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「星の子」(2020)真実を見る目

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原作は芥川賞作家・今村夏子さんの同名ベストセラー、未読です。監督は「まほろ駅前狂騒曲」「日日是好日」の大森立嗣さん。主演に芦田愛菜ちゃん。「愛菜ちゃんがいよいよ大森監督とタッグで芥川賞作家作品に出演か!」ということで楽しみにしていました。期待を裏切らないすばらしい出来でした! 

未熟児で生まれた女の子・ちひろ。“金星のめぐみ”という水のお陰で健康体になったことで、家族は宗教団体に入会。貧乏ではあったが、両親に愛情一杯で育てられた“ちひろ”が中学3年になり、赴任してきたイケメン先生が好きになり、これまであまり気にしなかったが、教団の噂や友達のいうことが気になり、これまでのように教団を信じていいのかそれとも別の道があるのかと、揺れるひろみの心を描いた物語。 

世間では異様だと見られる宗教団体に置かれた主人公が、この教団を信じていいのか、自分にとって何を信じ、どう生きるかがテーマになっていますが、これは普遍的なテーマです。

私たちはとかく平々凡々と世の流れに流されながら過ごしがちですが、“ちひろ“が苦しみのなかで大きな世界を見つけていく姿は感動的です。 

愛菜ちゃんの表情のなかに、“ちひろ”の心の動きを読み取ることになりますが、時々の感情がよく出ていて、すばらしいです。彼女の将来は女優を超えた何かを為しうる人になるように思いました。 

監督・脚本:大森立嗣、撮影:槙 憲治、音楽:世武裕子

共演;永瀬正敏原田知世岡田将生蒔田彩珠、新音、大友康平高良健吾黒木華


『星の子』本編映像 

あらすじ(ねたばれ):

ちひろ芦田愛菜)は未熟児として生まれ病弱だったために、父(永瀬正敏)と母(原田知世)はいろいろと治療を試したが効果がなかった。そんなとき「金星のめぐみ」という水の出会い、以来健康体になって行った。父母がこの水をしませたタオルを頭に乗せるという奇妙な宗教団に入信し熱心な信者になった。

この役、原田知世さんがよく受けました。(笑) 

これから15年後、中学3年生になったちひろは、4の月始業式で数学担任の南先生(岡田将生)に出会い、憬れを持つようなった。

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先生の数学の時間には、ひたすら自分の病状を記した母の10年日記に、先生の似顔絵を描いた。先生はテニス部の担任だったのでテニスの練習もよく見に行った。 

先生が好きになっていくことで、人とは変わった家族のなかで育ったことが気になり出す。 

幼いころ汚いものがきれいに見えるというメガネを掛けていたこと。仲良しの“なべちゃん”(ヴォナミッセル珠良)に「あんたはイケメンが好きなだけ!」と冷やかされるが、気にならず掛けていた。(笑)

今ではなべちゃん(新音)が「(自分の彼氏)新村君(田村比呂人)を貸してあげようと思ったが、彼が断った」という。(笑) ちひろは男の子については奥手で幼いところが残っているが、聡明な子。ちひろには姉・マ~ちゃんがいたが、今は家を出ている。 

ちひろは川沿いの空き地に建てられて小さな家に住んでいる。教団活動でお金がなくなり、ここに引っ越してきたのだった。狭い家のなかに立派な祭壇があり、この祭壇で進学を目指して勉強している。この生活になんの不満もない。 

4年前、家を出た姉(蒔田彩珠)が戻ってきた。姉は水を飲んで「おいしくない、こうなったのはあんたのせい」という。でもよく話をしてくれ、「新婚旅行には連れていく」と約束した。しかし、次の朝には姿を消していた。 

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5年前、マーちゃんは母の兄・雄三おじちゃん(大友康平)と組んで、水を水道水に取り換えて2週間飲ませて、「この水はありがたい水」と飲む両親に「だたの水!」と父母の宗教を止めさそうとしたが、これが父母の宗教心をさらに煽るという結果になった。(笑) このとき母を連れ帰ろうとする雄三おじちゃんにマーちゃんがハサミを持って追い返した。父母を愛しているが、宗教が嫌いらしい。 

こんな姉の姿を思い出して、ちひろは苦悶します! 

学校の休み時間。ちひろは教団家族の“さなえ”に誘われて、保健室で過ごした。さなえから教団の若い幹部・海路さん(高良健吾)と昇子さん(黒木華)が催眠術で高いものを買わせているなどの悪い噂を聞かされる。

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幼いころ、昇子さんから自分にはピンクの花輪を、春ちゃんにはメッセージに従ってると赤の花輪が被らされたことを思い出し、ちひろは少し宗教心が薄いのかもしれないと思った。 

学校帰りに、コーヒーを飲んでみる。家では「コーヒーを飲むとパワーが落ちる」と飲まない。別に変わったことはないと感じた。 

卒業文集の作業していて、なべちゃんがちひろが飲む水を飲んで「まずい!あんた騙されているよ」と言う。この言葉にちひろは落ち込んだ!

作業で帰りが遅くなり、なべちゃんと新村君、そしてちひろの三人が南先生に車で送ってもらうことになった。 

なべちゃんと新村君が後部座席、ちひろは先生の横で、どきどきしていた。家近くの公園にきたところで緑のジャージーで頭にタオルを乗せ、水を掛け合う男女がいた。

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先生が「何にやってんだ、狂っている!」と声を上げた。ちひろは車から降ろしてもらって、「どうしよう、どうしよう」と走った。マーちゃんのところに飛んでいきたかった。 

家に帰ると「大丈夫か!」と父が水を掛けようとしたが、これを断って、ベットで泣いた!病気のふりして隠れてしまいたい気分だった。 

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次の日。登校して、廊下で南先生に出会った。先生が女生徒から「昨日のデート本当なの?」と冷やかされているので、「昨日、公園で見たのは私の親です」と告白した。先生がびっくりするので「嘘です!」と言って、その場から逃げて、泣いた。

保健室で熱を測ってもらうと38.5度あった。浅見先生(大谷麻衣)に「私は風邪をひかない。この水で!」と訴えたが、「風邪でしょう」という。水も利かなくなっている!

ちひろは林家を代表して親戚の法要に参加した。そこで雄三おじさんから「

瀬乃高校は遠い。家から通わないか」と強く勧められたが、「今のままでいい」と断った。 

南先生の似顔絵を描いた日記は、先生の絵のあるページを全部切り取った。それを整理して釜本さん(早間颯紀)にエドワード・ファーロングの似顔絵として進呈することにした。(笑) 

南先生がホームルームの先生の代行でやってきた。推薦入試が近いとしてヴィルスに注意喚起し、「水で罹らないということはない。両親に言っとけ!」とちひろに。そして「いつも似顔絵書かれて迷惑だ!」という。異常だと見られている教団より酷い!こんなことがこれからも続くかと、ちひろは呆然とした。過呼吸で苦しくなり、泣いた!

なべちゃんが「あいつは性格が悪い」とハンカチを貸してくれ、「公園の人があんたの親であることは知っていた」という。「あれで風邪ひかないの」と言うと「あんた信じるの?バカだよ」と言われた。 

父母と一緒に教団の研修会に参加した。大講堂で教会歌を唄い、交流の時間には隣の人とお話をした。その人はツダさんという男性だったが「婆ちゃんの代理で30万もらって参加している。ここはやばいよ!リンチされるよ。行方不明者がいる」という。(笑)

瞑想時間には、タオルを頭に乗せって、水を掛ける儀式にも参加した。夕食には海路さんたちが作る料理を食べた。海路さんはとてもオーラのある人だった。自分が試されているようで、ず~と母に会えないのが不安だった。 

次の日。信者代表の誓いの言葉を聞いた。そこに母が居ないのが心配だった。そのとき昇子さんが「お母さんはカフェテラスよ!迷っているのね、あなたがここにいるのは自分の意思とは関係ないの!」と言われた。

ちひろが懸命に母を探した。さなえから「一生会えないかもしれない」と聞かされ、愕然として、座り込んでしまった。

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そこに母がやってきた。父もやってきて、会場を出て、薄い雪の上にシートを敷いて夜空の流れ星を追った。三人はマ―ちゃんに子供が産まれたことを知り喜んだ。

父が「見つけた!」というが、見えなかった。ちひろが「見つかった!」というが、父母にはわからなかった。「三人で見つけなきゃ!」と見続けた。 

感想:

三人で星を眺めて、まだ結論は出ていませんが、ちひろは自分が信じる星を見つけるでしょう。 

ちひろは南先生に恋したことで、父母のこと、姉のこと、お友達のこと、教団のこと、何を信じればよいのかと心が揺れました。 

南先生に父母が儀式をしているところを見られ、逃げたが、先生に「あれは親です」と告白し、先生の本心を試した。自分から、先生は信じられるかと確認する強さをもっていた。見えないものを見ようとする勇気を持っている。 

昇子さんに会い「あなたがここにいるかは、自分の意思とは関係ない」」と試され、自分が信じるものを信じればいい、自分で道を選べばいいと気付いた。 

ちひろにはもっとすばらしい心を持っている。南先生に告白し、先生が動揺するのを見て、「あれは嘘!」と取り消した。自分が最悪の状態にありながら、先生を気遣う思い遣りがある。これに比して南先生の行動はあまりにも酷過ぎました。 

愛菜ちゃんは“ちひろ”そのもので、ずっと先を見ていると思います。すばらしい演技でした!

ちひろのお姉ちゃん役・蒔田彩珠さんは、出番は少ないですが、とても雰囲気があるいい演技で、確実にうまくなっています。 

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