが挑むゆすり、騙し。殺人犯・昇が岡田将生さんだからどう挑戦しても勝てまいと思ったが、朝陽に対する天才的思考能力付与で、昇と朝陽の騙し合いを最後まで面白く見せてくれました。これを真似する少年が出ないことを願っています!
登役の岡田将生さん。
主役だと思ったらそうではなかった。(笑)しかし、絵になる人ですね!(笑)いい人のも悪い人にもなれる。なぜこの人を捨てたか妻・静の気持ちが分からない。もう少し掘り下げが必要だと思った。
朝陽と夏月のボーイ・ミーツ・ガールストーリー。泣けるほどに純粋な恋だった。
夏月役の星乃あんなさん。とのかく純粋で清潔な演技で、朝陽といい関係で終わるのかなと思ったが、最後に昇に毒殺されてしまう。しかし、ふたりの関係が観る人を柔らかい気持ちにしてくれました。「成長した姿を撮って、写真を燃やして天国に父に送る」という彼女の発想、優しさがよく出た言葉だった。
現在日本社会の問題もこの事件の背景に近づいている。こういう視点で観る子供の事件、面白い作品だと思いました。
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