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「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)“愛”を尊厳死で描く結末に泣かされます。

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クリント・イーストウッド監督作。第77回アカデミー賞において作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞の主要4部門を制した作品。

初老のトレーナーが極貧出の女性ボクサーをわが娘のように育て上げて、タイトルマッチ戦に挑戦するが、再起不能の重傷を負う。死を請うボクサーに寄せるトレーナーの愛?という、イーストウッド監督74歳にして、“愛”を尊厳死の問題で問うてくるアウトローの監督らしい結末に泣かされました。

この作品で尊厳死が大きな話題になったと聞き、大方の人はこの結末に“No”だと思いますので、ハリウッドがこの作品に賞を与えたというのは大きな意識改革だと思います。

原作:F・X・トゥール、脚本:ポール・ハギス、撮影:トム・スターン。

出演者:クリント・イーストウッドヒラリー・スワンクモーガン・フリーマンジェイ・バルチェル、マイク・コルター、ルシア・ライカ、ブライアン・オバーンらです。

作品は、ボクシングを描きながらも、終始“静謐な雰囲気”のなかで、モーガン・フリーマンのナレーションで展開されます。


映画「ミリオンダラー・ベイビー」日本版劇場予告

あらすじ(ねたばれ):

相手に打たれ、目の下を切ってコーナーに戻ったビッグ・ウィリー(マイク・コルター)。「あいつとは試合をしたくない!」と試合を投げ出しそう。「あと1ラウンド、行ける!」と入念は止血を施すセコンドのフランキー・ダン(クリント・イーストウッド)。彼は1960年代に〝出血止めの名人“と言われ、ボクシングは尊厳のためのスポーツだと思っている。

ダンの止血で、息を吹き返したウイリーは相手をノックダウン。この試合を見ていたマギー・フィッツジェラルドヒラリー・スワンク)が試合後、「トレーナーになって欲しい」とダンに申し込むが、「女は断る!」と寄せ付けなかった。

ダンはボクサーの生活によく気を配り、試合選びは慎重だった。そのためジム唯一のプロ選手ウィリーのタイトルマッチ挑戦を渋ったことで、彼を他のマネージャーに引き抜かれてしまう。

ジムの清掃や選手の相談に応じているもうひとりのトレーナー、エディ・デュプリス(モーガン・フリーマン)が「ウイリーには2年前にタイトルマッチ戦をやらせるべきであった」と意見する。これでふたりが言い争うが、これがいつものふたりの関係だ。

ダンはセコンドとして止血でエディの試合を支えてきた仲。109目の試合で引退したボクサーで、ボクサーの気持ちがよく分かっている。このふたりの関係が男らしくて魅力的だ!

ジムはこんな状況のとき、マギーが半年分の経費(実はエデイが与えたもの)を払ってジムに入会。ひとりで練習をしていた。「素質あり」と見たエデイがサンドバックの打ち方を教え、ダンが使っていたスピードバッグを貸し与えた。

マギーは貧民窟出で、ここには帰りたくないとレストランでバイトしながらジムで練習。食事は客が食べ残したものを持ち帰って食べるという頑張り屋さん。

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エディから話を聞いたダンはマギーに「トレーナーを付けてやる」と言うと「あなたがトレーナーならチャンピオンになれる!」と返す。ダンは「すべて俺の言うとおりにする」を条件に31歳の彼女のトレーナーを引き受けた。ダンには便りをするがいつも返信される娘がいた。

足の運び方、呼吸の仕方など基本から徹底的に鍛え直しは始めた。マギーもバイト中でも教えられたことを反復演練。身体に叩き込んでいった。

ヒラリー・スワンクが可愛くって、すばしこい!しっかり訓練しての演技だと分かります!

最初の試合はマネージャーに任せていたが、マギーが打たれるのが見ておれずダンがしゃしゃり出て「左が死んでいる!」とアドバイス。これでマネージャーは席を外した。マギーはノックアウトで勝利した。ダンは「左が甘い、自分を守れ!」と強く指導した。

これ以降、マギーの試合は初回ノックアウトで終わり、ダンの出番がない。(笑)「4ラウンド以上の試合をしろ!」と注文するが「6ラウンド以上は持たない」とマギーが受付ない。

マギーは試合相手に敬遠され、ダンは相手のマネージャーに袖の下を渡したが、これも駄目になった。そこでワンランク上げての試合に賭けた。

最初の試合で、鼻をへし折られた。マギーが「ギブアップしない」というので、ダンは鼻を応急的にくっ付け、止血して「20秒以内に倒せ!」と指示。マギーはみごとノックアウトで相手を倒した。ダンは「モ・クシュラ!」と叫んだ。

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いいオファーが続き、ウエルター級タイトルを賭けた“青い熊”ことビリーが指名してきた。彼女は東ベルリンの元娼婦で、相手を殺しかねない反則技を使ってくる。ダンが断った。

エディが「タイトルの望むなら気に入ったマネージャーを選べ!」とマギーに勧めたが「私にはダンがいる」と断った。

 

ダンが「稼いだ金は貯金して自分の家を現金で買え!」注意し、「英国チャンピオンを狙え!」と励ました。マギーは喜んだ!

「モ・クシュラ」の刺繍を入れた新しいグリーンのガウンでリングに登場した試合。

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派手なノックダウンで勝利した。この名前が定着して、ふたりでヨーロッパの各地を転戦し、帰国したときは立派なプロ選手になっていた。

国内戦でもオファーが続き、いずれも勝利。マギーは金を手に入れ、「故郷に家を買ったから見て欲しい」とダンに報告。

ダンはマギーの案内で家を見た。マギーの母親は「この家に住んだら生活保護が貰えなくなる」と生活費をねだり、ダンを見て「良い男を見つけて、まともに暮らせ!」という。ダンはマギーの悲しみを知った!

帰りに、マギーが「頼れるのはパパだけだった。パパは飼犬が動けなくなったときそっと森に埋めてくるような人だった。いまはあなただけ!」と言い、「ロードサイド食堂」に立ちより、かって父親と一緒に食べたというレモンパイを食べた。ダンには忘れられない味となった。

マギーとビリーのタイトル戦が決まった。ダンはエディをセコンドに誘ったが、エディは(ダンがマギーにかかりっきりで)ジムの若い連中の面倒を見るためとこれを断った。ところが、大変なことが起こった!

第1ラウンド。ビリーの汚いやり方でマギーはダウンを取られ、顔に血を流しながらコーナーに戻り、「どうやったら・・」とダンに聞く。「あいつの尻を突け!座骨だ!」と指示し、目の治療をした。

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マギーは指示どおり徹底的に座骨を狙った。ビリーがダウンし、ゴングが鳴ったと思いコーナーに戻るところを、背後からビリーの反撃を喰らった!マギーはそのまま気を失った。

マギーの意識ははっきりしていた。気道に人口呼吸器を着けていた。第1頸椎と第2頸椎が損傷で一生全身麻痺という。マギーは「守りが甘かった!」と詫びる。

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ダンは米国のあらゆる病院を調べたが、マギーを治療できる病院はなかった。リハビリ施設で、ダンが付きっ切りで面倒を見た。ダンは小さな小屋を持つ夢を語った。そこにマギーも住みたいという。

マギーは母親の見舞いをとても楽しみにしていたが、ディズニーランドを見物してやってきた母親と家族は弁護士を伴い、マギーの財産を母親名義に変更することを求めた。マギーはこれを拒否した。

マギーは片足を切断した。「お願いがある」、「ボクシングで体験したことは夢にも思わなかった。十分に生きたから死にたい!」と漏らした。ダンは出来ない」と断った。

マギーは舌を噛み切ったが一命を取り留めた。自殺を防ぐために鎮痛剤を使って眠らせていた。

ダンはホーヴァク神父(ブライアン・オバーン)に相談した。答えは「絶対にダメ!」というのみ。ダンは泣いた!

ダンがバックに何かを詰めるのを見たエディが「マギーが1年半で世界タイトルに挑戦できたのはあんたの力だ!マギーに悔いはない!最後に思うことは良い人生だったということだ!」と自分の人生にマギーの人生を重ねて語って聞かせた。

ダンは決心し、バッグに注射器を2本入れ、マギーの病室に入った。ダンは「モ・クシュラは愛する人よ、お前は私の血という意味だ」と伝え、キスした。マギーの目から感謝の涙が流れた。呼吸器を外し、数回殺せる量のアドレナミンを注射した。モニターからバイタルデーターが消え、ダンが病室から去っていった。

感想:

ふたりがボクシングの練習・試合を通じて結ばれていく絆が美しかった!この絆がマギーの死に手を貸すことになる結末。マギーが“クシュラ”の意味を知って涙するシーンには泣けます。

ダンの行為は殺人と捉えられるかもしれない!「尊厳死”など誰も決められない、自分が決めればよい」とあえてこれを結論にもってくるところがイーストウッド監督らしい!しかし、モニターからバイタルデーターが消えたとき、生と死の溝の無限の深さを知ったはずです。ここから・・・。

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