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【DVD】「スリー・ビルボード」(2017)怒りが怒りを呼び、その行き着く先が不明!(笑)

 

お正月は消化不良だった本作からスタートです。(笑)

 娘を殺された母親が、いつまでも犯人を捕まえられない警察に怒りの看板広告を掲げたことをきっかけに、町の住人それぞれが抱える怒りや葛藤が剥き出しになっていくさまをダークなユーモアを織り交ぜつつ、予測不能のストーリー展開でスリリングに描かれるというクライム・サスペンス。

第90回アカデミー賞(2018)で作品賞、脚本賞など7部門にノミネートされたが、フランシス・マクドーマンドが主演女優賞、サム・ロックウェル助演男優賞を受賞した作品です。

監督・脚本:マーテイン・マクドナー、劇作家として名高い方とか、初鑑賞です。

出演者:主役は「ファーゴ」のフランシス・マクドーマンド、共演はウディ・ハレルソンサム・ロックウェル

物語は

アメリカ、ミズーリ州の田舎町エビング。ある日、道路脇に立つ3枚の立て看板に、地元警察への辛辣な抗議メッセージが出現する。それは、娘を殺されたミルドレッド・ヘイズ(フランシス・マクドーマンド)が、7ヵ月たっても一向に進展しない捜査に業を煮やして掲げたものだった。

名指しされた署長のウィロビー(ウディ・ハレルソン)は困惑しながらも冷静に理解を得ようとする一方、部下のディクソン巡査(サム・ロックウェル)はミルドレッドへの怒りを露わにする。さらに署長を敬愛する町の人々も広告に憤慨し、掲載を取り止めるようミルドレッドに忠告するのだったが…。(allcinemaから引用)

3枚の看板を立てたことで、町の人々に第1波の衝撃が、この衝撃により第2の衝撃、これが第3の衝撃へと予測がつかない右往左往する展開、その行き着く先は観てのお楽しみという作品でした。


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あらすじ&感想:(ねたばれ:注意)

静かな、緑の中を走る道路沿いに立てられた「レイプされて殺された」「犯人逮捕はまだ?」「なぜ ヴィロビー?」の3枚の立て看板。

この広告にTV局が飛び飛びついた。母親が「レイプを黒人問題と同じように放置している。娘は焼死体で見つかった。誰か責任を取れ、署長!」とコメントした。

ミルドレッドが、ツナギとバンナダ姿で全く笑顔を見せることなく、いかなる敵があらわれようと論破してしまう。

早速抗議に来たウィロビー署長、厳つい顔だがとても優しく町の人に親しまれていた、しかし小心者でいろいろ調査が進まない理由を並べ立てる。(笑)ミルドレッドが「早く逮捕しないと誰かが殺される」と抗議すると「俺は癌だ」と反論、これに「町の人はみんな知っている。早くやれ!」とミルドレッド。(笑) 

牧師が「町の人たちの気持ちを考えて欲しい」とミルドレッドを説得にやって来た。ミルドレッドは1886のギャング事件を引き合いに出し、「これを契機にギャングの一員なら、仲間が事件を起こしただけで自分がまったく関与していなくても罪に問われた。あなたが2階で聖書を読んでいても下で牧師が殺人を犯せば捕まるよ」と反論した。これで暗に神父の性犯罪を問い、牧師は退散していった。(笑)

ミルドレッドへの町民の嫌がらせが始まった。歯医者に行けば麻酔なしで歯を抜かれそうになる。(笑)とんでもないと抜歯ドリルで医者の手に穴をあけると、「これ幸い、この一件で広告を下ろさせる」と警察が介入してくる。(笑)ウィロビーがこの件で事情聴取中に吐血した。

息子ロビー(ルーカス・ヘッジズ)が、「通学道路に姉の犯罪の広告があるのはつらい」と言い出した。別れた夫チャリー(ジョン・ホークス)が「俺の嫁がお前の広告で仕事を失った」と糞みたいな理由で訪ねてきて「娘アンジェリーがお前のことで悩んで、俺のところに相談に来た」と告げた。これは彼女には痛かった。

「事件の日。娘が、車を貸してくれというのを断ったことで、徒歩で出かけたことが事故に繋がった」と後悔し、事故現場に花を手向け、そこに現れた鹿に娘を重ね涙を流した。

ミルドレッドの本心は、優しい母親、娘への愛情が強かったことがこの大きな怒りにながっていた。

突然、署長が亡くなった。拳銃自殺だった死因は家族に迷惑を掛けたくないというものだった。

部下のディクソンは人種差別主義者だった。単細胞で短気、ホモでひがみっぽい、さらにマザコンだった。(笑)しかし、自分を使ってくれる署長には絶対的な信頼を寄せていただけに署長の死はショックだった。

ディクソンは署長の自殺原因はこの広告を作った広告社長レッド(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)にあると、レッドを追い詰め2階の社室から放り出して大傷を負わせた。このことで新しい署長により首にされた。

ウイロビー署長のミルドレッドへの遺言は、「広告代を払う」というもので、「しっかりやれ!」との励ましだった。思いもしない愛情にミルドレッドが涙した。

しかし、親しまれた署長だけに、その死を契機に町民のミルドレッドへの非難だったが大きくなり、息子を車で学校に送ると石を投げられる。ミルドレッドは石を投げた犯人はもちろん周囲の生徒も同罪と蹴りを入れる。(笑)これを見る息子が母親の勇気に感動するようになっていった。(笑)

立て看板が燃やされる事件が発生した。ミルドレッドと息子ふたりが懸命に消化するが全焼してしまった。ところが、修復に協力者が現れた。

ミルドレッドは、ディクソンが広告社長を襲ったことで看板が燃やされたと、警察署に火炎びんを投げ込んだ。

この時、警察署では、ディクソンがウイロビーの遺書を読んでいた。遺書は「お前の欠点はキレルこと。刑事に必要なのは愛だ。拳銃なんぞいらん」とあり感動しているところに火炎びんが飛んできた。(笑)

火炎に包まれた彼はダイビングして外に逃げたが、火だるまだった。幸いにも、いつも軽蔑している小男ジェームスピーター・ディンクレイジ)に発見され、病院に収容された。

全身包帯で身動きできないディクソン、そこに、彼が傷つけた包帯だらけのレッドに出会った。(笑)レッドが身動きできない彼ためにジュースを運んだ。

ウイロビーの遺書とジェームスの好意でディクソンは、「これが愛だ!」と大きく変貌し、ミルドレッドの苦しみを理解するようになっていった。

 一方、ミルドレッドは、火炎ビンで襲ったところを小男ジェームスに見られていたが、彼の黙秘により警察に逮捕を免れた。ミルドレッドはジェームスのデートに応じ、レストランで食事中に、元夫チャーリーに出会い「小男と付き合うのか?火事で看板が消えてよかった。“怒りは怒りを来すぞ”」と声を掛けられた。

この言葉でミルドレッドはデートを取りやめた。ジェームスがチャーリーのテーブルにやってきて「怒りが、怒りを呼ぶではないか!」と抗議した。(笑)

ディクソンは、カフェで「女を廻した」と話す男に出会った。格闘してそいつの血液を採り、警察で鑑定することにして、このことをミルドレッドに知らせた。ミルドレッドはディクソンに警官としての正義が戻ったと大喜びした。

しかし、警察から「DNAが一致しない。彼はそのとき外国にいた、アリバイがある」と真犯人でないと知らされたデイクソンはミルドレッドに「どうするか」と聞くと「それでも希望が見えた、“やる”!」と答えた。

二人で、ライフルをもって車に乗り込み、ミルドレッドが「火は私がつけた」と告白すると「あんた以外にいない」と笑いながら、「道々でやるかどうかは決めればよい」と隣の州アイダボを目指した。

まとめ:

職務怠慢と警察著長ウィロビーを訴えた3枚の怒りの看板が、市民の怒りを買い燃やされる事態となり、その怒りで警察署を燃やすという怒りの連鎖。風が吹けば桶屋が儲かる的ストーリーの展開に笑った。突っ込みどころがない脚本に驚いた!

警察批判、黒人問題、人種差別、教会批判など社会問題が皮肉っぽく込められた会話が受けたかもしれない!

フランシス・マクドーマンドウディ・ハレルソンサム・ロックウェルの真面目な演技が面白過ぎました!

怒り狂ったミルドレッド役のフランシス・マクドーマンド悪魔のような顔で神父までの黙らせる舌鋒、怖かった。(笑)それでいて鹿を見て娘アンジェリーを思いだして泣く。とおもえばアンジェリーのうさぎちゃんスリッパと話して警察署襲撃を決意するという本当に予測不能なおばさん役、見事でした。(笑)

ウディ・ハレルソンはとても情深い配慮にできる警察官役ガンの苦しみを愛妻に見せたくないと袋を被って拳銃自殺、その袋には「袋は取るな!」と書くという、このような誠実な人物を演じただけでもうアカデミー賞ものです。(笑)

すぐ切れる警察官ディクソン役のサム・ロックウェル。切れまくって吐く毒舌と鉄拳。こんな男がウィロビー署長の死を聞き崩れるとは、驚きました。この演技に笑った。(笑)刑事には“愛“が必要というユロビー署長の遺言。火事現場から軽蔑していた小男ジェームスに助けられ、入院中に仇敵レッドに飲ませてもらった一杯のジュースで”正義の人“に生き変わるという、幅広いキャラクターのアカデミー賞助演男優賞演技に笑いました。

この怒りの連鎖。まだミルドレッドの怒りは収まっていない。切れまくり警察官ディクソンの予期せぬ変身で、ふたりで州境界を越えて特定できない性暴力男たちを追う結末。とんでもハップンの物語にこのテーマ、これが受けたんでしょうね!

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