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「日本のいちばん長い日」(1967)狂気の世界から目覚める瞬間に立ち会う!

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まもなく7月25日。1945年のこの日、日本に無条件降伏を求める米、英、中のポツダム宣言が発せられた日です。この宣言受諾を巡る御前会議から始まる終戦前の一日を描いた本作を、どんな気持ちで受諾し何を目指そうとしたのか、今一度確認しようと本作を選んでみました。

原作者が大宅壮一(実際の著者は当時編集者だった半藤一利)さんで、同名で原田眞人監督作(2015)があります。原田版は観ていますが、何故本作を選んだか? 少しでも当時の雰囲気が残っているもの、軍服が良く似合い、軍隊言葉や敬礼がうまいであろうと本作にしました。( ^)o(^ )

 これは的中しましました!“若い反乱将校たちの狂気の行動”が当時の雰囲気を良く伝え、何故天皇自らがマイクの前に立ちポッダム宣言受諾を国民に伝えねばならなかったか、何を目指そうとしたかがよく分かる作品になっています。原田版はこの視点に欠けていると思います。

 東宝が35周年記念作品と銘打って、社をあげての作品、名だたる出演者の数に圧倒されますが、とても質の高い作品になっており、歴史に残る名作だと思います。

監督:岡本喜八、脚本:橋本忍、撮影:村井博。

出演者:笠智衆山村聰三船敏郎北村和夫、神山茂、井上孝雄、黒沢年男、島田正伍、藤田進、佐藤允伊藤雄之助、芥川比佐志、中村伸郎小林桂樹・・・。


日本のいちばん長い日(1967年版)予告編

 あらすじ:

1945年7月25日午前6時、埼玉県大和田の海外放送受信局でポッダム宣言が受信された。26日の閣議でこれを無視することに決定したが、海外派遣部隊もこれを受信しており阿南陸軍大臣三船敏郎)の要請で、鈴木貫太郎首相(笠智衆)が「重視しない!」という談話を発表した。この「重視しない」を連合軍側は「無視」と解釈し、宣言文どおり報復として広島に原爆を投下。8日、ソ軍の満州侵攻が開始されるに至った。

 8月9日、宮中地下壕で最高戦争会議が開催されたが、結論はでず。引き続き首相官邸で議論が続けられたが、陸相が4条件を出し、結論が得られず、鈴木総理によって御前会議で天皇の聖断を仰ぐことに決まった。同日2300、「これ以上の戦は民族を滅ぼす。すみやかに終結せよ」との聖断が下った。

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8月9日の長崎の原爆被爆を経て、

8月10日0600、「天皇の地位保証」を条件にポッダム宣言を受諾する旨連合国に打電した。

0930、陸相は省内少佐以上に「いかなる事態にも軍規のもとに行動せよ」と訓示。「引くのですか!」と発言する軍事課将校(篠崎中佐:中丸忠雄)に「いやなら俺を斬れ!」と発言。この段階で陸軍大臣の腹は決まっていた!

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 8月12日早朝、サンフランシスコ放送で日本と問い合わせに対する連合国からの回答が伝えられた。

天皇の位置づけで「連合国最高司令官にsubject to」の表現があり、阿南陸相陸相の義弟・竹下正彦中佐(井上孝雄)が「受諾を阻止するように!出来ないなら腹を切るべきである」と具申した。

 これにより受諾すべきか紛糾し、御前会議に掛けることで首相が引き取った。

 8月13日、「和戦派を隔離し、東京に戒厳令を敷く」という計画が省内若手将校(軍事課長・荒尾大佐:玉川伊佐男、竹下中佐ら6名)から大臣に提出された。この中に、後の反乱の主役を演じた井田中佐(高橋悦史)、畑中少佐(黒沢年男の名があった。

阿南陸相は首相に「御前会議を2日遅らせて欲しい」と申し出たが、首相は厳しい口調で「それは出来ない」と拒否した。首相は理由を言わなかったが、「遅れるとソ連が北海道に来るかもしれない」という読みがあった。適格に国際環境を押さえていた!

 このとき小林軍医(竹内亮)が「阿南さんは死にますよ!」と声を掛けると、首相は厳しい表情を見せた。あうんの呼吸で首相と陸相は運命を感じ取った瞬間であったと感じました。

 8月14日1200、

望岳台下の地下防空壕で開かれた御前会議での天皇のお言葉で、ポッダム宣言受諾が決まった・

天皇の「継戦は無理だ!(涙をみせ)国民に苦痛は忍び得ない。出来ることは何でもする。直接呼びかける、マイクの前に立つ。陸海軍を納得させられないならどこにでも出かけ説き聞かせる。内閣は至急終戦に関する詔勅を準備せよ!」というお言葉には誰しも涙せずにはいられなかった。

 これで終戦公表プロセスが走りだす。

 首相官邸では詔勅の起案が始まる。

陸軍省では阿南陸相から聖断が下ったことを知らされた井田中佐、畑中少佐が自失呆然。陸相大臣辞任を促す意見があったが、大臣はこれを無視した。

 侍従武官たちが「軍は承知しまい」と不安を漏らす。しかし、阿南陸相、米内海相山村聰)が責任をもって部内を収める閣議で発言。

 畑中少佐は東部軍司令官田中大将に決起を訴えようと訪ねるが、「帰れ!」と追い返された。そこで井田中佐に東部軍司令官、近衛師団長説得を、竹下中佐を通して大臣を説いてもらうことにした。

井田中佐は「これでお終いだ!陸軍省の将校全員は自害すべきである」と考えていたが、畑中少佐の熱意に打たれ、「近衛師団長が受けるなら参加するが、そうでない場合は止める」を条件に参加することにした。

 海軍302基地では司令官小園少将田崎潤)が、「終戦と決まった」と報告する副指令の菅原中佐(平田昭彦)に、「厚木基地は“最後まで”戦う!」と告げた。

 横浜警備隊長・佐々木大尉(天本英世)は、作業動員の学生たちに東京行きを募りだす。

 1500、天皇の声を録音して放送することがスムーズに決まり、早々に録音機材が宮城に運び込まれ、セットされた。

 しかし肝心の詔勅審議が進まない。阿南陸相が原案を戦地で戦っている300万人に言い訳がたたないとして「戦局必スシモ好転セズ」と主張して譲らない。反対していた米内海相がこれを受け入れると、すかさず首相が「それでよい!」と同意し、直ちに天皇の承認を受けることになった。首相は阿南大臣の心中を想っての配慮であった。

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 詔勅が筆で清書される。これにまた時間がかかる。さらに閣僚のサインが必要だ。とにかく手続きに時間がかかる。(笑) 何度も放送局員から録音開始時の聞き合わせがある。

 2200ごろすべてが完了した。海外への電文は2300、録音が15日0000時と決まった。

 「明日正午重大な放送がある。国民全員が拝聴するように」とのニュースを流した。

 阿南陸相は鈴木総理の部屋を訪ね「南方から送ってきたものだ」とタバコを贈り、これまでの態度を詫びて退出した。首相は「阿南さんは死ぬな!」と見抜いていた。

 飛行団長野中大佐伊藤雄之助)が率いる特攻隊が埼玉県児玉基地から多くの町民に見送られ発進した。

 0010録画終了。録音盤が皇后官職事務室の雑用品棚に保管された。

 これですべてが終わったと思ったが、半分しか終わってなかった。ここからが長い一日となった。

 畑中少佐は神田駿河台の渋中宿舎に竹下中佐を訪ね0200計画を立ち上げ宮城を占拠すると伝え、近衛師団に井田中佐と乗り込む。竹下中佐は阿南陸相のもとに走った。

 0200近衛師団長森中将(島田省吾)を井田中佐が説得した。師団長が「明治神宮を参拝して決める」というので中佐が席を外していた。そこに航空学校の黒田大尉(中谷一郎)がやってきて畑中少佐とふたりで師団長室に入り、師団長を斬殺

畑中少佐が宮城占拠命令を起案し、近衛師団参謀を通じて、宮中警備隊芳賀連隊長(藤田進)に命令下達。連隊長は疑問を感じながらも「陸相が訪れる」を信じて、第3大隊長に宮中の通信を切断、侍従たち、警備員等の拘束を命じた。

 東部軍団長(石山健次郎)は、近衛師団長斬殺を聞いて、事態収拾のために近衛師団司令部に走った。

 井田中佐は東部軍が動かないと知って、畑中に「反乱軍になるぞ!」と作戦中止を求めたが、畑中にはもうこの忠告を聞く耳を持っていなかった。放送を中止すべく録音盤の捜索を命じた。井田中佐は阿南陸相を訪ねることにした。

 0400厳しい録音盤の捜索が続くが、侍従(小林桂樹)たちが巌として口を割らなかった。

遂に放送局に乗り込み「放送を信用しないようにと流せ!」とアナウンサー(加山雄三)を脅す。

 阿南陸相は夜明けを待って「これからの日本は変わる。どう変わるかは分からない。ひとりひとりが懸命に働き、二度とこのような惨めな日本になるな!」と阿南、井田中佐に言葉を掛けて自決した。

 鈴木総理官邸及び私邸が横浜警備隊長佐々木大尉指揮する部隊に襲撃され炎上。総理は無事だった。

0600東部吟司令官命令により、宮城から近衛師団の引き上げが始まった。

 畑中少佐自決。

 1200第8スタジオで放送が始まった。                 

感想:

狂気の世界から目覚める瞬間に立ち会った感覚の映画でした。 二度とこんな狂気の世界に入ってはならない!

 国の行く末を見定めての御聖断、終戦勅書の作成、御璽御名へと続く長い手続時間のなかに、戦争で亡くなった人200万。今だ戦場にある300万兵士の想いが込められているようで、敗戦の悲しみ・苦しみを嫌と言うほどに感じ、二度とこれを味わうことがあってはならない思いにさせてくれました。

 終結宣言で国内での混乱が生じないことを案じる天皇、総理、軍幹部。継戦を主張する若い将校たち反乱とこれに駆けつける少年兵たち。反乱を阻止しようとする軍幹部、録音盤を必死に守る侍従や放送局員。この間にあっても接近する敵空母に特攻をかける飛行兵たち。幾重にも国を想う思いが重なって展開されるドラマ、臨場感があって、すばらしかった!

 動乱から録音盤の確保する様をしっかり描かれ、“タイトル通りの作品”になっていました!!

若い将校たちの行動は、今では無茶苦茶な行動に見えますが、満州事等を起こした先輩たちへの強い憧れから生じたもので、帝国陸軍最後の足掻きです。こういう軍隊を作ってはならない。

 昭和天皇のご聖断シーンには涙がでます!これがなかったら国としてこんな形での終戦はなかった。

鈴木首相の色々な意見を聞きながら、御聖断に持ち込む手腕が見事さ。すばらしい総理をこの時期に戴いていたことにびっくりです。笠智衆んの飄々とした演技が冴えていました。

 阿南陸相も総理と同じように、爆発しかねない内部を、時間をかけて懐柔する手腕は見事でした。陸大受験を4回目で合格して陸相になった軍人なんていない、誰もが感服する人間味を身に着けていた。

 阿南陸相が総理を最後に見舞うシーンで、このふたりの関係は、笠智衆さん三船敏郎さんのすばらしい演技で分かります。三船さんの押さえた演技がまたよかった。最後の切腹シーンは陸軍の犯したすべての罪を背負っての自害のように見えました。

 狂気を描いてこその作品。

動乱が収束されたにもかかわらず、継戦を訴えサイドカーをぶっ放して宣伝ビラを撒く畑中少佐。「2000万の特攻で戦況を覆す」と外相に訴える大西軍令部次長、学徒たちに「鈴木首相を誅する!」と官邸を襲撃する横浜警備隊長、特攻を歓喜で送り出す町民たち、みんな狂っていた!なかでも、天本英世さんの演じる狂気が光っていました。

 平和の願う国民にならねば、亡くなった200万人に申し訳ない思いです。すばらしい映画でした!

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