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「窮鼠はチーズの夢を見る」(2019)

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この作品、ホモセクシュアルの愛の物語ということで、観るのを躊躇しました。(笑) が、もうそんな時代ではないということを実感させてくれました。「愛はなんだ」(2019)ホモセクシュアル版といったところ、観客もこの作品公開時と同じように若い女性で溢れ、ほとんど男性がいないという状況。(笑) 

大学時代に関係があった大伴と後輩の今ケ瀬。受け身の恋愛しかしらない大伴が7年ぶりに自分を想い続けていた今ケ瀬に出会って、猛烈なアタックを受け、この男を好きになり、受け入れるまでの恋模様。

性描写は「火口のふたり」(2019)を超えているのではないでしょうか?主演の大倉忠義さんと成田凌さんがみごとに演じており、「his」(2020)もこの種作品の話題作でしたが、遙かにこれを凌駕し、これほどしっかり描かれた作品はないのではと思っています。

テーマは「惚れるということはどういうことか?」男とか女とか関係ないその行き着く先をしっかり描いています。二人の恋愛ゲームがミステリアスでヒヤヒヤしながら楽しめ、ラストシーンに余韻があります。

原作は水城せとなさんの同名コミック。監督は「世界の中心で、愛をさけぶ」「ピンクとグレイ」の行定勲さん。ちょっと突き抜けた作品に挑戦でしたね!脚本:堀泉杏、撮影:今井孝博。

主演:大倉忠義成田凌。共演:吉田詩織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子。


映画「窮鼠はチーズの夢を見る」予告編(出演:大倉忠義 、成田凌)

あらすじ(ねたばれ):

貿易商社に勤める大伴恭一(大倉忠義)をつけるかって関係にあった探偵・今ケ瀬渉(成田浚)。大伴の妻・知佳子(咲妃みゆ)からの依頼で不倫を調査していた。

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オフィスで証拠写真を示すと、「なんとかごまかしてくれ!」と大伴は今ケ瀬を食事に誘い、その後ホテルで今ケ瀬のキスを受け、愛撫される。こういうきわどいシーンから物語に入っていく。大倉さんと成田さんの演技がとても美しいし、美しく撮ってあり、いつの間のかホモセクシュアルのセックスに対する拒否感はなくなるという、うまい導入だと思います。(笑) この段階では大伴は「舌はいかん!」と拒否姿勢。

今ケ瀬のレポートで知佳子は「あなたとは金で繋がっていた関係のように思う。あなたのために離婚したい」と言い出す。

大伴は「2年の結婚生活で、セックスもうまくいってなかった」とこれを受け入れ、ひとりになって生活を始めた。

そのアパートに今ケ瀬が転がり込んで来てふたりの生活が始まった。今ケ瀬が料理、洗濯し、開けっぴろげにセックスを要求してくる。大伴はちょっと乗れないという感じ。

このころ大伴には、女性社員・井出瑠璃子(小原徳子)が、プレゼンテーションの指導受けと称して、近づいてくる。

今ケ瀬が掃除中にテーブルに置かれた同窓会の案内状を見た。送り先は松井夏生となっていた。夜帰宅した大伴に参加の可否を聞くと参加しないという。今ケ瀬はこれを聞いてほっとし、大伴の耳かきをしてやる。(笑) しかし、大伴は夏生にあって口頭で返事した。

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今ケ瀬は不在時、瑠璃子が「会社では会えないから」とアパートを訪ねてきて、セックスして帰っていった。その夜、今ケ瀬は大伴の異変に気付き、大伴が寝たあと、彼の携帯を調べた。大伴が「仕事の関係だ」と嘘ついたが今ケ瀬にはこの嘘は通じなかった。「最低のやつだ!完璧な人を探す!」とアパートを出て行った。

大伴はひとりでケイタリングのめしを食べてみて、今ケ瀬に悪いことをしたと反省をし「帰って来い!」と電話した。

今ケ瀬が帰ってきてからしばらくふたりは恋人のように身体に触れながら楽しそうに過ごした。

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夏生と大伴がレストランで食事中。そこに今ケ瀬は彼の恋人高杉を連れて訪れた。今ケ瀬は学生時代に大伴を紹介してもらった夏生に挨拶した。大伴は高杉に興味を持った。大伴が嫉妬するなんてことはこれまでなかった!

酔っぱらって大伴を夏生がアパートに送ってきて、大伴が今ケ瀬と一緒に住んでいることを知り、帰っていった。

目が覚めた大伴は、いつもパンツ姿で椅子に座ってタバコを吸う今ケ瀬に「大学時代お前は俺を嫌っていたと思った!」と声を掛けた。今ケ瀬は口をきかなかった。今ケ瀬は夏生を強く意識しだした。 

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夏生にふたりはレストランに呼び出された。今ケ瀬は「引いてください!」と夏生に求めたが、「恭一、あんたは誰にでもついていくネズミ。どぶネズミにはならないように!」と念を押し、「私と今ケ瀬、どちらを連れて帰る?」と大伴に決を求めた。「普通の男にはお前は無理!」と夏生と消えた。

ホテルで大伴は夏生と寝た。大伴は「ああ言うしかなかった!やつを悲しませたくなかった」と言うと、「立たない言い訳にするな!」と夏生が帰って行った。

大伴がアパートに帰ると今ケ瀬がTVを見ていたが、なにも語ることなくふたりはベッドに。

ある日、大伴が専務の妾の娘・国村たまき(吉田詩織)に出会った。すぐに専務が亡くなり、悲しむたまきに同情するように付き合いが始まった。感の良い今ケ瀬はふたりの関係に気付き「将来を取り戻すために寝たいか?」と言う。「女とするのは駄目だ!」を聞いた大伴は「終わりにしよう」とふたりの関係を切った!

今ケ瀬は泣いて去った。高杉に「大伴は長く煮込みをするような女が向いている。お前はもっと情の深い男を探せ!」と慰められた。

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たまきは母親を大切にして、結婚願望の強い女性だった。料理や掃除は慣れておらず、セックスも今ケ瀬の方がいい。大伴はホモセクシュアルが集まるライブを訪ねたが、今ケ瀬のような男はいなかった。

今ケ瀬は大伴を諦められず監視していて、大伴に見つかって、ふたりが激しく抱き合った。このシーンは夢のように美しく撮られています。音響がまた凄い!

今ケ瀬が再度「たまきにバレないようにうまくやればいい」と申し出たが、大伴が「人生で大切なことは一杯ある、もうそういう歳ではない」と拒否した。今ケ瀬は灰皿を整理して、もう戻らないと消えた!

たまきは「私が側にいては駄目ですか?彼が帰って来たらおとなしく引きます!」と大伴に訴えた。大伴は今ケ瀬がいなくなって分かった!たまきに真実を語った。

感想:

大伴が関わる妻・知佳子から始まって、女性社員・出井瑠璃子、同窓生の夏生、専務の娘・國村たまきを通して、大伴と今ケ瀬のお互いを思う「想い」が変化していく様がスリリングで丁寧に描かれました。愛されることしか知らない大伴が、相手を想うようになり、何が最も大切なのかに気付いていく様。そして、今カ瀬の決してぶれることのない「特別な人」としての恋心。

その中で性愛をしっかり捉え、これも変化していく様が描いています。大倉さんと成田さんの演技に感嘆、何か賞をあげたいですね!

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