小松菜奈と松田龍平が共演し、新潟・佐渡島を舞台に記憶を失った男女の謎めいた過去と運命を描いたドラマ。
小松菜奈さんと松田龍平さんの主演で、脇を固めるのも大竹しのぶさんら、錚々たる俳優陣。これで観ることにしました。(笑)
監督が「Blue Wind Blows」の富名哲也さん。この作品を観ていると理解しやすかったのに、観ていなかった。(笑)
富名監督が江戸時代に佐渡金山で過酷な労働を強いられて命を落とした無国籍者の人々を埋葬した「無宿人の墓」に着想を得て撮りあげたとのこと。
小松菜奈さんと松田龍平さんの心中のシーンが滅茶苦茶色っぽくてきれいだった。何故心中したか?(笑)名なしの松田龍平さんは佐渡金山の監視員で罪を抱ており、この罪を捨てることが出来なかった。流転輪廻の世界、過去を捨てれば再生できたのに。これがテーマだった。佐渡の風物に魅せられる作品でした。
風変わりなファンタジー作品ですので誰にでも勧められる作品ではないですが、自分なりの答えを見つけうれしくなれる作品です。
監督・脚本・編集:富名哲也、撮影:宮津将、音楽:野田洋次郎。
出演者:小松菜奈、松田龍平、片岡千之助、石橋静河、内田也哉子、森山開次、辰巳満次郎、田中泯、大竹しのぶ、田中椿、三島天瑠。
物語は、
佐渡島の金山跡地で目を覚ました女。過去の記憶がない彼女は清掃員の女キイに助けられ、キイがアカとクロという女の子と暮らす家に運ばれる。自分の名前すら思い出せない女はミドリと名付けられ、キイと一緒に清掃員として働き始める。そこで警備員の男アオと出会ったミドリは、彼もまた過去の記憶がないことを知り、次第にひかれ合っていくが……。(映画COMより)
あらすじ&感想:
〇深い緑に囲まれた寺の一角。そこに立つ黒衣の男と女性。女性が「生まれ変わったら一緒になろう」と話しかけるシーン。これがテーマです。
〇佐渡金山坑道入口に立つ講堂、ミドリはここでキイに救われた。
道遊の割戸が見える講堂。ここで働く女性清掃員キイ(大竹しのぶ)が白い衣装で床に伏している女性を見つけた。声を掛けると自分の名は分からないらしい。キイが自分の家に連れてきた。キイはアカという男の子とクロという女の子と暮らしていった。クロが“ミドリ”(小松菜奈)という名をつけてくれた。そしてキイと一緒に働くことになった。
「変てこな山、道遊の割戸は巨大な金塊が見つかり皆なで掘ってのような形になった、人間は欲深い生き物だ」と教えてくれた。館長(田中泯)から「よろしく頼みます」と挨拶された。
〇アオとの出会い。
ミドリは鈴の音がするので坑道に入った。電灯の点いた坑道を出ると美しい緑が一杯の野だった。そこで見つけた家に入ると食器とミルクがあり、そこに「どなたですか?ここは私の部屋です」と男が出てきた。この日は自分の名前を告げただけで戻った。後にミドリが男の名をアオと名ずけた。
男はミドリの跡を追った。前に人を見つけ手で触れると物言わぬ爛れた工夫だった。アオは引返した。
次の日、ミドリはミルクを持って男を訪ねた。名前を聞くと「名なしです。別に呼ばれることがないから」という。男が「同じ夢を繰り返しみる。ふと見ると隣に女性がいる。肉食の彼らが私たちを狙っている。幾度死のうと痛みや苦しみはないが、あなたを救いたい」と言い出す。
ミドリはこの男とホテルの食堂で食事をした。「弁当ありがとう、今度どこか行きませんか」と誘われた。
〇ミドリとアオの話と並行して女性になりたい男の子の話が始まる。
この男の子・向田透(片岡千之助)が鏡をみてため息をつく。そっとこの様子を母親(内田也哉子)が見ていた。
〇ミドリとアオは“心中した男女を祀る寺”にデートした。
先に男が寺に来てミドリを待っていた。男が「あなたの歌に覚えがある」という。ミドリは「考えてきた」と男にアオをいう名をつけた。本堂に入ると、能楽師が踊っていた。こちらに近づいてくる。アオは「夢を見ますか、人やものが眠っているとき」と聞く。ミドリは「覚えがない、夢とはどういうものか」と答えた。
とてもうつくしい格子模様の障子の間でふたりは向かいあった。男はアオと書いた文字を自分の名にした。
ミドリは館長から佐渡金山の悲しい出来事を聞いた。
「沢山の無宿人が連れてこられ過酷な労働を強いられた。はやく故郷に帰りたかったと思う」と。キイは「館長は気づくとそこにいるお化けのようだ」と言った。
〇ミドリは廃屋でアオに会って、アオを試した。
ミドリはどうしてここに居るのか分からなかった。そこにアオがいる。「あなたもそう思うでしょう」と聞くとアオは「分からない、帰ってください!」という。ミドリは「あなたは警備員でしょう。帰って欲しいなら私を殺したら!出来ないでしょう(私を好きになったから」」と彼の手を自分の首に当てた。アオはミドリを殺せなかった。
〇下校時、透が3人の友達に辱めを受け、それを苦に首を吊った。
3人の子は「お前は本当は女だろう。見せて見ろ!」とパンツを脱がせた。
その夜、透は「生まれ変わったら女の子になりたい!」と泣いた。農家で、透は藁で縄を編んだ。家に戻ると母から「うちには父さんがいないからあなただけが頼りよ!」と言われた。
透は森を抜け海岸に出た。アオが透を追った。透は松の木に縄をかけた。アオは「こっちに来てはいけない!」と声を掛けた。が、透は「母さんごめん」と言って首を吊った。
〇ミドリはアオの部屋でムラサキという女性に出会った。
ミドリがアオに会いに、彼の部屋を尋ねると女性がいた。女性はムラサキ(石橋静河)を名乗り「あなたとの関係は?」と聞いてくる。「どこにいったのかな」と答えると、「ちょっと寄っただけ」と言い、去って行った。
ミドリが坑道を戻り始めると向こうからアオがやってきた。
アオに「あの人はあなたのことをアオと呼んでいた。どんな人?」と聞くと「詳しいことはわからない。ここにはいない」という。「あの人だ」というと、「あの人はここをよく歩く人です。彼が誰なのかはよくわからない」という。
「仕事をする人?放っておけばいいのに」というと「危険な人ではない。魂なのかもしれない。どうしたら私は罪を償えるのか」と聞く。「何を言っているの?」と聞き返すと「気が付いていますよね。すでに私が死んでいることを。私はとうの昔に死んでいる」という。「そんなことはない、今私の前にいる」というと「どうして私はもっと生きていなかったか」と答えた。
ミドリはかって金山で働いていた警備員のアオに会っていた。ムラサキはアオの妻だった。
〇キイが突然いなくなった。そしてアカとクロも。
館長がキイに「ここを出ていきなさい」という。キイが「出て行く理由が分からない」と抗議すると「とにかく出て行きなさい。49日はどういうことか?あなたにとって悪いことではない。ご苦労様でした」という。キイは白い衣装に着かえ、消えて行った。
キイは死人だった。キイの魂が次の世界へと向かっていった。
ミドリはキイを求め坑道の中を探したが見つからなかった。ほどなくしてアカもクロも消えた。ミドリは掃除婦となって働いた。
〇ミドリは初めて夢を見た!
ミドリは初めて夢を見た。近くに顔の見えない男がいた。その男がそっと近づいて囁いた。ミドリはその人ととても高いところから身を投げた。しかし、痛みも苦しみもない。これが夢というものかと思った。
ミドリは自殺で死の世界に来ていたのだった。
海岸に沿う美しい緑に覆われた道路。透が佇み首を撫でる。そして歩きだした!
透は過去を捨て赤い着物を着て踊った。女に生まれ変わった!
〇ミドリはアオが運転するバイクで寺を訪ねた。
アオは坑道で骸骨化した工夫を見た。これで現世に戻れると思った。アオはミドリを誘って寺にやってきた。
美しい格子模様の障子の間でふたりは向かい合った。しかし、アオが去っていく。ミドリは回廊でアオを捉え身体を見て、「どうして爛れているの?」と聞いた。アオは「爛れた人はもう人間には戻れない!魂なのかもしれない」という。「魂なの!」とミドリは泣いて、アオの体に触れたが、アオの反応はなかった。だた、ミドリはアオに抱かれていた。
夜、オートバイでトンネルをくぐり戻っていた時、・・・。
突然スリップして大事故発生!ミドリは死ぬの?」と聞くとアオが「2度は死なない」と言った。「どこからきてどこに行くの?」と聞くと「分かりません」と答えた。「いつまでも一緒にいられればいい」というと「そうだといい」と返事が返ってきた。「どういうこと?」と聞くと「それは私には決められない」という。ミドリは「私たちは誰だったんですか?」と聞き直した。
〇ミドリとアオは“心中した男女を祀る寺”に詣で、心中した。
ミドリは「生まれ変わり、今度こそ一緒になりましょう」とアオの手を取った。横たわった。喪服の裏地の赤が鮮やかで、ミドリの裾の乱れが色っぽい。
ミドリは幾度と倒れるアオを支えながらトンネルの中を歩いて戻った。
ミドリは「私たちは誰だったんですか?」と聞くと「過去のことはもうどうでもいい、あなたはミドリえ私はアオです。ただそれだけです」と答えた。
喪服のままのふたりに、“さまよえる魂たちに捧ぐ”
ミドリがアオの顔を愛撫していた。アオは横になったままだった。
まとめ:
死の世界で知り合ったミドリとアオ。ふたりは愛するようになり、現世に戻ろうとした。しかし、アがオ金山で犯した罪から逃れることができない。ふたりは美しい格子模様の間で「今度生まれ変わったら一緒になろう」と誓って心中した。
流転輪廻の世界、過去を捨てれば再生できたのにという美しい物語だった。
小松菜奈さんと松田龍平さんの演技で、この世界感を楽しみました!
佐渡鉱山の風物とその歴史に中で、小松菜奈さんと松田龍平さんの演技でふしぎな世界を見せてもらった。面白かった!
小松さんの自然で不思議な漂った感じが死の匂いを醸し、一方その美しさ生を感じさせる。一方の松田さんは無口で無表情、死の匂いがプンプン。流転輪廻の世界を感じさせてくれ、不思議な世界を楽しませてくれました。
佐渡の荒々しい海岸、うっそうとした森、田園風景。佐渡金山の遺跡を見ることができてよかったです。
死の世界の物語だったが、翻って現世で、人間迷ったとき過去を捨てて生き直す。面白い作品だった。
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