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「エゴイスト」(2023)性愛で描く、エゴイストが愛に目覚める物語!

 

昨年の邦画の中で評判のよかった作品見逃していてWOWOWでやっと観ることができました。

男性カップルの性愛をここまで描くようになったかと思った。これがあるから「エゴイスト」のタイトルが分からる作品だった。(笑)

原作:エッセイスト・高山真さん(2020没)の自伝的小説「エゴイスト」。未読です。

監督:松永大司脚本:松永大司 狗飼恭子撮影:池田直矢、編集:早野亮、音楽:世武裕子LGBTQ+inclusive director:ミヤタ廉。

出演者:鈴木亮平宮沢氷魚柄本明阿川佐和子、他。

物語は

14歳の時に母を亡くした浩輔(鈴木亮平)は、田舎町でゲイである本当の自分を押し殺して思春期を過ごし、現在は東京でファッション誌の編集者として働きつつ自由気ままな生活を送っている。

そんなある日、浩輔は母を支えながら暮らすパーソナルトレーナーの龍太(宮沢氷魚)と出会う。浩輔と龍太はひかれ合い、時には龍太の母・妙子(阿川佐和子)も交えて満ち足りた時間を過ごしていく。

母に寄り添う龍太の姿に、自身の亡き母への思いを重ねる浩輔。しかし2人でドライブの約束をしていた日、龍太はなぜか現れず……。(映画COMより)


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あらすじ&感想

撮影スタジオ。浩輔がモニターを見て「もうすこし濃くして!」と指示して、出て行く。この指示をする鈴木さんのアクセントと指先でこの人は“あれと気付く、うまい演技だ。夜、居酒屋でのゲイ仲間との会話。ここでは完璧だった。(笑)

彼は18歳で東京に出て来て、服が鎧だったという。今だ、父には嫁はまだかと言われ、亡くなった母親の言葉「あなたのお嫁さんを見ないと死ねない」が心の重石になっていた。

雨の日。浩輔がフィットネスジムでパーソナルトレーナー龍太に出会った

龍太が浩輔の身体をマッサージしながら「身体がきれいだ」と話す。会話とマッサージで“あれ”と感じる。これもうまい演戯だ。

食事しながら、龍太が「中卒で仕事は選べない。母子家庭で俺が働くしかない。ゆくゆくはこの仕事をしたい」と話す。

浩輔はゲイ仲間に「いいやつがいる」と自慢し、ジム通いが始まった。トレーニングを終え、ふたりで外に出ると龍太が腕を組みたがるが、浩輔が止せと注意。浩輔の高級マンションに入るといきなりふたりは身体を探り始める。見せどころのシーンだ。終わったあとの激しさをカメラで追い回す。

浩輔は「お母さんに!」と手土産を持たせる。こんな逢瀬が続き、浩輔はすっかり龍太にのめり込んだ。

ある日、おかんさんにと手土産を渡すと龍太が「終わりにして欲しい。俺は売りをやっている。あなたに会って苦しい。何もないからこの仕事でしか母を養えない」と帰っていった。

龍太が顔を見せなくなった。

浩輔は仕事が手に憑かない。スマホで龍太の所属クラブを捜す。一方の龍太は一晩で数人の客を取っていた。

浩輔は龍太のクラブを発見、予約してホテルで待った。そこに龍太がやってきた。浩輔が「俺はお前が好きだ。お母さんのために働くのも好きだ」と切り出すと「迷惑を掛けられない。母がいなかったらこんなに辛くない」と俯いた。浩輔は「俺は君を買う。月10万円を払う、それ以上は無理だ。駄目なら諦めて消える。自分で決めてくれ!」と自分の気持ちを話した。龍太は泣いた!

ふたりは激しく抱き合った。(前回シーンよりも丁寧に描かれている)

龍太は昼間清掃会社に勤め、夜も働くことがある。しかし、「本当の仕事を母に話せるのがうれしい」と感謝していた。龍太が疲れ眠るときは、浩輔は気遣って休ませてやる。

龍太は、いつも母親が世話になっていると浩輔を自宅に招いた

母の妙子はとても気さくな人で、浩輔のために風呂を準備し、手料理でもてなした。浩輔は自宅で龍太がキスしようとすることに戸惑った。三人で家族になったような写真を撮った。帰りには妙子が手作りの料理を持たせてくれた。

妙子が入院すると、浩輔が先に病院に駆けつけ、龍太を待つようになった。

浩輔は「車を持つとすこしは楽になる」と龍太に薦めると「そこまでしてもらうのは」と渋ったが、軽乗用車を買った。車が納車され、龍太に電話した。

母親から「龍太は亡くなった」と聞かされた

龍太はお通夜に顔を出すが、涙が止まらず、終始妙子に支えられていた。妙子が「何故あなたが泣くの、あなたは龍太の大切な人です。龍太が答えに困ったとき、相手が男性でも女性でもうでもいい、大事な人ができたらそれが一番いいと言った。すると龍太が浩輔さんに救われた、この世界は地獄でなかったと言った。本当にありがとうございました」と打ち明けた。浩輔は驚いた。

浩輔は久しぶりに実家に戻り母の仏前に手を合わせた。父(柄本明)に『お母さんの病気は大変だった?」と聞いた。父は「母さんがこれ以上迷惑を掛けたくないと言ったが、お前が嫌いというなら別れてやる、もうそんなこと言うな」と言って、ふたりでボロボロ泣いた!』と話した。

浩輔は何故龍太が亡くなったかを考えていた。父親のこの話に答えを見出した
浩輔は月命日に龍太の仏前に顔を見せた。浩輔は思い切って妙子に「私が龍太を死なせたようなもの。これまで彼を援助していた10万円の受け取って欲しい」と申し出た。妙子は断り、幾度も押し問答があったが、「ありがとうございます」と妙子が受け取った。

こうして浩輔は月命日には顔を出してお金を渡し、妙子に感謝され、まるで親子のように料理を食べ、妙子の愚痴を聞き、風呂に入り、泊まった。

突然妙子が倒れ入院した

浩輔が病院に駆けつけると、酸素マスクで呼吸する状態。「膵臓癌で、ステージ4、先は長くない」という。浩輔が「龍太に無理させ、今度はお母さんの病に気付かなかった」と謝ると、「あなたに過ちはないよ、私はあなたが好きだし、あなたは龍太も私も愛してくれた」という。浩輔は「愛がなんなのかよくわからない」と答えると「分からなくていい。私たちは愛だと思っている」という。浩輔はこの言葉に泣いた。

隣のベッドの女性が「息子さん?」と聞くと「いいえ」と返事をする。それが「私の息子です」と言って「帰らないで」と手を差し出すようになり、浩輔はしっかりその手を握った。

まとめ

これまで浩輔はお金で男性を買う男だった(エゴイスト)。しかし、龍太にはすぐに金だけの関係ではなくなった。突然の龍太の死で浩輔は父が聞かせてくれた言葉により、龍太の死は自分を愛するため疲労で亡くなったと理解した。龍太の死に報いるため、お金で龍太の母・妙子の面倒をみたいと申し出たが、妙子の人柄を愛し、愛され、ふたりは母子の関係になっていった。

浩輔と龍太、浩輔と龍太の母が“愛で結ばれた関係になる物語”だった。この関係がリアルでまるでドキュメンタリーを観るようで腑に落ちた。

浩輔はエゴイストだったか、自分が相手を愛することで相手に愛されることを知った

性愛を見ればふたりの関係は愛だと分る作品にしなければならない

この難しい要求に鈴木亮平さんと宮沢氷魚さんは見事に応えた。この作品凄さだ。「第78回毎日映画コンクール」の男優主演賞と男優助演賞をそれぞれが受賞、これに値すると思った。そして阿川佐和子さんの自然な演技もすばらしかった。驚いた!

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