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「スペンサー ダイアナの決意」(2021)ダイアナのスペンサーに戻る決心に至る心情変化をミステリアスに描き、その結末にカタリシス!

エリザベス女王が死去され、チャールズ皇太子が新国王の座についたばかり。新国王の即位に伴いチャールズ新国王とカミラ妃について、さらに今後の王室について多くの記事を目にしますが、いずれにもダイアナ元皇太子妃が関わる記事も多い。

にも関わらず何故観るか?第94回アカデミー賞(2022)主演女優賞にノミネイトされたクリステン・スチュワート見たさに本作を選びました。(笑)

監督:「ジャッキー ファーストレディ 最後の使命」(2016)のパブロ・ラライン脚本:スティーブン・ナイト撮影:クレール・マトン、美術:ガイ・ヘンドリックス・ディアス、衣装:ジャクリーン・デュラン、編集:セバスティアン・セプルベダ、音楽:ジョニー・グリーンウッド

出演者クリステン・スチュワート、ジャック・ファーシング、ティモシー・スポールサリー・ホーキンス、ミューン・ハリス、他。

物語は

ダイアナがその後の人生を変える決断をしたといわれる、1991年のクリスマス休暇3日間の行動を描いたもの。(1992・12月に別居が報じられた)

ダイアナ妃(クリステン・スチュワート)とチャールズ皇太子(ジャック・ファーシング)の夫婦関係は冷え切り、世間では不倫や離婚の噂が飛び交っていた。しかしエリザベス女王私邸サンドリンガム・ハウスに集まった王族たちは、ダイアナ以外の誰もが平穏を装い、何事もなかったかのように過ごしている。息子たちと過ごす時間を除いて、ダイアナが自分らしくいられる時間はどこにもなく、ディナー時も礼拝時も常に誰かに見られ、彼女の精神は限界に達していた。追い詰められたダイアナは故郷サンドリンガムで、その後の人生を変える重大な決断をするというもの。

冒頭に“悲劇に基づく寓話”と字幕が出ます。この寓話というのが曲者!

ここに至る“ダイアナの心境”を3日に詰め込んで見せてくれることになります。その冴たるものが、彼女がパウダールームに置かれていた伝記「アン・ブーリングの生涯」を目にして心をアンの亡霊に憑りつかれるシーン。アンは国王ヘンリー8世に嫁いだが(1533)、不義密通で国王に殺されたというダイアナの先祖。アンにはダイアナとダブルところがあります。さらに、この時期ダイアナは摂食障害を抱え精神的にまいっていた。ということで、相当に追い込まれたダイアナが“死の恐怖”の中で「何を目にし、それをどう捉えるか」と彼女の心理状況をミステリアスに、ある時はホラーっぽく描いてくれます。

ドキュメントで観るより、直接彼女に心に入り込んで彼女の心情を知ることができ、そのラストシーン(彼女の決心)に強いカタリシスを感じます!


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あらすじと感想(ねたばれあり:注意):

12月24日、霧の中を進む軍用車の車列。なんとエリザベス女王の別荘サンドリンガム・ハウスに運び込む食料運搬と警備兵。こういう映像は放送されませんね!このあと女王の侍従グレゴリー少佐(ティモシー・スポール)の車列、次にチャールズ皇太子と息子たち、最後にエリザベス女王夫妻と愛犬たち。

ダイアナの姿がない!

彼女はひとり愛車ポルシェで先行したのだが、生まれた土地であるにも関わらず、道に迷いもたもたして(錯覚)、到着は最後だった。そうとう心理的に追い込まれているようです。生地であるにもかかわらず道がわからない。生家(スペンサー家)の敷地にあるカガシに被された父親のジャケット?を持ち帰った。

ハウスに入る際、分銅で測るというアンティークは体重測定にダイアナは「図らない!」と拒否する。(笑)グレゴリーが「1847年に始まった儀式だから守るように!」と促す。迎えに現れたウイリアム王子が「寒い!」と訴える。ダイアナが「暖房入れて!」と要求するが認められない!がんじがらめの決め事にいらつくダイアナ。

部屋では衣装係のマギーが3日間の衣装を準備して待っていた。ダイアナにとってマギーは唯一話のできる相手。父親のジャケットの修理を依頼した。

ダイアナが子供たちの部屋に入ると、王子たちは暖房がなく毛布にくるまっていた。ダイアナは「途中でカカシを見てきた。ここには過去と現在しかない!未来がない。私の生家にいってみよう」と話すとヘンリーが「あそこは怖い!」という。次の行事の呼び出しが入る。ダイアナはうんざりする。

夕食会の衣装合わせ。「真珠のネックレスがカラミと同じものだから気にいらない、貰って!」とマギーに勧めるが、マギーが「いただけません」と断る。ダイアナがネックレスを持ってパウダールームに入るとアン・ブーリンの生涯」が置いてあった。ダイアナは気分を害し、マギーに「ドレスは黒がいい!カガシが救い!私の味方よ!」と声を荒げた。

ダイアナが、決められたドレスを着ながら、「女性は子供を産めば逃げていい。しかし、今はその勇気がない」というと、マギーが「見透かされますよ!」と注意し「あなたは美しい!それだけは忘れないで」と付き加えた。

厨房ではシェフ長のダレン(ミューン・ハリス)が「皇太子妃に食べてもらうものをつくる!」と献立を考えていた。

夕食会が始まった。女王がスープを口にして皆が食べ始めた。ダイアナは口にしなかった。チャールズがダイアナを見つめる!ダイアナは真珠のネックレスを引きちぎった。すると真珠がスープの中に落ちた。スープと一緒に真珠を呑み嚙み砕いてトイレに奔って、吐いた。食事会には戻らなかった!

この後、ダイアナはジーンズ姿で誰もいない厨房でケーキを食べた。そこにグレゴリーがやってきて、「パパラッチに注意すること、カーテンを閉めること」を注意して去って行った。

ダイアナはこの後、野外に出て廃屋(スペンサー家)の敷地に近づき警備兵に捕まったが、「幽霊にして、報告しないで!」でその場は収まった。(笑)

ハウスに戻り王子たちの寝室で過ごした。プレゼントを渡し、家族で過ごすクリスマスの楽しさを教えた。本当のことしか話せない「真実を答える」ゲームで、弟のヘンリーーが「王になりたいか」と尋ねると、ウィリアムは「なるしかない」と言いきった。10歳の王子はすでに自分の運命を見据えていた。ウィリアムがダイアナに「どんな女王になりたい?」と聞くと「私はママになることよ。おかしくなったら教えて!」と答えた。

12月25日、クリスマスの日。起床するとマギーがロンドンに帰されていた。ひどくダイアナは沈んだ気持で、一日が始まった。王室一家の集合写真撮影。

ダイアナは女王より遅れて中に入り右端の隅っこ。朝食時、チャールズに「食べられない、吐き気がする」と訴えたが知らぬ顔。

王室一家の教会のミサ。この後のマスコミのインタビュー撮影がはしまった。ダイアナはチャールズと一斉喋らない。グレゴリーがおろおろしていた。

ハウスに戻って伝記「アン・ブーリングの生涯」を読んでいると「ダイアナ、死ぬよ!」とアン・ブーリンの声がする。カーテンを開けて庭園を見るとチャールズがウイリアムライフル射撃を教えていた。

ダイアナが娯楽室でチャールズを捕まえ「ウイリアムには教えないで!」と抗議した。チャールズは「ウイリアムはその歳だ!」と言い、これまでのダイアナの遅刻やパウダールームで喚くこと、カーテンを開けることなどをあげつらってきた。「キジはスペンサー家のもの、撃つのは止めて。真珠はカミラと同じものはもらいたくない!」と訴えた。

チャールズは「カーテンを閉めろ!私にはふたりの私がいる。いやでも国家のためやらなければならないことがある。国民が望むことをやるのが国王だ。ここではすべてが筒抜けだぞ」と返事した。

ダイアナは散歩に出かけるエリザベス女王に、「TV出演時の衣装はとてもよかった」と話しかけると「彼は反対よ。紙幣の撮影のときだけちゃんとしればいい、あなたにも分かる!」と答えて出かけていった。エリザベス女王が女王でいられるのが分かるエピソードでした。しかし、ダイアナにはこれが受け入れられなかった。

厨房ではシェフ長のダレンが晩餐会の献立を考えていた。ハイグローヴでやると決めた。そこにダイアナが「キジを食べるの?」と聞きにやってきた。ダレンは「キジは今日のために養っている。あなたには別の料理を作る」と応えた。ダイアナはダレンとは気安く口が利ける仲なので、「アン・ブーリングを読んだ!」と話すと、「言わない方がいい、幽霊の話など!スキャンダルになる。貴方はやさしい、耐えて、耐えて生き抜いて欲しい、10年前に来た時のように!」と答えた。

ダイアナは部屋に戻りカーテンを開け、キジに「ケンシントンに来て!撃たれることはない!」と声を掛けた。

そこに「晩参会に参加、命令です」とグレゴリーが伝えにやってきた。ダイアナは断った。グレゴリーは兵士が城を守った故事を出して「兵士の忠誠は人ではなく王室にだ」と王室のために参加せよと促した。

マギーが戻ってきて着付け。「オナニーをするから」とマギーを下がらせ、閉じられたカーテンをカッターで切り開き、自分の腕に傷をつけた。ダイアナはグレゴリーに抵抗して晩餐会に参加したくなかった。

子供部屋に入りウイリアムに「今、おかしいの!」と伝えた。ダイアナは意識が混濁していた。マギーの顔を見て落ち着き、会場に急いだが、途中で「具合が悪い」と部屋に引き返した。

ダイアナ不在で晩餐会が始まった

ダイアナはコートを着てブーツを履き、懐中電灯とペンチを持ってハウスを抜け出し、ペンチで鉄条網を切り、廃屋に忍び込んだ。二階に上がると自分が子供のころのおもちゃがあり、これで自由に遊んでいる姿、父の笑顔が浮かびあがった。

二階を降りていると「ダイアナ、呪われている。逃げて!」と叫ぶアン・ブーリングの声?、結婚式の白いドレスに喜び勇んでここを出た日から、時々のいろいろな色のドレスで踊り、黄色いドレスの憂鬱な姿、息子たちと遊び、切ったネックレスの真珠玉が転がる記憶の中を走って、ハウスに戻った。

12月26日、ボクシングデー。目を覚ますとカーテンが開いて、傍にマギーが居て、手をとってくれていた。(幻覚を見ていたようですね!)

ふたりはポルシェで海岸に出かけ、散歩しながら、「自由と衝撃が必要だ!」とこれからのことを話し合った。

クリスマス休暇を終え、各々帰宅の車列が出発した。ダイアナはマギーと別行動で、「ケンシントンに帰っている」と上空を飛ぶキジを見て、カガシに黄色いドレスを掛けた。

その時、王家のキジ狩りが始まろうとしていた。これに気付いたダイアナはチャールズに近づき「撃つなら私を撃ちなさい!」と言い放って、「おいで!」とふたりの王子を連れてハウスに戻り、三人で体重を計ってグレゴリーに体重111kgと伝え、ダレンに「本物の食事をする」と伝え、ハウスを後にした。

ポルセの三人は大きな声でロックを歌い、ダイアナはフライドチキン(キジでなく)を買って王子たちに食べさせた。王子たちは喜んで食べた。このシーンの疾走感に「ダイアナは王室を捨て、新しい人生が始まった」と涙がでました。 

まとめ

ダイアナはチャールズの不倫に端を発し、古いしきたりに苦しみ、孤立し、自らの立ち位置を失い、死の崖っぷちに追い込まれた。クリスマスの夜、廃屋を尋ね、そこに自由で闊達だった自分の姿を見出し、アン・ブーリング王妃の「逃げろ!」の声に押され、遂にチャールズが撃とうとするキジが飛び去ったように、ふたりの王子を連れて“サンドリンガム・ハウス”を飛び出したという寓話。

「自らのアイデンティティに生きるとともに、王子たちのために自由を確保してやろう」としたダイアナの生き方。

ポルセで三人がろっくを歌いながら、フライドチキン店に走り込むシーン。「よくぞこの決心を!」と声が出るほどに感動しました!!

この感動は脚本、クリステン・スチュワートの熱演をはじめに、美術、衣装、音楽に至るすべての力によるもの、よくできていました。

クリステン・スチュワート皇太子妃としてのオーラのある演技、透明感があり吸い込まれます。ここで描かれるダイアナの姿は外部に出ない映像です。公表された映像でしか研究できないクリステン、苦労したでしょうね。さすがのアカデミィー主演女優賞ノミネートの演技でした。

ダイアナの生き方がエリザベス女王の王室改革に大きな影響を与えたことはよく知られています。ダイアナの生き方に魅入されましたが、その生き方は今後の王室の在り方を問う問題提起になっていて、これは我が国の問題でもあり、大きな問題提起の作品でした!

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