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「チワワちゃん」(2019)

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原作が「ヘルタースケルター」(2007)「リバーズ・エッジ」(2018)の岡崎京子さんの同名短編。原作は未読で、「チワワちゃん」というタイトルに迷いがありましたが、岡崎さんの原作、主演が門脇麦さんに惹かれ観ることにしました。
 
監督・脚本は新進気鋭の二宮健(27歳)さんで、殺人事件の被害者となった一人の美少女を巡り、一緒に遊んでいた若者たちがそれぞれに彼女の思い出と向き合う中で浮かび上がる儚い青春の煌めきとその実像を鮮烈に描き出すというもの。
 
共演は成田悛寛一郎村上虹郎・王城テイナさんら人気の若手に、チワワとして新人・吉田詩織さん。さらに、大ベテランの浅野忠信さんに栗山千秋さんが加わり、このキャステイングそしてスタッフから、二宮監督への期待は非常に高いと思います。
 
青春というエネルギーの行き着く危うさとその痛みが見事に映像化された作品でした。青春作品のなかでも、心に突き刺さる群を抜く作品だと思います。
 
あらすじ:
ある日ミキ(門脇麦)は、「東京湾で見つかったバラバラ死体の身元が判明した」というニュースを見て、一緒に遊びバカ話したりキスしたりして楽しみ憎むこともあったチワワちゃん( 吉田詩織)が被害者の看護学校生・千脇良子(20)だとは気づかなかった。
 
チワワは、突然のようにミキの好きだったヨシダ(成田悛)の新しい彼女として現われた。
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いつものミュージック・バーで遊んでいるとき、“退屈な日常をぶっ壊す”と、不正な手口でものにした建設業者の金600万円をひったくり、この金でミキたち仲間はバカンスへと繰り出し豪遊してバカ騒ぎを満喫した。
 
ミキたち仲間は日常に戻っていったが、チワワはこの騒ぎに醒めることなくインスタで爆発的な人気モデルとなり、ヨシダとも別れ、サカタ(浅野忠信)という有名カメラマンと付き合いはじめ、ミキたちから離れてしまった。 
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ミキはチワワについてのファッション誌の記者(栗山千秋)のインタビューに応じ、仲間たちから情報を集めるが、チワワは何者で何がしたかったのか明らかにならなかった。
皆の心には痛い想いが遺されており、亡くなった海を訪れ、彼女を悼むことにした。
 
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目的もなくミュージック・バーに集まり、他愛無い話をし、酒を飲み、踊っている若者たちがお金を湯水のように使って遊び惚けるシーンが、ほとんど会話はなくかなりの時間をかけて描かれます。この映像には驚きました。
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ホールやプール、個室で、男女が乱れ遊ぶ情景が、光の乱舞する眩しい映像と躍動する音楽で描かれ、作品のテーマ“青春の爆発と終わり”、虚しさが、説得力のあるものになっています。
 
そして、サカタによるチワワのCM撮影。「お前20年後に何やってる!」「お前が勝手に燃え上がったのではないか!」とチワワを挑発しながら撮って行く様が、蛇が獲物を飲み込むように見え、チワワは堕ちていくなと感じられる、とても痛々しいシーン。ここでの浅野さんの演技は凄かったですね!
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このあと、仲間のナガイ(村上虹郎)がチワワを救い出そうとするがサカタには歯が立たない。これも痛いシーンでした。
 
この後、チワワの姿は仲間から消えるが、しばらくして金を借りに仲間の間を渡り歩くようになる。ハラダ(篠原悠伸)のところに来て、自分から身体を差し出し求めるようになり、これを機に仲間が集まり連日の乱交パーテイが始まる。影絵の人形で見せるとても面白い映像で、チワワの落ちた姿を見せてくれ、見るに堪えない痛みを感じます。
 
ミキは、ヨシダを訪ねチワワとのことを聞き出そうとすると、ヨシダはまるでチワワを忘れたように求めてくる。
ヨシダと交わる中で、ミキ・門脇麦さんの「あの時の青春はなんだったのか」と苦悶する演技が絶妙です! 
 
そして、仲間がチワワの亡くなった海辺に集まり、日の出を待って、花束を投げ各々が思い出の言葉を吐き、彼女と決別。この情景シーンは、とても美しく印象的なものになっています。
 
チワワを演じた吉田詩織さんが、イケテいると自分を通すが、その真っすぐささ故に堕ちていくという演技が自然ですばらしかったですね。特にサカタに迫られて見せた涙。これからの活躍が期待されます。
 
チワワが堕ちて亡くなったことは痛々しいが、仲間のなかで「悲しい思い出」として生き続けるでしょう。
忘れていた友人を思い出し、自分のなかに彼がいるから今の自分があると気付かせてくれる作品でした。
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記事 20190131
【インタビュー】吉田志織、話題の映画『チワワちゃん』でチワワちゃんを演じる