
アラサーの安曇春子(「アズミ・ハルコ」と20歳の木南愛菜の恋に生きる息苦しさを描いたラブサスペンス。
なんとも奇妙な題名、これに蒼井優さん、高畑充希さん出演、何が起こったかと鑑賞。監督が松井大悟さんというのも見るポイントだった。
とてもユニークな映像表現が面白かった!圧巻と言っていい!
安曇春子パートは恋して失恋・失踪するまで、木南愛菜は恋して春子の捜索パンフレットをアートにしたことで事件に巻き込まれ失恋するまでのふたつのエピソードが時間軸を交錯させながら描かれる。この描き方は映画「メメント」(2001)を彷彿させ、ストーリー展開がスリリングで爽快感があり、さらにグラフィティーペインテイングやアニメ、環ROYの音楽が加わりPOPな作品になっている。
ストーリーは田舎でよくみられる女性に対する閉塞感が面白く描かれており、松井大悟監督らしい感性の作品になっています。
監督:松居大悟、原作:山内マリコ、脚本:瀬戸山美咲、撮影:塩谷大樹、編集:小原聡子:音楽:環ROY、主題歌:チャットモンチー、劇中アニメーション:ひらのりょう。
出演者:蒼井優、高畑充希、太賀、葉山奨之、石崎ひゅーい、菊池亜希子、山田真歩、花影香音、他。
物語は、
日本中どこにでもありそうな、郊外のある街。この街から独身OLの安曇春子(アズミハルコ:)が突然姿を消した。街じゅうに貼られたハルコの行方不明ポスターとともに、彼女のポスターをモチーフにしたグラフィティアートが拡散されていく。ネットでは、男だけを無差別に襲う女子高生ギャング団とハルコポスターのグラフィティアートとの関係性が噂されはじめて……。(映画COMより)
あらすじ&感想:
冒頭、夜の闇の中を走る車がドラッグストアー前で停車。
安曇春子(蒼井優)が下車してタバコを吹かす。劇場で騒ぐ女子高生の集団。暗闇の中に浮かぶペインテイング絵。愛菜(高畑充希)の顔。男を殴る蹴る女の子。会話する春子と今井えり(菊池亜希子)。ペインテイング絵で騒ぐ高校生たち。
高速道路橋脚にある店のシャッターに“オウオウ”と声を上げてペインテイングする二人の男。春子に「離婚した。結婚はつまらなかった!」と話す今井えり、これを聞いてにんまりする春子。春子の行方不明者(missinng)ポスターを貼る警官(加瀬亮)。
これら脈絡の分からない影像がフラッシュ的に示され、「アズミ・ハルコは行方不明」のタイトルが出る。
ここで描かれる映像は春子が行方不明になる前後の様子、愛菜とボーイフレンドがペイント絵を描く、少女ジャング団が暴動を起す、これら3つのエピソードを描き出した映像。これらの映像が最期にどうつながるか?
春子が行方不明になる前から物語はスタートし、春子と愛菜のエピソードが時間軸に関係なく交互に映し出され、“ふたりの何ともやり場のない恋の終り”が浮かび上がってくる。そしてふたりは?
○春子のエピソード
春子は実家で両親と祖母と一緒に暮らしていて、母は祖母の介護で疲れてストレスを抱え、春にとって決して実家は住安いところはなかった。
春子は母にトイレットペーパーを買ってくるよう頼まれた。
ジャージ衣のままでドラッグストアーに走った。そこでひさしぶりに同級生の曽我雄三(石橋ひゅーい)に会った。彼の部屋に行くと雄三は一人暮らしで侘しい生活をしていて、同級生の杉崎ひとみ(芹那)のことをひつこく聞いてきた。
会社では社長(国広富之)に「結婚しないのか?」「スカートはいた方がいい」とセクハラ言葉を投げかけられ、先輩社員で独身37歳の吉沢さん(山田真歩)と見比べられる。

ある日、会社の帰り、少女ギャング団リーダー(花影香音)の暴行を受け倒れている曽我に出会った。「誰にも言うな!」と言う彼を部屋に連れ帰り怪我の治療をした。なんとなく同情心で味気ないセックスをした。

後日、春子は少女ギャング団に会い「あんたは襲わない。私たちは男に復讐している」とお咎めなしだったが、その元気が欲しいと思った。
会社では“吉沢さんはフランス人と結婚しアフリカに行く”と噂になっている。これを聞いた社長と専務はびっくりし、急遽、新社員を募集することになった。が、「女性は駄目だ!」と女性をバカにする。
吉沢さんの仕事を引き継ぎ慣れたころ、“曽我がひとみと付き合っている噂”を耳にした。吉沢に電話するが出ない。その時少女ギャング団に出会って「来る!」と誘われ“若かったら一緒に男に復讐してやりたい”と思ったが、“私女子高生でないから”と断った。(笑)
曽我を呼び出しなりふりかまわず復縁を説得した。ここでの春子の姿がなんとも憐れだった。これを演じる蒼井さんの演技が見事です。
曽我と別れて部屋で泣いていた。
母「トイレットペーパー買ってきて」と頼まれ車で走り出し(冒頭のシーン)、ドラッグストアーで今井えりに会い行方不明(missing)を決心した。
○愛菜のエピソード
愛菜は成人式で同級生富樫ユキオ(大賀)に再会した。
キャバレーで働く愛菜は花魁のような和装で大学進学のため名古屋に行った中学時代の同級生富樫ユキオ(大賀)に再会した。車を持たないユキオをアパートに送って行ってそのままセックスした。

ふたりでアニメ映画のDVDを借りにレンタルビデオ店に行くとそこでアルバイトをしている同級生の三橋学(葉山奨之)に出会った。
学がガソリンスタンドで働くユキオを訪ねると「愛菜はすぐやらせてくれる」と紹介しアニメのDVDを貸してくれた。学はDVDを見て「これはすげえ!」と覆面アーテイストのバクシーに憧れ、ユキオとグラフィック・アートを始めることにした。
学は絵が上手かった。高速道路の橋脚に画いてみた。
ふたりはデザインを考えながらチーム名を“キルロイ”と決めた。ポスター絵を考えていて「肖像権がないからこれだ!これで発見できれば大きな貢献だ!」と“ハルコの捜索願いポスター”を描いた。壁や店のドアにこれを書きまくった。

愛菜がこれを見て「これパクリや!」とユキオを脅し、“自分も仲間に入りたい”とペインテイング道具を揃えた。三人で画きまくった。これがネットで話題になりスマホの待ち受け画に使われるようになった。
ネットで「暴行事件の犯人はペインテイングしているやつだ」と大騒ぎに発展した。
少女ギャング団の暴行事件とアズミ・ハルコのグラフィックアートの関係がネット上で話題になり、ニュースで流された。これに恐れをなしたユキオが「やめる」と脱退した。

ユキオが居なくなり愛菜は学とラブホテルで過ごしていた。
学が「ユキオが“愛菜は1発やらせてくれる”と言ったことからこうなった!」と明かし、これを聞いた愛菜の怒りが爆発した。
ユキオと学がファミレスで事後対策を話していた。
そこに車でやってきた愛菜がスマホで学を呼び出すと、少女ギャング団が嗅ぎ付け寄って来て学に暴行を加えた。愛菜は恐ろしくなり車を放置して逃げた。
愛菜の車の中で発見された学は警察の取り調べを受け釈放された。
学はイベント会社の男(柳憂怜)に誘われ、会場でペイント絵を画くことになった。これを聞きつけユキオがやってきて一緒に働くことになった。愛菜には誘いがない。愛菜は「またまた男がつるんで!自分をバカにしている」と怒った
しかし、イベントの2日目になると客が来ない。
ユキオが「仕事があるから」とペイントの仕事を降りた。そこにやってきた愛菜、酔っぱらっていてことの次第も知らず、会場にある大きなアズミ・ハルカのペインテイング幕に火を着け、自分を無視したことに抗議した。気がつくとなんとそこに安曇春子が立っていた。(笑)
○春子と愛菜が出会った!
春子が「ここで何しているの」と愛菜に聞くと「死にたい。ユキオを出せ!」と応えた。春子は「そんなのバカよ。女の子には優雅な女になる生活が最大の仕返しよ。あなたが幸せな生活をすることがユキオへの仕返しよ。“私を愛してくれている?”と消えたら!消えて生きるのよ!私は生きている、行方不明の子がへらへら笑いながらどこかで生きている。そうでなければ割に合わない」言い返した。

少女ギャング団が劇場で、「拳銃で男をやっつける」アニメを観ていると警官がこれを取り囲み一斉に検挙しようとした。会場を出てきた彼女らは警官に向かって拳銃をぶっ放す仕草をして一斉に逃げ出した。彼女らにはこの手があった。でも行き着く先は・・・。(笑)
春子がまさにスポーツカーで今井えりと一緒に海に出掛けようとしているところに、愛菜が走り込んできた。春子は「一緒にいかない。男への仕返し!」と愛菜を誘った。
まとめ:
春子と愛菜のエピソードに少女ギャング団の行動を絡め、時制を無視してランダムに繋げて、分けわからない話だったが、たわいもない男にふられた、もてない女の話だった。(笑)
地方都市の閉塞感のなかで生きる27歳のOL春子は実家に居ずらく、会社でのセクハラにうんざり、バカな男に惚れて捨てられ人生を諦めた。20歳のキャバレーで働く20歳の木南愛菜(高畑充希)はキャバレー務めで気ままに過ごし何かしたいと男を追っかけ廻るが捨てられ人生を諦めかけた。ふたりが行く着いた結論は家出して男を困らせてやるというものだった。(笑)
これじゃ結婚しない族が増える!!
物語の背景には男有利社会への嫌悪感があり、観る側特に女性にとっては「それはあるある」と結構受け入れられる話、「女性が観たらきっとわかる」という映画になっている。(笑)
蒼井優さんの春子の物憂い繊細な演技、高畑充希さんのエネルギーを爆発させ突っ走る演技、このはじけっぷりがいい。今観ると、感慨深い役だったように思います。(笑)
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