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「サイド バイ サイド 隣にいる人」(2023)詩的な映像世界がすばらしい!面白さは「マジックリアリズム」だ!

 

伊藤ちひろさんの監督2作目。伊藤さんの経歴を見てWOWOWで観ることにしました

 定勲監督の「世界の中心で、愛をさけぶ」、押井守監督の「スカイ・クロラ The Sky Crawlers神山健治監督の「東のエデン」など有名監督の話題作の脚本を担当。

本作、リアルとファンタジーが混在するマジックリアリズムが息づく物語だと紹介されている。伊藤監督の経歴と「マジックリアリズム」、どんな物語になるかとわくわく感で観ました!

監督・原案・脚本伊藤ちひろ企画・プロデュース:行定勲撮影:大内、泰編集:脇本一美、音楽:小島裕規、主題歌:クボタカイ。

出演者:坂口健太郎齋藤飛鳥浅香航大、磯村アメリ市川実日子、他。

物語は

坂口健太郎が主演を務め、不思議な能力で人々を癒す青年が自分自身の過去と向き合う姿を描いたドラマ

そこに存在しない「誰かの思い」を見ることができる未山(坂口健太郎は、その能力を使って傷ついた人々の心身を癒しながら、恋人で看護師の詩織(市川実日子)とその娘・美々(磯村アメリ)と平穏に暮らしていた。

ある日、自分の近くに謎の男が見えるようになった未山は、その思いをたどり、遠く離れた東京へやって来る。未山の高校時代の後輩でミュージシャンとして活躍するその男・草鹿(浅香航大)は、未山に対して抱えていた特別な感情を明かし、さらに未山の元恋人・莉子(齋藤飛鳥)との間に起きた事件の顛末を語る。未山は草鹿を介して莉子と再会し、自らの過去と向き合うことになる。(映画COM)


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あらすじ&感想

冒頭、未山は学生時代の友人に請われて東京に。高速バス車内の未山の席の隣に、草鹿が座っている未山は全く気づかない。未山と草加は生きているのか死んでいるのか?

未山は屋敷に通され、“なつ”ばあちゃん(茅島成美)を寝せて体に触り「病院で観てもらった方がいい。先祖が日本に帰りたがっていませんか?」と聞く。なつは「父が戦争でレイテに行って、帰ってこない」という。なつばあちゃんの想いが見えるようだ。この席に草鹿とレイテに行った父がいる。しかしだれも気づかない!

マジックリアリズム」が始まり、ミステリアスだ

 友人に「東京に帰ってきたらいいのに。莉子ちゃんに会っている?どこにいるの?莉子ちゃん、個展をやっていた!」と聞かれた。部屋には未山と莉子の写真がある。しかし、未山は全く反応しない。

帰りのバスには草鹿がいない田舎に戻り、離れ牛を牧場に届けた。

未山は1年前にここにやってきて町外れの小屋に住み、シングルマザーの詩織と親しくなり、通い夫をやっている。詩織には美美という6歳?の女の子がいる。美美は未山を「未山さん」と呼び、懐いている。詩織との仲はとてもいい。詩織の望みは食卓を照らす照明が欲しいということ。泊まった日は未山が食事を作る。傍には草鹿が現れる。詩織は気づかないが、美美は気づいている。いったいこの子は何者だ!

食後、病院勤務の詩織を送り出と未山と美美は緑たっぷりの野に散歩に出かける。未山は美美に四季のすばらしさをしっかりと教える。

 いろいろなところから未山には看て欲しいと要請がある。そんな中で養蚕家の木内(井口理)からミャンマーからの技能研修生・ミーの首が動かないから看て欲しいと依頼された。美山は「お兄さんが何か伝えたいらしい」と診断した。この席に草鹿とミーの兄がいる。未山が返ろうとすると木内の奥さん・マリが蚕のフンから出来たクリームを手に塗ってくれる。どうやらマリは未山に興味があるらしい。これを草鹿が見ていた。(笑)

未山が小屋に返ろうとすると草鹿が付いてくる。未山が止まると草鹿も止まる。

未山はセミナーに参加した。講師は「人は霊になったらどこに行くか?同じところにいたら退屈する。霊もあちこち移動しながら存在する。宇宙に届くエネルギーを持つ方法がある」と話す。未山が講師に「見えるものと見えないものがある」と聞くと「あなたは人を寄せ付けやすい。何か過去に心残りがありそうだ」と答えてくれた。未山は「何か?」と心当たりを捜しだした。

夜、詩織が「美美があなたの友達が出ているという、これ見て!」とTVの音楽番組を見せる。ギターを弾く男、名前は草鹿アラタだった。

朝、未山が食事を作っているとそこに草鹿が立っている。詩織を送り出して散歩しようと美美を誘うと「3人で行く!」と言う。「ママはいないぞ!」と言うと「3人いる」と指で示す。美美は草鹿をはっきりと見えている。

 末山は上京し草鹿のライブを見た。「隣り」という曲だった。草鹿と対面したのはTVの収録番組のゲストとしてだった。草鹿は貴方の精霊が来ていた詳しいことは家で話す。“隣り”という曲はあなたが高校生の頃莉子に送った手紙から作った歌だ」と言う。

彼のアパートに入ると、激し息使いでぐったりした、死に損ねの莉子がいた。草鹿はあなたが放ったらかした過去だ、あの曲はこういうことだと言う。

未山は莉子をレストランに連れていった。が、何も食べない、妊娠していた。未山はエスカレーターで降りる際、莉子が前に転げても転ばないように前に立った。バスに乗り、トンネルを歩いて通り抜け、自分の小屋に連れ戻った。溶いた絵具を渡すと莉子は怒りで蹴とばした。

未山に記憶が戻ってきた。

 エスカレーターで降りる際、私の気持ちが分からないの!止めて!という莉子に「離婚だ!」と前に押した。莉子は転げ落ちた。そこには絵具が散らばっていた未山は莉子がどうなったか見ることなく必死に逃げた。

未山と莉子は並んで横たわり過ごした

 詩織は戻ってこない未山を心配して美美と一緒に小屋を訪ねた。未山が女性と一緒にいること、そして女性が妊娠していることに驚いた。貴方の子?」と聞くと未山は「違う!」という。詩織は「ふたりで家に来るのを待っている」と言い残して帰った。

未山と莉子が詩織の家に着くと、詩織は莉子のために部屋を準備していた。ここから4人の生活が始まった

莉子は美美を通して詩織と仲良くなっていった。未山は夜を詩織と過ごした莉子は絵を画き始めた莉子の赤ちゃんが産まれるのを楽しみにしながら、4人が家族のようなっていった。

未山は莉子に初めて会ったときのことを話した。「莉子の文化祭には行きたくなかった。母親を亡くし父の暴力に苦しんでいた。父親は自分をどう育てればいいのか悩んでいた。自分がいないとき部屋に入って下着を持ち出し洗うんだ」と。莉子は文化祭には来なければ会わず済んだのに。ここは怖いぐらい星に満ちている」と言う。

4人でキャンプに出かけ、美しい自然を楽しんだ

 しかし、莉子がひとりでいることが多い。テントから抜け出した莉子を未山が探し出しそっと抱いてやる。未山はこれからのことを考えていた。

未山はキャンプから戻り寝ていて、目が覚め、横にいる詩織の顔に触れていると水の音がする未山は水の音に誘われ小屋に戻って湖を見ていた。水の音が聞こえる!

未山は迷い牛に会い、牧場に戻そうとするが反対方向に進み大きな声で吠えた!牛の側に未山の姿はなかった

クリスマスイブ。莉子のデザインで出来た照明で詩織、美美、莉子の三人が食事するテーブルを照らしていた。そこに美山の姿はなかった。美美が「そこにいたのに!」という未山はチキンにいて3人を見ていた

莉子は赤ちゃんをベビーベッドに置いて、美美のドレスを作っていた。美美が「ママ!」と叫ぶ。詩織は莉子の部屋で寝ていた。未山は小屋の窓から山々を眺めていた。

まとめ

物語は美しい風物の映像の中、現実か死の世界かと問うように、ゆっくりと、スリリングに展開する

美術・装飾スタッフ出身である伊藤監督の感性が光る詩的な映像世界がすばらしいまるで楽園のような風景を見せてくれる。これは死の天井界の物語か?

作品の面白さは「マジックリアリズム」だ

未山が居なくなって、詩織、美美、莉子の三人と莉子の赤ちゃんとの生活が始まった。これは現実の世界か、死の世界か?誰が生きて誰が亡くなっているのか?とても面白い作品だった

私は未山だけが亡くなっている案と全員が亡くなっている案のいずれかだと思った。未山と美美のキャラクターを重視し、全員亡くなった死の世界の物語と思ったそして作品のテーマは魂は永遠。現世と死後の両方にそれぞれの人生がある。現世での理不尽も、死後を含めた長い旅の中で折り合いがつくというもの。

坂口健太郎さんの死んでいるのか生きているのか、このあいまいな雰囲気がよく出たうまい演技だと思った市川実日子さんのおおらかなシングルマザーぶり、天国にいるような雰囲気だった。子役の磯村アメリちゃん、可愛いいが霊界が見える雰囲気があった。齋藤飛鳥さん、「乃木坂46」卒業後初の映画作品だった、ほとんでセリフはなかったが雰囲気は良く出ていた。

人間の生と死、魂の壮大なドラマだと思った

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