矢口史靖監督作品ということで、この暑さ笑って過ごそうとミュージカルには疎いですが、「この映画を観たら、あなたも歌いたくなる、踊りたくなる」のキャッチコピィーに“賭けて”出かけました。結果は、監督の仕掛けた催眠術にはまれず踊る気持ちにはなれなかった。(笑)
ある日突然、謎の催眠術師によって音楽を聞くと体が勝手に踊り出すようになってしまったヒロインが繰り広げる大騒動の行方を描くミュージカル・コメディ。
脚本は監督のオリジナル、主演は三吉彩花さん、共演にやしろ優・chay・三浦貴大・ムロツヨシ・宝田明さんらを配しています。
あらすじ：
子どもの頃からミュージカルが苦手だったＯＬの静香（三吉花）は、訪れた遊園地で怪しげな催眠術師のマーチン上田（宝田昭）から、音楽を聞くとミュージカルスターのように歌って踊らずにはいられない催眠術をかけられてしまう。
以来、所かまわず歌い踊ってしまうせいで周囲に迷惑をかけ窮地に。催眠術を解いてもらおうにも既に遊園地にマーチン上田の姿はなく、途方に暮れた彼女は、マーチン上田のサクラをしていた千絵（やしろ優）とともにマーチン上田の行方を追って北の旅に。やっと捕まえたマーチン上田に催眠術を解いてもらったら・・・。
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10数曲に及ぶ歌と踊り。出演のみなさん大変でしたでしょう！その努力に敬意を表します。特に主演の三吉さんのぶちきれた踊り、コミカル演技よかったです。問題は、ストーリーとミュージカルです。
＊＊(ねたばれ)
一流会社にあって清掃係のような静香。エリート社員・村上（三浦貴大）から頼まれた資料を褒められるという能力の持ち主。彼女は「突然踊り出すのはおかしい」とミュージカルを苦手にしていた。ところが、この旅で自分は苦手だと思っていた（トラウマ）音楽とダンスが自分には向いていると、ミュージカルダンススタジオを立ち上げる。
物語の大部（80％）はマーチン上田を探す旅での“どたばた”エピソード。たった1週間のこの旅で、歌とダンスが自分に合っていると一流会社を辞める彼女の成長物語が腑に落ちなかった。
ミュージカルは、ストーリーのなかでより情感を高める必然性があって歌い踊る。音楽に反応して催眠術で、既存の名曲で歌い踊るのが、とても懐かしい名曲ぞろいでしたが、はたしてこれがドラマに合った情感なのかと違和感を感じます。
前半、出勤前、お呪いの指輪を見て、村上から頼まれた資料を揉められたことでノリノリになり、エアーギターを奏で歌い踊る“ACT-SHOW”は彼女の気分が分かっているからミュージカルとして受け入れられます。
また、会議で村山の隣に座り彼のビリーフィング中で出てきた音楽に反応し、“Happy Valley”で彼女が歌い踊りだし、ここに反応して社員が踊り狂うというのも、彼女が夢見心地として描かれており受け入れられます。
しかし、村上とレストランでの会食でお酒を飲み、彼が席を外した直後に始まったバースデイのサプライズ演奏に反応して歌い踊り、遂に“狙い撃ち”でボーダンスからテーブルクロス引き、さらにエスカレートして空中ブランコでシャンデリアをぶち壊して破損賠償請求がくるという現実。彼女の心情が相当昂ったものであったとしてもここまでとは。睡眠術を使ってのやらせ芝居となり受け入れられない。
旅に出てからは場当たりのこの手の芝居が多くなる。やばい男たちの音楽バトルに介入して踊り歌って事件解決という名作「ウエストサイドストーリー」モドキのシーン。
それでも、静香と千絵が、旅の途中で知り合ったストリートミュージシャン・洋子（chay）が元彼の結婚式に乱入して、三人で歌って踊ってキレで、ケーキをぶち壊しケーキナイフを振り回す大暴れは、洋子の気持ちはそうだろうと楽しめた。Chayさんのぶっきれ演技がすごかった！
沢山の小さなエピソードに大いに笑いましたが、なんとなくもやもやの残る作品でした。
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