映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」(2018)

イメージ 1
タイトル名のおもしろさから観ることにしました。吃音のために孤独な高校生活を送る少女の苦しみと、初めてできた友だちと織りなすぎこちなくも愛おしい不器用な青春物語。
 
作品を通じて、吃音の女学生が抱える悩み・葛藤を知るとともに、彼女を取り巻く学友を通じて、この時代だからこその悩み・苦悩を見せられ、自らの青春を思い、改めて友人に感謝したくなるような作品です。
 
小さな作品ですが、観る人に大きな感動を残してくれる作品だと思います。
 
原作は漫画家・押見修造さんの自身の体験を基く同名漫画。監督は本作が長編商業映画デビューとなる湯浅弘章さんです。
 
主演は「幼な子われらに生まれ」(2017)の南沙良さんと「ゴーイングマイホーム」(2012)の蒔田彩珠さんで、おふたりの好演が目に焼き付いていて、楽しみにしていました。共演は萩原利久山田キヌヲ奥貫薫さんらです。 
イメージ 2
感情が交差するところが見どころの難しい役を、南さんと蒔田さんがとてもうまく演じています。
 
あらすじ
高校一年生の新学期、吃音に悩む大島志乃(南沙良)はクラスの自己紹介で自分の名前も上手く言えずに笑い者になってしまう。
以来、ひとりぼっちの高校生活を送る志乃だったが、ひょんなことから同級生の岡崎加代(蒔田彩珠)と友だちになる。音楽が好きでギターは弾けるのに音痴な加代は、志乃の歌に心奪われバンドに誘う。
そして文化祭を目標に猛練習を始める志乃と加代。そんなある日、志乃をからかったお調子者の男子・菊地(萩原利久)がそんな2人の姿を見て、強引にバンドに参加するのだったが…。<allcinema
***
朝起き、鏡に向かって「おおしましのです」と発声練習して家を出る。登校中は、ずっと俯いて、自転車を押して登校。
ホームルームで、小川先生(山田mキヌヲ)から自己紹介を求められる。最初に始めたのが、クラスのお調子もの菊池の「趣味はSEX・・」ととんでもない紹介からはじまり、どんどん志乃の番に近づき、緊張する。ついに志乃お番、立ち上がって「お、お、お、・・」で「おおしま」が出てこない。顔に血が上って、懸命に発生しようとする南さんの演技がすばらしい。
イメージ 3 
「しの、おおしま」と発声します。吃音者には、母音が発声し難い。このため子音の「しの」から発声してしまうことによるもの。
このことで、「外人のひと!」という冷やかしの声が上がり、志乃は何も話せなくなる。先生の対応も悪すぎます!
 
授業が終わると、すぐに家に戻り、部屋にこもり、涙を流す。次の日。数学の時間、「大島、答えろ!」と回答を求められ、「あ、あ、あ、・・」で、「もういい」と先生。これもひどい! 
 
昼休み。校舎裏の誰もいないところで、弁当を食べながら、「これはおいしそう。からあげひとつたべる」とひとり喋りを始める。だれもいない場所でのひとり喋りには、普通に発声することができる。暗い場所を求めるのも、どうやら吃音者の特性らしい。
 
指導室で小川先生から、「リラックスよ、緊張するのは皆に打ち解けていないから。自分で打ち解け、仲良くなるように。頑張ろう!」と指導を受けます。これもひどい!()
イメージ 4
志乃が、教室に戻ると菊池に「名前言ってみろ!」と急かされ、もう行き場がない。帰校時、自転車置き場でぶっきれて、人の自転車を押し倒す。と、それを岡崎佳代が見ていた。
 
翌日、昼休みに志乃がいつもの校舎裏で弁当を食べていると、佳代がやってきて、イヤホーンで「青空」を聞きながら「僕の憂鬱を打倒して・・」とハミング。へたくそ! 佳代は無口で暗い感じの子、友たちがつくれないらしい。
 
志乃がどもりながら話し掛けると、「面白いこと紙に書いて!」と佳代。志乃は佳代が自分と同じ場所にいると、「おちんちん」と書く。志乃の放った必死の一語でふたりの仲は急速に距離を縮めます。
 
佳代の誘いで、志乃は彼女の家を訪ねると、部屋には一杯のCD、ギター、壁にはジャケットが貼ってある。彼女はミュージシャンになることを目指している。
イメージ 5
佳代は「笑ったら殺す!」と、ギターを弾きながら歌い始める。歌が下手くそで志乃が笑い出したことで、追い返される。家に帰る志乃を夕日が赤く染める。
 
翌日の帰校時、佳代がカラオケスタジオで練習しようと訪れ、かっての友達に冷やかされているところを志乃が見て、助っ人に入る。
ふたりはスタジオに入り、志乃が昨日笑ったことを、どもりながら鼻水を流し謝ります。熱演です! 佳代は「あんたはいいよな!言い訳ができる。それで仕方がないとわかってもらえる」という。この言葉は、のちに彼女を前に押し出します。
イメージ 6
佳代がギター演奏、これに志乃が唄うというパターンが出来て、秋の文化祭で歌うことにします。バンド名は「しの・かよ」。
佳代は、志乃が人前で歌うことに慣れるようにと街中で歌うことを提案。ふたりは、人通りの少ない橋の上で歌い始める。
 
日を変え、場所を変え、街で歌うふたりの姿を重ねた映像はうつくしい。どんどん雰囲気に慣れ、うまくなっていく様子がわかります。
 
自信ができたところで、駅前のバスストップで歌おうとしているところを菊池に見られる。 
イメージ 7
菊池がバンドに加わりたいということで、状況が一変する。志乃の声がでない。
イメージ 10
佳代は、菊池がいじめに遭いこれを隠すために道化を演じていることを知って仲間に加えることにするが、いくら説得しても志乃が受け入れない。「バンドを止める」と、遂に志乃は学校を休むようになる。
 
行き場のない志乃が商店街を歩いていて、菊池に捕まる。菊池は、以前と違って丁寧に、自分は空気の読めない男で悪かったと謝り、アイスを買ってくる。
菊池が「バンドを岡崎と3人でやろう」と勧めるが、志乃は顔を真っ赤にして、アイスに手を出さず、聞いている。いやなら、直ぐ席をたてばいいのに! アイスが溶けてしまって「なんで!」と声を出し、駆け出す。彼女は自分の不甲斐なさに泣いていたのです。
イメージ 8
佳代が志乃の家を訪ね、外に連れ出し、ふたりで歌った思い出の場所を訪れようとするが、志乃はひとことも話さず応じない。佳代は、志乃はいつか戻ってくると、詩を書こうと決意します。
菊池に「いつか一緒にやろう、いまはひとりで詩を書く」と伝えます。
 
この志乃の態度に菊池がぶっきれて、「バンドが駄目になったのはお前のせいだ。空気消して、腐った魚になっておれ!バカヤロウ」と罵倒する。彼には志乃の本心が読めていなかった。
 
文化祭。佳代は舞台に上がり「メンバーでなく、ひとりでやることにしました」と断り、自作「魔法」をギターで弾き語ります。
「魔法はいらない。みんなと同じに喋れる魔法。みんなと同じに歌える魔法」と自分を励まし、志乃にメッセージを送ります。
イメージ 9
誰も拍手しない! 菊池が大きな拍手を送ると、拍手が起こる。志乃はいつもの校舎裏でこの歌を聞き、会場に走り込んでくる。
 
どもりながら、「私は名前が言えない。なぜ?知らないよ。緊張している、そんなの関係ない。何で、どうして、私ばかり、不公平よ。喋れれば私だって、ばかにしないで。笑わない、ごめん。怖い、怖い、だから逃げて泣く。(鼻水を流しながら)誰かに見られればバカにされると逃げていた。それで何も見えないで、私が私を追いかける。私をバカにして笑っている。私を笑っているのは、私が恥ずかしいと思っているのは、私だから。私は私、お、お、お、大島志乃。これからもずっとわたし」。会場でのカミングアウトでした。しかし、すばらしいセリフでした!! 何度もいいます、南さんの熱演でした。( ^)o(^ )
 
壇上の佳代はこれを聞いて、微笑みます。
 
昼休み。菊池が、かって志乃がいた校舎裏のベンチで飯を食っている。佳代は屋上で歌づくり。志乃は教室で弁当を食べていて、女の子が「ジュースどう」、「あ、あ、あ、りがとう」。
 
志乃、佳代、菊池のラストシーン、それぞれが自分の居場所を探し当てたようです。逃げてばかりでは解決しない。“壁は自分で壊せです。
****