1984年度製作作品。マカロニウエスタンの巨匠セルジオ・レオーネの遺作となった作品。「モリコーネ 映画が恋した音楽家」(2021)で音楽のすばらしさを知りDVD(229分版)で観ることにしました。
アメリカの禁酒時代に翻弄されるギャングたちの友情物語、行き着く先は物悲しいが、幼い時の友情は人生の宝物だと思え、その全てを音楽が語るような作品だった。
監督:セルジオ・レオーネ、原作:ハリー・グレイ、脚本:セルジオ・レオーネ レオ・ベンベヌーティ ピエロ・デ・ベルナルディ エンリコ・メディオーリ フランコ・アルカッリ フランコ・フェリーニ、撮影:トニーノ・デリ・コリ、美術:カルロ・シー、衣装:ガブリエラ・ペスクッチ、編集:ニーノ・バラリ、音楽:エンニオ・モリコーネ。
出演者:ロバート・デ・ニーロ、ジェームズ・ウッズ、エリザベス・マクガバン、ジョー・ペシ、バート・ヤング、トリート・ウィリアムズ、チューズデイ・ウェルド、ウィリアム・フォーサイス、ジェームズ・ヘイデン、ラリー・ラップ、ダーラン・フリューゲル、ジェニファー・コネリー、他。
物語は、
1920年代初頭のニューヨーク。ユダヤ系移民の少年ヌードルスは同年代のマックスと出会い、深い友情で結ばれていく。彼らは仲間たちと共に禁酒法を利用して荒稼ぎするようになるが、ヌードルスは殺人を犯し刑務所へ送られてしまう。1931年、出所したヌードルスはマックスらと再会し、裏社会に舞い戻りそのテッペンに到達するが禁酒法撤廃を控え、ある事件でふたりは袂を分かつ。35年後の1968年、ヌードルスの元にベイリー財務長官からのパーティー招待状が届く。
冒頭、1933年のある事件直後のヌードルスの行動。そして35年後の1968年、ヌードルスがベイリー長官のパーティー招待状で行動を開始することから物語が始まる。現在(1968年)と過去を行き来しながら、少年期、青年期、老年期のヤクザとしての友情、栄光、挫折が描かれる。
現在(1968年)と過去を行き来する切り替え描写が絶妙だ!
あらすじ&感想:
ある事件からミステリアスに物語が始まる。
部屋を訪れたイブ(ダーラン・フリューゲル)。待ち伏せの男たちに「男はどこにいる」と問われ、「知らない」と答えると、拳銃で射殺された。男はヌードルス、中国人が経営するチャン・ラオの店でアヘンを吸って眠っていた。傍に新聞がある。「3人が酒類密売で警察に射殺された
彼の頭には電話が鳴り響いていた。遺体収容バッグの名札がパッツィー、コックアイ、マックスだった。禁酒法の撤廃を祝うパーティー、ハロラン巡査部長に電話した記憶が駆け巡っていた。
ヌードルスは目覚め、この店を出て社交クラブ“ファット・モー”に立ち寄り、生き残った仲間・モー(ラリー・ラップ)から鍵を受け取り、駅のレンタルボックスからトランクを取り出し中身を調べると新聞紙のみ、金がない!ヌードルスはどこでもいいとバスの切符を買いこの町を後にした。
1986年、ヌードルスは子供のころ過ごしたファット・モー店を尋ね、少年時代の記憶を取り戻していった。
マックスがここに戻ったのは新しい墓地を尋ねマックスらを弔い、ベイリー財務長官のパーティーに参加するためだった。店長のモーはかっての仲間、初恋の女性デボラの兄。デボラは女優になり成功したと聞かされた。しばらく滞在させてもらうことにして、昔、デボラのダンス練習を覗き見た小窓を覗いてみた。すると一気に少年のころの記憶が戻って来る。この時代の切り替えしが心地よい。
ユダヤ人のゲットー。ヌードルスがリーダーでパッツィー、コックアイに幼いドミクックが加わった少年ギャング組。路上で財布や時計をひったくっていた。そこにマックスが引っ越してきた。こいつは頭がよかった。ふたりは早熟なペギーを介して女を知った仲だった。マックスも密かにデボラ(ジェニファー・コネリー)に好意を寄せていた。こうしてヌードルスとマックスは強く結ばれ、マックスはヌードルスを兄のように慕っていた。
麻薬密輸船が官憲に発見され海に薬を捨てて逃げるのを知り、塩袋をつけて海に投下させ、浮いてきたこれを回収する業務を編み出し稼いだ。マックスの言い出しで、稼いだ金を共同基金として駅のレンタルボックスに預け、全員の同意で開けることに決め、鍵をファット・モーに預けることにした。この成功に5人が意気揚々と街を闊歩する姿がポスターだ。
ところがこのことで不幸な事件が起こった。地元ヤクザのバゲジ(ジェームズ・ルッソ)に襲われ、ドミニックが亡くなった。ヌードルスが怒りバゲジを刺し殺した。ヌードルスは逮捕され、護送車で刑務所に送られる。4人が並んで見送るシーンが彼らの絆の強さを示すいい画になっている。ひとつひとつのエピソードがすばらしい絵になっている。
1968年、ヌードルスはマックスらの墓地を訪れた。
立派な建物だった。碑文に1967年建立ヌードルスとあった。そこにレンタルボックスの鍵は置かれていた。このキーで駅のボックスを開けると大量の金と「次の仕事の前金だ」と書かれた文が入ったスーツケースがあった。
ヌードルスが6年の刑期を終え出所、マックスがリムジンで迎えた。マックスの才覚で儲けて、かってのファット・モーの店は新しい建物に替り立派な社交クラブになっていた。美しくなったデボラにも会えた。
地元のヤクザの大親分フランキー(ジョー・ペシ)の頼みで、デトロイトのヤクザ:ジョー(バート・ヤング)のために宝石泥棒を引き受けた。白いマスクで侵入し宝石を奪った。ここで知り合ったのが後に出てくるキャロル(チューズデイ・ウェルド)。悪趣味なシーンだが、笑いがたっぷり準備された作品だ。(笑)
波止場でこの宝石をジョーに渡す。この役を担ったのはヌードルス。上手く渡し、金を受け取ったところでマックスの指示でジョー一味を銃撃した。ヌードルスは追われ一時窮地に陥ったが逃れ切った。
この危険な賭けに、マックスは「力のあるファランキーの関心を得るには必要なことだ」と主張した。ヌードルスは「いずれ俺たちもやられるぞ」とマックスを諫め、全員が乗った車で桟橋を疾走し海に飛び込んだ!ぶくぶくと浮かぶ泡はTVの画面に替る。
1968年、ヌードルスはファット・モーの店でTVを見ていた。見覚えのある男が現れた。
ベイリー財務長官のスキャンダルが報じられ、インタビュー現れた男に見覚えがあった。労組の活動家ジミー(トリート・ウィリアムズ)だった。クラブ営業の他に経済活動への参加が必要とジミーを救った。このことでスト中止勢力と結び着いたヤクザと路上で銃撃戦をまじえることもあった。
さらにスト中止に動く警察署長を威嚇した。このシーン、男の赤ちゃんを望む署長に、新生児育児室に忍び込み名前を取り替え、女の赤ちゃんを抱かせた。(笑)100名はいるであろう赤ちゃんが一斉に泣き出す!笑いのシーンが一杯準備してある。しかし、この映像には驚いた!(笑)
事業は順調だった。ヌードルスは女優のデボラを誘いプロポーズしたが断られた。
この日、クラブにキャロンが訪ねてきた。シカゴの宝石強盗仲間が白覆面でキャロンに会い相手を選ばせると、マックスを選んだ。(笑)
一方、ヌードルスは高級レストランを貸し切り、デボラを誘いプロポーズしたが「ハリウッドで女優になる」と断られた。ふたりの見る夢が違っていた。ヌードルスはデボラを送る車の中でみにくいレイプ劇を演じた。
ヌードルスはしばらくデボラを忘れるようにチャン・ラオの店に入り浸っていた。
戻ってきたヌードルスにマックスが注意した。そこには労組組合会長のオドネルが訪ねて来ていた。オドネルが「払い下げのトラックがるから、新しい事業を遣らないか」と提言した。マックスは「資本だけだ!この話に乗るのがいい」と主張したが、ヌードルスは「捨てるときを考えてくれ!マイアミで過ごす」と帰り始めた。ふたりが事業で激しく対立するようになり、ヌードルスとマックスの対場は逆転し始めていた。しかし、ヌードルスの実行力は欠かせない。マックスはヌードルスを追ってマイアミで過ごすことにした。
ヌードルスは新しい恋人イブ、マックスはキャロンを伴ってマイアミを楽しんでいた。
そこに12月禁酒法撤廃が報じられた。マックスは「事業の鞍替えには金がいる」と連邦準備銀行の襲撃を提案した。ヌードルスは「お前狂っている!」と拒否した。
ニューヨークに戻って連邦準備銀行の下見をした。キャロルが「マックスは親の血を引いて精神がいかれ、死にたがっている。牢に入れた方が安全だ。ふたりが争うことがなくなっていい」と話した。
最後の密売麻薬の払い出しの夜。ヌードルスはハロラン巡査部長にこの情報を電話で伝えた。
1968年、ヌードルスはベイリー財団の老人ホームに、キャロルを訪ねた。
施設の壁に創設者ベイリーと関係者の写真が掲げられ、そこにデボラの姿を見つけた。
ヌードルスはデボラの芝居を見て、彼女の楽屋を訪れた。
30年ぶり再会だった。ぎこちない会話が続いた。ヌードルスは「女優になってよかったか?ベイリーのパーティー招待を受けた方がよいか?と聞いた。デボラは「来ない方がいい、思い出が消える」と答えた。が、そこにデボラの息子が現れた。その顔を見てすべてが分かった。
長官は「殺してくれ、お前の全てを取った。借りを返す」と懇願した。しかし、ヌードルスは長官をマックスと認めず「昔、親友を救うために警察に密告した。それで死んだ。いいやつだった。だから長官が無罪であることを祈っている」と話し、退出した。このシーンに主題歌「デボラのテーマ」が流れ絶対に泣ける。
ベイリー邸を出たところで、後ろからきたゴミ収集車の裁断機が回っていた。その赤いテールライトに、昔の懐かしい思い出が浮かんだ。
ヌードルスはチャン・ラオの店でアヘンを吸い、夢の中にいた。
まとめ:
ミステリアスに始まって、ハードな銃撃戦、ロマンス、笑いが一杯で、最後はハートフル。モリコーネのテーマ曲がセリフをしゃべるようで心地いい気分になり、映画を観ることの幸せを感じる作品だった。
物語のラスト、ヌードルスがチャン・ラオの店でアヘンを吸い笑みの表情で終る。ふたりに行き違いがあったが、夢の中では楽しい思い出しか出てこない。幼いときの友情は人生の宝物だと満足した表情だと思った。
幼いときに結ばれたマックスとの絆。しかし、時代の変化で対立するようになった。マックスの先取の気性は冴えさらなる目標を求めるが、マックスはもう十分だと安定を求めた。
禁酒法の撤廃でふたりは決別することになったが、マックスがヌードルスのことを忘れたことはなく、いずれ借りを返えそうと思っていた。マックスはスキャンダルの発覚で、多くの人に迷惑を掛けるとヌードルスに処刑を依頼した。ヌードルスに殺人の罪を課さないようゴミ収集車を準備していた。しかし、ヌードルスは「自分もマックスを警察に売った借りがある」と引き受けなかった。
お互いを思い合って採った行動に涙だ!マックスの最期、ゴミ収集車の裁断機に身を投じ自らの命を絶った。ヌードルスへの贖罪だった。
この結末に、人生、苦しいときを乗り切ってあとで知る友の配慮に泣くことが何度もあったことを思い出す。幼い時の友情は人生の宝物だ。
小学生時代同級生のレオーネとモリコーネが「荒野の用心棒」で出会い、ふたりが阿吽の呼吸でヒット作を連発していく、まさにヌードルスとマックスの関係だった。この作品を作るにあたってレオーネは撮影開始の数年前にテーマ曲「デボラのテーマ」を書かせ、撮影では出演者にこれを聞かせて雰囲気を作ったという。この曲にふたりの絆が見えるように思った。
この作品がレオーネの遺作だということに胸が痛む。
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