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「グリーンブック」(2018)

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91アカデミー賞5部門ノミネートされ、作品、脚本、助演男優賞を受賞した作品。さっそく観賞、受賞にふさわしい作品でした。
監督は「メリーに首ったけ」「愛しのローズマリー」のピーター・ファレリー。出演は「イースタン・プロミス」のビゴ・モーテンセン、「ムーンライト」のマハーシャラ・アリ助演男優賞)。脚本がトニー・バレロンガの実の息子ニック・バレロンガが「親父から話をしっかり聞いた!」と担当しています。
 
1960年代、黒人差別運動が激化するなか、天才黒人ジャズピアニスト:ドン・シャーリーマハーシャラ・アリ)は、黒人が利用できる施設を記した旅行ガイドブック“グリーンブック”を手に、ナイトクラブ・コパカバーナーの用心棒:トニー・バレロンヴィゴ・モーテンセン)を伴って差別の強いアメリカ南部の演奏旅行に出かけ、自分のアイデンティティーを問い直すという物語。
 
テーマは差別。ふたりがコンサートツアーを回る中で心を通わせ人種を超えた互いの人間性を認め合う様に、シャーリーの無言で差別に立ち向かう姿に、笑って、泣いた! 
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シャーリーは、店の改装で休業のトニーに、もめごとを解決する能力を見込んで演奏ツアー同行を求めたが本人にはその気をなかった。
面接でトニーが気に入ったシャーリーは、改めて彼の妻ドロレス(リンダ・カーデリーニ)を説得して同行することにした。
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シャーリーはヨーロッパで身に着けた洗練されたミュージッシャン。ホワイトハウスに招かれるほどの者。黒人なら食べるフライドチキンを食べない。裕福な白人のためにピアノを弾くが、黒人差別運動が激化するなかで、自分の立ち位置に割り切れない気持ちを持っていた。
一方、トニーはガサツで無教養だが人間味溢れた男。黒人への偏見を持っていた。
相反する性格境遇のふたりが対立しながら次第に心惹かれていく旅は、ユーモラスで心温まり、いつまでも見続けたい気分になります。
 
出発するとほどなく、シャーリーはべらべらくだらないことを喋るトニーに「余計なことを喋るな!タバコは吸うな!」と注意するが、お構いなしでガツガツ妻の作ったサンドイッチを頬張るトニー。
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このふたり、どうなるのかと心配していると、フライドキチンを食べないシャーリーが、トニーの巧みな誘いでチキンを食べ、車外に骨を吐き捨てるようになる。() 一方で、窓から物を投げるトニーに停車を命じると、素直に停車し拾うトニー。こうして、ふたりの関係がほぐれていくところが何とも微笑ましい。
 
休憩時、トニーが無人販売所に立ち寄り落ちていたヒスイ石を拾うが、シャーリーは“盗むな”と注意して、買い与える。これがラストシーンで感動のエピソードにつながると言う、脚本のうまさに感嘆することになります。
 
最初の演奏地ピッツバーグ。幕間でドン・シャーリートリオの演奏を聞いたトニーは、すっかりシャーリーのピアノに惹かれ、彼を守りたいという思いになる。
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この作品には沢山のドン・シャーリーの演奏シーンがあり、どの曲もこころよい。ドン・シャーリーの音楽に嵌ります!
 
トニーはシャーリーの才能のすばらしさを妻への手紙にします。
孤独なシャーリーは、へたくそな文しか書けないトニーにラブレターの書き方を教え、これが彼の孤独感の癒しになっていく。
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インデイアナ州ハノバー。トニーは演奏前に舞台を点検し、契約どおりのピアノでないと交換させる。シャーリーは正式マネージャーになれという。
 
テネシー州メンフス。シャーリーがひとりで出かけバーで飲み、白人の虐めに遭遇。トニーが機転を利かせて連れ戻す。このあたりから、シャーリーへの嫌がらせが始まる。レストランでのいやがらせ、演奏の休憩時間にトイレが使えずモーテルに用を足しに帰るなど。
しかし、シャーリーは演奏が終われば白人に笑みを見せる。トニーは「ドタキャンしてやれ」と促すが、「郷には郷に従え」と取り合わない。
 
ジョージア州メイコン。シャーリーが白人男と関係を持ったことで逮捕される。トニーが警察署に出向き、警官に金を握らせて解決。トニーは「スケジュールを守って行動しろ!」と厳重注意する。トニーはシャーリーのセクシュアリテイさえも「この世は不思議だ!」と受け入れ、ふたりは理解し合える関係になっていく。
 
トニーは、マネージャーとして「クラシックにこだわるな。ベートーベンはだれでも弾く。あんただけのものがいい」と言えば「俺の弾くショパンは俺のショパンだ」と言い返される。
 
ミシシッピー州に入り、夜間、豪雨で道を見失い進入禁止道を走りパトカーにつかまる。後部座席にシャーリーがいることで、トニーが問い詰められ、拘置所に。シャーリーがケネデイー司法長官に電話してトニーを釈放し、「こんなつまらんことで長官に迷惑をかけた」と言ったことで、トニーが切れた。
「あんたは他の黒人とは違うからな!黒人でも白人でもない。どっちで生きてんだ。俺の方が黒だよ!」と吐き捨てた。
シャーリーは車を降りて、「俺は馬鹿たれ黒人だ!白人のご機嫌とって!」と泣きながら歩いた。激しい黒人差別に立ち向かうことで、ふたりは理解し合っていく。
 
最後の演奏地アラバマ州バーミング。実は、シャーリーはここで演奏するのが旅の目的だった。ここはナットキングコールが舞台から引きずり降ろされ歌えなかった地。
演奏前、会場のレストランでシャーリーは食事することを断られた。トニーが懸命に店長に頼むが「法律だ!」と埒が明かない。
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シャーリーが「演奏しない」と言い捨て、ふたりは店内の白人客の厳しい目線を無視して退出し、黒人のクラブに入る。
 
ここで、客のリクエストで、シャーリーが舞台に上がり、ショパンの「木枯らしのエチュード」を弾き、次いでジャズに移る。クラブのバンドが加わってのセッション、これに合わせてダンスが始まる。シャーリーは満面の笑顔を見せ、自分の居場所を見つけた瞬間でした。
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ふたりは、トニーの妻ドロレスとの約束「クリスマスには帰る」のため、ニューヨークを目指して雪のなかを走る、走る。シャーリーは「ヒスイを出せ!」とトニーから取り上げ、「これで安全だ」という。()
トニーの家に着いたとき、トニーは寝ていてシャーリーが運転していた。シャーリーはカーネギーホールの二階にある自室に戻って、ヒスイに気付き、トニーの家を訪ねる。トニーの妻・ドロレスに温かく迎えられ涙ぐむシャーリー、家族に受け入れられるという秀逸なエンデイングでした!
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