ハリウッドスター“ロバート・レッドフォード”の俳優引退作です。俳優としての最後に何を残し、何を語るかと、WOWOWの特集公開で観賞しました。「明日に向って撃て!」で俳優としての地位を得て、「数多くの銀行強盗をしながら1発も撃たずにその任を終えたという(笑)、実在銀行強盗犯フォレスト・タッカーを演じて俳優業を終えるという本作。ぐだぐだ言わないで、93分で終わるのが最高に恰好いい。
最終作というと頑張って駄作になることが多い。(笑) 「止めた!」といって未練で何回も戻ってくる人がいる。本作ではちゃんと理由が分かり、“老兵は死なず、ただ消えゆくのみ!”と満面の笑顔で去って行く。
原作:デビッド・グラン、監督・脚本:「A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー」(2017)のデビッド・ロウリー。撮影:ジョー・アンダーソン。
主演:レッドフォード、共演:ケイシー・アフレック、シシー・スペイセク、トム・ウェイツ、ダニー・グローバーら。
THE OLD MAN & THE GUN | Official Trailer [HD] | FOX Searchligh
あらすじ(ねたばれ):
1981年7月26日、アメリカン銀行で強盗を働いたカッター(ケイシー・アフレック)が警察無線を聞きながらその場を去り、高速道に出て、故障で止まっていたシュエル(シシー・スペイセク)の車に乗せてもらい難を逃れた。
ダイナーでコーヒー。シュエルが「仕事は何に?」と聞くから「泥棒だ!」と応えると、「証明して!」という。
テキサス・ダラスのハント警官(ケイシー・アフレック)。この事件を聞き、子煩悩な彼は子供を連れて銀行を警邏中に、カッター、テディー(ダニー・グローバー)、ウォラー(トム・ウェイツ)の三人組がうまい連携プレイで金を盗み出した。犯人たちが去って、店長が慌てて警察を呼ぶ。ハントが「俺が警官だ!」と叫ぶが、犯人が拳銃を持っていたかも分からない“役立たず”だった。(笑)
家に戻ったハントは妻のモーリン(ダニー・グローバー)に「警官辞めても良いが、できなきゃ犯人を捕まえること!」と発破掛けられた。(笑)
ハントがこの強盗銀行犯を担当することになり資料集めにかかるが、不思議なことによく分からない。次々と同じような事件が起きる。
被害銀行の新米女子行員に聞くと「良い人に見えた。幸せって!と言った」という。なんだこの銀行泥棒は?
タッカーたち3人組はミスリー州セントルイスの大手銀行に運び込まれる金塊を狙うことにした。三人はしっかり下見をしてその時を待った。タッカーが力は衰えていないと思っていたが、他のふたりが不安を漏らした。
ハントがテキサス・ダラスでの数10件の強盗事件について「犯人像は60~70歳の黄昏ギャング。俺が手錠をかける!」とTVインタビューに応じた。このTVをタッカーが見ていた。(笑)
ハントの意気込みにもかかわらず、簡単に銀行から金塊が消え、紙幣がばら撒かれ、「ハントー君へ」と一枚の紙幣が遺されていた。
ハントはこの失策で担当を降ろされ、以後FBIが担当することになり、ハントは個人的の仕事としてハントを追うことにした。長女が「犯人が捕まったら、パパの仕事がなくなる」と慰めてくれた。(笑)
タッカーら三人はこれを最後にグループを解散。別れ際にテディーが「あの墓は誰のだ?」と聞くが、タッカーは返事しなかった。
タッカーはシュエルが経営する牧場を訪ねていた。
シュエルは「年取って牧場経営がきついし、さびしい。幸せって何なんでしょう」聞く。タッカーは「俺が何しようが、子供が今の俺を見て誇りに思えるかどうかだ。答えがノーならまだ努力を続ける。イエスなら自分の理想になったってこと」と返事した。
タッカーはシェリルの抵当を自分が引き取り、自分名義で彼女に贈りたいと銀行に掛け合ったが、シェリルのサインが必要と分かり、諦めてブレストを買い与えた。
ハントのところにタッカーの娘ドロシー・ヘイズから手紙で連絡があり、サンフランシスコに出掛けて話を聞いた。「タッカーはほとんどを刑務所暮らしで仮釈放の時帰ってくるが、すぐにいなくなった。同じことを繰り返すので刑務所から出さないで欲しい。でも母は愛していました!」と話した。
ハントはタッカーの担当だった弁護士の話を聞いた。13歳のときの自転車泥棒から彼の泥棒人生が始まった。銀行強盗を16回成功している。数年前、木材や布でボートを作りマリン郡の旗を帆にして川を渡ったことがあった。銃は一度も撃っていない。逮捕されたとき「楽しく生きた」と言っていたという。
家に戻ったハントは妻のモーリーンに「彼がどんなやつか分かった」と話し、「今夜は楽しもう」とふたりでダイナーに出掛けた。
なんとダイナーでハントとタッカーがばったりとトイレで出会った!タッカーが「黄昏ギャングの刑事さんか?」と聞くと「まだ捕まえていない!」という。(笑) タッカーは「あんたはきちんと見える!優秀な男だろう」と声を掛けて去った。(笑)
タッカーはこのあとシュエルを牧場に送り、帰るとテディーが訪ねてきて、警察に張られていた。
ハントはタッカーの逮捕されたことを聞いて、自分が逮捕できなかったことを悔やんだが、刑務所を訪ね、あの時のドル札を返した。(笑)
出所にはシェリルが迎えに来た。「あなたの名前は嘘だったのね!」という彼女に、タッカーは脱走記録を渡した。(笑) 1936年からの記録が書いてある。この記録が、レッドフォードのフィルモグラフィーを交えながら、語られます。レッドフォードの若かりしころの懐かしい映像が出てきます。
タッカーはシェルの牧場に戻り、アリゾナに家を作り足を地につけて再出発と思っていたが、現金運搬車が走っているのが目に入るともういけない!(笑)
タッカーはここから4件の銀行強盗を重ね、最後に逮捕した警官が「彼は笑っていたよ」と証言した!
感想:
1980年代にこんなに紳士で人徳のある銀行強盗がいたことは知りませんでした。(笑)
フォレスト・タッカーの人生に、自分の人生を重ね、俳優人生を終えたという作品ではないでしょうか。タッカーの数限りなく繰り返す脱獄に、幾つもの俳優人生での楽しみや苦しさが思い出されますが、最後にはすべたが楽しい思い出だったと感謝しているように受け取りました。
作品でのレッドフォードとアフレックは犯人とこれを追う警官の役でしたが、アルフレッドがレッドフォードを追いかけて学ぶという関係になっていて、オードレッドの後輩に託すという気持ちがよくでていたように思います。
年老いてゆくシュエルに自分の人生を語るタッカーの言葉、ふたりが寄り添っていく関係はとてもよかったですが、十分に人生に満足したことが伺われ、これはレッドフォードの言葉だと思っています。タッカーの最後が笑顔であったというのが良い!
カメラを目にしたとき俳優に戻るのではなく、監督で頑張ってください。楽しみにしています。レッドフォードの年老いた笑顔を沢山観る作品でした。
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