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「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」(2023 )白人という自尊心・差別の罪、3度目があってはならない!

 

監督、キャストで観ることに決めていました。特にレオナルド・ディカプリオロバート・デ・ニーロ対決を楽しみ。  IMAXで鑑賞。

 原作:ジャーナリストのデビッド・グランがアメリカ先住民連続殺人事件について描いたベストセラーノンフィクション「花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生」、未読です。監督:マーティン・スコセッシ脚本:エリック・ロス マーティン・スコセッシ撮影:ロドリゴ・プリエト編集:セルマ・スクーンメイカー音楽:ロビー・ロバートソン。

出演者:レオナルド・ディカプリオ、リリー・グラッドストーンジェシー・プレモンス、ロバート・デ・ニーロ、カーラ・ジェイド・マイヤーズ、ウィリアム・ベルー、他。

物語は

1920年代、オクラホマ州オーセージ郡。先住民であるオーセージ族は、石油の発掘によって一夜にして莫大な富を得た。その財産に目をつけた白人たちは彼らを巧みに操り、脅し、ついには殺人にまで手を染めるという実話を基に描いたサスペンス。(映画COMより)

サスペンスと言いながら、4分3が殺人劇。これを白人サイドの視点からサスペンシフルではあるが人間味たっぷりに描き、残余の4分の1がFBIの視点から描かれている。206分という長帳場ですが、感情移入でき、後半で事件の詳細が明かされ、そこには前段で気付かなかった事実が明かされてくるという、最期まで目を離せない作品でした。

この構成はスコセッシ監督と6度もタッグ組むデカプリオの提言だったとのこと。「事件の底にある白人男性とオーセージ族女性の感情を大切にする」というものだった。当初デカプリオはFBIの捜査官トム・ホワイト役だったが、このためにオーセージ族の女性モーリーと結婚するアーネット役を選んだ。


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、オーセージ族がカンザス地を追われオクラホマの保留地に落ち着き、石油の噴出により世界で最も裕福な部族になった。

この地域では戦後経済の混乱に加え石油が噴出したことで白人と先住民の生活が逆転先住民が白人のメイドを雇い、スポーツに娯楽にと楽しむ、タクシー運転手は白人で原住民の客を捜す。息子が病気だと金をせびる白人。町は工場に職を求めてやってきた白人でごった返している。白人の先住民への怨嗟もあり行方不明事件が頻発していた。

WW1の戦場から帰還したアーネスト(レオナルド・ディカプリオ)は職を求めて叔父のウイリアム・ヘイル(ロバート・デ・ニーロ)を尋ねた。従弟のヘンリー・ローンが運転する車でヘイルの広大な牧場へ。

ヘイルはアーネストを「戦場の英雄」と称え、「女は好きか?」と聞く。「大好きだ!」とアーネスト。(笑)ヘンリーは「オーセージは賢い。酒は慎み、無駄口を吐くな」と注意し自分を「キングと呼べ」という。モーリー・カレル(25歳)は大富豪の娘、知能者だが糖尿病で薬が必要、母親が居るが純血資産だという。アーネストは正直で小心、人の意見に引きずられやすい性格。アーネストはタクシー運転手としては働き始め、ホーリー(リリー・グラッドストーン)を客として乗せたことで、キングの話を真に受けてモーリーと恋に落ちた。(笑)

アーネストはモーリーの家に招かれ、オーセージ族の歴史、家族、宗教の話を聞いた。モーリーは母親リジー(タントゥー・カーディナル)と暮らしており母親は病弱で白人が嫌いらしい。このシーンはかなりくわしく描かれる。長尺になる理由のひとつ。家族の話でモーリーはアーネストの従弟ヘンリー・ローンは怖い言い、マット・ウイリアムと付き合っていたと告げた。アーネストの話はろくでもない話が多かった。(笑)それでもモーリーはアーネストを“シヨミカン”(愛しい人)」と呼んだ。

そのとき嵐があって、アーネストが窓を閉めようとするとモーリーはそのままで嵐の音を聞くという。これは神からの直に声を聞くことだからと。この作品のエンデイング後、風と太鼓の音が流れる。嵐の話はオーセージ族の心の拠所、これが決定的には白人と異なる宗教観。スコセッシ監督がわざわざ作品に取り入れた話、メッセージだと思う

アーネストはモーリーを教会に案内した。そこでモーリーの妹ミニと白人の夫ビル・スミスに会った

アーネストはキングにモーリーとの結婚の承諾を得た。キングは「母親の財産もくる」という。アーネストは何故かと聞かなかった。

結婚式は豪華なものだった

そのとき病弱なミニにキングが「困ったら来なさい」と話しかける姿を見て、モーリーもという不安がよぎった。オーセージ語で会話するキングの姿に驚いた。

その後、ミニが亡くなった

その席にはアンナ(カーラ・ジェイド・マイヤーズ)とキングもいた。キングがアーネストに「女は病気で死ぬ。あとはモーリーとアンナだ。モーリーには糖尿病がある、お前にとって試練になるぞ!アンナは銃を持ち出し撃つ癖があり相手を間違えることがあるかもしれない」と話した。

モーリーは母親リジーが病弱で一族を集めた。母親のベットにフクロウが現れ、母親は死が迎えにきたと不安がり、アンナが来ないことを心配していた。そこに酔っ払ったアンナは現れスミスの姿を見て発砲した。アンナは居ずらくなり帰ることになり、ローンが車で送った

保安官からアンナの死亡が伝えられた

棺に収まったアンナをモーリーが確認をして土葬に伏された。アンナは妊娠していたとモーリーが言う。墓は掘り起こされ遺体は解剖された。アーネストはアンナの腹の子はスミスのものと考えた。

オーセージ族のリーダー(タリー・レッドコーン)は「この種の事件が多すぎる!探偵に依頼して調べる」と主張した。いかし、選ばれた探偵が謎の死を遂げた

キングはアーネストに「モーリーは糖尿病でいずれ死ぬ!早めろ!」と強要した。アーネストは反対だったが彼の性格上言い出せなかった。アーネストはキングが準備してくれた世界で5人しか使えないというインシュリン注射をモーリーに打ち始めた。モーリーは涙を流し何度もアーネットの愛を確かめた。アーネストはそのことを身体で示していた。ホーリーの身体が衰弱し始めた。

ホーリーが妊娠した。

アーネストはキングに相談した。キングの家族は喜んでくれた。キングは「俺の家族に加われ!その方が一族として発展する」と勧めた。これにローンが「生まれる子が男だったらどうなる」と疑念を示した。

キングはアーネストに「ローンとスミスのふたりを殺害する」と明かし、ふたりは闇の男・ブラッキーにこの話を持ち掛けた。ブラッキーは配下のジョー(タタンカ・ミーンズ)に「爆弾屋のエイビーを捜せ!」と指示し、ジョーがローンをやることになった。そしてキングは「マット・ウイリアムはモーリーの前の旦那で、オーセージ族では離婚が許されない。イリアムを殺すが、その前に保険にかけてゆっくりやる」という。

この話を聞いたとき、「人間の金欲がここまでくるか!」と戦慄した!ここでのデカプリオとロバート・デ・ローニの表情は見ものだった。「デ・ローニの方がうまい!」と思った。

ヘンリー・ローンの死がアーネストに伝えられた。

これをモーリーに話すとひどく取り乱し「あなたがやったの?」と聞く。アーネストは「自殺か他殺だが、まあ自殺かな」と曖昧に応えた。モーリーは「ローンは死にたがっていた!」と言い、自らを納得させたようだった。しかし、ホーリーインシュリン注射を“悪魔だ”とひどく怖がるようになり、その都度アーネストの愛を確かめていた。

ビル・スミス邸が爆破され、スミスが亡くなった

その爆風がインシュリン注射を打つアーネストのところにも届いた。モーリーは子供を抱いて怯えた。キングが「やり過ぎた!」と尋ねてきた。

モーリーはワシントンDCに出向き「警察はなにもしてくれない。石油大のために沢山の人が死んでいる」と大統領に訴えた。また、教会で牧師にも訴えた。

モーリーはフクロウがきたという。アーネストはインシュリンを呑みながらモーリーに注射していた。アーネストは注射を止めることが出来なかった。キングが見にくるから。モーリーとアーネストの情愛がしっかり描かれている!

ワシントンDCから特別捜査官のトム・ホワイト(ジェシー・プレモンス)がモーリーを訪ねてきた

アーネストが対応に出て金曜日にしてくれと帰ってもらった。直ぐにキングに報告し「心配するな!どんな罪を犯しても捕まらん」の返事を貰った。

ホワイトはオーセージ族のリーダーを訪ねた。「20年前から待っていた!」と答えた。次に病院の医師を訪ねた。医師は資料がない。キングに渡したという。「検死は頭だけ、拳銃でうたれていた」と回答した。

ホワイトはアンナ殺害現場の視察・聞き取り、保安官の事情聴取を終えた。

ホワイトはアーネストを「ビル・スミスとヘンリー・ローンの死について聞きたい!」と連行して尋問。アーネストの答えがあやふやで、逮捕していたブラッキーと対面させた。アーネストはブラッキーと別室で話し合い「ビル・スミスの件はキングが謀った。ジョーがヘンリー・ローンを射殺した」と証言した。

ホワイトは保安官、病院の医師、キングを逮捕した。ホーリーは衰弱が激しく病院に収容された。キングへの第1質問は「アーネストをメキシコで殺せと頼んだか!」だった。アンナ殺しはアーネストが「キングの頼みでやった。ローンと一緒だ。あの場所は酒と女を楽しむ場所だ」と証言した。

アーネストが独房の中で下の娘が亡くなったと知らされた。「あいつがやった」と呟いた。葬儀には手錠を掛けられたまま参加。モーリーに涙を拭いてもらった。独房に戻りキングに「証言しろ!家に2度と近づくな!」と声を掛けた

法廷でアーネストは「全てキングの指示でやった。ロン、スミス、リジ、ミニもアンナ殺しはジョーだモーリーとの結婚は自分で決め、愛していた」と証言した。

裁判終了後、ホーリーがアーネストの控室を訪れたホーリーが「真実をすべて話したか」と聞くと「奴の穢れを落とした。俺は奴を君と子供に近づけたくなかった」と答えた。「罪はなんだったの?」と聞くと答えがなかった。「注射の中身は?」と聞くと「インシュリンだ!」と泣きながら答えた。ホーリーはこれを聞いて部屋を出て行った。

映画はこのあと「フーヴァーを送る日」の特別番組でオーセージ族事件の概要、犯人に課した刑量などが明かされた。ここにスコセッシ監督がカメオ出演。そしてラストはオーセージ族の太鼓を中心とした大円舞で終る。

まとめ:

初めて聞く事件。1920年代、所有地からの石油噴出で豊かになった先住民に白人が怨嗟でその富を奪うために起こした事件。ここでは描かれてないが、政府の産業・土地政策、相続権も大きく関わっているのではないでしょうか

保安官、検死の医者、ヤクザいずれも白人がグルになって犯した事件。白人は先住民を保留地に追いやり土地を奪ったにも関わらず、彼らが豊かになれば再び彼等を襲い彼等の資産を手にする。本作ではウイリアム・ヘイルによるホーリー・カイル一家の皆殺し事案を取りあげたが、60件もの同種事案があるという。なんと悍ましい行為か。その原因は白人の優越意識、先住民への差別によるもの。先住民と白人の宗教観、この作品のタイトルにもなっている先住民の自然崇拝と白人のキリスト教信仰の差異に関係していると思う。この問題は次に観た「ザ・クリエイター 創造者」(2023)でも言える。

この事件の後遺症はまだまだ残っている。3度目はあってはならない本作で事件の実態が広く世界に発信されたことに大きな意義がある。

アーネストとモーリーは愛していたかモーリーは何度もアーネストの愛を確認し、アーネストも応じていた。アーネストはモーリーにインシュリン注射をするとき常に“許してくれ”という態度に見えた。裁判所でモーリーが「真実を話したか?注射の中身は?」と聞いたとき、アーネストは「インシュリン」と答えた。モーリーはがっかりした態度で退席、彼女は「信頼できない人だ!」と判断した。彼女、オーセージ族にとってこれが一番大切なことだった。アーネストは独房のなかでキングの呪縛から逃れたが、まだキングが怖かった。アーネストの罪は終身刑であったが数年で開放され、モーリーと離婚しオーセージ村で暮らしたと言われている。

レオナルド・ディカプリオのダメ旦那ぶりとロバート・デ・ニーロの悪役対決。とてもすばらしいものでした。

モーリー・カイル役のリリー・グラッドストーンは先住民の血を引いており、愛情深く毅然とした佇まいに魅入った。見ごたえのある作品でした。

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