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「ちひろさん」(2023)風俗嬢と弁当屋を掛けて描く人生訓、生きるに必要なこと全部教えてくれる。

 

ちひろ“という平凡な名にさん付けとは?監督が今泉力哉さんだから何か曰くがあるなとWOWOWで観ることにしました。(笑)

 作品紹介を見ると「弁当屋さんで働く女性・ちひろ。元風俗嬢である」とある。

演じるのが有村架純さんとなると観ようかとなる。これを戒める作品。(笑)

この作品のテーマは元風俗という先入観でちひろさんを見るが、ちひろさんはどんな人がテーマで、“ちひろさん“は風俗店の源氏名であったかと、このタイトルはよく出来ている。風俗嬢と弁当屋を掛けて描く人生訓、これは凄いと思った。 (笑)

原作:安田弘之の同名コミック未読です。監督:今泉力哉、脚本:澤井香織 今泉力哉撮影:岩永洋、編集:佐藤崇、音楽:岸田繁主題歌:くるり

出演者;有村架純、豊嶋花瀬、嶋田鉄太、Van、若葉竜也佐久間由衣

長澤樹、市川実和子鈴木慶一根岸季衣平田満リリー・フランキー風吹ジュン

物語は

海辺の小さな街にあるお弁当屋さんで働く女性・ちひろ。元風俗嬢であることを隠さず軽やかに生きる彼女は、自分のことを色目で見る男たちも、ホームレスのおじいさんも、子どもも動物も、誰に対しても分け隔てなく接する。

そんなちひろの言葉や行動が、母の帰りをひとり待つ小学生、本音を言えない女子高生、父との確執を抱える青年など、それぞれ事情を抱える人たちの生き方に影響を与えていく。ちひろ自身も幼少時の家族との関係から孤独を抱えて生きてきたが、さまざまな出会いを通して少しずつ変わり始める。

御案内のように、親子、恋人、友人、上司と部下とたくさんの人と人の関り方が何気ない日常と風景の中で、印象的なセリフを追い、その行き着く先にハラハラしながら観ることになる。が、登場人物のエピソードが断片的に羅列されるので混乱するところがある。これが逆に面白さにもなっている。ということで、あらすじが少し長くなります!


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あらすじ&感想

ちひろが猫とじゃれたり、公園のブランコで遊び海岸道を気持ちよさそうに散歩する。これを中学生の久仁子(豊嶋花瀬)がストーカーして撮影していた。

このあと、ちひろ弁当屋“のこのこ”の店先で弁当を販売する。漁師の若者が「今夜どう」と誘う言葉も一向に気にしない。仕事が終わり、売れ残った弁当を持っての帰りにホームレスの男に会うと、この弁当を食べさせ、アパートに連れてきてフロにいれてやる。

ちひろが自分を語ることは少ないが、親の暴力、家出、風俗嬢の体験を経て、苦を抱えている人には徹底的にやさしい

 一方、久仁子は授業中にこの映像を見ていると、男子生徒から「風俗の人だろう」と言われる。放課後友達とカラオケ店にいても母から電話で呼び戻される。夕食は、母が豪華な料理を作って家族と一緒に食べる。会話は父中心で、母は父を大切にする。久仁子は自由がなく母に大切にされてないと孤独を感じていた。

 ちひろはタケノコ弁当をホームレスの男に与えようとしたが見つからず、海の見える廃屋で弁当を食べていて不登校の中学生・宇部千夏(長澤樹)に出会った。千夏はコミック好きで、ふたりはこれで盛り上がり、仲良しになった。

夜、風俗店にいたころの友人バジル(Van)が遊びにやってきた。ちひろが唯一心許せる人だった。

ちひろが公園でコミックを読もうとベンチに座ると、そこに蛇がいた。マコト(嶋田鉄太)の悪戯だった。マコトは友達がなく虐めを警戒してナイフを持ち歩く子だった。ちひろはマコトがお腹をすかしていると、弁当屋に連れてきて弁当を買い食べさせた。マコトはちゃんとお礼をいう子だった。これを久仁子が一部始終を見ていた。

夕暮れの海。ちひろが脚を海水に浸していると久仁子が写真を撮る久仁子がちひろの側にきて脚を海水に浸しながら「私の名前とか年齢とか気になりませんか?」と聞く。ちひろ「そんなのあてにしたことがない。それが本当かどうか、風俗嬢とはそういう仕事よ。でも人は目を見ればわかる。あなたは嫌いではない」と答えた。久仁子は泣いた。ふたりは脚で海水を掛け合った。

“のこのこ”の女将・多恵(風吹ジュン)は目が見えなくなり入院した。

「お母さんが入院してるから」とアヤという女性が多恵の部屋にやってきて折り紙を教える。多恵が「アルバイトのいい子がいるからもう戻るところがない」と話して聞かせる。(後に分るがアヤとちひろの本名)

千夏から最近ホームレスの人を見ないと聞いたちひろは彼を探し始めた

ホームレスの遺体を発見し、夜、ひとりで穴を掘り埋めた。これにはびっくりだ!

夏祭り。ちひろはバルジと出かけ金魚すくいの店で元の風俗店長・内海(リリー・フランキー)に出会った。その帰りバルジが「あの人と出来ていたの、そう見える」と聞く。ちひろは「何もない」と答えた。

久仁子がマコトの宿題をみてやる。ちひろがおにぎりをサービスした。

久仁子が「お母さんは料理学校に行き、料理が上手だが味がない」という。ちひろが「それがお母さんの理想だよ。わたしはそういう人は苦手だ。昔、絵本で見た海苔巻きが美味そうで作ってひとりで食べたが美味しかった」と話すと久仁子が泣きながらおにぎりを食べる。マコトが「うちの母さんのはめちゃめちゃ美味い」と言う。ちひろは久仁子の孤独を癒すために千夏に会うことを勧めた。

母親の作る料理を子供はどう思うか。これが親子関係のひとつのバロメータになる

ちひろは弟から母親の死を知らされたが、葬儀に参加しないことにした

 マコトの母ヒトミ(佐久間由衣)が弁当のことで抗議にきた

ヒトミは「弁当のことで批判された。シングルだがしっかりやっている。余計なことはしないで」と激怒。ちひろは不承不承に「配慮が足りませんでした」と侘びた。マコトはひとりでスパゲッティを“ちん”して食べながら、TVで「母に花をプレゼントする」CMを見ていた。

久仁子の家では母が作った豪華な料理で夕食が始まった。父が「約束していた陶芸を見に行こう」と誘ったが、久仁子は友達と約束があると断った。父が「家族より大切なものがあるのか」と不機嫌。母が「友達を相談したら」と言い、久仁子はそうすることにした。

久仁子は千夏に会った。自己紹介、ちひろの紹介ということで意気投合し、ふたりはマンガ読みに熱中していった。このあと、千夏は登校するようになり、久仁子は「千夏は離せない友」と喜ぶようになっていった。

アヤがプレゼントだとドングリの実を持って多恵を見舞った。

多恵は娘が20歳のとき箱根に領してドングリを見つけ娘に渡したが退屈そうで目もくれなかった。娘はいつの間にか大人になっていた」と話す。アヤは「そうだね、そうだねと言ってくれたらそれでよかったのにね」と返した。

何気ない会話だが、母と娘の関係で、成長した娘の親への思いやりが必要なことを上手く言い当てている!

ちひろは夜の海辺を歩きながら“ドングリ”の忘れられない記憶を思い出していた。

幼い頃、海苔巻きを作って神社でひとりで食べていた。それを見た女性(市川実和子)が「自分で作ったの!食べさせて」という。食べて「美味しかった、夜は私たちの味方」と手を繋いで施設の近くまで送ってくれた。ちひろがドングリを渡すと「店に来たら指名して!」と名刺をくれた。その名が”ちひろ”だった

ちひろが食堂“門田”に入ると店員と客が揉めていた

客が料理を注文し、メニューにないを断った店員に因縁をつけていた。カウンターでラーメンを喰っていた谷口(若葉竜也)がこの客の胸蔵を掴み制止させた。ちひろは谷口と店をでた。谷口がこれで生きていると入れ墨「色即是空」を見せ、「ちひろさん、あんた本当に人殺しなのか?」と聞く。(笑)「ばれたか」と答えた。谷口は「下のやつ見ると何してもいいと思っているやつ見ると許せなくなる。父親がそうだった。親父が死ぬか俺が死ぬかいなり、気がつくとバットで殴っていて、それて家を出た。親父は生きていると思う」と打ち明けた。ちひろは「父親に会って死のうと思うなら、父親を殺せ!」と忠告した。(笑)谷口は「埋めるのを手伝ってくれ」と答えた。(笑)「したくなった」とちひろは立口を家に招きセックスをした。(笑)

ちひろは幼い頃、親の暴力を受けて生きてきた。弱者虐めを徹底的に嫌う。これが彼女の強さになっている

バルシがちひろのアパートに泊まりにきてタコ焼きを食べながら、「あんたは恋をしないのか」と聞く

「しない、恋愛なんかそんなもんだと思っている。人の心を独り占めできない。もしそれが恋愛なら、私には必要ない。恋愛に酔えないたち。酔うと死ぬ。セックスは生理現象」と答えた。

ちひろの恋愛観は風俗嬢として働き体得したものだった。決して恋にのめり込まない!

マコトの母・ヒトミが「あんたの入れ知恵か?」と激怒しひろみを訪ねて来た

ヒトミは「マコトが誕生日おめでとうと花束を寄こした」とちひろに花束を投げつけた。(笑)ちひろは「これゴミにしたが一生後悔するよ!お母さんの料理が一番美味いと言う子。もっとよく見てやって!花束のことなど知らない!」と花束を突っ返した。(笑)

親であっても子供のことで理解できないことがある

金魚屋の内藤から「一緒に飲まないか」と誘いを受けた

「バジルが金魚店でアルバイトすることになった、一緒に飲まないか」と誘いを受けた。「その気になれない」と断ると、「すこし池に沈んでいろ、藻掻くと死ぬ。人は浮かぶようにできている。じたばたするから死ぬ。浮かんだところで連れてゆく」と言って、電話が切れた。(笑)

ちひろは内藤に母の墓参りに連れていってもらった

母の墓にドングリを供えた。ちひろが内藤に「あのころ店長が身体を求めなかったわけが分かった。私の父だったんだよ」と話した。「なんで俺が?」と内海が笑った。

内藤が店に戻ってバジルに「ちひろは頭おかしいよ、とんでいる。しかし、乗ってやることにした」と話した。

バジルがちひろのところにやってきて「あんた店長とできていたの?」と激怒する。(笑)

「私は恋愛に酔えない。店長は好きだけどお父さん。男と女には恋愛しかないの(このバカタレ)」と答えた。「しょせん雄と雌よ」と言う。「あんたには社長は無理よ、止めな」と言うとバジルは怒って帰っていった。(笑)

唯一の友人でも自分のことが絡むと相手が見えなくなる。(笑)

 雨の夜、マコトが鍵を無くして家に入れず「お腹がすいた」と久仁子に電話してきた

久仁子はおにぎりを作って持って行こうとしたところを母に見つかった。母が「いい気なもんだ勝手にしなさい」と怒った。久仁子は「お母さんも同じ!私のことは何も知らない」と言い返し、おにぎりをもってマコトのところに駆けつけたべさせた。そこにマコトの母・ヒトミが帰ってきて目玉焼きを乗せた焼きそばを作ってくれた。マコトは美味しそうに食べる。久仁子は泣けて仕方がなかった。

料理は豪華だけでは駄目だ!作る人の愛情なんだ

 弁当屋では女将さんが病院からいなくなったと大騒ぎ

店員の永井(根岸季衣)が「アヤちゃんという子を話していて、アヤちゃんと一緒に居なくなった」と騒ぐ。アヤはちひろの本名だった。(笑)

ちひろと多恵は病院を抜け出し車の中でちひろが店にやってきたときのことを話していた。多恵は「ちひろが弁当を買いにきたときドキドキした」と言い、ちひろは「同じ星の人だと思った人は二人いる。ひとりは多恵さん。もうひとりは昔、海苔巻きを食べてくれたちひろさん」と答えた。ちひろは「母が亡くなったときは辛いとも悲しいとも思わなかったが、多恵さんが母ならどんな大人になったかな」と聞くと「今より素敵な人にはなっていなかった」とちひろを抱いた。ふたりは病院に戻り、多恵は退院した。

弁当屋の屋上でのお月見パーティー

“のこのこ“の皆さん、マコトの親子、久仁子の家族と一緒に月見の会を開いてお団子を戴いた。ちひろは誰にもわからないよう途中退座し海岸を歩いていた。そこに多恵から「中途で帰ったでしょう」と電話してきた。「何故分かった」と聞くと「寂しそうな気配が急に無くなったから。あなたがどこか遠くに行こうと思っている?もういいんじゃない、あなたはどこにも行っても孤独を手離さないで生きていける。さようなら」と言った。

ちはるが去った弁当屋“のこのこ”

多恵夫婦が栗の皮むぎをしていた。旦那が「多恵さんがこんな地味は稼業を楽しいというのを聞いて惚れ直した。良い嫁をもらった」と多恵に感謝する。多恵が「ちひろが居なくなってさみしいそう、いい人が見つかるといいね。ちひろを採用した理由は何だったの?」と聞く。旦那は『隠れて見ていたら、出した弁当をエビの尻尾まできれいに食べて「美味しかった」と感謝したことだと話す。

ちひろは新しい職場“牧場”で働いていた

牧場主に「前職は?」と聞かれ、「ただの弁当屋です」と答える。これに牧場主が「弁当屋か」の返事。風俗屋とは見られなくなったが、弁当屋かに、人は仕事という見える形に拘るようです。ちひろさんはこれでまた強くなるでしょう!多恵さんにこれ以上心配させたくなかった。

まとめ:

ちひろは親の暴力、家出、風俗嬢の体験を経て、弱いものを徹底的に助け、慕われ、もう孤独ではなくなった。が、恋愛はできないかもしれない。(笑)

親子、恋人、友人、上司と部下とたくさんの人と人の関り方が描かれたが、自分の立場、都合や見かけで人を判断する。立場や都合を捨てることでその人を理解できると訴えている。ちひろとバルジの関係にみるように、親しい関係にありながらバルジが内海に関心を持つことで、ちひろに対する見方が正反対になる。

 食べ物、料理がいろいろなシーンで数多く出てくる。料理は愛情、人と人を結び付けると訴えている。特にマコトと母ヒトミ、久仁子と母親の関りが面白かった。弁当屋というのが生かされた作品だった。

田舎の寂れた港町。この閉鎖的な環境の中で、おだやかな自然特に海によって人がもつ傷が癒されていく。特に、元風俗のちひろさんと母に愛されないクミコが夕陽の浜辺で脚を海に浸して交わす会話。このシーンが本作のテーマの全てを語るような美しい映像だった。

セリフがすばらしい。沢山の名言があった。元風俗店長の内海が寝込んでいるちひろを励ます「すこし池に沈んでいろ、藻掻くと死ぬ。人は浮かぶようにできている。じたばたするから死ぬ。浮かんだところで連れてゆく」。ラストシーン近くで弁当屋の夫婦が交わす会話もいい。

有村架純さん、風吹ジュンさん、リリーフランキーさん、ナイスなキャステイングで見事な演技でした。

風俗と弁当で描く愛の物語、人生についてのいい壺をついていた!!

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